スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第11回)議事録

1.日時:

平成29年10月18日(水)9時30分~11時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

【池尾座長】
 それでは、定刻になりましたので、ただいまよりスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議、第11回会合を開催いたしたいと思います。

 皆様には、ご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。それでは、スチュワードシップ・コードの改訂作業を別の会議体でやっている間、すっかりお休みをいただいてしまっていたんですけれども、今回、フォローアップ会議を再開するに当たりまして、メンバーにちょっと変更がございまして、新たに3名の方にメンバーとしてご参画いただくことになりましたので、事務局から、まずご紹介をお願いいたしたいと思います。

【田原企業開示課長】
 新たにフォローアップ会議のメンバーにご就任いただいたお三方をご紹介させていただきます。座席順にご紹介させていただきます。お手元に配席図をお配りしておりますけれども、メンバーの皆様の右側から、大場昭義様、ケリー・ワリング様、三瓶裕喜様です。

 なお、本日は、ワリングメンバーにプレゼンテーションをお願いしておりまして、その関係で、ワリング様が所属されていますICGNの理事である井口譲二様にもお越しいただいております。

【池尾座長】
 どうもありがとうございました。本日は、スコット・キャロンさんも参加される予定なんですが、少しおくれていらっしゃるということの連絡をあらかじめいただいています。

 それでは、内容に入っていきたいと思います。最初に、金融庁からコーポレートガバナンス改革の進捗状況につきまして、ご説明をお願いしたいと思います。

【田原企業開示課長】
 それでは、お手元の資料1「コーポレートガバナンス改革の進捗状況」に沿って、ご説明をさせていただきたます。なお、東京証券取引所が先般公表した、本年7月時点の「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」という統計資料がお手元にございますので、あわせてご参考としていただければと存じます。

 目次でございますが、本日は、これまでのコーポレートガバナンス改革に向けた取組みの進捗状況と、そうした状況を踏まえ、現状においてどのような指摘があるかということについて、ご説明をさせていただければと存じます。

 まずは、コーポレートガバナンス改革に向けたこれまでの取組みについてでございます。メンバーの皆様におかれましてはご承知のことでございますけれども、安倍内閣の発足以来、成長戦略の一環としてスチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードを策定し、コーポレートガバナンス改革に鋭意取り組んでまいりました。中長期的な企業価値の向上と投資リターンの拡大、さらには国民の安定的な資産形成をいかに図っていくかということを主眼とし、ひいては日本経済全体の好循環を実現して、国民生活を豊かにすることにつなげていくことが、目的であるわけでございます。そうしたことを表しているのが、3ページの図でございます。

 関係各位のご努力によって、コーポレートガバナンス改革は着実に進展してきていると認識しておりますが、他方で、具体的な取組みに当たっては、十分に中身がついてきていないのではないかというご指摘も頂戴しています。そのため、フォローアップ会議の場に皆様にお集まりいただきまして、どうすればより実質的なコーポレートガバナンス改革が実現できるかをご議論いただいて、その結果を、順次施策として実現してきているところでございます。

 昨年は、そうした中で、スチュワードシップ活動が鍵になるのではないかということで、この点について充実した議論を頂戴いたしまして、本年5月、スチュワードシップ・コードの改訂につなげさせていただきました。内容については、4ページの図に記載させていただいているとおりでございますけれども、アセットオーナーやアセットマネジャーの役割を再確認し、どのようにして上場企業と積極的に対話いただくかということについて議論をいただき、その結果をコードに反映いたしました。

 そうした改訂を受けた機関投資家の取組み状況について、ご報告させていただきます。まず、国内の大手運用機関を中心に、議決権行使の監督などを行うための第三者委員会の設置が広がっております。また、本年の株主総会におきましては、大手運用機関において、個別の議決権行使結果の公表が始まっております。実際に、株主総会後には、多くの運用機関が個別の議決権行使結果を公表しており、影響が広がっている状況にあろうかと思っております。

 また、個別の議決権行使結果の公表にとどまらず、賛否の理由についても公表する運用機関が増えており、アカウンタビリティーが高まっているのではないかと認識しているところでございます。

 また、アセットオーナーに目を転じますと、GPIFにおいては、本年6月に委託先運用機関に向けたスチュワードシップ活動原則と議決権行使原則を制定し、どのような形でスチュワードシップ活動を行うかということについて指針を示しています。

 また、GPIFでは、個別の議決権行使結果の公表についても要請しているということでございます。そうした意味でも、アセットオーナーとアセットマネジャーの双方で取組みが広がっていると認識しておりまして、フォローアップ会議の場でご議論いただいた成果が上がっているのではないかと考えております。

 6ページに、ご参考として、三井住友信託銀行の具体的な個別の議決権行使結果の公表例を示させていただいております。

 次に、7ページ以降の「コーポレートガバナンス改革を巡る指摘」についてご説明させていただきます。8ページをご覧ください。安倍政権の発足以来、コーポレートガバナンス改革に向けてさまざまな努力をしてきたわけでございますけれども、現状においても、いろいろな指摘をいただいております。フォローアップ会議が開催されていなかった間においても、私どももいろいろな方からお話を伺う中で、主にこの5点について指摘を頂戴することが多くございました。

 1点目が、投資と内部留保に関する点でございます。コーポレートガバナンス改革については一生懸命取り組んでいるものの、その結果、企業に現預金の形での内部留保がどんどんたまっているのではないかというご指摘を頂戴しています。一方で、設備や人材、研究開発への投資が十分に行われているのかということについても、ご指摘を頂戴しております。

 2点目でございますけれども、そうした指摘のバックグラウンドとして、経営環境の変化に対応した経営判断についてもご指摘を頂戴しております。コーポレートガバナンス改革の中で、中長期的な企業価値の向上をうたっているわけですが本当にしっかりとした経営判断につながるような改革になっているのかということについて、いろいろな方から指摘を頂戴しております。なかんずく、経営者の資本コストに対する意識がまだまだ足りないのではないかというご指摘を頂戴することが多くございます。

 3点目として、そういった点について、コーポレートガバナンスの観点からどのような問題があるのかということについては、フォローアップ会議の場でもご議論いただきましたCEOや取締役会の取組みがまだまだ十分ではないのではないか、あるいは、社外取締役がまだまだ実効的に機能を発揮できていないのではないかというご指摘を頂戴しております。

 さらに、4点目として、政策保有株式についても、十分に縮減が進んでいないのではないかというご指摘を頂戴しております。

 また、5点目として、昨年にご議論いただき、スチュワードシップ・コードも改訂して、スチュワードシップ活動の強化に取り組んでいるわけですけれども、特にアセットオーナーにつきましては、まだまだフィデューシャリー・デューティーやスチュワードシップ責任に対する認識が足りないのではないかというご指摘を頂戴しています。

 9ページ目以降で、こうした5点の指摘について、詳細をご説明させていただければと存じます。まず1点目の投資と内部留保についてでございますけれども、皆様ご承知のとおり、企業の利益剰余金は増加しており、なかんずく、現預金は200兆円を超えて、さらに増加している状況にございます。

 一方、設備投資を見ますと、1995年比で、アメリカでは約2.5倍に増えていますけれども、日本はほぼ横ばいになってございます。それから、労働分配率についてもやや下落傾向でございますし、研究開発費につきましても、10ページ右側の2011年と2016年との比較表で見ますと、2011年には日本企業は6社が世界のトップ30に入っていたわけでございますが、2016年には2社となっています。こういった点を捉えて、日本企業の投資に対する積極性について、疑義が持たれている状況にあります。

 11ページ以降では、生命保険協会の調査結果を示してございます。企業の手元資金について、投資家サイドからは、適正な水準を上回っているのではないかというご指摘があるということでございます。調査の結果では、上側のチャートでございますけれども、投資家サイドでは、企業の手元資金が余裕のある水準と考えているという回答が多くなっています。一方、企業サイドでは、手元資金の水準は適正であると回答している企業が約6割となっております。加えて、下側のチャートでございますけれども、投資家サイドでは、こうした手元資金を成長に向けた投資資金に充ててほしいと考えているという回答が約6割に上っているということでございます。

 そうした状況の中で、手元資金の適切な水準について、企業においてどのように考えられているかという点については、12ページのチャートにありますように、売上高や利益、運転資金、キャッシュフローなどに対して一定比率を目安としているという回答が約5割あるわけでございますが、一方で、特に具体的な基準があるわけではないという回答も、約3割ある状況でございます。

 また、約5割の企業は一定の水準を目安としていると回答しているわけですが、投資家サイドから見ますと、そうした水準についてあまり説明されていない、またはほとんど説明されていないという回答が7割に上るということで、このあたりの認識の差異を、どのように対話で埋めていくかということが、課題になっているのではないかと考えているところでございます。

 次に、2点目のポイントである経営環境の変化に対応した経営判断につきまして、ご説明させていただければと存じます。各企業においては、さまざまな努力をされていることは十分承知しているわけでございますけれども、私どもが特に海外の投資家からご指摘を受けることが多い点を挙げております。13ページをご覧いただきますと、日本企業の純利益は過去最高を更新していますが、ROSやROA、ROEといった指標を見ますと、これも足元では上昇していますが、アメリカと比較した場合には、水準がまだまだ及んでいないのではないかというご指摘を頂戴しております。なかんずくPBRについて見ますと、1倍近辺で推移しており、直近でも1倍を下回る企業が全体の3分の1超という状況になっています。

 こういった状況の中で、投資家がどのように考えているかという点について、先ほどと同じ生命保険協会の調査結果でございますけれども、多くの投資家は事業の選択と集中に期待をしており、14ページのチャートをご覧いただきますと、約7割の投資家の方がそうした点に期待していると回答しています。他方で、企業サイドでは、こうした点を重視していると回答しているのは約3割にとどまっており、事業規模・シェアの拡大やコスト削減の推進に力を入れているという回答が多い状況です。一方で、企業サイドが重視しているこれらの点については、投資家はそれほど期待をしているわけではないという結果になってございます。

 また、この資本コストとリターンの関係についても、企業サイドでは資本コストを上回るリターンを上げていると認識している企業は半数近くに上るわけでございますけれども、一方で、投資家サイドでは、約6割の投資家は、企業が資本コストを上回るリターンを上げられていないと認識している状況でございます。このあたりについても、企業と投資家との間の対話の必要性があるのではないかと考えているところでございます。

 3点目のコーポレートガバナンスに関する点について、ご指摘を受けることが多い点でございますけれども、CEOや取締役会に関連して、独立社外取締役を選任する企業数が増えているという点がございます。2名以上の独立社外取締役を選任する上場企業は、市場第一部の上場企業についていえば、約9割になっていますし、3分の1以上の独立社外取締役を選任する上場企業も、市場第一部では3分の1以上になってきております。

 また、任意の形が多い状況ですけれども、指名委員会や報酬委員会を設置して、ガバナンスを強化する企業も、市場第一部で3割強、JPX日経400の選定企業では6割近いということで、着々とガバナンスの仕組みが整ってきているといえるかと思います。

 続いて、17ページをご覧ください。一方で、実際に企業においてCEO等の選任基準や解任基準が整備されてきているかといえば、まだまだ少数にとどまっておりますし、後継者計画をモニタリングしている企業になりますと、約4分の1程度という結果になっております。また、それらの内容についても、まだまだ課題があるのではないかというご指摘を頂戴しているところでございます。

 これらの点につきましては、昨年、ご議論をいただきまして、2月に意見書を公表させていただいております。問題意識はこのときと変わらないところでございますけれども、その後の進捗も踏まえまして、こういったご提言をどうやって実効的に実現していくのかということについて、改めて議論していただく必要があるかと存じます。

 4点目の政策保有株式についてでございます。こちらにつきましては、3メガバンクグループ等が、リスク管理の観点も踏まえ、その縮減目標を公表し、着実に縮減をしてきているところでございます。

 一方で、20ページをご覧頂きますと、左上のチャートでございますが、保有主体別で見たときに、事業法人間での持ち合いの水準が依然として高いのではないかというご指摘を頂戴することが多くございます。フォローアップ会議やスチュワードシップ・コードに関する有識者検討会におきましても、メンバーの方々からご指摘を頂戴しておりますが、右側の上のチャートのとおり、外国の投資家を含めた機関投資家の保有比率が上がっている一方で、政府、保険会社、銀行、事業法人といった政策保有株主の保有比率はあまり減っておりません。こういった状況が、経営の緊張感を失わせているのではないかというご指摘を、頂戴することが多いわけでございます。左下のチャートでございますけれども、企業の実務担当者への調査結果でも、約半分は安定株主だという回答が多いということでございます。一方、右下のチャートですけれども、政策投資資産を多く持っている会社は、統計的にはROEが低いということが言えるようでございまして、そういった観点からも、政策保有株式についてしっかり考えていく必要があるのではないかというご指摘を頂戴しております。

 この点につきましても、一昨年のフォローアップ会議でご議論いただきまして、問題意識はそのときと変わらないかと思いますけれども、その後のこういった状況を踏まえて、改めてご議論を頂戴できればと考えているところでございます。

 最後に、5つ目のアセットオーナーの点でございます。アセットオーナーのフィデューシャリー・デューティー、あるいはスチュワードシップ活動といったものについての認識は、着実に高まってきていると伺っておりますけれども、一方で、例えば企業年金については、22ページのようなデータがあり、スチュワードシップ活動への関心がまだまだ高まっていないのではないかというご指摘を頂戴することが多くございます。

 昨年から今年にかけまして、厚生労働省と企業年金連合会でも、企業年金にスチュワードシップ・コードを受け入れていただけないかということで、研究会をしていたわけでございますが、残念ながら、結果的には、今のところ全く受け入れは増加しなかったという状況になっております。

 基金型の厚生年金や確定給付企業年金は、約800あるわけですが、スチュワードシップ・コードを受け入れていただいている企業年金は7基金にとどまっており、また、コードを受け入れている企業年金も、金融機関系のところが多く、事業法人系は1基金のみとなっています。スチュワードシップ・コードの受け入れも重要ではございますけれども、こういったアセットオーナーの状況についてどう考えていくのかということについても、よくご指摘を頂いております。こういった点につきましても、皆様のご議論を頂戴できればと考えているところでございます。

 最後のページでございますが、今年の6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」の中でも、これらの点について、引き続きしっかり議論して、企業の中長期的な成長と国民の資産形成を実現していくために取り組むことが示されているところでございます。皆様の積極的なご議論をお願いいたしまして、私からの説明とさせていただきます。ありがとうございます。

【池尾座長】
 ありがとうございました。議論は後で一括して行うということで、引き続き、国際的な機関投資家団体であるInternational Corporate Governance Network(ICGN)のケリー・ワリングメンバーから、プレゼンテーションを行っていただきたいと思っております。なお、ワリングメンバーからは、英語でご説明いただきますので、逐次通訳をさせていただきます。

 それでは、ワリングメンバー、よろしくお願いします。

【ワリングメンバー】
 皆さん、どうぞよろしくお願いします。まず、金融庁が実施している非常に良い取り組みについて高く評価をしたいと思っております。グローバルなガバナンスのコミュニティーといたしましては、日本におきまして非常に進捗があるということに感銘を受けておりまして、それをぜひ記録に残していただきたいと思います。

 また、この場をおかりいたしまして、我々の元理事であります高山与志子さん、そして現在の理事である井口譲二さん、そして株主の責任に関する委員会のメンバーである上田亮子さんのご支援に対しても御礼申し上げたいと思います。

 日本は、世界で第3位の経済大国でありますので、ICGNのメンバーにとりましては非常に重要なマーケットであります。本日の私のお話は、先ほど田原さんのほうからも報告がありましたように、特に焦点を当てたいと思っておりますのは、資本効率について、政策保有株について、そして独立取締役の役割についてです。

 このパワーポイントの資料の4ページ目をごらんいただきたいと思います。ICGNといたしましては、2014年に伊藤レポートが出されて、その中で最低でもROE8%を目指すということが言われてからの進捗については十分に認識をしております。しかしながら、田原さんもおっしゃいましたように、日本のROEというのは欧米企業に比べると、まだまだはるかに低いということです。

 ICGNのグローバルガバナンス原則の原則1のところに、取締役の役割というのがあるんですけれども、そこによりますと、会社のミッションと目的、及び大規模な設備投資、企業や事業の買収、売却などの企業戦略と、財務計画を指導、検証、承認することとなっております。もちろん、ICGNといたしましては、このように伊藤レポートが言っているような目標設定そのものは大事であるということはわかっておりますけれども、しかし、その目標が、ただ単に数字を掲げるのではなくいかに達成されているかというところに注目したいと思っています。

 そこで、日本の企業の取締役会が株主に対しまして、資本政策についてより多くの情報を開示していただけると、それは有益なことだと思います。日本の企業は、手元の預金を減らしていくべきだと思いますし、むしろR&D、そして人材に対する投資を加速化していくことによって、真に世界市場での競争力をつけていくべきだと思います。

 グローバルな投資家というのは、取締役会と対話をして、将来のリスクや事業機会について議論をしたい。それによって、収益力を高める。この収益力という場合には成長及び利益性、収益性、そして効率ということですが、それらを高めていくための対話をしたいと望んでいます。

 5ページ目を見てください。ICGNは取締役会におきまして、独立取締役の人数が増えてきていることについて歓迎をしております。企業は少なくとも独立取締役を3分の1、あるいは最低でも3名の独立取締役を持つべきだと思います。そうすることによって、指名委員会や報酬委員会において完全なる独立姿勢を担保することができるからです。

 我々はただ単に数字に焦点を当てるだけではなく、その取締役の能力や実効性にもっと注目するべきだと思います。独立取締役のニーズをサポートしていく必要があります。独立取締役は経営陣に対して建設的に問題提起をしていくという意味で非常に重要な役割を果たしており、外部の影響を受けない形で仕事をする必要があります。また、例えばCEOとか社長のように、1人の人間が意思決定に対して支配力を持つということを相殺することも独立取締役ができます。彼らの個人的な能力や経験を使うことによって、多様な視点を注入することができ、それで取締役会における健全な議論を生んでいくことができます。

 CEOの選任についてですが、次の6ページをごらんください。CEOその人自身が後継者の能力や、必要としている戦略的なニーズ、あるいはスキルセットなどについて関与してくるということはまれなことではありません。しかし、日本が他国の企業とどこが違うかというと、後継者を任命する決定に当たって独立取締役とほとんど協議をしないということです。さらには、外部の人材コンサルタントなどを活用しないということです。

 また、日本におきましては、社長、CEOの在任期間が比較的短くなっています。アメリカでは10年、日本では4年ぐらいが普通だと思うんですけれども、これによりまして、ある一人の個人が自己保身の決定をすることを抑止する一助になると思います。しかし、ICGNとしては、独立取締役が過半数を占める指名委員会をもっと活用してほしいと思います。

 それでは、7ページの指名の開示について見ていきたいと思います。CEOや、あるいは独立取締役の選任プロセスについての情報開示を英語でもっと企業のほうにしていただけると、非常に有益だと思います。開示の情報の内容といたしましては、指名の理由、根拠、そして主な能力、独立性に影響を与え得る要因などです。

 8ページのほうに独立性について書かれております。この独立性の定義につきまして、コーポレートガバナンス・コードに含めるというのが有益ではないかと思います。一方で、上場規則には定義があるとは認識しておりますけれども、さらにそれを膨らませて独立性に影響を及ぼし得るような要因についても、コードの中に含めるといいと思います。その要因といたしましては、政策保有株式を持っている相手先とか、あるいは顧客との親密関係があるかどうか、あるいは親族関係があるかどうかなどであります。

 コミュニケーションについて、10ページをごらんください。私どもとして1つお勧めしたいのは、株主との対話担当の独立取締役を取締役会が任命するということであります。この株主との対話、エンゲージメント担当の独立取締役が、株主、投資家との対話を行うと。そして、株主、投資家との対話の取り組みを開示していただいてはどうかと思っております。私どもの会員といたしましては、ぜひ取締役会レベルでのエンゲージメントをと望んでおります。

 11ページ、こちら、インダクションと書いてありますけれども、独立取締役就任時の導入研修についてであります。この就任時の導入研修につきましては、ぜひ非執行取締役に対して行っていただきたいと思いますと同時に、執行取締役につきましても、このような研修を行うことによりまして、独立取締役と一緒に取締役会を構成することに
おける価値をより深く認識していただけるのではないかと思っております。

 また、財務会計の理解力は特に重要であると考えております。つまり、資本効率、あるいは政策保有株式、買収防衛策につきまして、経営陣に異議を唱える必要がある場合には異議を唱え、牽制をきかせることができるためには財務会計の理解力が重要だからです。

 では、取締役会の評価に話を移してまいります。12ページをごらんください。取締役会の評価ですけれども、評価を行って、その評価の結果が企業の戦略にとって関連性の高い候補者選びにつながっていくということが重要であると思っております。私どもといたしましては、3年に1回外部の評価を受けるということが重要であると強調しておきたいと思っております。そのプロセスですとか、結論の重要な指摘事項につきましては、ぜひ開示をしていただきたいと思っております。

 さて、政策保有株式につきまして、13ページをごらんください。この政策保有株式につきましては、日本の経済界において広く行われている慣行ですが、これはICGNの会員にとりましては非常に大きな懸念事項となっております。日本では、ビジネス関係のためには、政策保有株式で持ち合いをやるというのが不可欠であるという考え方が広くとられておりますが、世界の投資家はこれとは全く違う考え方を持っておりまして、どのような懸念が投資家側から表明されているか、ここに幾つか事例を挙げております。

 政策保有株式のどこが問題だと投資家が考えているか。まず1つ目は、公正な競争が妨げられる。2つ目に、不当な取引制限につながる。3つ目に、株主間の不平等につながる、また、買収防衛策等の不適切な利用につながる、資本管理が非効率になる、取締役会の独立性が妨げられる、また経営に対する牽制がきかなくなるといった懸念が出ております。

 では、15ページをごらんください。この件に関しましては、つまり経営陣に対するチャレンジ、牽制をきかせるという意味におきましては、最近ハーバード・ロースクール・フォーラムが出した論文に注目をしていただきたいと思っております。この論文によりますと、持ち合い比率の高い企業の経営陣は、ともすれば厳しい判断を避ける、あるいはリスキーな選択を行わないということが言われております。それを軽減するには、投資家、あるいは独立取締役のしっかりとしたモニタリングをきかせることが有効であるとしています。

 日本におきましては、確かに金融庁に背中を押される形で政策保有株式の縮減が、特に主要銀行におきましては一定の前進を見ている、ここにつきましてはICGNも評価をしております。しかしながら、銀行のみならず、広く事業会社におきましても、持ち合い解消に向けてさらなる措置を講じていくことが有益であると考えております。

 次に16ページをごらんください。特に注目をしていただきたいのは、日本のコーポレートガバナンス・コードにおいて政策保有株式について規定をしております原則1-4を企業がどれだけ守っているかという点であります。ICGNの会員の多くが指摘しておりますのは、これに関する取締役会の開示は不十分であると。そして、なぜ政策投資をするのかという理由、そこが十分説明されていないと言っています。

 最後のスライド、17ページをごらんください。ICGNといたしましては、ぜひ期限を切る形で政策保有株式の縮減の目標を設定していただきたいと思っております。そして、取締役会は財務上、どのようなビジネス面でのメリットがあるのかということを説明し、政策投資を正当化し、できればコスト・メリット分析の形でそれを開示してほしいと思っております。

 追加的に、私どもが提案したいのは、金額、それから総株式数で、トップ30の政策投資先を開示していただきたいということです。これを有報で開示するだけではなく、英語で企業のウェブサイトに開示していただきたい。そうすることによって透明性を改善できるし、これまでどれぐらい縮減が進んでいるのかをしっかりと見ることができる。また、どの企業が依然として政策投資を積極的に行っているのか、多いのかということがわかると思っております。

 さらに、私どもとして提言したい内容をアネックスとして添付しております。何か、これらにつきましてもご質問がありましたら、質疑応答の時間に議論させていただきたいと思っております。ありがとうございました。

【池尾座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、討論の時間にさせていただきたいと思います。本日、冨山メンバー、ご欠席ですが、意見書を提出していただいております。多分、一番下にあるかと思いますが、内容をここではご紹介しませんが、冨山メンバーの意見書もご参照ください。

 それから、ワリングさんにご質問される場合、日本語、英語、いずれでご質問されても結構です。日本語でご質問されれば、通訳者にて英語に訳しますし、それから、英語で質問されても結構なんですが、その場合は、会場で内容を共有できるように質問を翻訳させていただきます。そういうことですので、便利な都合のいいほうでお願いします。

 それでは、ご意見を、どなたからでも結構ですので。ただし、メンバーの皆さんにご発言いただきたいと思いますので、一人であまり長く時間をとらないようにお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

【小口メンバー】
 ありがとうございます。皆さん、手を挙げないので、最初に。再開して最初のフォローアップ会議ということなので、今後のフォローアップ会議に臨む自分なりの問題意識を3点ほど申し上げたいのです。1つ目は、攻めのガバナンスという視点、2つ目は、守りのガバナンスという視点、最後は、今ケリーさんからも出ました政策保有株式、これは第3回のフォローアップ会議で議論して、そのまま積み残しになっていたということもありますので、その3点についてです。

 コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コード、今日ちょうど配られていますので表紙を見ていただくと、会社、もしくは企業の持続的な成長が副題になっています。両コードの序文も見ていただくと、ともに経済全体の発展、あるいは成長への寄与・つながりに言及して締めくくられている。ですから、私自身は、これらが両コードの目的で、コードの中身はそのための手段だと思っているわけです。

 そのような中で、コーポレートガバナンス・コードの序文7に攻めのガバナンスについて書かれています。その内容は、会社におけるリスクの回避・抑制や不祥事の防止といった側面を過度に強調するのではなく、むしろ健全な企業家精神を発揮し、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることに主眼を置く。ということで、今日ご指摘のありました資料、8ページの事務局のご指摘ですけれども、例えば果断な経営判断がされていないであるとか、あるいは資本コストを上回ることがない現預金が持続的な成長のための設備投資、研究開発、人材投資に向かっていないということは、結局のところ、いろいろ変化はあるけれども、CGコードが目指す攻めのガバナンスが十分に実現に至っていないということを示しているのではないかなと思っております。

 足元の経済環境を見てみますと、4-6月期のGDPが年率2.5%ということで、6四半期連続でプラス成長、デフレ脱却を政府が見極める4条件の1つのGDPギャップについては、日銀に続いて内閣府でも昨年10月から需要が供給を上回ってきている。需要不足が解消されると、これが最初の問題だったわけですけれども、次は供給サイドの問題になってくるわけです。

 そういう中で供給サイドの潜在成長力をどうやって上げていくのか。今1%程度と言われているわけですけれども、労働投入伸び率、資本投入伸び率、それから全要素生産性伸び率に分解して考えてみたときに、日本のような国では、やはり労働投入伸び率がどうしても限定的だとすると、全要素生産性を上げていくしかないと。ちょっと説明が長くなりましたが、結局のところ、日本において攻めのガバナンスが提唱する健全な企業家精神の発揮こそがイノベーションをもたらし、全要素生産性の向上につながって成長性を高めていく源になるということです。

 GDPギャップが解消されてきた中で、健全な企業家の発揮に向けた深堀りが必要ということですので、先ほどご指摘のあった8ページの(1)とか(2)という問題については、まさに今、対応を進めていくという時期に来ているのではないかなと思っています。

 それが攻めの部分ですけれども、一方で、攻めのガバナンスと守りのガバナンスは表裏一体です。ブレーキである守りのガバナンスがきいて初めて、守りのガバナンスが暴走を防いでこそ攻めのガバナンスのアクセルを踏むことができるということですが、残念ながら、最近、新聞紙上をにぎわしているような企業不祥事というのが、この原理原則を改めて日本に突きつけているのではないかなと思っています。

 そういった中で、日本の実質というのは、本当のところどうなんだということを見極めようとする目が世界から注がれているのではないかなと感じています。細かいところは今日の議論ではいたしませんけれども、8ページの先ほどの指摘の中に守りのガバナンスに関する指摘はないのですが、今日配布された冨山メンバーの意見書にも言及があるように、攻めのガバナンスを推し進める上で守りのガバナンスの強化というのも、やはり同時に考えていかなければいけないのではないかなと思っております。

 最後に政策保有株式です。そもそもコードというのは、自律性を促すことが、コンプライ・オア・エクスプレインの本旨だとは思うのですけれども、やはり自律性だけでは超えられない問題があるんだなということを改めて感じています。政策保有株式もその1つだと思っていまして、問題点につきましては第3回フォローアップ会議で議論されましたし、未来投資会議でも縮減の話が出ていますし、先ほどケリーさんからもいろいろご指摘があったわけです。

 このように、問題点については広く認識されているのではないかと思うのですが、なぜ縮減が進まないかというと、保有させる企業に、保有させる強いインセンティブがあるのではないかと思っています。コーポレートガバナンス・コードについていろいろ経営者の方と話をするのですが、ある会長さんがおっしゃったのが、73原則の中で唯一自分たちだけで決められない原則がある。それが、原則1-4の政策保有株式で、相手がいるので、相手との関係で進めないと減っていかないんだということでした。ですから、先ほどケリーさんのお話もありました原則1-4という書き方に対し、コンプライ・オア・エクスプレインするというだけで、これ以上縮減を進めるというのは正直言って限界があるのではないかと思っています。

 それで、繰り返しになりますが、いろいろな考え方がある中で、私は第3回で提言させていただいたように、政策保有、純投資を含む保有上場株式対象に、個別の議決権行使結果開示まで踏み込むべきじゃないかなと思っています。開示については、いろいろ副作用とか問題も指摘されますが、スチュワードシップ・コード改訂で議論する中で、機関投資家が自分の投資先の議決権行使結果の個別開示に踏み込んだことで、透明性が高まり、前向きな効果も出てきたのではないかと思います。コーポレートガバナンス・コードの原則4-5には、上場会社の取締役・監査役及び経営陣による、株主に対する受託者責任の認識が書かれているので、受託者責任を負った株主やその他ステークホルダーに対して、個別の議決権行使結果を開示するというのは理にかなったことではないかと思います。

 議決権行使結果を開示したところで、全部賛成して終わりじゃないかという声もあるのですけれども、一方で、開示をした企業に対しては、機関投資家をはじめとする株主がいるわけです。その方々はその企業に対して議決権行使をするわけなので、機関投資家などの株主の考え方と違う議決権行使結果が開示されることで、合理的に説明できない議決権行使が減ってくるのではないか、あるいは、そうせざるを得ない何か事情があるのであれば、縮減に向かわざるを得ないのではないかと思っております。

 今後の議論になると思いますけれども、ひとつこの議決権行使結果の個別開示を、政策保有株式対応策として提案させていただきたいと思います。以上です。

【池尾座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、佃メンバー、お願いします。

【佃メンバー】
 ありがとうございます。ケリーさん、どうもすばらしいプレゼンテーション、ありがとうございました。ケリーさんにご質問なんですけれども、今のプレゼンテーション資料の18ページのところ、2番目のブレットポイントに、CEO succession to chairmanとありまして、日本語に訳すと、社長経験者が取締役会の議長をやらないほうがいいという趣旨のことが書かれています。日本企業の実態は、社長経験者が議長をやっている場合もありますけれども、社長自身が議長をやっちゃっている場合もまだかなり多いです。実態的に日本企業においてまだ監督と執行の分離が徹底できていないと思いますけれども、その点をICGNさんとしてどのように見ておられるのかというのが、1つ目の質問です。

 2つ目の質問は、一方で、監督と執行の分離を徹底するといっても、企業規模とか、そういった観点から、例えば社外取締役を3分の1ないし3人以上にするとか、あるいは第三者の取締役会評価を3年に1回するとか、いろいろなご提言も先ほどございましたけれども、やはりプロポーショナリティーの観点で、もう少し分けて考えていく。すなわち企業規模に応じて、一定規模以上の企業に関してはこういうことをやらなきゃいけないという考え方を今後入れていくのが、個人的にはいいと思うんですけれども、そういう考え方に対して、ケリーさんとしてどういうふうに考えておられるか。

 この2点、ご質問させていただきたいと思います。以上です。

【ワリングメンバー】
 どれもいい質問ばかりで、ありがとうございました。まず1点目のご質問に関して、CEOと取締役会議長の区別についてであります。これは、コーポレートガバナンスの分野では、ほんとうに基礎的な講義の第1章第1節と言われているコーポレートガバナンス基礎講座のような話でございまして、エイドリアン・キャドベリー卿が今日いたらよかったなと思うんですけれども、彼から直接私もこの話を聞いたことがあります。

 彼は、社長としての役割は何なのか、議長としての仕事は何なのかということを、議長と社長、それぞれにしっかりと聞くべきだということを言っております。彼に言わせると、議長というのは船の船長のようなものであると。非常に大きな嵐に見舞われたときに、その会社の進むべき方向性の舵を切るのが議長の役割であると。

 一方、経営、マネジメントの役割は何かといいますと、これは日々の業務の執行に当たり、日々の業務の方向性を決めていくところにあると。つまり、取締役会というのは会社にとっての大きな方向性を決めるのが役割であり、マネジメント、経営の役割というのは日々の業務の方向性を決めるところにあるので、それが1人の人に集中してしまうと、権限がそこに固定的に集中してしまうことにつながりかねない。自己保身につながりかねないというふうに言っております。

 比例性の原則、プロポーショナリティーに関するお問い合わせについてですけれども、これは人によって見方、考え方は分かれるかもしれません。ただ、私個人としては、100%、完全に独立してしまった取締役会というのもいかがなものかと思っております。といいますのも、そうなりますと、完全にCEOだけに情報が集まり、情報の非対称性が発生してしまって、CEO以外の取締役会メンバーには、CEOが持っているような情報がないという状況につながってしまうからです。

 私は、個人的にバイアスがかかってしまっているかもしれないですけれども、個人的な好みを言えば、イギリスのアプローチが好ましいのではないかと思っています。つまり、執行役員と言われる人たちが3人から4人、独立の非執行役員が6人から7人、それから、非執行役員が2人という構成が、私としては一番バランスがとれているのではないかと思っています。

 企業規模によって独立取締役の人数を変えるという話についてですけれども、イギリスのコードの中には実際に企業規模によって違いが設けられていて、従業員350人未満につきましては例外規定がございますので、日本のコードにそれを取り入れるかどうかはご検討いただくに値するのではないかと思っております。

【佃メンバー】
 どうもありがとうございました。

【池尾座長】
 それでは、川北先生、お願いします。

【川北メンバー】
 先ほど小口さんのほうから、攻めのガバナンスと守りのガバナンスが出たので、実はもうちょっと後で発言しようと思っていたのですけれども、すみません。多分いろいろな方がおっしゃることは申し上げないつもりで、私が思っていることで、あまりほかの人が言わないのではないかということだけを申し上げます。

 1つは、守りに関して。某T社の場合、見てみますと、インサイダーに引っかかるところはちょっと省いて言いますと、リスクの評価と管理がやっぱり非常に弱かったと思っています、ほかにもいろいろ問題はあるんでしょうけれども。ここから導き出せる結論としては、取締役会だけでは、専門的な知識というか、観点がどうしても不足する事態がやっぱり多い。外部のコンサルを入れればいいんじゃないかということなんですけれども、これもおざなりになりがち。

 そうすると、特にこれは大会社の場合にだと思いますが、M&Aとか、そういう非常に大きな決断をやるときには、リスク評価と管理のための内部組織をきちんと整えておいて、そこの意見を聞く。そこに外部の専門家を入れてもいいと思うんですけれども、それを取締役会に上げていくという、そういうきちんとしたブレーキを整える必要性があるのではないか、これを1点考えています。

 それと、もう一点、エンジン、つまり攻めのガバナンスという観点からしますと、もちろん経営者自身に最初に説明があったように、資本コストの認識に乏しいとか、そういう心配は片方であるんですけれども、もう一点、これは経営者の立場に立って申し上げますと、そういう能力はともかくとして、やる気とか、インセンティブとか、そういう問題も大きいのではないのかなと思っています。

 これを端的に申し上げますと、このメンバーの方の中には、社会のために、正義のためにという方が多いと思うんですけれども、世の中には報酬がやっぱり問題だと。報酬に見合った仕事をしていれば十分ではないかという人も多いのは確かなので、この報酬に関して日本は低過ぎると私は思っています。結局そういう報酬上のインセンティブがないから、大過なく過ごそうとか、細く長く過ごしていこうとか、そういうことになりがちなので、この場で報酬をもっと上げろということは言えないとは思いますけれども、報酬の多さを誇れるというか、そういう社会風土をつくり上げていくべきだと思っています。

 もちろん、多過ぎるのは問題なんですけれども、そういう風土がなくて、逆に1億円以上もらっているからけしからんとか、そういうことでは問題かなと思っています。

 次に経営効率の指標に関して。ROEではかるのは、経産省の方がおられるので申しわけないんですけれども、やっぱり問題が多いと思っています。これは事務局のほうから説明があったように、日本の企業の弱さというのは、ROAとかROSがやはり低過ぎると。これは経営の問題でしょうが、やっぱりそこを何とかしないといけない。そのROAとか、ROSの低さが、資料の13ページにあったようなPBRにおいて日本とアメリカの差につながっていると思っています。

 それに関して、企業は現金をたくさん持っていて、それが問題だとされます。それはそうだと思いますが、この点を非常に優良な京都企業に聞いても、リーマンショックのときを例に挙げて言われましたけれども、銀行に頼れないからなと。銀行に対する不信感が非常に大きいと思います。それが、現金保有のインセンティブに、日本企業の場合はつながっている。

 銀行出身の方もおられるので申しわけないんですけれども、よく言われるように、銀行が雨の日の傘になってくれない。その文化を変えていく必要がある。ほんとうの意味での審査能力を銀行に持ってもらって、この企業は潰れないから雨の日に傘になろうと。銀行というのは1つの大きなステークホルダーだと思いますので、銀行の意識も重要ではないのかなと思っています。

 持ち合い株というか、政策保有に関しましては、いずれこの場で議論されるのでしょうから、また後で申し上げます。

【池尾座長】
 ありがとうございました。

 それでは、岩間メンバー、お願いします。

【岩間メンバー】
 ケリーさんにちょっとご質問したいということでございます。いいお話、いろいろどうもありがとうございました。私の質問というのは非常に単純な質問でございます。資料10ページのコミュニケーションの問題でございます。冒頭に金融庁のほうから、コーポレートガバナンス改革の進捗状況ということでご報告があったわけでございますが、日本のガバナンスの改革状況というのは今発展途上にあるということは、多分共通のご認識だろうと思うんです。

 でき上がったガバナンスストラクチャーに基づいていろいろなことが進んでいる。特にUK、US、そういったところと今の日本の状況というのは、必ずしも直接に比較はできないと。我々としては、前進的にいい方向に持っていこうと。サステーナブルな企業の成長ということを実現するように、対立軸というよりも、総力を挙げてやっていこうということなんだと認識しているんですね。

 そのときに、インディペンデントダイレクターがいるか、いないかということから、まず始まってしまうわけで、要するに企業側と株主、投資家側の対話というのをどういうぐあいに有効に機能させるかという工夫が必要なんだろうと思うんです。究極的にはこういう方向に行くんだろうと思うんですが、漸進的なステップを踏むとすれば、どういうアドバイスがいただけるかということが、私の質問です。

【ワリングメンバー】
 冒頭にも言いましたけれども、これまでの日本における前進には目を見張るものがあるというふうに、私どもは評価しているということを改めて申し上げておきます。エイドリアン・キャドベリーも言っているんですけれども、メカニズムが非常に重要だと思っていて、イギリスにおいてなぜここまでコーポレートガバナンスがうまく機能しているかという、その秘訣は何かと言われれば、それはコンプライ・オア・エクスプレイン、これがうまく機能したことに尽きると思っておりますので、日本におきましても、企業、それから投資家双方に対してコンプライ・オア・エクスプレインというのは具体的に何を意味するのかということを、しっかり教育、啓蒙していくことが重要だと思っております。

 スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードというのは、言ってみれば陰と陽の関係にあります。コーポレートガバナンス・コードというのは、例えば先ほどから話に出ているCEO、社長が取締役会議長を同時に兼任するということに関しても、兼任することそのものがいけないということではなくて、しっかりと正当化できる理由を説明してくれるんだったら、それでOKだという考え方なんです。

 ですので、一方で、スチュワードシップ・コードが何を求めているかといいますと、企業側からの説明をしっかりと投資家が聞き、企業側が出してくる資料をしっかり読み、それらをしっかり考えた上で、会社側の説明に対する一定の判断を投資家として下し、それを議決権行使につなげる。それをスチュワードシップ・コードは求めているわけであります。

 でありますので、印象を申し上げますと、どうも日本の企業の説明というのは定型的な紋切り型の説明になっているような傾向があるのではないかという印象を受けております。ですので、やはり企業も、投資家も、最終的には年金受給者にとって、あるいは貯蓄している人たち、預金者にとって、長期的に見て企業価値が高まっていくように、それを担保することが企業にとっても、投資家にとっても目的なわけでありますから、金融庁なり、私どもICGNもお役に立てるのであればお手伝いをさせていただきますので、スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードが両輪の関係にあるということを、しっかりと企業にも投資家にも理解していただく、その努力をしていく必要があるのではないかと思っております。

【池尾座長】
 ありがとうございました。

 それでは、川村メンバー、お願いします。

【川村メンバー】
 ケリーさんの説明、大変ありがとうございました。ほとんどのところ、私は同意なんですけれども、やはり何回も出ている社長、CEOが取締役会議長になれないというところは、ちょっと日本の中では、申し上げておかなければいけないことがあると思って、発言したいと思います。海外では確かに社長はプロフェッショナルで、いろいろな会社からぽっと来て、社長になって、またぽっと出ていくと。したがって、社長だった人が会長に上がっていくということは、海外では、特にアメリカではあまりないと思いますけれども、それはそのとおりだと思うんです。

 日本は、どっちかというと、やっぱり社長になるまでにずっとその会社でやってきた人が多いです。したがって、その社長を卒業した後も、日本の中でその会社のブランド代表みたいな形で、ある種の活動をすることは非常に多いと思うんです。したがって、私も実例でどうしようかと悩んでいる事例もあるんですけれども、やっぱり他の会社の社外取締役として活躍するという大事な役割が社長の卒業者にはもちろんありますけれども、しかし、自分の会社のブランド継承的な役割もやっぱりいろいろあります。

 日々の経営そのものにはタッチしないんですけど、ボードの中に残っていて、その会社の中にある種の足場がちょっと残っていて対外活動をするという、そういう会長になるという役割が日本の会社では多いです。もし、社長を卒業して会長になれないとすると、その人は何か落ち度があった人だというふうに、日本の社会では見られてしまうんです。非常に業績があった人でも、もし会長にならないで、すっと外に出ると、何がしか落ち度があった人だと見られる。これは非常に残念なことです。

 そうではなくて、日々の執行には関与しないけれども、しかし、会長としては残るという例が日本では普通です。したがって、質問は、そんなような背景もあるんですけれども、海外の機関投資家に対していろいろな説明をしようとするときには、そういうような日本の事情というのはどんな形で説明したら理解してもらえるのかと。そんなような質問ですけれども、そういうことがあり得るのかどうか、これは質問です。

【ワリングメンバー】
 どうもありがとうございます。私自身は、取締役会におけるそういったリーダーシップに関する文化の違いがあるということについては尊重したいと思っております。さきほども申し上げましたけれども、社長の在任期間というのが日本では短いので、それで退任したCEOが取締役会の会長になるということについては根拠があると、理にかなっているということも理解することができます。

 今ちょうどご説明されたような形で、海外の投資家、コミュニティーに対して説明をするということであるならば、日本の企業においては社長が会長になるということについて、理解がより深まるのではないかと思います。でも、その際にしっかり言わなければならないのは、あくまでも取締役会議長としての役割というのは、取締役会における議論のファシリテーターの役であると。それを円滑に進めるための役割を担っているだけであって、意思決定に影響力を行使するとか、そういうことは一切ないんだということを明確に言う必要があると思います。

 そして、そういった海外における認識が正しいか否かということは別にして、この日本の企業においては、社長がその後も顧問という形で残って支配力を行使し続けるというふうに見られているということがあるわけです。顧問とかについて、私は今まで発言はしてきていないんですけれども、1人か2人の個人において、日本企業においては支配力、権限が集中しているというような懸念が海外にはあるということです。

 おそらくは、その解になるのがより多くの独立取締役の存在だと思います。そのうちの一人の独立取締役が投資家との対話をリードする窓口になるということであります。そういう形で投資家と対話をしてもらう。英国では、それが通常はチェアマンなんですけれども、米国の場合はそうではありませんので、各国それぞれによってやり方は違うと思いますが、おそらくは筆頭独立取締役というのが投資家との窓口になっていろいろ説明することができると思います。

 そうすると、取締役会における意思決定過程について持たれている懸念というのが、海外投資家の中でも減っていく助けになるのではないかと思います。

【池尾座長】
 どうも。

 それでは、三瓶メンバー、お願いします。

【三瓶メンバー】
 ありがとうございます。まず、ワリングさん、プレゼンテーション、ありがとうございました。幾つか共感するところと、せっかくなので、そこに追加で関連するコメントをさせていただきたいと思います。

 まず最初に、8ページに、社外取締役についてTSEの独立性判断基準に幾つかのポイント、3つぐらい加えたらいいという提案がありました。私もこれには賛成ですが、さらにメジャーレンダーというのも1つ加えたらいいのかなと。大口の資金の貸し手からの社外取締役も一般株主とのコンフリクトがある可能性が非常に高く、こういったところも条件に入っていいのではないかなと思いました。

 今日は簡単にコメントします。次に、11ページのインダクション、これもとても大事だと思います。私たちが実際に独立社外取締役と面談をしているときに感じるのは、1つの傾向として、コーポレートガバナンス・コードが導入される前から社外取締役になっている方で、その意義を認識されていない様子であるという方がいらっしゃいます。それは、おそらくこういったトレーニングがないから。

 また、コーポレートガバナンス・コードを理由に、先ほどのグラフにもデータがありましたけれども、導入されたというか、新たに社外取締役に就いた方は、会社からも社外取締役増員の理由が多分伝えられているので認識されている方が多いです。

 一方で、ガバナンス・コード以前から社外取締役になっている方でも、よく自分の役割をご存じの方もいらっしゃる。そういう場合は、やっぱり社内での研修体制がしっかりしているというのが実際に面談した結果わかります。ですから、このインダクションというのがいかに大事かということは、私も実感を持っています。

 12ページのボード・エバリュエーションですが、今、日本ではボード・エバリュエーションは一通りされています。大抵の場合、ボードメンバーにアンケートをするような形になっています。ただ、アンケートの結果、非常に簡単に3行ぐらいで、ちゃんとできているということがわかったぐらいしか書いていないことが多いんですが、中にはすばらしい開示をしている会社があります。

 ベスト・プラクティスなので名前を言ってもいいと思うんですが、SMCという会社です。ここはアンケートをそのまま開示しています。ですから、誰が言ったかわからないけれども、ボードメンバーの方の懸念とか、課題意識、回答状況が非常によくわかります。これをもとに、私たちはエンゲージメントすることができます。なので、どういう形で上場企業に仕向けたらいいかは議論の余地がありますけれども、こういったベストプラクティスというのをもっと広げていく必要があるのではないかと思います。

 そして、最後、17ページのクロスシェアホールディングスに関するコメントです。確かに英語の環境を考えると、有報の情報、金額として上位の30銘柄について開示をするというのを英語でやってほしいというのは、ある種のミニマムなリクワイアメントだと思います。ただ、実はこれだけでは非常に足りなくて、各年でどういう異動があったかということをもっと明確に開示してほしいと思っています。

 というのは、私たちもこの明細を見ながらエンゲージメントしていますが、あるときに前年のリスト、トップ30に入っていたある企業が当年度のリストからドロップしていました。なので、これは政策保有を解消したのかとIR担当者に確認したら、解消しましたという答えが返ってきました。ところが、さらに次の年に明細を見たら、再度掲載されていました。これはどういうことかということでIR担当者に問いただしたら、前年の回答(政策保有を解消、売却したことによるリストからの消滅)が間違っていたと説明を撤回されました。たまたま時価が下がったのでトップ30に入らなかったけれども、実は売ってもいない、株数は変わっていない、こういういいかげんな説明が通ってしまうのです。それが、1年後じゃないと間違っていたことがわからないというのは非常に困ります。なので、異動があったかどうかがわかるような開示を、ぜひしていただきたいと思います。

 ここにもう一つ関連するんですけれども、今のはコーポレートガバナンス・コードの原則で言うと1-4に関連すると思うんですが、1-7に関連する開示ももっとできるかなと思っています。というのは、持ち合い株というのは、先ほど小口さんも言っていましたけれども、持つ側の問題と、持たれる側としての問題と、2つあります。保有されている側としての問題、これをもう少し明確にするために、日本の開示資料の中には関連当事者間の取引という項目があります。ここで政策保有株式については取引上重要であるとかいうことが書いてありますから、取引上どのぐらい重要で、何がどう関係しているのかということを、この開示の項目に載せてもらうべきではないかと思います。

 最後に、キャピタルエフィシエンシーのことに関してなんですが、この政策保有と関連するんですけれども、単にROEが低いとか、ROAが低いとかいうことではなくて、その原因がどこにあるかということをずっと見ていくと、バランスシートにいろいろ問題が含まれています。例えばバランスシート上のフィックストアセット、有形固定資産というのは、日本の会社の有形固定資産はだんだん小さくなっていっています。その分、ワーキングキャピタルのほうに入ってくるキャッシュであるとか、レシーバブルというのが大きくなっています。

 このレシーバブルが大きくなっているのはなぜかというと、回収の時間がものすごくかかっているからです。これは、海外の企業と比べたときに圧倒的に長いです。何でこんなに長いかというと、これは政策保有、持ち合いにも関連していると思います。ですから、政策保有と絡んで、なおかつ非常に長いレシーバブルをもっと短くしていかないと、バランスシートの改善というのはなかなかできません。

 そういう意味でも、政策保有、持ち合い株の問題、問題を解決する上での対話の準備のためにも正しい情報が開示されていないと困るという点があります。

 ざっとですが、以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。今のはコメントということで。

 それでは、高山メンバー、お願いします。

【高山メンバー】
 私から、2つの点についてコメントさせていただきたいと思います。まず最初に、このガバナンス・コードが制定されて以降の企業のガバナンス改革への取り組みの状況について、私が受けた印象をお伝えいたします。本日のいろいろな資料を見ますと、日本の企業のガバナンスの改革の状況はまだ不十分だということになると思います。確かにあるべき姿と比べると、ギャップがあって、達成できていないところも数多くありますので、その点は事実だと思います。

 ただ、一方、変化ということで見ると、日本の企業の取締役会というのは非常に大きく変化した、あるいは変化しつつあると思います。私、仕事柄、多くの企業の取締役会の議論に直接、間接に関与することがありますが、ガバナンス・コードができる前後から、取締役会のあり方はどうあるべきか、監督と執行の分離をどうするか、そもそも、監督機能というのをどういうふうに定義するかについて、多くの企業で真摯な議論が行われています。

 議論が行われたからすぐ結果が出るというものではないですし、それがすぐ業績につながるというものではありません。ただ、このような変化が多くの企業で行われていて、今改革に向けて努力しているという事実はここで述べたいと思いますし、それに対してきちんと評価したほうがよいと思います。

 さはさりながら、まだ改革の度合いが不十分だという事実はもちろんあると思います。では、それを加速させるにはどうしたらいいかということですが、もちろん企業自身の努力も重要だと思いますけれども、投資家からの働きかけというのも非常に重要になると思います。複数の企業から聞いておりますが、投資家と企業の対話において、非常に充実した中身のある対話というのももちろんありますけれども、逆にあまり充実していない、中身のない対話というのもあって、対話の質が投資家によって大きく異なるという現実があります。

 ただ、これも今年のスチュワードシップ・コードの改訂によって、投資家がより責任を持って企業とのエンゲージメントに取り組むというフレームワークができましたので、今後、変化、進歩していくことを望むものであります。

 それから、次の私のコメントですが、これは、先ほど来ケリーさんのお話、皆様の議論で出ている執行と監督の分離、取締役議長とCEOの分離、あるいは取締役議長が社外取締役であることの必要性についてのコメントです。議長が社外取締役であるということは、確かにケリーさんの言うようにガバナンスの一丁目一番地であり重要であるということは理解いたします。

 ただ、一方で、一丁目一番地ではあるものの、これはガバナンスの中でも最も難易度の高いところであるというのも事実だと思います。イギリスではコードで定められていますので、議長が社外取締役であるというのが一般的ですけれども、アメリカの場合はそのような要請がありませんので、現在、たしかS&P500で議長が社外取締役というのは3割程度になっていると思います。

 ただ、10年ほど前であればそれが1割程度であったと思いますので、トレンドとしては社外取締役が議長を務めるという傾向は増えていくとは思います。しかし、アメリカでも、おそらくほかの国でも、そこのところは非常に難易度が高いところであり、皆さんが悩みながら取り組んでいるところだと思います。一方で、例えばアメリカの場合では、議長が社外取締役でなくてCEOであっても、ボード全体に占める社外取締役の割合が一定数以上あるため、取締役会においてかなり独立性が保たれており、かつ、ケリーさんが言うように、リードインディペンデント・ディレクターというような方が存在しています。つまり、議長がCEOであっても、そこによるネガティブな要因をオフセットするようなボードの構成になっているという事実があります。

 それをこの今の日本の状況で考えたときに、理想的には議長が社外というのがよろしいとは思うんですけれども、そこまでのステージ、ステップということを考えたときに、まずは社外取締役の割合がボードで一定数以上を占めるというところからスタートするというのがよいのではないかと思います。

 その観点で、ケリーさんの資料の5ページにございましたけれども、独立した社外取締役の割合が3分の1以上、あるいは3人以上いるということは非常に重要だと思います。この数字、割合は、何もないところから出てきたわけではありません。欧米やアジアでこの20年から30年にわたってガバナンスの議論をした結果、取締役会が監督機能の実効性を持つ、社外取締役が十分に活躍するベースをつくるという意味で、この3という数字が極めて重要だという経験則から出てきた数字と理解しております。

 もちろん、形式より実質が重要だということはありますけれども、実質を担保するための最低限の形式というのは必要だと思います。その観点で3分の1、あるいは3人というのは、これから日本のガバナンス、取締役会の実効性を考えるときに忘れてはならない数字だと思っています。

【池尾座長】
 ありがとうございました。討論に残されている時間が20分を切っておりますので、ちょっとそこはご理解の上で。

 じゃ、神田先生お願いします。

【神田メンバー】
 ありがとうございます。コーポレートガバナンス改革の進捗状況ということでお話を伺って、いい線を行っているのではないかと思うのですけれども、今後を考える上で、ちょっと留意点というか、2点、できるだけ手短に申し上げたいと思います。

 1点目は、議論する対象となる上場会社をもう少し意識して議論したほうがいいような気がするということです。上場会社は現在三千六百数十社かと思いますけれども、おそらく時価総額100億円ないところも結構多いし、それから規模は大きくても、親会社というか、支配株主がいる上場会社というのが20%まで行かないまでも、十数%あると思います。そうだとすると、例えば規模が大きくても、後者のような会社について政策株を持たれていることの意味はほとんどないので、――支配株主がいるわけですから――、そういうところのコーポレートガバナンスの改善というのは、そうでない、同じ大規模の会社とは異なると思います。

 2点目です。同じような話なのですが、一つ一つの企業についての最適状態と、全体、あるいは一般、あるいは平均した場合の最適のロジックとのギャップということは意識する必要があるように思います。具体的に申し上げますと、内部留保というのも、一般的な議論としては、成長機会に振り向けるか、投資機会がなければ株主にお返しするということになるとは思うのですけれども、先ほど京都の会社の例がありましたけれども、個々の企業にとっては、別の最適解がある場合があるので、それを全体の一般のロジックで、こうだ、こうすべきであるというのはちょっと違う。それは、コンプライ・オア・エクスプレインのアプローチの中でうまく生かせるかどうかという話が重要になるように思います。

 政策保有についても同じで、おそらく全体・一般のロジックとしてはゼロというのが最適解だと思うのですけれども、ただ、個々の企業にとっては果たしてゼロが最適解かどうかということがあると思いますし、アセットオーナーについても、先ほどのお話では、企業年金でいえば、受け入れをしない企業年金がゼロになるのは最適解だと思うのですけれども、一般的な話としては。

 ただ、個々の企業年金なら企業年金、小さなところもたくさんあるでしょうし、エキスパタイズが少ないところもあるでしょうから、そういうところにとってスチュワードシップ活動をするのが最適解かと言われると、やはりそれはクエスチョンマークがつく場合もあるし、スチュワードシップ活動をしないほうが最適だというところもあり得ると思います。

 ですので、全体・一般というか、個々を足し合わせての平均の議論と、個々の企業なり投資家の最適解との間に生じるギャップというものを少し意識した議論が進められるといいと思います。以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。

 それでは、上田メンバー、お願いします。

【上田メンバー】
 ありがとうございます。事務局の資料で前半のほうにございましたけれども、今回攻めのガバナンスということが議論される、特に実質ということだと思うのですが、基本的にコードは手段で、目的は価値の向上――企業価値や株主価値であると思っております。

 特に事務局説明資料の前半にあった企業内の投資と内部留保等の議論は、これにつながると思っています。日本企業の問題とは何かというと、資本の効率性や収益力に対する意識の低さにあろうと感じます。資料を読み解くと、コストカットで利益を生んでいるという傾向かなと見えたりするわけですが、結局ROEが低いのもマージンが低いからではないかと思われます。逆に読み解くと、それが数字に表れているのが、R&Dの低さ、人生をかけた投資をしている労働者への配分の低さなのではないでしょうか。

 一方で、投資家側を見ると、投資家は配当ではなく、再投資を求めているという調査結果が紹介されていました。果たしてそれは、企業に伝わっているのでしょうか。高い配当をもらえれば、投資家は喜んで受け取るでしょうというような理解もあるのではないか。このような誤解は対話において解決できるのだと思います。企業と投資家との考え方がお互いに伝わっていない面もあるのではないか。先ほど神田先生がおっしゃった企業の個別の状況と、投資家がそれをどう評価して、どう改善を促したいかと、そういったところの対話の重要性を改めて感じたところです。

 続いて、政策保有についてです。私も昔から問題意識を持って調査をしているのですが、私の政策保有に対する問題というのは、攻めのガバナンスを阻害する、あるいは対話を阻害する要因になっているのではないかという観点でございます。教科書的に言うと、市場に流通する株式を固定化する政策保有は、上場会社では認められません。ただ、これは日本企業の文化や商慣習が背景にあり、しかも相手があることなので、最終目標はなくすことにあるとしても、現実的にはステップ・バイ・ステップなのかなと思っています。

 ということで、まずここも意識改革が必要です。そして、もう一つ、透明性の向上です。このたかだか1つの小さな表を作るために3カ月ぐらいかかりました。とにかく情報がとれないのです。この数字についても実態と違うという批判も受けたりしたのですが、要は、議論をしようにも実態がわかりません。また、政策保有と純投資の定義も曖昧で、実態を捕捉できません。そのため、これは金融庁さんへの注文になってしまうのかもしれませんが、こういったところの開示のあり方も含めて議論してもらえると、すごく透明性が高まる。透明性が高まると議論も生まれます。その上で必要であれば、企業は政策保有の目的や考え方を主張すればいいし、投資家はそこを対話すればいいのかなと思っています。

 この政策保有については、どうしても企業側への注文になりがちです。しかし、一方で、ではなぜ企業が政策保有に走ってしまうのかというと、スチュワードシップ・コードが入って変わりつつありますが、日本の機関投資家に対する信頼性が少ないことがあるように感じます。企業から投資家に対して、対話の相手方として中長期に支えてくれるのかといった信頼性が十分ではないようで、こういった意味では、投資家の責任も背景にあるのかなと思っています。

 政策保有をなくせと言うのは簡単で、なくしてほしいと思っているわけなんですが、企業を丸裸にして市場に放り出すというような状況になることを恐怖されている企業も多いようです。そのため、投資家がしっかり支えるといったことも含めて、これもやはり対話で解決をしていく必要があるのかなと思っています。

 以上です。ありがとうございました。

【池尾座長】
 はい、じゃ、武井さん。

【武井メンバー】
 ありがとうございます。まず、1つ目で、ちょうどガバナンス・コードができて今年で企業さんは3年目ないし4年目の対応をされていますが、大まかなところ、最初の1年目はコードが急速にできたこともあり、数カ月で対応した年で、2年目が取締役会評価をまずやってみて、いろいろな見直しをやってと。それが3年目、4年目になると、大体ガバナンス・コードの対応って終わったよねというふうに思ってしまう可能性があるかもしれません。

 しかしこの段階で改めて、いろいろな形式を整えたのはいいけれども、3年目、4年目に当たって、実質面を拡充するために、もう一段巻きを入れるというか、ガバナンス・コードに対する実質的対応を行うべきであるというメッセージをきちんと出すことが重要ではないかと思います。

 あと、その観点で、いろいろな設備投資とか人的投資にお金が回っていないというのは、由々しき話です。もともとこのガバナンス・コードができたときには、2014年の日本再興戦略のところで、きちんと果断な経営の意思決定を支え、設備投資とか人的投資にも内部留保を使うということが書かれた上で、そういったことを支える仕組みとしてのガバナンスなんだということが書かれています。そういう一定の政策目標もあって、ガバナンス・コードをつくりますということがあったわけで、その元々の目標のところをきちんと達成するためにも、3年目、4年目のところで改めて実質的なガバナンス・コードの対応を行っていくべきというメッセージを送ることが重要かと思います。

 その絡みで幾つかガバナンス・コードの中の原則で申し上げますと、例えば資本コストへの意識であったり、内部留保といった点などはガバナンス・コードの原則の5-2や4-1②とか、そういった原則をきちんと実質的にコンプライしていれば、本来は起きていない話なのだと思います。形式的にコンプライしているのではないかと。あと、人的投資の話も、2-3①で、取締役会がサステーナビリティー課題としてきちんとリーダーシップを発揮しましょうということが書かれているわけで、そういった点も形式的コンプライなんかになっているから起きているのではないかという気がします。

 個々の原則について、改めて趣旨と、なぜこういった原則が書いてあるのかということを企業側に改めて理解を促し、その旨の拡充した説明を企業側に改めて求めて投資家との対話に資すると。コードの元々の趣旨の理解があって初めてコンプライ・オア・エクスプレインという仕組みは成り立つのだと思うので、そういった点を改めて発信するということが大事かなと思います。

 また、その点で少し絡むのですが、政策保有の話にしても、内部留保がたまっている話にしても、企業がまだ守りに入っているということが根っこの原因としてあるのだと思います。そしてその守りの原因が、いろいろな制度やルールが変わるところの対応で行っているという警戒心もある可能性があります。最初に池尾先生がガバナンスコードの策定の際に太陽政策でということをおっしゃったかと思いますが、企業側が北風政策的に捉えがちなところを、太陽政策的な発想もより強めたほうが効果的ではないかと思います。

 企業がこのガバナンス・コードの趣旨を理解しそのとおりやっていくと、自分からコートを脱ぐというか、自らコードの趣旨に対応した方が自社の持続的成長に適うとわかるという太陽政策的な発想も必要かなと思います。いろいろああすべきこうすべきというものを出せば出すほど、逆に企業側は北風的に捉えて警戒心を抱くおそれもありますので、そういった太陽政策的な発想も改めて視点として示すことも大事かと思います。

 独立役員も大事な話なのだと思いますが、社外取締役でも独立性基準の議論が先行していくがために、こういう人は社外役員になれないという話ばかりが先行しています。しかし、本来はもともとどういう人が社外役員として有益なのかという多様性のほうが積極要件なのだと思うんですけれども、消極要件である独立性の議論ばかり先行すると、これまた北風政策的に企業も捉えがちになる懸念がありますので、太陽政策的な発想で物事が示されていくこと、企業が太陽政策的に捉えるようなメッセージも重要かと思います。

 あと、先ほど神田先生のほうから全体の最適解と個々の最適解とがずれているという話がございましたが、まさにおっしゃるとおりだと思いますので、そこに絡めて申し上げますと、例えばさきほど川村さんとケリーさんとの間での議長とCEOとの分離の議論なんかを聞いていてもそう思ったのですが、ガバナンス・コードに書いてあることがなぜそもそもイシューになっていて、それをなぜロングの投資家が気にするのか、企業側と投資家との間の建設的対話でそういう元々の根っこの部分の趣旨の理解の共有が進むことが重要なのではないかと思います。まさになぜロングの投資家の方がこういったことをイシューとして思うのか、企業側から表現するとリテラシーの向上です。なぜここがイシューなのかという各原則の趣旨に対する理解があとさらに一歩深まると、全体解と個々の最適解とがうまく調和する契機となり、またコンプライ・オア・エクスプレインの仕組みがワークする礎になるかと思います。対話不足がまだまだいろいろあると思いますので、リテラシーの相互向上といったものを示していくと、ガバナンスの実質化としてもうまく回るかと思います。またそれがまさに本来のコンプライ・オア・エクスプレインの趣旨だったわけです。従って、ガバナンス・コードの各原則について、なぜこれを、こういうことを趣旨で書いているのかということを改めてもう一回発信し、それによって企業側に改めてもう一回理解を深めてもらい、それでロングの投資家とのギャップを埋めていくということをやっていくのが、ガバナンスの実質化のためには重要かなと思います。以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。

 時間、押しておりますので、手短にお願いします。内田メンバー、お願いします。

【内田メンバー】
 ありがとうございます。冒頭の田原さんのご説明の中で、現預金の形で内部留保がたまっているというお話がありましたが、今、企業に対してそういうご批判、ご指摘が多いということは承知しております。ただ、全体のデータで見ると必ずしもそういうことではありません。資料1の9ページ目では現預金の増加と内部留保の増加のグラフを示していただいていますが、私の手元にこれと同じ出所のデータで2012年度と2015年度をバランスシートの形で対比したものがあります。

 これを見ますと、実は、利益剰余金すなわち内部留保の増加が2012年度から15年度の3年間で73.4兆円であるのに対して、事業投資等、すなわち、ソフトウエアとか、在庫とか、有形固定資産とか、戦略的提携のための長期保有株式とか、そういうものの増加分を合計すると78.9兆円あるのです。

 このように全体的なデータから見たら、必ずしも、内部留保を、攻めのガバナンスとして成長投資等に使っていないということは言えないと思います。この議論は、全体の話としてではなくて、先ほど神田メンバーがおっしゃったとおり、個々の企業によって違うことを前提に進めるべきと思います。ですから、これは個別の対話の中で、内部留保をほとんど現金で残しているという会社があるとすれば、そういうところと対話するとか、あるいは社外取締役がそういうところをしっかり見ていくとか、そういうことだと思います。

 全体論として、日本企業は現金で貯めているという言い方をされますと、産業界としては、そうではない企業も数多くある、という主張になります。ですから、このデータには多分上場企業以外も入っていると思いますので、まずは上場企業を対象にして、その中でも区分けをするなどして、提言なり指摘なりする必要があると思います。

 それから、政策保有株式について、事業法人保有が減っていないとのご指摘ですが、多分中身は大分変わってきていると私は思っています。過去には、取引先に株を持ってもらって、いわゆる安定株主として常に賛成してくださいという時代はあったと思いますが、今では、そういう事業会社同士の政策保有というのは、従来の「取引」から「取り組み」という形に焦点が変わってきていると思います。

 つまり、より関係が深まってきている、ということです。いわゆるサプライヤーと顧客という関係だけで株式を保有するのではなくて、事業提携、戦略的提携によって新しいものをつくっていこう、新しいサプライチェーンをつくっていこうといったイノベーションを起こすための、オープンイノベーションに近いような取り組みとして株式を保有するという形に変質しつつあると思います。そういう取り組みをしようというときに、過去から持っていた株式を売りましょうということにはなかなかならないというケースが多分あると思います。

 ですから、これもやはり全体論で言うのではなくて、個別企業ごとにその持っている意義はほんとうにどうなのかということを確認しながらやっていく作業だと思っています。全体論としてこうだといった言い方によって、産業界全体が悪いかのような方向に行くのはいかがなものかなと思います。各論として議論すべきだと、私は思います。以上です。

【池尾座長】
 じゃ、大場メンバー、お願いします。

【大場メンバー】
 時間が押しておりますので、簡単に。私からは2点です。第1点は、神田先生と内田さんからも議論が出たことなんですが、私はこの形式から実質へというときに、何がどのようにすれば実質が進んだかということについての理解が、人によって異なっていると感じます。なので、まずそこの共通項をつくるべきだと思います。

 それには、皆さんからご意見が出たように2つあって、1つはマクロデータです。マクロデータがどのようになれば、改革が進んできたと理解するか。もう一つは、ミクロのデータです。これは皆さんからご指摘のあったように、個々の企業によってさまざまです。なので、これを神田先生からもあったように、一般論で議論してしまうと、すごく難しくなってしまう。

 ですから、このマクロのKPIとミクロのKPIをどうつくるかということについての議論の整理は、この会議でぜひとも必要ではないかと思います。

 具体的な事例で1つだけ申し上げますと、内田さんからお話のあった現金の保有が多いという事例です。これは、経産省でも調査をしておりまして、圧倒的に中小企業において多いと思います。なので、そこら辺を議論、整理していただきたい。中小企業が多いということは、川北先生のご指摘もあったように、銀行との取引が非常に強いでしょうから、銀行不信からつながっているかもしません。これが第1点です。

 もう一点は、私は全体論で言うと、金融庁の田原課長から説明のあった進捗状況の中で資料の8ページに課題の全てが論点として整理されていると思います。これが、個々にあるのではなくて、全部つながっているということが非常に問題を複雑にしているということではないかと思います。

 では、なぜこれが許されているのか。逆に言うと、これで誰が困っているのかということを、もう少しはっきりさせてあげることが非常に重要ではないかと思います。これで、誰が困っているんですかと。私は、皆さんからご指摘のなかった点で1つだけあるとすると、こういう問題が国民の資産形成に係る問題であるという認識に全くつながっていないということを明確にすべきだと思います。つまり、この議論の原点は、企業価値の向上と国民の資産形成、これを有効的に回していかなくてはいけない、これが目的だと示されているわけです。

 なので、この資産形成に係る問題であるという認識に全くつながっていないということを明確にしないといけない。といいますのは、メンバーの方以外にここに何人おられるかわかりませんけれども、今や全員が株主という立場です。GPIFがあれだけ株を持っています。ところが、ここに参加している方、ほとんど自分が株主だという意識がないという現実もあると思います。どのようにしてみずからの生活に直結する問題なのかということを、どういう形で示すかということも非常に重要ではないかと思います。以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。

 最後、神作先生、お願いします。

【神作メンバー】
 ありがとうございます。私は資料1の8ページの一番最後、アセットオーナーの論点で指摘されている、企業年金によるスチュワードシップ・コードの受け入れが少ないということと、同じく資料1の23ページの表で、スチュワードシップ・コードの受け入れは企業年金については7基金のみであるという点について、意見を申し上げます。この点は、形式もまだ十分でないという点だと思います。

 企業年金は、スチュワードシップの考え方にある意味で最も適合的なアセット・オーナーであると思います。というのは、中長期的な観点から、しかも最終受益者が限定されており明確であるために、それらの者のために投資家先企業の価値を上げ基金の資産を増やすという意味では、企業年金については、私はスチュワードシップ・コードについて行動すべき規範というのは、スチュワードシップ・コード自体は非法的な規範ではありますけれども、極めて高いレベルで負っているものと考えております。

 他方で、神田先生が指摘されましたように、個々の企業年金にとっていろいろな事情があるということもあろうかと思います。企業年金については、スチュワードシップ・コード活動をするのが適切でない、そうする理由がないという場合以外は、スチュワードシップ活動を行っていただくということのほうが、むしろ原則であるように思います。スチュワードシップ・コードの受け入れをして、適切なスチュワードシップ活動をしかるべき企業年金が行っていくような工夫について、フォローアップ会議の場でご議論をしていただきたいと思います。以上でございます。

【池尾座長】
 どうも、大変ありがとうございました。いつものように意見は尽きなくて、まだ2順目の発言を希望されている方もおられるかとは思いますが、本日は一応予定している時間になりましたので、本日の討議はこれで終わりにさせていただきたいと思います。

 最後に、事務局のほうからご連絡等ございましたら、お願いします。

【田原企業開示課長】
 本日は、活発なご議論をありがとうございました。次回以降、論点整理をさせていただきたいと考えております。

 事務局では、あわせまして、今後のフォローアップ会議で議論、検証されるべきと考える事項につきまして、広く皆様からの意見を募集しております。当庁のホームページの資料がお手元にあるかと思いますけれども、日本語でも、英語でも、ご意見をお寄せいただけましたら、必要に応じて、この場でもご紹介させていただきたいと考えております。

 次回のフォローアップ会議の日程につきましては、またご相談させていただきたいと存じますので、ご連絡をお待ちください。事務局からは以上でございます。本日はありがとうございました。

【池尾座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。それでは、散会といたします。
 

―― 了 ――

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金融庁Tel 03-3506-6000(代表)

総務企画局企業開示課

(内線3836、2892)

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