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 第10回 不公正貿易とWTO

「不公正貿易報告書」という刺激的なタイトルの本がある。経済産業省が1992年から毎年出版しているが、私は委員としてここ数年関与してきた。2007年版が5月に出され、同省のホームページでも閲覧できる。
中国がWTOに加盟してから2006年12月で5年が経過したので、2007年版では中国に力点がおかれた。中国はWTOに加盟する際に、関税率の引き下げや投資分野の開放について様々な約束(コミットメント)を行った。中国が約束を守っているかをチェックしようという試みである。

 結論的には、中国は加盟時の約束をほぼ忠実に履行してきた。貿易権は認可制度から登録制度になり、すべての会社に与えられるようになった。流通は開放され、外資100%の小売や卸売が出現した。外資100%の銀行や損害保険会社も認められるようになった。
ただし、いくつかの点についてはまだ問題が残っている。アメリカは中国をWTOに提訴し、中国はこれに猛反発している。最近の話題は、中国の知的財産権保護である。中国はWTO加盟にあたり、知的財産権違反の刑事罰の強化や損害賠償額の拡大も約束した。ところが、刑事罰を適用するハードルが高いために、大量の違法商品が摘発されても逮捕されずに行政罰のみで済まされることも多い。これはWTO加盟約束に反するというのがアメリカの主張であり、日本もこれに同調している。手続き的には、日本は利害関係のある第3国として、WTOの紛争協議に参加する。
ここからは私の実感であるが、偽物問題は売る者と買う者双方の心理に原因がある。上海の街を歩くとDVDが安く売られている。北京でも堂々と売られている。1枚10元程度だから、誰も本物と思っていない。中国人だけでなく日本人や欧米人も買っている。もちろんコピー商品を作る者は悪い。しかしながら、買う方にも罪悪感が欠けている。需要と供給がある限り、偽物はなくならず、根は深い。

[国際貿易 2007年6月5日第1面「今日の話題」より転載]

(射手矢好雄)