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 第15回 ハイブリッド法務

「中国は人治か法治か」という命題がある。日本にあるような法律は、中国でも制定されている。最近では物権法や独占禁止法も制定された。ところが法律の運用にはまだまだ問題が多い。法律の内容が不明確なため、役人の見解を聞いても担当者によって解釈が異なることがある。法律が遵守されないことも多い。例えば、知的財産権に関する法律は整備されたが、偽物は多い。債権回収で裁判に勝ったとしても強制執行が成功しないことがある。したがって、答えは「人治から法治への過渡期」である。

 その一方で、「中国法は地雷の如し」である。違法行為は中国社会にはびこっているかもしれない。ところが、いったん違法行為が発覚すると、地雷を踏んで爆発が起きたかのように、一罰百戒で厳しく罰せられる。贈収賄、密輸、脱税の領域が特にそうである。

私は長年中国法務を行なっているが、中国特有の曖昧さと予見可能性の低さを感じてきた。そのような環境で、中国での法律問題を解決するためには、中国の法律だけでなく、政治や経済や文化も視野に入れた「ハイブリッド法務」が必要であると考えた。

中国への投資には政府の認可が必要であるが、その背景には政治と経済がある。現在のキーワードは環境と省エネである。中国では消費者による製造物責任訴訟が多いが、これは中国人の法意識と関係がある。知財の問題は、偽物についての需給が成り立っているという中国社会の構造に関係する。その解決には外国からの政治的圧力が有効なことも多い。

もっとも、「ハイブリッド法務」と言ってもあくまでも法律が主役である。人治の時代に逆戻りするのではない。法律の内容を正確に把握することは当然の前提である。その上で、法律の運用状況を的確に理解しなければならない。そのためには、中国の裁判例も研究しなければならない。法律の字面を理解するだけでなく、トラブル事例も把握し、政治や経済や文化にも目配せすることが必要である。中国法務は奥が深い。

[国際貿易 2007年11月20日第1面「今日の話題」より転載]

(射手矢好雄)