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(平成29年5月24日)平成28年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組等

(平成29年5月24日)平成28年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組等

平成29年5月24日
公正取引委員会

第1 下請法の運用状況

1 下請法違反行為に対する勧告等

(1) 勧告件数

 平成28年度の勧告件数は11件。
 勧告の対象となった違反行為類型の内訳は,下請代金の減額が7件,下請代金の減額及び返品が1件,下請代金の減額及び不当な経済上の利益の提供要請が1件,下請代金の減額,返品及び不当な経済上の利益の提供要請が1件,購入・利用強制が1件。

【勧告件数の推移】

勧告件数の推移

(注1) 「製造委託等」とは製造委託及び修理委託を,「役務委託等」とは情報成果物作成委託及び役務提供委託をいう。
(注2) 勧告を行った事件の中には,製造委託等及び役務委託等の双方において違反行為が認められたものがあるが,本図においては,当該事件の違反行為が主として行われた取引に区分して,件数を計上している。
(注3) このほか,勧告に相当するような自発的な申出事案もある(後記3参照)。

(2) 指導件数

 平成28年度の指導件数は過去最多の6,302件。

【指導件数の推移】

指導件数の推移

2 下請事業者が被った不利益の原状回復の状況

 平成28年度においては,下請事業者が被った不利益について,親事業者302名から,下請事業者6,514名に対し,下請代金の減額分の返還等,総額23億9931万円相当の原状回復が行われた。

【原状回復額の推移】

原状回復額の推移

【原状回復を行った親事業者数・原状回復を受けた下請事業者数の推移】

原状回復を行った親事業者数・原状回復を受けた下請事業者数の推移

3 下請法違反行為を自発的に申し出た親事業者に係る事案

 公正取引委員会は,親事業者の自発的な改善措置が下請事業者が受けた不利益の早期回復に資することに鑑み,公正取引委員会が調査に着手する前に,違反行為を自発的に申し出,かつ,自発的な改善措置を採っているなどの事由が認められる事案については,親事業者の法令遵守を促す観点から,下請事業者の利益を保護するために必要な措置を採ることを勧告するまでの必要はないものとしている(平成20年12月17日公表)。
 平成28年度においては,上記のような親事業者からの違反行為の自発的な申出は61件であり,当該申出件数は年々増加している(平成26年度47件,平成27年度52件)。また,同年度に処理した自発的な申出は86件であり,そのうちの10件については,違反行為の内容が下請事業者に与える不利益が大きいなど勧告に相当するような事案であった。平成28年度においては,親事業者からの違反行為の自発的な申出により,下請事業者2,551名に対し,下請代金の減額分の返還等,総額6億4449万円相当の原状回復が行われた(前記2記載の金額の内数である。)。
 なお,勧告に相当するような事案に対して上記のような取扱いを行った件数は,これまで19件である(平成20年度2件,平成24年度3件,平成25年度1件,平成26年度1件,平成27年度2件,平成28年度10件)。

【自発的な申出の件数】

自発的な申出の件数

第2 企業間取引の公正化への取組

 公正取引委員会は,企業間取引の公正化を目的として,下請法及び優越的地位の濫用規制(以下「下請法等」という。)に係る違反行為を未然に防止するための各種の施策を実施している。平成28年度の状況は次のとおりである。

1 下請取引適正化推進月間の実施

(1) 概要

 公正取引委員会は,中小企業庁と共同して,毎年11月を「下請取引適正化推進月間」と定め,下請法の概要等を説明する「下請取引適正化推進講習会」を全国各地で実施するなど,下請法の普及・啓発を図っている。

(2) 下請取引適正化推進講習会

 平成28年度においては,47都道府県63会場(うち公正取引委員会主催分26都道府県32会場)で実施した。

(3) キャンペーン標語の一般公募

 平成28年度においては,キャンペーン標語についての一般公募を実施し,「下請けの 確かな技術に 見合った対価」を特選作品として選定した。

(4) 下請法遵守の要請文書の発出

 平成28年度においては,親事業者約33,000名及び関係事業者団体約650団体に対し,下請法の遵守の徹底等について,11月25日に要請を行った。

2 下請法等に係る講習会

(1) 基礎講習会

 下請法等に関する基礎知識を習得することを希望する者を対象とした「基礎講習会」を実施している。平成28年度においては,56回の講習会を実施した。

(2) 応用講習会

 下請法等に関する基礎知識を有する者を対象として,勧告事例等の説明,事例研究等を内容とする「応用講習会」を実施している。平成28年度においては,12回の講習会を実施した(うち3回は卸・小売業者向け。)。

(3) 業種別講習会

 過去に下請法等に係る違反行為がみられた業種,各種の実態調査で問題がみられた業種等に一層の法令遵守を促すことを目的とする「業種別講習会」を実施している。平成28年度においては,荷主・物流事業者向けに10回の講習会を実施した。

3 下請法等に係る相談

(1) 相談

 平成28年度においては,下請法等に係る相談9.202件に対応した。

(2) 中小事業者のための移動相談会

 下請事業者を始めとする中小事業者からの求めに応じ,公正取引委員会の職員が出向いて,下請法等について基本的な内容を分かりやすく説明するとともに相談受付等を行う相談会を実施している。平成28年度においては,45か所で実施した。

4 下請法の講習用動画「やさしく解説・よくわかる下請法講座~下請取引で困らないために~」の作成・公表

 下請法に係る各種講習会を受講しなくとも,手軽に下請法の説明を視聴し,親事業者と下請事業者それぞれが下請法を正しく理解することができるよう,下請法の講習用動画「やさしく解説・よくわかる下請法講座~下請取引で困らないために~」を作成し,公正取引委員会のホームページ及びYouTube公正取引委員会チャンネルに公開した(平成28年7月1日)。
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h28/jul/160701_1.html

5 取引実態調査

 平成28年度においては,ブライダル業者又は葬儀業者と納入業者との取引を対象とする実態調査を実施し,その結果を公表した(平成29年3月22日)。

(1) ブライダルの取引に関する実態調査

 ブライダル業の市場規模は平成27年において約1兆4160億円と見込まれ,漸減傾向が続いている。婚姻件数は,平成27年において約64万件であり,過去10年間でおよそ11%減少している。今後も減少傾向は続き,平成37年には約58万件になることが予測されている。
 納入業者から、ブライダル業者から優越的地位の濫用規制上問題となり得る行為を1つ以上受けたと回答のあった取引は集計対象取引の37.6%に上っており,中でも,「商品・サービスの購入・利用の要請」が24.0%と最も高い割合となっていたほか,「金銭・物品の提供の要請」(16.8%)や「採算確保が困難な取引(買いたたき)」(12.3%)が他の行為類型に比べ比較的高い割合となっていた。また,取引内容別にみると,「人材派遣」(45.8%),「引出物・ギフト」(44.5%),「花」(43.9%)の取引において優越的地位の濫用規制上問題となり得る行為が見られた取引の割合が40%を超えており,他の取引内容に比べ高くなっていた。

(2) 葬儀の取引に関する実態調査

 葬儀業の市場規模は平成27年において約1兆7800億円と見込まれ,漸増傾向が続いている。死亡者数は,平成26年において約127万名であり,過去10年間でおよそ25%増加している。今後も増加傾向は続き,平成51年には約167万名とピークを迎えることが予測されている。
 納入業者から,葬儀業者から優越的地位の濫用規制上問題となり得る行為を1つ以上受けたと回答のあった取引は集計対象取引の29.9%に上っており,中でも,「商品・サービスの購入・利用の要請」が14.9%と最も高い割合となっていたほか,「採算確保が困難な取引(買いたたき)」(11.4%)や「金銭・物品の提供の要請」(9.0%)が他の行為類型に比べ比較的高い割合となっていた。また,取引内容別にみると,「仕出料理」(36.7%),「花」(33.6%),「返礼品・ギフト」(32.2%)の取引において優越的地位の濫用規制上問題となり得る行為が見られた取引の割合が30%を超えており,他の取引内容に比べ高くなっていた。

第3 中小企業等の取引条件の改善に向けた取組

 公正取引委員会は,中小企業等の取引条件の改善に向け,下請法・独占禁止法の運用強化に向けた取組を行っている。平成28年度の状況は次のとおりである。

1 下請法運用基準の改正

 親事業者による違反行為の未然防止や事業者からの下請法違反行為に係る情報提供に資するよう,違反行為事例の充実等を内容とした下請法運用基準の改正を行った(平成28年12月14日)。

2 「下請代金の支払手段について」の発出

 公正取引委員会事務総長及び中小企業庁長官の連名の文書(「下請代金の支払手段について」)をもって,下請代金の支払条件の改善に向けた取組を関係事業者団体に対して要請した(平成28年12月14日)。

3 荷主と物流事業者との取引に関する書面調査

 平成28年度においては,優越的地位の濫用行為の抑止・早期是正のため独占禁止法の運用を強化することとし,物流特殊指定の遵守状況及び荷主と物流事業者との取引状況を把握するための書面調査について,調査対象を昨年度に比べて倍増させ、荷主30,000名及び物流事業者40,000名を対象とする書面調査を実施した。当該調査の結果,物流特殊指定に照らして問題となるおそれがあると認められた707名の荷主に対して,物流事業者との取引内容の検証・改善を求める文書を発送した(平成29年3月)。
 当該707名の荷主のうち,業種について回答のあった698名を業種別にみると,製造業が最も多く(340名,48.7%),卸売業(149名,21.3%),建設業(53名,7.6%)がこれに続いている。また,問題となるおそれがある行為791件を類型別にみると,代金の支払遅延が最も多く(329件,41.6%),代金の減額(165件,20.9%),割引困難な手形の交付(105件,13.3%)がこれに続いている。

関連ファイル

問い合わせ先

公正取引委員会事務総局経済取引局取引部
下請取引調査室 電話03-3581-3374(直通)(主に,第1関係)
企業取引課 電話03-3581-3373(直通)(主に,第2及び第3関係)
ホームページ http://www.jftc.go.jp/
(下請法に係る相談・申告等 http://www.jftc.go.jp/shitauke/madoguti.html

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