スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第18回)議事録

1.日時:

平成31年3月5日(火)16時00分~18時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

【池尾座長】
  それでは、定刻よりも少し前ですが、出席予定の方、全員おそろいになりましたので、ただいまよりスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議第18回の会合を開催いたします。皆様、ご多用中のところ、ご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

 前回、1月28日の会合では、昨年のコーポレートガバナンス・コードの改訂に対する企業経営の現場からの声についてご議論いただきました。また、2月18日に、ブラックロックのラリー・フィンク会長とフォローアップ会議メンバーとの間で意見交換会を開催いたし、グローバルな視点に立ったコーポレートガバナンス改革の課題をご紹介いただきました。なお、その際のフィンク氏のプレゼンテーション及び質疑への回答内容の概要を参考資料として配付しておりますので、適宜ご参照いただければと思います。

 それで、スチュワードシップ・コードに関しては、3年ごとに、3年をめどとしてですけれども、3年ごとをめどとして見直すこととされておりますので、今回からは、そろそろスチュワードシップ・コードの次の改訂を視野に入れて議論を進めていただきたいなと考えております。

 それでは、まず、事務局の金融庁から、資料1と、メンバーの皆様から提出されている意見書について、ご説明をお願いしたいと思います。じゃ、よろしくお願いします。

【井上企業開示課長】
 ありがとうございます。それでは、資料1-1をもとに説明を進めさせていただきたいと思います。なお、資料1-2として参考資料というものもお配りしてございます。こちら、資料1-1の各項目に関連する資料をまとめておりますけれども、時間の関係から説明は省略させていただきたいと思いますので、適宜ご参照いただければと思います。

 資料1-1の目次にございますように、スチュワードシップに関する各論といたしまして、運用機関、企業年金等のアセットオーナー、議決権行使助言会社、運用コンサルタントの主体別に整理をしております。また、コーポレートガバナンスの論点といたしまして、開示制度の見直しと役員報酬に関するガバナンスについて取り上げております。

 まずは、総論といたしまして、3ページ目に、2017年5月の前回のスチュワードシップ・コード改訂の概要を改めて記載させていただいております。運用機関におけるガバナンス及び利益相反管理の強化や、あるいは個別の議決権行使結果の公表等を促すとともに、年金基金等のアセットオーナーの役割を明確化したものでございます。

 4ページ目は、これまでのフォローアップ会議のご議論も踏まえまして、運用機関や年金基金等のアセットオーナーが投資家と企業の建設的な対話の充実を図り、さらにスチュワードシップ責任を果たしていくために、今後検討を進めていく必要があると考えられる項目案を事務局としてお示ししているものでございます。
下のほうでございますけれども、運用機関の開示情報の拡充や、企業年金のスチュワードシップ活動の後押し、議決権行使助言会社や運用コンサルタントに関する論点があり得るのではないかと考えております。後ほど各論のところで詳しくご紹介させていただきます。

 5ページでございますけれども、本年1月30日に公表されました、イギリスの改訂スチュワードシップ・コードの原案の概要でございます。3月29日まで意見募集を行い、本年夏に確定予定と伺っております。
主な改訂のポイントでございますけれども、原則について、comply or explainではなくて、apply and explainとして適用することや、ガバナンス体制やスチュワードシップ活動結果等の開示が求められるようになったこと、また、運用コンサルタント、議決権行使助言会社を含むサービスプロバイダーについては、別途、原則等を規定しているということが挙げられるかと思います。

 次に、各論に移っていただきまして、まずは運用機関についてでございます。

 7ページ目は、昨年11月の第16回会合で紹介した資料を再掲させていただいております。対話を行った具体的な企業名や、対話を踏まえた議決権行使の事例を記載している機関から、必ずしも活動内容が具体的に記載されていない機関まで、機関投資家ごとに記載内容にいまだ大きな差異があるという状況かと思います。
 
 次の8ページでございますけれども、ワリングメンバーが事務局長を務めておられます国際的な機関投資家団体のICGNで、スチュワードシップ活動報告の開示は企業との対話の充実に寄与するものとして重要であるという認識のもと、昨年12月に機関投資家の対話活動の開示に関するガイダンスを公表されております。ガイダンスでは、対話活動を戦略的に運用していること、あるいは、明確な対話方針を確立していること、社内での見解を統一し、対話活動が一貫していることなど、この資料に掲載している6項目を、開示に当たっての重点項目として掲げておられます。

 次の9ページでございますけれども、海外の動向といたしまして、イギリスの財務報告評議会(FRC)が、市場の透明性向上やスチュワードシップ・コードへの信頼維持等を目的といたしまして、コード署名者を階層評価する取り組みを行っている事例、いわゆるティアリングというものの紹介でございます。ティアリングにつきましては、肯定的に評価して継続実施を求める意見がございます一方で、昨年12月にFRCの組織見直しについて提言いたしました、いわゆるキングマンレビューでは、項目のチェックにとどまり、実際の有効性とか、あるいは結果に焦点を当てていないというような厳しい指摘もあるなど、賛否両論があると認識してございます。

 次に、各論の3つ目ですけれども、企業年金等のアセットオーナーについてでございます。

 11ページは、こちらも第16回会合の際にお示ししている資料を再掲してございます。足元で企業年金によるスチュワードシップ・コードの受け入れの動きが見られ始めているというところでございますけれども、依然として全体で14機関のみにとどまっておりまして、この動きをより加速化させていくことが課題であると認識しております。

 次の12ページでございますけれども、昨年12月25日に経団連より会員企業に対して発出されました、企業年金のスチュワードシップ活動に関する文書を掲載させていただいております。引き続き経済界とも連携を強化しながら、企業年金のスチュワードシップ活動の後押しを進めてまいりたいと考えているところでございます。

 次に13ページ以降で、議決権行使助言会社でございます。

 14ページの資料で、議決権行使助言会社については、これは前回のスチュワードシップ・コード改訂の際にも、機関投資家の議決権行使に対する影響力が増しているという指摘をいただいていたところでございます。この機関投資家による議決権行使助言会社の利用状況につきましては、14ページの資料の左側にパイチャートを載せてございますけれども、日本投資顧問業協会によるアンケート調査結果では、約4割の機関投資家が議決権行使助言会社を活用しておられると回答しておられます。

 資料の右側では、機関投資家の議決権行使助言会社の活用について公表を行っている機関の事例を挙げております。一部の機関投資家では、サービスの利用の具体的な活用方法や、あるいは、活用する助言機関名を明記しておられるという例もございます。

 次の15ページでございますけれども、議決権行使助言会社の規制に関する海外の動向でございます。まず、米国についてでございますけれども、昨年11月にアメリカの証券取引委員会(SEC)が、助言会社の関与のあり方を含む議決権行使プロセスに関するラウンドテーブルを開催して、議論を行っております。そこでの議論を踏まえまして、SECにおいて、助言会社における分析及び意思決定のプロセスの明確化を含む対応について、現在、検討が行われていると承知しております。

 なお、助言会社に対してSECの登録制度等を内容とします法律案がアメリカの議会に提出されておりましたけれども、本年1月の会期終了に伴い、廃案になっていると伺っております。

 次の16ページでございますけれども、ヨーロッパの状況でございます。2017年に株主権利指令が改正されまして、助言会社に対し、サービスの質及びスタッフの資質の確保のための手続、あるいは、企業を取り巻く個別事情の考慮、企業との対話の状況、利益相反への対応等について、少なくとも毎年開示させるなどの措置が盛り込まれていると承知しております。この改正株主権利指令につきましては、本年6月までにEU加盟国において、国内法を整備することが求められているところでございます。

 各論の5つ目といたしまして、運用コンサルタントについてでございます。

 18ページ目は、企業年金等に対して運用面でアドバイザーを務めている運用コンサルタントについて、左の図は、資産規模ごとの企業年金による運用コンサルタントの利用状況をあらわしているものでございます。資産規模が1,000億円以上の年金基金では、約7割が運用コンサルタントを利用しており、規模が比較的大きな年金において、広範に利用されているということがうかがえます。

 また、右の図の運用機関へのアンケート調査では、直近1年間で運用コンサルタントからスチュワードシップ・コードに係る活動について質問を受けたことがないという回答が6割程度に上っておりまして、運用コンサルタントが運用機関のスチュワードシップ活動を十分把握していないのではないかというようなご指摘もあることかと思います。

 次に、19ページでございますけれども、海外の動向といたしまして、イギリスの競争・市場庁(CMA)が運用コンサルタントの市場に関する調査を行っておりまして、昨年の12月に最終調査結果を公表されていると承知しております。この調査結果では、運用コンサルタント業と投資運用受託業の両方を行う会社が片方の専業業者よりも優位に立つというような問題点が指摘されているほか、運用コンサルタントがみずからの投資商品の購入・勧誘を行うような利益相反についても言及されているというふうに伺っております。こうした調査結果を踏まえまして、本年2月に、コンサルタント業者等に対して、一定の規制等を盛り込んだ命令案が公表されているところでございます。

 以上が、スチュワードシップにつきまして、事務局からご用意させていただいた資料でございます。

 次に、コーポレートガバナンス改革の個別問題ということでございますけれども、まずは、企業側のガバナンスに関する論点として、1つ目、21ページでは、開示制度の見直しの全体像をお示ししている資料でございます。改正の開示府令が本年1月末に施行されておりますけれども、その改正内容について、ガバナンス情報の拡充については2019年の3月期から、経営戦略やMD&A等に関する記述情報の充実や監査関係の情報の拡充部分については、2020年の3月期から適用となっております。

 第17回会合で参考資料として配付させていただきました記述情報の開示に関する原則につきましては、現在、パブリックコメントを終えて、最終化に向けた作業を行っておりまして、ベストプラクティスとあわせて、この春の公表を目指しているところでございます。

 資料の右下の監査報告書の見直し、いわゆるKey Audit Matters、KAMの導入につきましては、2020年3月期に早期適用、2021年3月期に強制適用を控えているところでございます。有価証券報告書の見直しと監査報告書の見直しが相まって、企業情報の開示の拡充が図られるということを期待しております。

 次の22ページは、開示府令改正の概要でございますけれども、こちらはパブリックコメントの案の段階のときに、第16回会合の際にご説明させていただきましたので、本日のご説明は省略させていただきます。

 最後に、役員報酬に関するガバナンスについてでございますけれども、24ページ目をごらんいただければと思います。役員報酬に関するガバナンスの状況をお示しした資料ですけれども、左上の棒グラフをごらんいただければと思いますが、法定または任意の報酬委員会を設置する企業は、東証一部で4割超、JPX日経400で7割超と、進展が見られるところではございますけれども、左下の円グラフのように、委員長の属性ですとか委員の構成を見ますと、必ずしも独立性が担保されているとは言えない場合も見受けられるところでございます。

 また、右上の円グラフのように、委員会の開催回数が必ずしも多くないこと、あるいは、右下の棒グラフのように、報酬に関する開示の内容を委員会の審議事項とする企業はまだなお少数であるというようなことも指摘されているところでございます。

 以上が、事務局からの資料1-1の説明になります。

 続きまして、本日ご欠席のメンバーからいただいているご意見を紹介させていただければと思います。

 まず、小林メンバーからですけれども、上場企業は広く市民全般の退職後の生活を経済的に下支えする社会の公器であり、そのことを明確に自覚できない上場企業や、資本コストを上回る業績を達成し得ない上場企業は、原則として市場を退出すべきではないか。フォローアップ会議は、形式から実質へというスローガンを幅広く積極的に啓発するとともに、東証一部を凌駕するプレミアム市場の議論を深めていくということで、改革を一層推進していくべきではないかというご意見を頂戴しているところでございます。

 次に、冨山メンバーからもご意見をいただいております。冨山メンバーからは、グループガバナンスの最重要課題として、我が国において支配的株主が少数株主一般の利益を守る忠実義務を負うという法準則が明示的は確立されておらず、これを早期に確立すべき。その法準則をどう実現し、少数株主からの各種訴訟リスクをどう回避するかの具体的方法論については、原則として、個別企業の自治に任せるべき。明確な年限を決めて、直ちに法制化を始動し、かつ法制化と整合する方向でコーポレートガバナンス・コードへ盛り込むべきというご意見を頂戴しております。

 最後に、上田メンバーからもご意見をいただいておりまして、上場子会社における少数株主保護の重要性についてご指摘をいただいております。まず、経済産業省において、上場子会社が参考にすることができる指針づくりが望まれるということ、さらに、実効性を高めるため、コーポレートガバナンス・コードや東京証券取引所の独立性基準等における厳格な対応も期待されるというようなご意見を頂戴しているところでございます。

 簡単ではございますが、事務局からは以上でございます。

【池尾座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、議論に先立ちまして、今の冨山メンバーとか上田メンバーの意見書にもありましたが、グループガバナンスに関する足元の議論につきまして、経済産業省よりご説明をお願いしたいと思います。

【坂本経済産業省産業組織課長】
 お時間いただきまして、ありがとうございます。資料2、グループガバナンスについてという資料に沿って、簡単にご紹介させていただきます。

 まず、2、3ページでございますが、昨年の未来投資戦略2018の記載に基づきまして、グループ経営において守りと攻め両面でガバナンスをいかにきかせていくかというテーマで、これまで神田先生を座長とするコーポレート・ガバナンス・システム研究会第2期において、議論を進めていただいているところでございます。

 グループガバナンス全般については、大きな2つの柱でご議論いただいておりまして、1つ目が、グループ子会社を含めたガバナンスの在り方、これは守り、あるいはM&Aをした後の海外子会社のポストマージャーインテグレーションなども含めた子会社ガバナンスの在り方で、もう1つは、よりプロセスを動態的に捉えて、グループの形成の在り方として、事業ポートフォリオの最適化をどう図っていくか、切り出しとコア事業の強化による新陳代謝、こういった幅広い観点からご議論をいただいているところでございます。

 5ページをご覧ください。これまで企業のヒアリング、海外視察なども踏まえて、大きな日本企業のグループ経営の課題、傾向として挙げさせていただいているのがこちらでございまして、攻めのガバナンスについては、事業部門の権限が強いのに対して、横串を通すようなコーポレートの機能が比較的弱いのではないか、事業ポートフォリオの見直しを行う仕組みができている企業はまだ少ないのではないか、守りに関しては、特に子会社のリスク管理について、リソースの制約から不十分になっているのではないか、あるいは、子会社の指名・報酬における親会社の指名委員会、報酬委員会の関与の在り方について、あるいは報酬設計については、海外子会社トップとの逆転現象をどう考えるか、こういったことが課題になっているかと思います。

 こういった課題を図で整理したのが6、7ページでございまして、6ページに関してブルーで示しております事業部門のタテ軸に対して、赤い矢印で示している本社機能、コーポレート機能、横串を刺すところが少し弱いという傾向が見られるのではないか、これが全体の議論でございまして、守りについては、7ページで記載しているとおり、いわゆる3つのディフェンスライン、特に2線、3線の独立性を確保した上で、どういうふうに実質的に牽制機能をきかせていくか、こういったところについて、特に不祥事事案、ケーススタディなどを通じて、課題として整理していければということでございます。

 次に、この中で上場子会社のガバナンスについて、先ほど冨山メンバー、上田メンバーからの意見書の中にもございましたので、特にフォーカスしてご紹介させていただきます。

 ご案内のとおり、上場子会社――ここでは支配株主のいる上場企業ということで使わせていただいていますが――においては、支配株主と上場子会社の一般株主との間の構造的な利益相反のリスクがあります。投資家からは、この利益相反の問題に対しての強い懸念があり、上場子会社側の企業価値のディスカウントにもつながっているというご意見もいただいております。

 具体的にどういった場面でこの利益相反が生じ得るかということで、典型的な3つの場面を整理したのが、10ページのスライドでございます。一番右側から参りますと、少数株主をスクイーズアウトして、上場子会社を完全子会社化する、キャッシュアウト、スクイーズアウトの場面については別途、「公正なM&Aの在り方に関する研究会」で、こういった局面での公正な手続の在り方について特にフォーカスをして、現在、議論を進めていただいているところです。これ以外の利益相反局面として、一番左側の親子間の直接取引、キャッシュの預け入れといったようなケースですとか、真ん中の類型②として、親子の間の事業譲渡、あるいは事業間の調整、生産委託といったようなことにおいても、同じように利益相反リスクあるのではないか、こういった局面では、特に一般株主利益に配慮をした対応が必要ではないかということで、議論を進めていただいております。

 現状につきましては、11ページ、これは東証様からデータをいただいているものですけれども、足元で上場企業のうち支配株主を有する会社が628社、17.3%、このうち支配株主が上場会社である、いわゆる親子上場の上場子会社の数が311社、8.5%というような現状になってございます。

 これを上場子会社に関して各国比較をしたのが次の12ページでございまして、上場子会社の定義が11ページに記載されている東証のものと違うので、数字が少しずれておりますけれども、同じベースで日本も含めて比べたのがこちらの12ページになります。支配株主50%以上の欄、右から2番目を見ていただきますと、日本が突出して多いというような状況でございます。

 次に13ページについて、こちらも親子上場に限定しておりますが、上場子会社のガバナンスについて、幾つか上場企業全般の平均値と比べたものですけれども、比較をしますと、上2つの段、独立社外取締役と独立社外監査役の人数だけ見ておりますので、割合でまだとれていないですけれども、人数だけで見ますと、上場企業全般に比べまして、上場子会社の社外役員の数というのが1割程度少なくなっている。これは平均値でございます。

 14ページ以降、今年度、東証一部、二部の企業のご協力でアンケート調査をさせていただき、822社からご回答いただきました。

 15ページについて、上場子会社に関してですが、上場子会社の社長について、実質的には親会社が決定しているというご回答が21%、親子間で協議しているというのが50%であるのに対して、上場子会社側の指名委員会が審議しているというのが11%というような現状になっております。親会社の側に事業ポートフォリオ戦略上、何か上場子会社の扱いで課題はあるか伺いましたところ、何らか課題があるというお答えが6割弱、全体最適と上場子会社の最適戦略が一致しない、あるいは上場子会社のリソースをグループ全体のために活用しづらい、リスク管理を一元的に行いづらい、こういった課題が意識をされているということですけれども、17ページへいきますと、上場子会社の整理を視野に入れている企業というのは一、二割で、70%の企業は現状維持というような方向性になっているということでございます。

 18ページ、上場子会社を保有している、上場子会社の形態にしている理由でございますが、社員のモチベーション、リクルーティング、取引先の信用、ステータス、ブランドというところが回答数としては多くなっておりまして、資金調達のためというのはそれより少ない22%というのが、現状の上場子会社を活用する理由ということになっています。

 19ページ、20ページは、国内外の機関投資家の方にヒアリングをさせていただいた際に、親子上場という形で伺っていますけれども、そもそもこういう形態についてどうなのかという問題意識に対する回答をまとめたものです。20ページの2人目の国内ファンドのところにありますように、上場子会社は認めるべきじゃないけれども、仮に認めるとしても、独立社外取締役が過半数いるような形にすべきである、こういったご意見が全体として多くなっています。

 最後に21ページでございますが、こういった現状ですとか、投資家の方からのご評価ということも踏まえまして、CGS研究会の中では、議論途上のものではございますけれども、2月のCGS研究会の中では、こういった骨子案を挙げさせていただいております。

 上場子会社は、過渡的な選択肢としては意義があるとした上で、実務的な対応として、上場子会社のガバナンスの在り方については、やはり独立社外取締役の役割が重要だろうということで、独立性の判断基準としては、支配株主出身者のうち10年以内に所属していた方というのは、独立社外取締役としての選任は外したほうがいいのではないか、また、ボードのレベルで独立性を高めるために、独立社外取締役の比率を3分の1や過半数に高めることを目指すということ、そして、最後に、人材確保というところの制約もあるというご意見もありまして、すぐにボードの独立性を高めることが難しいとしても、具体的な利益相反取引があるような局面においては、独立社外取締役、または独立社外監査役を中心に構成される委員会で審議をしていただくというような、委員会の仕組みを活用するというご提案を受けて、こういった方向でまとめてはどうかと。

 また、情報開示の欄でございますが、親会社としても、いろいろ課題も意識されながら、上場子会社として維持をされる場合には、合理的な理由とともに、上場子会社のガバナンスの体制の実効性については、選解任権限の適切な行使についての配慮ということも含めまして、投資家に対してしっかり情報開示をしていただいて、説明責任を果たすということをガイドラインでお示しをしてはどうか、上場子会社側も、自らのガバナンス体制の構築について情報開示をすべきではないかというのが、まず、ガイドラインで目指している実務的対応ということでございまして、②として、法的な対応につきましては、冨山メンバーの意見書にもございましたけれども、CGS研究会の中でも相当数の委員の方から、究極的にはやはり法的な手当てが必要ではないかという意見を受けまして、こちらは将来の検討課題ということで報告書の中に記載する方向で、現在、検討いただいております。

 ありがとうございました。

【池尾座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、これから皆様からご意見をお伺いする討議の時間といたしたいと思いますが、まずは、今回、意見書を提出していただいた上でご出席いただいているワリングメンバーからご意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

【ワリングメンバー】
 座長の池尾先生、このようなすばらしいフォローアップ会議を、また再度主宰してくださいまして、ありがとうございます。そして、同僚のメンバーの皆様方、こんにちは。それから、ICGNが行っておりますさまざまな活動につきまして、詳しく井上課長のほうからご説明いただきましたことを心から御礼申し上げるとともに、藤本さんにもいろいろお世話になっております。ありがとうございます。

 今、坂本課長のほうからご説明があったことを拝聴しておりまして、おっしゃったポイントは、少数株主の視点からも、また、グローバル投資家の視点からしましても、大変重要なポイントばかりであるというふうに思った次第でございます。

 ICGNは、日本においては、少なくともボードメンバーの3分の1を独立取締役にすべきであるとしてきました。ただ、まずはスタートとして3名からということで、このことを東証の上場規程、少なくともコーポレートガバナンス・コードで定めてはどうかということで申し上げてきたわけでございます。

 今回、この会合の趣旨は、日本におけるスチュワードシップ・コードの次回の改訂に向けて、次にとるべきステップは何かということについて議論を深めるのが趣旨であると伺っておりますので、私のほうからは、今日は3点、申し上げたいと思っております。

 まず、1点目に、投資家は、エンゲージメントにおいてどのように優先、プライオリティーづけを行っているのかということ、それから、2つ目に、何をもってエンゲージメントの実効性が高いとするのかということ、3つ目に、私なりに日本における改革をこの先に進めていくためのステップについて思うところを述べさせていただきます。

 ICGNは、会員各社を対象に調査を行っておりまして、毎回、調査をするたびに回答率は非常に高いですけれども、投資家に対する年次調査の結果によりますと、毎年最大500社の企業とエンゲージメントをしていると。中には、もっと多くの企業とのエンゲージメントを行っていると回答した投資家もおりました。そして、エンゲージメントの62%は、国内または域内の企業との対話であると。そして、エンゲージメントは、投資家のワークロード全体の33%を占めていると。それから、トップが真剣に取り組んでいるということも、今回の調査の結果、明らかになっております。CIOまたはCEO直属で取り組んでいるという割合が非常に高いということがわかりました。

 投資規模や地理的な広がりで運用ポートフォリオのスケールを考えますと、投資家は人材を有効活用するため、エンゲージメント活動の優先順位を決めていかなければなりません。そのために投資家が何をやるかといいますと、まずは、エンゲージメントアプローチと、投資戦略・顧客の目的・全社の投資に対する信念との整合性を確保しています。

 その上で、エンゲージメントのプライオリティーづけを行っているわけですが、投資家が重視しているのは、投資規模、バリュー・アット・リスクの水準、それから、アセットエクスポージャーと財務パフォーマンスとの対比でのリスク及び機会の重要性です。プライオリティーづけの中でもう一つ着目しているのは、予想外のイベントへの対応です。例えば、会長やCEOの突然の辞任とか、戦略的方向性に合致しない買収、会計不正等も着目しております。

 エンゲージメントを実効的なものとする要素について、ICGNは、6つほどの要素があると考えております。

 1つ目の要素としては、エンゲージメント活動を実施する根拠と考え方、受益者や顧客のために運用する資産価値の向上と保全にどうエンゲージメントで貢献していくのかということを明確にすること。

 2つ目の要素は、すでに議論したことですが、プライオリティーづけ、優先順位づけです。投資の信念に沿った形で、どのように戦略的にエンゲージメント活動を行うのかということ。

 3つ目の要素はエスカレーションです。つまり、企業との対話がうまくいかなくなったら、どのタイミングでどのようにエンゲージメントをエスカレーションするのかということ。

 4つ目が、インテグレーション、統合です。効率的にエンゲージメントをするためのリソースとプロセスを保有しているか、特に、ポートフォリオマネージャーチームとコーポレートガバナンスチームなどが、運用部門内でいかに統合され、コーディネーションされているのかということ。

 5つ目がコラボレーションです。影響力を高め、エンゲージメントの成果を高めるための他の投資家とのコラボレーションです。ICGNのメンバーは、日本におけるコラボレーションについては、若干、今でもナーバスになっておりまして、数年前にガイダンスを出してはいただいているんですけれども、ぜひもう少し安心してコラボレーションを進めることができるような、どのような対話アジェンダならば大丈夫なのかという追加的なガイダンスを頂戴することができればと思っております。

 6つ目は透明性です。つまり、エンゲージメントのポリシーを開示し、そして、そのエンゲージメントのアプローチの効果を定期的に評価し、レビューをすることです。

 今後のステップとして何をしていかなければならないかということで、私も宿題ということで、日本のコードとICGNのコードを比べてみました。

 そして、気づきの一つ目は、もっと日本のコードの中にESGを統合してインテグレーションしていっていただきたいと思いました。投資家の投資意思決定のプロセスの中でESGのファクターを特定し、分析をし、そして、それをインテグレーションしていくということです。

 そして、2つ目は、システミックリスクという観点を入れていただきたいということです。これは、ESGもその一部に入るのかもしれませんけれども、つまり、景気動向、金融市場の質と安定性も含めて、長期的なシステミックなリスク、あるいは脅威にも意識を高めていただきたいということです。

 最後となりますが、議決権行使に関してもう少し文言をコードの中で充実させていく必要があるのではないかと思っております。例えば、今のコードの原則や指針には貸株に関する言及がありません。また、議決権行使の説明責任を誰が果たすのかという議決権行使決定プロセスの開示もさらに図っていく必要があると思っております。

 以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。

 それでは、引き続き、他のメンバーの方からご意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。じゃ、松山メンバー、お願いします。

【松山メンバー】
 ありがとうございます。いろいろな論点があろうかと思いますけれども、私からは、議決権行使助言会社について申し上げたいと思います。

 発行体企業からの意見としましては、議決権行使助言会社は、機関投資家への影響力が非常に大きい一方で、基準の策定プロセスが透明性に欠けるのではないかとか、あるいは、検討体制が不十分であったり、基準の運用が画一的なのではないか、また、対話の余地が乏しいといった指摘が多く聞かれております。

 一方で、発行体企業側としましては、形式的に助言会社の基準を満たすような対応が助長されるのではないかという懸念もございます。既にスチュワードシップ・コードの原則5のところで、機関投資家による議決権行使、あるいは議決権行使助言会社のサービスのあり方に関する指針がございます。私自身、その実態はどうなのかというところを確認したいという思いもございまして、本フォローアップ会議において実施状況を十分検証して、その結果を今後策定する意見書に反映してはどうかと考えております。

 以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。それでは、いかがでしょうか。大場メンバー、お願いします。

【大場メンバー】
 いろいろな論点があるのですが、まず、今回のご説明を拝聴していて、大きな変更があったと思います。特に英国のスチュワードシップ・コードの改訂で、原則の適用を義務づけるapply and explainに関しては、大変大きな変更ではないかと思うんですね。基本的には、コードはプリンシプルベースで、comply or explainだったと思います。これは何が原因でこういうことになったのかということについてご説明をいただければと思います。

【池尾座長】
 じゃ、ちょっとその背景を、事務局のほうでお願いできますか。

【井上企業開示課長】
 資料の5ページ目にございますとおり、原則・ガイダンスの2段階から、原則・各則・ガイダンスの3段階に構成を変更されていると理解しています。その中で、一番上のレベルである原則については、基本的には全ての運用機関、アセットオーナーがアプライしていただきたいということが、今回、提案されているところです。

 そういう意味では、原則のところについては、選択制というわけではなくて、これは皆さんやってくださいということです。ただ、個々のプロビジョン(各則)、あるいはガイダンスの細則の部分については、そこまではかかっていないという理解です。基本的には、スチュワードシップ・コードの中身をより実質化させていくという意味で、原則については共通の価値観だという理解でおります。

【池尾座長】
 はい。

【大場メンバー】
 ということは、原則については、共通の価値観なので、これは当たり前で、アプライするのが当然であり、実効性があるという判断があったという理解ですか。

【井上企業開示課長】
 イギリスでは、そういうことだと思います。もちろんこのコード自体のサインをするかどうかということについては、任意であるというふうに理解しておりますけれども、コードを受け入れるからには、その原則という部分については、実施してください、アプライをしてくださいというように書いてございます。

【大場メンバー】
 そうすると、大きな枠組みがルール化されているというふうに受けとめる方が相当出てくるんじゃないんでしょうかね。そうすると、プリンシプルベースと相当変わってくるので、これを我が国ではどのように消化して次につなげればいいかということになろうかと思うんですけど、大変大きな変更だと思うので、そこを確認したかったというのが趣旨であります。

【池尾座長】
  消化して議論するようにお願いします。ほかにはいかがですか。どうぞ。

【ワリングメンバー】
 FCAが投資家に要求をしているのは、原則をアプライし、それにかわる、よいオルタナティブな方法があるのであれば、それを明言するということです。従って、オルタナティブな方法がなかったり、なぜ、オルタナティブな方法を活用しているかの説明がない場合は、原則を採用しなければならないこととなります。

【池尾座長】
 川北先生、お願いします。

【川北メンバー】
 各論になりますが、1つは、アセットマネジメント会社とか、議決権行使助言会社とか、そういうサービスプロパイダーに関する議論です。当然、質を上げていくとか、利益相反を排除するとか、事務局のほうでつくられたレジュメは、それはそのとおりだと思います。

 そのときに、多分、例えば、アセットマネジメント会社でいうと、議決権行使をこんな基準でやります、それに対して結果はこうでしたと、議決権行使に重点が置かれた事実の公表になっていると思いますが、それよりは、こんなふうに対話というか、エンゲージメントをやってきて、今後はこういうふうにやっていく。そのとき、対話がうまくいかない場合は、先ほどICGNから説明があったように、このようにするのだという、全体的なプロセスをどこかできちんと説明していくことが、質の向上に資するのではないかと思います。

 それと、ESGに関しては、すごくはやりになっているわけですが、これに関しても、単にどこかの機関のデータというか指数というか、それを単に使っている。使って、例えば、ファッションとしてやっているだけでは、やはり不足しているし、スチュワードシップ・コードがうたっている企業との対話とは全く矛盾した状態になると思います。そこはきちんと企業と対話をし、あるときにはエンゲージメントしていくということが重要になります。そのときに一番重要なのは、企業側がESGに関して、単に世間の流れを模倣しているというか、それを模倣したように見せかけているだけではなくて、独自のものとしてどういう戦略を持っているのか。そこをアセットマネジメント会社として探り出していく。そういうプロセスが重要ではないかと思います。

 それと、経産省さんのほうからありました、親子上場というか、支配株主に関する議論でいうと、日本の場合は、巨大企業が親子上場してしまっている。それをさせてしまった。このことを抜きにして議論するのはどうなのかなというか、非常に重要な論点が抜け落ちるような気がします。

 それに対してどういうふうな対応をしていくのかという意味からすると、例えば、経産省さんのペーパーの一番最後、過渡的にはここで書かれているようなガバナンスの強化が必要だとは思いますが、将来的には、親子上場を制限していくとか、今、東証さんのほうで市場の区分をどうするのか、今回のペーパーにも出てきたようなプレミアム市場を設けるとか設けないとか、そういう議論があるわけですけれども、その基準の中に、あまり定性的な部分を入れてしまうと、また外圧がいろいろかかってくるので、目に見えるような形で、例えば、支配株主が50%以上持っている企業を排除するとか、そういう定量的な要素を入れて、市場の区分をもう一度整理していく。そういう議論が、親子上場に関しては必要なのかなという印象を持ちました。

 以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。では、小口メンバー、お願いします。

【小口メンバー】
 ありがとうございます。先ほど来から意見が出ていますが、かなり論点が多岐にわたるので、そういうときにはバック・トゥ・ザ・ベーシックで、そもそもこのフォローアップ会議で議論してきたことで、皆さん合意されているところから始めたいなということで、資料1-1の3ページに、最初、ご説明あったキーワードとして、形式から実質ということ。この点については、多分、皆さん、異論がなくて、形式から実質をどうやって実現していくのかというところで、今まで議論してきたものと理解しています。

 その上で、じゃ、どうしたらいいのかというのはいろいろあると思うのですけれども、先ほど大場メンバーから、例えば、ルール化といった議論がありましたが、我々が考えているのは、建設的な対話、企業と投資家が対話することによって、形式から実質を図ろうということで今まで議論してきたのではないかなと思っております。

 では、建設的な対話をするために何が要るのかといったら、やはり開示、意味ある開示からということです。形式的なコンプライじゃなくて、むしろ実質的なエクスプレインがあって、それをもとに建設的な対話を図ろう、こういう議論がされてきたのではないかなと思っています。

 この枠組みで、これまでどちらかというと、企業サイド、コーポレートガバナンス・コードの話をしてきたのですが、当然のことながら、インベストメントチェーンにおいて、スチュワードシップ・コードの射程にあるアセットオーナーと運用機関、その他、スチュワードシップ・コードがカバーする部分についても、今言った議論というのは成り立つのではないかなと思っています。その意味で、7ページのスチュワードシップ活動状況の開示の充実、公表については、当然必要なことではないかなと思っております。

 その上で、開示の内容についてもう一段考えたときに、2014年にスチュワードシップ・コードが入って、もう5年たつわけですよね。活動内容の開示がまだできていないというのはもちろんあるのですけれども、5年もたったので、何をしたのかというアクティビティーを示す、いわゆるアウトプットの段階から、アクティビティーによって求めた結果、意図した結果が得られたかどうかを示す、いわゆるアウトカムも蓄積されてきていると思うので、アウトカムについて開示できる段階に進んだ機関というのもあるのではないかなと思っています。

 先ほど、資料での説明は流されたと思うのですが、9ページじゃなくて、どこでしたっけ。英国スチュワードシップ・コードの改訂案の話が出ていたと思うのですけれども、済みません、5ページに戻って、改訂案のポイントのところの下から2つ目に、「活動と結果に関する年間報告の提出及び開示を要求」となっていまして、興味があったので、原文も見ていたのですが、英語は「Annual Activities and Outcomes Report」となっています。まさに活動内容と結果のレポート、日本でそこまで今の段階で要求するかどうかは置いておいて、スチュワードシップ活動のアウトカムが蓄積された機関については、それが世間でどう見えるのかということも含めて開示に踏み込むことで、いい意味での開示競争が起これば、先ほど来申し上げている形式から実質への深化、何を求めてどんな成果が得られたのかという開示を通じた実質の向上につながるのではないかなと思っていますので、その方向で議論も進めばいいなと思っています。

 ただ、その一方で、当事者である運用機関等が一生懸命活動して開示をしましたということであっても、その実質が適切に判断できる、お客様であるアセットオーナーがいなければ、開示自体が実質ではなくて、むしろ形式を助長するリスクもあると考えています。実質如何に関わらず、大量のレポートを出せばいいという、形式から実質とは逆の、実質から形式を助長するおそれがあると懸念しています。

 それで、先ほど来、ワリングメンバーが言及されていた、これですよね、ICGNグローバル・スチュワードシップ・プリンシプルズ。私も勉強させていただき、たしか2年半前の第9回のフォローアップ会議で取り上げさせていただいたのですが、パート3のところに、Ecosystem of stewardshipがありますよね。この背景というのは、先ほどワリングメンバーからご説明もあったのですけれども、リソースの制約はどこにでもあって、その対応としてアウトソーシングとか、例えば、議決権行使助言会社も含めですけれども、外部機関を有効活用する考え方が必要だということです。

 この考えを日本に当てはめてみると、もちろん先ほどの議決権助言会社の話もありますが、運用のサイドでいったら、年金基金のリソース不足を補っているのは、いわゆる年金運用コンサルタントさんなのかなと。先ほどもご説明がありましたが、18ページですかね、特に大きな企業年金では、かなり使われているという実態が18ページで明らかになっていますので、こういう実態の中で考えたときに、アセットオーナーにもっと積極的に取り組んでほしいという話であれば、年金運用コンサルタントに止まらず、ほかの業態のサービスも含め、アセットオーナーのリソース不足を補って、形式的ではなく、実質的にスチュワードシップ責任を果たせるように貢献すべきだというのを、たしか2年半前にも言った記憶があります。その意味で、今回、議決権行使助言会社とか年金運用コンサルタントを取り上げていただいたのは、スチュワードシップのエコシステムにまで議論を広げていただけるということで、すごく重要なことではないかなと思いますので、さらに議論をしていただけたらと思っています。

 以上です。

【池尾座長】
  じゃ、どうも田中メンバー、お願いします。

【田中メンバー】
 ありがとうございます。二、三点あるんですけど、先ほど大場さんのおっしゃった点は非常に大きな、重要なポイントだと思うんですよね。ちょっとワリングさんにご質問させていただきたいんですけど……。ワリングさん、1つ質問をしてもいいですか?英国のスチュワードシップ・コードの改訂案で、各原則については“Comply or Explain”から“Apply and Explain”に変わったとのことですが、これによって実質的にどう変わるのでしょうか?

【ワリングメンバー】
 このコードをもう少し簡潔なものにして、コーポレートガバナンス・コードのミラーにしようという作業がこれまで行われてまいりました。イギリスのコードというのは2010年に導入されて以降、改正されないまま、ずっと古いものが残ってきたわけですけれども、その理由は、SRD(EU株主権利指令)との平仄を合わせようということで、これまであえてイギリスのコードは変えないできたということです。 SRDは6月に施行となりますので、EUを離脱する・しないにかかわらず、イギリスも、国内法に落とし込んで採用していかなければならないということで、アセットオーナーは負債のデュレーションや性質に応じた投資戦略を開示しなければなりません。

 また、アセットマネジャーに対するインセンティブですとかエンゲージメントのアプローチにつきましても開示しなければなりません。多分、FCAとしては欧州のSRDと平仄を合わせなければならなかったということで、コンプライではなく、Apply and Explainという文言を入れたのではないかと思いますが、投資家は、別の戦略を選択し、アプライしない選択肢も残されております。

 ただ、今回は重要な変更点が2つあります。これまでは株式だけだったのですけれども、株式だけではなく全てのアセットクラスに対して、このスチュワードシップ責任が適用されることになったというのが大きな変更点の1つ目。そして2つ目の大きな変更点は、先ほどお話しいただきました、アニュアルアクティビティー・アンド・アウトプットレポート、これを開示しなければならなくなるということです。このアニュアルアクティビティー・アウトプットレポートは、既に出しているところもありますが、来年からは義務となります。

【田中メンバー】
 日本語で続けさせてください。Apply and Explainということで、オルタナティブを提示すればアプライしなくてもいいということであれば、コンプライ・オア・エクスプレインとそう大きな変化があったようには見えないんですが、そういう理解でよろしいでしょうか。

【ワリングメンバー】
  おっしゃるとおりです。ちょっと象徴的な言葉の変更ではありますけれども、おっしゃったご指摘はそのとおりかと思います。

【田中メンバー】
 大分理解が進みました。ありがとうございます。もう1点だけよろしいですか。

【池尾座長】
 結構ですけれども、時間が希少化していることをご認識の上で。

【田中メンバー】
  今度、発行体側の立場になるものですから、聞いておきたいことが1つあります。それは少数株主の利益の保護というところで、先ほどの経産省の資料の10ページ、一番左側と一番右側に関してです。実は、個人的な経験で申しわけないんですが、かつて私は三菱UFJのアメリカの子会社で上場会社であるユニオンバンク、親会社が66%を持っているユニオンバンクのトップをやっていたんです。これはまさに親子上場そのものなわけです。国を離れた、国境を隔てた親子上場になっているわけですね。

 そのときに経験したことを言いますと、社外取締役が常に少数株主の保護を主張するわけです。例えば一つの例を申し上げますと、三菱UFJのニューヨーク支店とユニオンバンクがコラボレーションしょうとします。そしてユニオンバンクのほうである仕事をすることによって、貸し出しなら貸し出しのブッキングがニューヨーク支店、つまり親会社側にできるというケースがあります。それをやっちゃいけないと言うわけですよ。というのは、費用がユニオンバンクに落ち、利益が親  会社に落ちる、これはユニオンバンクの少数株主にとってはマイナスであり、プラス面は何もないと言う主張がされました。

 もっとすごかったのは、親会社に日本の金融庁が定めたBIS規制が入りますと、子会社であるユニオンバンクもその規制の対象になります。そして、その対応のためには当然コストがかかりますよね。ところが、アメリカの銀行とは違う形のBIS規制だったものですから、日本のレギュレーションに合わせるために、そういう経費をこうむらなきゃいけないというのは、これは少数株主保護の観点からおかしいと、例えばそれぐらいの議論が出てくるんですね。ですから、上場子会社を持つということはそういう具体的なビジネス上の問題が出てくるという場合が非常にたくさんあるということです。

 ただ、一方で利益相反だけではなくて、この一番右側の完全子会社化というもの、実はこれもやったんです。私、そのとき、子会社であるユニオンバンクのトップをやっていましたので、親から派遣されていながら親からホスタイルテークオーバー(敵対的買収)を受けたという経験があるんですけど、そのときに何をやったかと言いますと、この子会社のほうは当然スペシャルコミッティーをつくるんですね。で、スペシャルコミッティーの仕事は、この一般株主と書かれたところ、ほんとうは少数株主と書くべきだと思うんですが、この少数株主の利益を最大化するということに特化するわけです。そして私は両方から利益というか、関係あるので、一切何もしちゃいけない、両方とコミュニケーションしてもいけないと。しようがない、ゴルフしかしてはいけないというふうな状況になったんです。

 ただし、この経産省の議論の中にはどこにも出てこないんですが、この子会社、今の場合はユニオンバンクの子会社の従業員たちが、上場会社であるためにストックオプションを持っていました。例えば、この上場子会社のストックプションを持っていますとどう言う問題が出てくるのか、チェンジ・イン・コントロール条項が入っているとどうなのか。そうしたものが入っていると、直ちにこれは100%子会社化するということは、人事上ものすごく大きなインパクトがあるんですよね。

 このペーパーの中にはそうした論点はどこにも出てこないんですけれども、やっぱり実務的にはそういう論点が、今の例は国境を越えた場合ですけれども、あるんだというところまでしっかり見た上で判断する必要があるだろうと思います。

 アメリカでも、ですから、そういう意味では子会社上場そのものは禁止されているわけではないんですね。大事なことは、少数株主の利益を保護する手法をどうするのか、それから、社外取締役がそういう意識をしっかり持つということが大事だということであって、そういう実務上の論点をもう少し入れた上で検討する必要があるだろうというふうに思います。

 それだけです。以上です。

【池尾座長】
 どうもありがとうございました。ますます時間が希少化しておりますから、佃メンバーにお願いしますが、そのことを。

【佃メンバー】
  いつも手短に発言させていただいております。2点だけございますので。

 まず1点目は、資料1-1の4ページですね。今日のメーンテーマだと思いますけれども、建設的な対話ということで、こちらのほうに今後の主な検討課題(案)とありますけれども、やはり建設的な対話が始まってまだ間もないという現状では、企業サイド、運用機関サイド双方、ともに暗中模索、ベストプラクティスを探し求めながらやっているという状況ではないかなと理解しております。そうした中で企業と運用機関双方のコミットメントと、それから対話能力が問われている状況であると捉えています。

 そうした中で、企業側、運用機関側それぞれが、お互いに対して何が課題であるか、例えば、企業が運用機関に、もっとこういうエンゲージメントをやってほしいと考えているとか、あるいは逆に運用機関側は、企業サイドがエンゲージメントする上でもっとこういう対応をしてほしいと考えているとか。何が建設的な対話の課題であるかをファクトベースできっちり押さえて、それに対して、じゃあ如何に改善すべきか?を考えるのが、今後スチュワードシップ・コードを改訂する上で極めて重要になると思います。従って、向こう数カ月、あるいは半年間ぐらいは、そもそも論として「建設的な対話の現状と課題」をきっちりファクトファインドしていく、押さえていくことが大事ではないかと考えています。これが1点目です。

 それから2点目に、資料2、経産省さんの資料で、親子上場に関することですが、冨山さん、それから上田さん、意見書でお二方ともこのテーマを取り上げているということで、私も含めてそれだけ世間の関心も高いし、コーポレートガバナンスを考える上で非常に重要なテーマだと思います。

 今、田中さんが、まさに私がお伝えしたかったことを仰っておられましたが、論点は極めて明確で、利益相反をきっちり管理して、少数株主・一般株主の利益を保護することに尽きます。問題は、それを具体的にどんなスピードで、どのような方法でやっていくかということだけだと思います。

 一方で、日本企業の実務実態を知る立場から申し上げますと、例えば、支配的株主が子会社である上場子会社の独立社外取締役を探している、これって、おかしいでしょうという実態があります。親が子の独立社外取締役を探すような実務実態は、現実問題としてあるわけですね。あるいは上場子会社の社外取締役をやっておられる方が、少数株主の利益保護の観点で正論をおっしゃっている。

 一方で親会社の社長にとっては、その正論は必ずしもカンファタブルなディスカッションではない。そして正論を主張する社外取締役が比較的早いタイミングで退任していくという実態も現実にあるわけで、そういったことを考えると、経産省さんが21ページ、最後のページで書かれている、この上場子会社の取締役会の独立社外取締役比率を高めることを目指すとあるのですが、これは目指すだけじゃダメで、やはりきっちりと高めると書くべきです。また「3分の1以上や過半数」とありますけれども、現実的な対応として、できれば過半数とすべきではないかなと考えます。

 こちらの実務的対応、法的対応というものをなるべく速やかに先に進めることが大事であると思います。そして、これはあくまでご提案ですけれども、当フォローアップ会議としても、この上場子会社のガバナンス強化に関しては、かつて出したように「意見書」を出すことも検討されてはいかがでしょうか。

 以上です。

【池尾座長】
  では、キャロンさん。

【キャロンメンバー】
 今、佃メンバーがおっしゃったことには大賛成で、田中メンバーも一緒だと思いますが、先ほど経産省の坂本課長からご説明があったように、私も「上場子会社」のガバナンスは大きな問題だと考えています。世界的には珍しいですが、日本においては10社に1社程度の企業がいわゆる上場子会社になっており、この会社は果たして少数株主のために経営されているのか、親会社のために経営されているのか、非常に不透明です。

 日本はコーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コードを通じて大きな進化を果たしました。しかし、利益相反の懸念が常に存在する親子上場の問題は、外国の投資家にはまず理解していただけませんし、我が国のコーポレートガバナンスにおいて残っている課題があるとしたら、上場子会社のガバナンス強化が最優先課題であると考えています。

 田中メンバーがおっしゃるとおり、上場子会社を禁止する必要はありませんが、経産省資料の21ページにあったような対応を通じて、一定のガバナンス強化を図ることは少数株主の利益保護のために必要だと思います。大きな問題ですし、2年後のガバナンス・コード改訂を待たずに、早急に強化策をとれたらいいなと思っております。よろしくお願いいたします。

【池尾座長】
 どうもありがとうございました。では、岩間メンバー。手短にお願いします。

【岩間メンバー】
 かしこまりました。私も親子上場の問題なんですけども、ガバナンスの強化というのはもちろん必要だと思うんですけど、むしろ、外の投資家からの圧力といいますか、特に少数株主の利益を守るために発言ができる投資家の存在というのが、やはり必要なんだろうと思うんですね。ワリングさんもちょっとおっしゃいましたけれども、コラボラティブなエンゲージメントがもう少しやりやすくなるということも必要なのではないかと。

 要するに、中からの改革もそうだけれども、外からも圧力がかかると。必ずしもホスタイルな圧力ではなくて、非常に何というか、メークセンスな、そういうものがもうちょっと出てくるようにしつらえていったらいいんじゃないかなと、ちょっと今思っております。昔から共同エンゲージメントというか、そういうものがあったほうがいいんじゃないかなと思っております。

【池尾座長】
 それでは、三瓶メンバーお願いします。

【三瓶メンバー】
 ありがとうございます。たくさん話題に出ている上場子会社のことについて、ちょっと申し上げます。

 この経産省の整理の中で、支配株主という言葉が出てきますが、冨山さんの意見書にあるように、支配株主というよりは支配的株主ということかなと思います。それをはっきりしておかないと、ちょっとこの解決にはならないんだろうと。

 そのときの支配的株主というのはどの辺かというと、例えば、20%以上であれば持分法適用になります。もう一つは会社法の、いわゆる「実質的に支配することが可能な関係」というのが会社法施行規則67条第1項にありますけれども、それは議決権の25%以上です。この辺が支配的な株主というところだろうというふうに思います。冨山さんの資料の中では、もっと低い10とか15というのがありますよというのも書いてあります。ベルギー、スペイン、フランス、フィンランドなんかだと10%、イタリア2%とかですね。ただ、日本の今のそういった条件からすると、20、25あたりじゃないかなというふうに思います。

 もう一つ、独立社外取締役をボードに入れるということは、過半数や3分の1以上というのはそのとおりだと思いますが、3分の1というのは、上場子会社の場合は違うんではないかなと。この場合は過半数以上ではないかなというふうに思います。で、情報開示のところで、親会社に求めている情報開示なんですけれども、「維持することの合理的理由」ということは、もうちょっとわかりやすく言うと、資本コストが高いにもかかわらず子会社を上場させる理由は何だということを説明せよということだと思います。資料2の19ページの上から3つの米系の投資家ですか、コメントがありますけれども、まさにこういうことだと思うんですね。親からすれば少ない資本で経営支配をして、残りを外部調達している。だから、いわば一般の少数株主を踏み台にしているという状況です。

 一方で、子会社のほうでほんとうに独立したボードがあるとすれば、支配的な大株主にもかかわらず少数株主との利益相反を管理している結果、子会社の経営戦略の方向性は親会社と一致しないかもしれないと。そういうことで、ほんとうは、あまりメリットはない。なので、アメリカやイギリスではそんなことが当然ながらされないですね。資本コストも高いし、コントロールがきかない。ただ、新興国等で、そこの現地通貨を使って事業を起こしたい場合等に限ってはあり得ると思います。ただ、それはかなり限定的な場合です。なので、その辺の何を説明しなきゃいけないかということを明確にしていったらいいかなというのが1点。

 あとは、先ほどのICGNからの意見書の件で、ワリングメンバーにちょっとお尋ねしたいことがあります。

 1つ目は、最近、コラボレーションという言い方が使われるようになって、それまではコレクティブエンゲージメントだったものが、最近はコラボラティブエンゲージメントと言われます。これは、コレクティブというと、よりリーガルイシューが懸念されるからかと。その辺のニュアンスの違い、どのような背景でみんなコラボラティブを使うようになってきたかなというところです。

 もう1点は、意見書にありますけれども、エンゲージメントがうまくいかないときにエスカレーションするということなんですけれども、まず、“うまくいかない”ということは投資家の目線で言っていると思うんですね。企業側としては、“しようもないことを言ってきたからこれ以上話は聞かない”ということかもしれないけれども、投資家側からして、うまくいかないときにはエスカレーションするということは、何か投資家は常に正しいことを言っているというふうに聞こえて、そこはほんとうか、そうなのかという点です。投資家が理解不足であるということも往々にしてあるのではないのか。、特にまだエンゲージメントの歴史が浅い日本では、そういうことを踏まえると、いきなりエスカレーションで群れをなしていくのがいいのかどうかという疑問があります。

 もう1点、a higher degree of influenceという表現が使われている箇所があるんですが、それは要するに、コラボラティブにしろコレクティブにしろ、一緒になることによってボーティングパワーを増すということだとすると、これはやはり共同保有に近いことになってしまうので、コラボラティブとの意味合いがちょっと不明確だなと思います。

 ここでも“投資家側が言っていることは正しい”という前提があるようで、聞いてもらえないんだったら、ボーティングパワーを増して圧力をかけていくというのがほんとうの解決策かどうかは、まだエンゲージメントが始まったばかりということからすると、特に日本において、今一度、考えるべきではないかなと私自身は思っています。

 それと、先ほど大場さんがおっしゃった、今、日本のスチュワードシップ・コードがApply and Explainになるというふうには決まっていませんけれども、もしそんな流れがあるとすると、今の点はとても重要だと思っています。エスカレーションする段階が当たり前のように来る、そしてコラボレーションしたほうがいいんだと当たり前のように言われる、アプライが前提になるとそれでほんとうにいいのかということが一つの懸念としてあります。

 あと、最後に1点だけ。資料1-2「参考資料」の13ページに、今回のICGNでアウォードをもらったアセットマネジャーの開示例が出ています、ブラックロックさんですけれども、ここで大事なことは、企業名の公表という、企業名だけのリストと、対話の事例紹介というのが別になっていること、要するに、いろんな人が興味を持っているとは思うんですけれども、会社名と事例とをくっつけて全部出すと、何をやっているのか全部明るみに……、明るみに出るという言い方はあれですけど、わかると。それは企業経営者からすると面目を失うということもあり得るわけで、または会社の中で、投資家に言われたから企業経営者がこういう改革をしたということが従業員にわかった場合に、社内的には従業員としては非常に納得がいかないといったことも起こります。

 そうすると、その先一層の経営改革ができるかというと、かえって難しくなることがあるので、annual Activities and Outcomesというレポートを出すということですが、大事なポイントは、このブラックロックさんがやっているような、企業名は企業名で出してもいいけれども、それと事例とはうまく切り離した形で開示するということが大事ではないかというところだけはお伝えしたいと思います。

 以上です。

【池尾座長】
 答えていただくと時間がなくなってしまうんですけれども、お答えいただけますか。

【ワリングメンバー】
  どこから始めたらいいのかわからないですが、三瓶さん、フィデリティのコラボレーションのステートメントでは、エスカレーションの中でまず最初にやるべきは他の投資家とのコラボレーションとなっていると思います。日本のスチュワードシップ・コードを見ると、明らかにそのエスカレーションの部分というのが抜け落ちています。

 例えば、ほかの国のスチュワードシップ・コードを見ますと、対話がうまくいかなくなったときにどういう方法でエスカレーションしていくのかということが具体的に書き込まれているわけです。他の投資家とコラボレーションをしたり、パブリックステートメントを出したり、ブラックリストに載せてしまうといったことがコラボレーションに含まれます。エンゲージメントをエスカレーションさせる方法を開示することは多くの国では普通のことで、何故、日本でこのアプローチがないのかの理由がわかりません。ただ、このことについては、また、議論させていただければと思っています。

 コレクティブかコラボレーションかというのは、そんなに意味的には違いがありません。コラボレーションのほうがどちらかというと響きはソフトであるため、たぶん、共同行為(act in concert)と間違われないよう使われている面もあると思います。

 エンゲージメントがどれだけ成功しているかということを示す証拠として、ケーススタディーを出すことは広く行われています。そしておそらくほとんどの場合、これをケーススタディーとして開示しますよということは、ケーススタディーの対象となった企業の同意を得ているのではないかと思います、そうでないと、将来的なエンゲージメントに影を落としますので。

【池尾座長】
 済みません、私、ちょっと勘違いしていて、もう少し時間があります。どうも済みませんでした。神作先生お願いします。

【神作メンバー】
 ありがとうございます。資料1-1の4ページに関連して3点、スチュワードシップ活動関係のコメントさせていただきます。

 まず第1は、少し遠いところからお話をいたしますけれども、米国において、昨年の1月1日から民間レベルでスチュワードシップ・コードが策定されて、それまではどちらかというと米国では資産運用業者にはプルデントインベスタールールという法的な義務が課されていて、現代ポートフォリオ理論にのっとってきちんと運用することが法的義務であり、特にパッシブの投資家は、いったんインデックスを用いたりポートフォリオを組んだりしたら、株主権行使に関して余計なコストをかけないというのが、むしろ法的義務に従うゆえんであるということが言われてきたと思います。従来、米国においてはスチュワードシップ・コードにどちらかというと懐疑的であった面があったと思いますけれども、昨年1月1日に導入されて以降、非常に影響力のある大きな機関投資家がそれにサインアップしているという状況があることが注目されます。

 この背景にはいろいろな事情があると思いますけれども、私は、一番ポイントになるのは、そういった機関投資家と最終の投資家との間にエージェンシー問題が存在し、現代ポートフォリオ理論はこのエージェンシー問題を解決するものではないという点にあり、エージェンシー問題の大きさが認識されるようになってきたという面があるのではないかと思います。

 そこで基本となるのは、やはりスチュワードシップ活動というのは、最終投資家の利益につながるということがポイントになると思いますので、そのような観点から、今後の主な検討課題について、議論を深めていく必要があると思います。

 はじめに、運用機関の開示情報の拡充については、エージェンシー問題を発生させる最大の要因である利益相反の問題であり、スチュワードシップ・コードでは利益相反防止についての方針の策定などを望ましい規範にするほか、見直しにより機関投資家の行動の結果として利益相反関係をいわば鏡のように示し得る個別の議決権行使結果の開示を求めました。

 他方、昨年の6月1日に金融庁が投資家と企業の対話ガイドラインを策定し、投資家と投資先企業との対話においてとくにポイントとなる点を示しています。その中では、エンゲージメント、スチュワードシップ活動についてはいろいろな課題があって、一律には言えないけれども、特に日本の場合に期待されるのは、中長期的な資本コストに見合うリターンを上げるという観点から投資戦略、財務管理の方針等について議論をすることであると指摘されています。

 具体的には、CEOの選解任、取締役会の機能発揮、それから、政策保有株式といった幾つかの重点的な項目が挙げられるとともに、このガイドラインについての全文のところで優先順位というのは、先ほど申しましたように、一律ではなく、個々の企業ごとの事情に応じた実効的な対話を行うことが重要であるという指摘をしながら、とりわけ中長期的な資本コストに見合うリターンを上げるという観点が重要であると指摘しています。

 もちろん、私はESGについての重要性を否定する者ではございませんけれども、ESGについての議論というのは、ややもすると全ての企業に共通する問題となり得て、総論的な議論に終始する可能性があることが懸念されます。もちろん、そういったESGの問題が優先順位として非常に高く位置づけられるべきであるという企業もあるとは思いますけれども、日本の場合、投資家と企業の対話ガイドラインの考え方が示している点がとくに重要であって、基本的にそれに従って活動をしているかどうか、していないとしたら、どのような理由からかということをより適切かつ有意義に開示するように方向づけることがポイントになるのではないかと思います。以上が第1点でございます。

 それから、第2点は企業年金のスチュワードシップ活動の後押しということでございますけれども、資料の11を見ますと、もちろんスチュワードシップ・コードの受け入れの企業年金というのは、徐々にではありますけれども増加しておりまして、その点では改善がみられると思いますけれども、企業年金は中長期的な観点から運用資産を増やすという目的からすると、スチュワードシップ活動に非常に適した主体であると思います。そういう意味では、企業年金のスチュワードシップ活動を後押しするという観点から、さらにさまざまな施策について考えていくことは非常に重要であると思います。

 3番目はその点とも関連するのですけれども、パッシブであっても中長期的な企業価値の向上のためにスチュワードシップ活動を行う以上、アセットオーナーについては、実際には運用コンサルタントの影響力、また、運用機関の議決権行使については、議決権行使助言会社の影響力が非常に大きくなると思います。

 議決行使助言会社については、やや画一的な推奨がなされており企業の個別の事情を聞いてくれない部分があるということなどが指摘されてきましたけれども、運用コンサルタント、議決権行使助言会社にしても、中長期的な企業価値の向上という観点から、特にエージェンシー問題と申しますか、利益相反の問題を中心に、さらにベストプラクティスを高めていくことが考えられると思います。

【池尾座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に武井メンバー、お願いします。

【武井メンバー】
  今、神作先生がおっしゃったところとも絡んで、資料1-1の15ページの議決権行使助言会社のところです。アメリカの法案でも指摘されていますが、③の「助言案につき対象会社に事前にレビューさせ、コメントの機会を与える義務」という箇所は大変重要ではないかと思います。

 たとえば、ちょっと事前に説明を受けて対応すれば判明するような事実誤認とかをそのまま放置して反対推奨になるという事態は、双方にストレスをためている面もあります。議決権行使の推奨結果を決めるプロセスに関しては、何らかの説明責任を負っているのではないかと思いますし、そういう議論が欧米でも昨今大変多いと理解しています。

 議決権行使助言会社の推奨結果はパッシブ投資家の方が依拠していることが多くて、特に外国機関投資家のパッシブな方が依拠されていることが多いかと思いますが、こうした外国機関投資家のパッシブな方というのは、多分その多くが日本のスチュワードシップ・コードをサインアップしていないのだと思います。となると、日本におけるガバナンスの実質化という観点からして、一種のゲートキーパー的に議決権行使助言会社は、スチュワードシップ・コードが目指す議決権行使の実質化の点において、とても重要な役割を果たしていらっしゃるのだと思います。その観点で議決権行使助言会社の推奨のあり方というのは、この③にあるような事前のレビューの機会という論点はひとつ大変重要な論点なのだと思います。

 別に全件事前に確認すべきかというとそういう話でもないですし、またそれでは助言会社側も回らないと思いますので、効率性の話は出てくるのだと思いますが、対外的説明責任が問われる場面や建設的対話の基礎となる会社との間の信頼関係が問われる場面などにおいて、事前確認がより重要になるのだと思います。

 例えば委任状勧誘になっている場合、会社がよかれと思って出している提案に反対推奨する場合、あるいは業績の悪い企業についての推奨を出す場合とか、たとえばそういう場合です。何千件、何万件すべて事前に確認すべきという話ではなく、説明責任、建設的対話の基礎となる会社との信頼関係、中長期的企業価値の向上などの観点から、重要なものに絞る形でもできると思います。この論点は、利益相反解消の論点とは若干性格の違う論点かと思いますが、この③についてはご議論していただくとありがたいかなと思います。

 以上です。

【池尾座長】
 高山さん、お願いします。

【高山メンバー】
  私からは1点、ESGについてコメントします。

 先ほどケリーさんがご説明の中で、スチュワードシップ・コードやスチュワードシップ活動におけるESGインテグレーションの重要性について述べておられましたけれども、私も全く同感です。それは投資家の立場から見て重要だということもありますが、日本企業の現状を見ますと、今、多くの企業の経営陣、そして、取締役会において、企業価値の向上とESGをどう結びつけるかという議論が、しばしば行われています。そのような企業の状況から考えても、ESGインテグレーションというのは重要な問題だと思います。

 ただ、ここで気をつけなくてはいけないのは、これはケリーさんも同意してくれると思いますが、ESGと言うと「G」が最後に来ていますが、基本的には、Gファースト、ガバナンスが重要であるということです。ガバナンスの基礎の上で「E」と「S」を考える必要があると思いますので、これからこの会議でESGについて議論する際、あるいは意見書をまとめる際にも、それを念頭に議論を進めたほうがいいと思います。

 以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。じゃあ、キャロンさん。

【キャロンメンバー】
 議決権行使助言会社に対してコメントをさせてください。もう少し議論し、メンバーのコンセンサスを目指したいと思うのですが、15ページの③の事前レビューについては、この法案が廃案になった理由の一つが、③の事前レビューが言論の自由を妨げかねないという意見であったと記憶しています。

 直近では①の対応になっていますが、個人的には、事前説明や事前レビューではなく、事後で発行会社の意見を助言会社のレポートに載せるのが良いのではないかと思っています。これにより、助言会社と発行会社の双方の考えを投資家が比較することができ、客観性と公平性が担保できるのではないかと考えるからです。

 また、武井メンバーがおっしゃるとおり、助言会社は大きな影響力がありますので、何らかの形でガバナンス改革の対象にすべきだと思っています。よろしくお願いいたします。

【池尾座長】
 どうもありがとうございました。どうぞ。

【小口メンバー】
 時間が少しあるので、1点だけです。先ほど三瓶メンバーとワリングメンバーの議論を聞いていて、これは私、いつも思っていることですけれども、スチュワードシップ・コードの中にエスカレーションを入れていないのは、忘れたのではなくて、意図的に入れていないということは申し上げておきたいと思います。

 我々はその方がいいと思って入れていないのですが、ただ、いい機会なので、次の改訂のときに、エスカレーションをどうすべきなのか、これはグローバルにどうかと言った視点よりも、日本の文化や日本の企業と投資家のあり方の中でエスカレーションをどう考えるのか、日本において本当に有益なのかという議論を詰めた上で、議論の結果はどうなるかわかりませんけど、それで入れるとなったら、先ほどワリングメンバーが言っていたように、コラボレーションなのかもしれませんし、ネーム・アンド・シェイムと言いますけど、名前を開示して羞恥心から動かすみたいなアプローチも含め、様々な手段についての議論があると思うのです。

 手段を議論する前に、エスカレーション、投資家の意思がうまく企業に受け入れられなかったときに、一体どうすべきなのかという議論をすべきというのが私の申し上げたい点で、その結果がいろいろな議論につながってくると思います。

 以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。ちょっと私が勘違いしたせいで時間が捻出できたので、いつも私、意見を言わないんですけれど、意見を言わせていただきたいと思うんです。

 親子上場の件なんですけれども、2つぐらいありまして、1つは税の負担の帰着の問題と同じなんですけど、最終的な負担の帰着がどうなるかというところです。上場子会社の少数株主は保護を受けられない可能性を認識しているからディスカウントするわけですよね。だから、安い値段で、いろいろ正当に扱われないリスクがあるということを織り込んで安い値段で買うわけですから、十分に安い値段でディスカウントして買っていたら、少数株主自体が損をすることは排除できるわけです。

 そうすると、そのときに誰が損をするかというと、親会社の株主が損をするということで、親会社の株主に損失が帰着するわけですから、親会社の株主に損失が帰着するようなことを親会社の経営者がするということは、親会社のガバナンスがなっていないという話になるわけです。ディスカウントもしないでナイーブに上場子会社の株を買うとかいう投資家がいるなら話は別ですけれども、ちゃんと少数株主保護の措置が十分とられていないということを認識した上で、ディスカウントして買っているとすると、親会社に損失が帰着する構造になっているんだということは認識すべきじゃないかなと思います。

 それからもう一つ、子会社を上場させるのはファイナンスが目的だというふうに、一種のアセットファイナンスだと考えていたのですが、経産省の方の資料の18ページにある動機からすると、いわゆる「東証一部上場」のラベルが欲しいというのが非常に大きなモチベーションになっているようにうかがわれるわけです。要するに、東証一部上場というステータスがあると、採用人事等で非常に有利になるという目的があるからしているという。そうすると、私も関連していますけど、東証の市場構造の見直しの議論の際に、こういうポイントが親子上場に含まれているということを考えて、どう対応するかという論点がかなり重要な論点としてあるかなと思います。

 以上です。あと、神田先生、意見をいただいていないのですが。

【神田メンバー】
 1点だけ感想なのですけれども、上場子会社のお話を伺っていて、先ほどの三瓶さんの言葉によれば、支配的株主と言うのでしょうか、その支配的株主が上場会社である場合だけについて議論するのか、支配的株主が上場会社でない、例えば非上場法人である場合、あるいは個人である場合、ファミリーである場合、どういう場合であっても、上場子会社の少数株主の利益の保護という問題はあるはずです、濃淡はあるのかもしれませんけれども。

 ですから、今後議論していく上で、どういう場面を議論するのかについては、ちょっと間違わないようにお願いしたいと思います。

【池尾座長】
 どうぞ、大場さん。

【大場メンバー】
  私が最初にApply and Explainという方針について、どういう理由なんだろうかということで質問した関係で申し上げますと、いろいろお伺いして理解が深まった面と、より複雑になった面と両方感じるのですが、私の理解では、まだ日本では適用は早いのではないかという印象を持ちます。理由は、コンプライ・オア・エクスプレインの仕組みが始まったばかりで、まだ完全に消化し切れていない、発展途上もいいところではないかと思います。みずから考えて、どのようにしたらいいかということを各主体に考えてもらうということが原則だったと思うんです。これを徹底させることが大事ではないかと思います。

 次期のスチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードをどのような視点で見直すかということで、先ほど佃さんからは、建設的な対話についての課題をあぶり出すということを徹底して行うことが大事ではないかというご提案があったかと思うのですが、そのためには、私は今のコードが求めている開示がまだ不十分だということを認識する必要があるのではないかと思うんです。開示が不十分なものだから、建設的な対話に進まない。

 何の開示が不足しているかというと、コーポレートガバナンス・コードにおいては、取締役会の活動について、自己評価して開示することになっています。これがどの程度実際に行われているのか。スチュワードシップ・コードについては、スチュワードシップ活動についてみずから評価して開示することになっているんです。ここが次期の見直しについては大変重要なことではないかと感じている次第です。

 以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。追加でご意見いかがでしょうか。どうぞ。

【ワリングメンバー】
 大場さんのおっしゃるとおりだと思っておりまして、全く十分ではありません。利益相反やエンゲージメントの方針などにおける投資家の開示の質に非常に開きがあり過ぎるということで、私も驚いております。ですので、ICGNとしてはガイダンスを出しているわけですし、規制当局もこの投資家の開示に注目することは重要だと考えています。

 大場さんが挙げた建設的なエンゲージメントにつきましては、投資家は受益者のために資産のバリューの維持と向上に責任があることを認識する必要があると思います。

 日本のスチュワードシップ・コードを見たときに、今のところ日本のスチュワードシップ・コードというのは主に、いかにバリューを保全するかということに軸足が置かれている、つまり、リスクをどうやって緩和するかということに軸足が置かれていて、どのように価値を高めていくか、バリュー・エンハンスメントの部分についてはフォーカスが十分当たりきっていないのではないかと思います。このバリュー・エンハンスメントの部分というのが、まさにESGの部分になるわけです。

 長期的に持続可能な形で企業価値を高めていく、それは企業のためだけでなく、社会全体にとってのためにということであるならば、もちろん先ほど、どなたかがおっしゃったように、ESGの中でも「G」がまず一番に来なければならないということは、そのとおりでありますけれども、価値を高めるための重要なトリガーとして「E」と「S」も重視していかなければいけないと思っています。

【池尾座長】
 川北さん。

【川北メンバー】
  多少時間がありそうなので。ESGに関して議論が出ていますが、神作先生がおっしゃったことに私はどちらかというと賛成で、ESG自身に力を入れていくこと、特に限られた資源を使ってアセットマネジメント会社がESG力を入れるということは、ほんとに正しいのかどうか。やはり総花的なものになってしまいがちなので、もし力を入れるのであれば、先ほど言いましたように、企業独自の「E」、もしくは「S」の活動が、どういうふうにして展開されているのか、そこに焦点を当てないといけないと思います。

 単にインデックスに入るために企業はいろんな活動をしていますというのでは、それだけでは物足りないと思いますので、限られた資源の投入を前提にすると、どういうところに力点を置くのか、そこをしっかりと押さえていかないと、アセットマネジメント会社としてはまずいんじゃないかなと思います。

 以上です。
 
【池尾座長】
  どうぞ。
【田中メンバー】
 時間がありそうなので、一言だけ。この会合はスチュワードシップ・コードだけじゃなくてコーポレートガバナンス・コードの両方を検討する訳ですが、実は自分自身解答が出ていない課題がありまして、それは、企業価値って何なのだというところに少し焦点を当てた議論をする必要があるんじゃないかなという気が非常にしています。
 
 今回、小林さんのこの意見書も非常に重要なポイントを指摘されておられまして、公開株式の市場で国内外の年金基金などの株主、それから、広く市民全般の退職金の生活を経済的に下支えするということは、平たく言えば、これは企業価値というよりも株主価値の話をしているんじゃないかという気がいたします。一般的に企業価値という言葉が一体どういうふうに定義されて、そして、その定義はどのようにして計測されるのか、企業価値が向上しているのか、していないのかをどの様に判断するのかという論点について、どうも私自身その課題に対して確たる解答が見つけられていないのではと言う気がしています。

 さまざまな経営者の方々、例えば、コマツの坂根相談役が一つの解答を示されていますけれども、非常にこれは多様な解答がありまして、インベストメントチェーンという中でこの課題を考えるときには、企業価値というよりは時価総額の話をしているのかとも思えます。時価総額であれば、単に買収をどんどんしていけば勝手に上がっていくわけで、必ずしも株主価値というのは上がるわけでもない。そういうことを考えると、企業価値というものは一体どういうものを考えるのかという、そして、どうやって計測していくかということは、私はこの会合においては非常に重要な論点じゃないかと前々から思っていまして、今後その論点を入れていただければと思っています。

【池尾座長】
 三瓶メンバー、お願いします。

【三瓶メンバー】
  先ほど神作先生、また、川北先生が議論されていたことでちょっとつけ加えたいんですけれども、ESGファクターと言われて、ESGを語るときにはよくたくさんの項目があって、それを全ての会社に当てはめながら評価点をつけたりするわけです。これがインデックスに入るとか、またはエクスクルージョン・リストに載ってくるということに使われます。ただ、今ここで言っているのはそちらのことではない、ESGインテグレーションということで、まさにバリュー・エンハンスメント、またはバリュー・クリエーションの過程で、今その会社が事業の上で取り組まなきゃいけないことにもし取り組んでいない、または看過していて気がついていないというときに、投資家がそこについて注意しないとまずいですよ、または、ここにこんな機会があるのに、それをなぜとりに行かないんだということを言う。これはビジネスを通じて取り組むESGインテグレーションです。

 なので、皆さんのおっしゃっていることは、おそらくそれぞれ対立していることではなくて両立する話だけれども、ESGと言ったときに、ただ、多くの100ぐらいあるファクターのことを、その評価をつけることのESGを指して言っているのか、インテグレーションといって、個々の企業に非常に重要な企業価値創造にかかわることについておっしゃっているのかの違いという気がしましたので、改めてそこの点を申し上げます。

【池尾座長】
 よろしいでしょうか。ちょっと私の勘違いで、途中、議論をすごくせかしてしまいまして、まことに申しわけありませんでした。そろそろいい時間になったので、今日の会合は以上とさせていただきたいと思いますが、本日いただきました議論を踏まえて、次回はフォローアップ会議としての意見書についてご議論をお願いしたいなと考えております。その旨お伝えしておきます。

 最後に、事務局から連絡等ございましたらお願いします。

【井上企業開示課長】
 次回のフォローアップ会議の日程でございますが、皆様のご都合を踏まえた上で、最終的に決定の上、ご連絡させていただければと思います。事務局からは以上でございます。

【池尾座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 

―― 了 ――

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