「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第7回)議事録

平成30年10月19日(金)


【神田座長】 
 おはようございます。定刻でございますので、始めさせていただきます。仮想通貨交換業等に関する研究会の第7回目の会合を開催させていただきます。皆様方にはいつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 前回の研究会でございますけれども、仮想通貨をめぐる諸問題について、具体的な制度的対応の方向性についての検討を開始したというところかと思います。それで、仮想通貨に係る各種の行為と金融規制のあり方、及び仮想通貨交換業者に係る規制のあり方についてご意見をいただき、討議を行いました。
 
 そこで、本日ですけれども、仮想通貨を原資産とするデリバティブ取引に係る規制のあり方を中心としてご検討をお願いできればと思います。
 
 まず事務局から、皆様方の討議のたたき台として、お手元の資料2と資料3について説明をしていただきます。それから、続きまして、説明いただいた内容を踏まえて、メンバーの皆様方にご議論をいただくという流れで進めさせていただきます。また、前回の討議において、複数のご意見をいただきました論点について、事務局のほうでいただきましたご意見等をお手元の資料4で改めて整理をしております。
 
 そこで、順番としては、本日はまずデリバティブ取引についての審議をお願いしたいと思いますけれども、時間に余裕があるようであれば、資料4についても追加的なご意見をいただく時間を設けたいと思います。そういうことで進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
 それでは、まず事務局から資料2と資料3についてのご説明をお願いいたします。
 
【小森市場課長】 
 それでは、資料2をご覧いただきたいと思います。本日は、仮想通貨に関して、新たに登場してきている仮想通貨を原資産とするデリバティブ取引、仮想通貨の信用取引について討議を行っていただきたいと考えております。
 
 1ポツ、まず仮想通貨デリバティブ取引に係る規制の要否・内容でございます。あわせまして、資料3、横紙の1ページ目もご覧いただければと存じます。
 
 現在、仮想通貨交換業者として登録されている16社のうち7社におきまして、仮想通貨交換業者の証拠金取引が提供されているところでございます。これは仮想通貨デリバティブ取引の一形態であり、今後さらに新たなデリバティブ取引の類型が登場することも想定されているところでございます。
 
 第1回の当研究会におきまして、日本仮想通貨交換業協会から資料をいただきましたところ、平成29年度において、仮想通貨デリバティブ取引が仮想通貨交換業者を通じた国内の仮想通貨取引全体の約8割を占めていることが紹介されております。
 
 横紙の2ページ目と3ページ目にその際に提出された資料の抜粋がついております。約8割がデリバティブの取引、約2割が現物の取引といった紹介がなされております。
 
 横紙の4ページをあわせてご覧いただきますけれども、こうした中、業者におけるシステム上の不備やサービス内容の不明確さ等に起因する利用者からの相談が金融庁に相当数寄せられております。内容を少しご説明いたしますが、仮想通貨を用いた証拠金取引に係る相談等の件数は、前年同期比で増加しております。平成30年1月から9月までの件数は、合計で376件でございますけれども、同じ時期の外国為替証拠金取引に係る相談等の件数、75件よりもかなり多くなっております。この4ページの下の右側でございますけれども、主な相談等の内容といたしましては、ロスカットが機能しない等のシステム上の不備に関するものや、途中でレバレッジ倍率等のサービス内容が変更されるといったサービス内容の不明確さ等に関するものが主なところでございます。
 
 縦紙の資料にお戻りいただいて、一方、現状、国内において、金融商品取引法が定めるデリバティブ取引の原資産の中に仮想通貨が含まれていないこと等から、仮想通貨デリバティブ取引は、金融規制の対象とはされていないといった現状にあるところでございます。
 
 おめくりいただいて2ページ目、(2)金融規制の要否でございます。
 
 前回の討議におきまして、金融規制の要否を検討していくに当たっては、個々の行為が金融の機能を有するかどうか。有する場合、仮想通貨の将来の可能性を含む社会的意義や投機の助長等の害悪の有無を踏まえて、金融規制の導入が期待されるかどうかといった視点が重要だとされております。
 
 これを本日のテーマであるデリバティブ取引に当てはめて考えてみますと、デリバティブ取引は、価格変動リスクの回避・軽減等のさまざまな目的で、将来、原資産を一定の価格で取引すること等をあらかじめ契約しておくものであり、一般に、原資産に係る将来のキャッシュフローを取引当事者の意思で変換する機能を有するものと考えられる。こうしたことから、金商法においても、原資産の如何を問わず、デリバティブ取引を金融規制の対象とし得る枠組みが整備されている。これらを踏まえれば、仮想通貨デリバティブ取引についても、金融の機能を有すると捉えることが適当と考えられるが、どうか。
 
 注1でございますけれども、現行の金融商品取引法の仕組みについて注を付してあります。有価証券等の金融商品や、それらの価格や利率等の金融指標、これを参照するデリバティブ取引を業規制の対象にしているところでございます。
 
 このほか、同一の種類のものが多数存在し、価格の変動が著しい資産であって、当該資産に係るデリバティブ取引について投資者の保護を確保することが必要と認められるものを政令で定めて、業規制の対象とすることを可能としている仕組みになっているところでございます。
 
 注2に、米国とEUのことについて書いております。米国やEUでも、原資産の如何を問わず、デリバティブ取引は金融規制の対象となっているところでございます。
 
 横の紙の5ページ目に、米、EU、日本につきまして、それらについて整理した簡単な表がついておりますので、それについてもあわせてご覧いただければと存じます。
 
 本文を続けますが、仮想通貨デリバティブ取引が金融の機能を有する場合、以下の点を踏まえた上で、その社会的意義や害悪の有無についてどのように考えるべきか。規制の導入が期待されると考えられるか。
 
 「以下の点」とあるのは、現時点において、仮想通貨の有用性についての評価が定まっていないこと。既に、国内において、相当程度の仮想通貨デリバティブ取引が行われており、利用者からの相談も相当数寄せられていること。足許では専ら投機を助長しているとの指摘があること。
 
 仮に規制の導入が期待されると考えられる場合、どのような規制が適切か。仮想通貨デリバティブ取引を禁止するのではなく、現時点における仮想通貨の機能や害悪等を踏まえた一定の規制を設けた上で、利用者保護や適正な取引の確保等を図っていくことも考えられるが、どうか。
 
 注でございますけれども、仮想通貨の取引は、インターネットを通じ、クロスボーダーで行うことが容易な状況である中、米、EUにとどまらず、多くの主要国で、仮想通貨デリバティブ取引を金融規制の対象としているところでございます。
 
 (3)の規制の内容でございます。まず店頭デリバティブ取引との類似性を踏まえた対応についての記述でございます。
 
 仮想通貨デリバティブ取引に対する規制を導入する場合、例えば、金商法上、通貨関連店頭デリバティブ取引を業として行う第一種金融商品取引業者には、以下のような規制が課されているところ、仮想通貨デリバティブ取引業者に対しても、その機能や取引内容の類似性に鑑み、少なくとも同様の対応を求めることが必要と考えられるが、どうか。
 
 第一種金商業者に課せられている規制の例として、最低資本金・純財産規制、業務管理体制の整備、広告・勧誘規制等、証拠金倍率の上限やロスカットに関する規制等が本文に記述されているところでございます。
 
 このうち、証拠金倍率の上限につきましては、仮想通貨の価格変動が大きいとの指摘などを踏まえ、その価格変動に応じた適切な水準が設定されるべきと考えられるが、どうか。
 
 注におきまして、これについて書いております。現状、国内では、仮想通貨デリバティブ取引の証拠金倍率がFX取引と同じ最大25倍に設定している業者もあるところでございます。日本仮想通貨交換業協会の自主規制規則案では、FX取引と同水準のリスク量とすることを念頭に、証拠金倍率の上限を4倍と規定されているところでございます。ただし、1年間は会員自身が決定する水準でも可とする時限措置もあるところでございます。
 
 なお、EUの規制では、仮想通貨デリバティブ取引の証拠金倍率の上限が2倍とされているところでございます。
 
 これまでが店頭デリバティブ取引との類似性を踏まえた対応でございますけれども、仮想通貨の特性を踏まえた対応につきまして申し上げます。
 
 仮想通貨デリバティブ取引は、仮想通貨を原資産とすることにより、例えば、仮想通貨の特性に係る顧客の認識不足、問題がある仮想通貨の取扱い等、前回の研究会でご議論いただいた仮想通貨交換業における取引と共通する問題が存在し得ると考えられている。このため、前回の討議内容を踏まえつつ、上記問題に鑑みて、仮想通貨交換業者に求められる対応と同様の対応を仮想通貨デリバティブ取引業者に対しても求めることが考えられるが、どうか。
 
 さらに、仮想通貨デリバティブ取引の社会的意義の程度と比して、過当な投機を招くこと等の害悪のほうが大きいと考えられる場合、そうした害悪が資力や仮想通貨に関する知識が十分でない個人顧客に及ぶことを防止する観点からのさらなる方策を講じることも考えられるが、どうか。その場合、例えば、取引業者に対し、以下のような対応も求めることが考えられるが、このほかどのような方策が考えられるか。
 
 資力が不十分であるなど、取引を行わせることが不適切であると認められる者の取引を制限する措置。最低証拠金等、取引開始基準の設定。顧客に対する注意喚起の徹底。
 
 5ページにお進みください。2ポツ、仮想通貨信用取引に係る規制の要否・内容についてでございます。
 
 1の現状についてでございますけれども、横紙の7ページ、仮想通貨の信用取引についての資料もあわせてご覧ください。
 
 仮想通貨の信用取引は、顧客が業者に保証金として金銭や仮想通貨を預託し、業者指定の倍率を上限に業者から仮想通貨を借り入れ、それを元手として仮想通貨の売買・交換を行う取引を指しておりまして、現在、登録業者の16社のうち2社が実施していると承知しております。
 
 図で、仮想通貨の信用取引の例がございますけれども、先ほどご覧いただいた証拠金取引と同様の経済的機能を持っていると考えられるところであります。
 
 本文にお戻りいただきまして、仮想通貨の売買・交換を業として行うことは、資金決済法の規制対象とされているが、仮想通貨信用取引自体に対する金融規制は設けられていないところでございます。
 
 金融規制の要否・内容でございますが、仮想通貨信用取引は、仮想通貨の現物取引か、想定元本の取引かといった差異はあるものの、元手の資金にレバレッジを効かせた取引を行うものであるという点で、仮想通貨デリバティブ取引と同様の機能やリスクを有する取引と考えられるが、どうか。
 
 そのように考えられる場合、仮想通貨デリバティブ取引と同様の規制、例えば保証金の比率、ロスカットに関する業規制の対象とすることも考えられるが、これらを含めてどのような方策が考えられるか。
 
 3ポツ、経過措置のあり方でございます。これまで、仮想通貨デリバティブ取引及び仮想通貨信用取引につきまして、業規制を入れることも含めて討議資料が書かれておりますけれども、業規制を入れる場合の経過措置のあり方について論じてます。
 
 仮想通貨交換業への規制導入時には、法施行前から業務を行っていた者に対して登録等の審査が終了するまで業務を認めないことは、利用者に混乱や不利益を生じさせるおそれがあることを踏まえ、他の金融規制を参考に、以下のような経過措置が設けられたところでございます。
 
 法施行の際、現に業務を行っていた者は、施行後6カ月間は登録なしに当該業務を行うことができる。ただし、当該者を規制対象業者とみなして行為規制を適用しております。
 
 期間内に登録の申請をした場合において、その期間が経過したときは、その申請について登録または拒否処分、業務廃止命令を受けるまでは、上記と同様の取扱いとする。そういった経過措置があったところでございます。
 
 これにつきましては、本研究会でもご議論をいただきましたけれども、登録審査が未完了のみなし業者が積極的な広告を行って事業を急拡大させたとの指摘、その際、多くの顧客が、当該業者がみなし業者であることやその意味を認識していなかったとの指摘があるところでございます。
 
 こうした指摘も踏まえ、仮に、今後、仮想通貨デリバティブ取引等に係る業規制を導入するとした場合、その経過措置においては、対象となる業者に対して、行為規制を適用した上で、例えば、以下のような対応を求めることも考えられるが、これらを含め、どのような方策が考えられるか。
 
 業務内容や取り扱う仮想通貨等の追加を行わないこと。新規顧客の獲得を行わないこと、もしくは、新規顧客の獲得を目的とした広告・勧誘を行わないこと。ウェブサイト等に、登録を受けていない旨や、登録拒否処分等があった場合には業務を廃止することとなる旨を表示すること。また、登録の見込みに関する事項を表示しないこと。
 
 これに関連して、みなし業者として事業を行う期間が、見通しがないまま長期化しているとの指摘もある中、これに対する何らかの対応が必要とも考えられるが、どうか。その場合、どのような方策が考えられるか。
 
 資料2、資料3の説明は以上でございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、今ご説明いただきました内容を踏まえて、資料2と資料3につきまして、メンバーの皆様方からご質問やご意見をお出しいただきたいと思います。どなたからでも、どの点でも結構でございます。いかがでしょうか。岩下さん、どうぞ。
 
【岩下メンバー】 
 丁寧なご説明をどうもありがとうございました。この今回の事務局提案にある仮想通貨デリバティブ取引に関して、現在の金融規制の対象とされていない状態を改め、規制の対象にするということについては、私は基本的に賛成であります。
 
 ただ、その理由として、資料2の2ページ等にある「金融の機能を有する」という言葉の部分がなかなか微妙な感じを私は受けるわけですね。その少し後に、キャッシュフローを交換する機能とおっしゃいますが、仮想通貨にキャッシュフローはございませんので、そういう意味では、一体これは何を取引しているものなのかと。
 
 さらに言うと、例えば株式であるとか、あるいは債券であるというもの。さらに言うと、例えばシカゴで始まった穀物の先物取引は17世紀でしたね。あるいは、日本で始まった堂島の米の先物取引といったようなもの、商品の取引においても、それぞれの経済的な意義というものが当然ありました。それは実際に価格を安定させるであるとか、一部には、投機的な行為も行われたわけですが、そういうさまざまな予測、期待を持つ人々が混在することによって、結果として、全体としての経済厚生が向上するということが期待されるということで、それ自体はポジティブな金融効果を持つものとして、さまざまな存在が是認され、かつそれを全く自由にするというよりは、一定のルールを設けるべきであろうということで、さまざまな規制の対象になってきたという歴史的経緯があるのかと思います。
 
 それに比べて、仮想通貨の場合、仮想通貨そのものがどのような経済的意義を有するのか。その仮想通貨の価格をデリバティブ取引や、あるいは先物取引等によって安定させるのか、投機によってより攪乱させるのかよくわかりませんが、そういうふうにすることに、どのような政策的な意義があるのかというところについては、残念ながら現時点では評価が定まらないところではないかと思います。
 
 この辺を意識して、事務局の資料では、金融機能を有するにしても、その害悪と利益とどちらが大きいのかということはわからないけれども、何がしかの規制を加える必要があるのではないかということをおっしゃっているのだと思います。
 
 私もこれについては、現状、日本で360万人という数字が以前、協会さんから出てまいりましたが、多くの人々が仮想通貨の取引に既に参入してしまって、それなりに現物の価値でいっても、総額で数千億円から、ひょっとすると1兆円を超えるような金額をお持ちであると考えられること。それらについて適切な規制を行わなければ、不正な業者がさらに増えてしまうおそれがあることなどから、何がしかのルールを設ける必要があるのではないかということについては、全く賛成であります。
 
 その場合に、FX取引との類似性を指摘されておられます。FX取引の場合、対象となっているのは、基本的にはフィアットカレンシーであります。これはもちろん外国相場自体はさまざまな形で変動しますが、各々の国におけるフィアットカレンシーの価値というものは、極めて特殊な事例を除けば、とんでもなく毀損するということは考えにくいわけです。それに比べると、どうも仮想通貨というのはもうちょっと違う性格を持っていそうな感じがいたします。
 
 そうなると、果たして、このFXと比べることが適切であるのかということは、何やら気になるわけです。なぜFXが3ページにある程度で済んでいるのかというと、それはFXで取り扱っているのがフィアットカレンシーそのものであるからだと思います。例えば現在、仮想通貨には相場操縦禁止の規定もなければ、インサイダー取引禁止の規定もないわけですが、実際にはそれに類する行為というものがあるのではないかという指摘は、枚挙にいとまがないわけでありまして、そういうものが放置されたままで、FXに準じた規制を課すことで十分であるのだろうかということは、若干気になるところであります。
 
 ただ、それらのことを踏まえても、いずれにせよ、現状の状況から何がしかベターオフであるのであれば、この協会の定めているようなルールに準じた形で、これをより明確にしておくことは必要なことと思います。ただ、くれぐれもそれが、いわば当局がお墨つきを与えたような形になるのは、避けたほうがよろしいのではないかと思うわけですね。
 
 今申し上げたように、これ自体の経済的意味というか、価値というのがほんとうに定まっていない状態だということは、きちんと伝えた上で、だけれども、これ以上の、例えば不適切な業者による、全くの未登録の、明らかに違法な取引であるように見えるものが、現状、まかり通っていることについての何がしかの警告という観点から、そういうことをやるということであれば、一定の合意がとれるのではないかと私は考えております。
 
 以上であります。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 福田先生、どうぞ。
 
【福田メンバー】 
 ありがとうございます。デリバティブ取引の歴史自体は非常に長くて、教科書的に言えば、一番最初のデリバティブ取引は、大阪の堂島の米相場、江戸時代のものというふうにも言われております。けれども、長い間、適切なデリバティブの価格というのはどういうものかというのは、経済学的にはわかっていなかったわけです。ところが、ブラックとショールズという人たちがオプションプライシングの理論というのを打ち立てて、適切なデリバティブの価格というのはどういうものかということを明らかにしました。それ以降、金融市場では、原資産の価格との関係で、適切なデリバティブの価格というのはどういうものかというのはわかってきているとは思います。
 
 そういう意味では、仮想通貨であっても、最適なデリバティブの価格というのが、どういうものが適切かというのは、原資産との価格との関係で決まってくるものです。その関係で成立する価格が非常に明らかになっているのであれば、公正な価格形成といえ、仮想通貨だからといって、ともかく禁止しなければいけないというものではないかもしれないとは思っております。
 
 それに関連して、規制をどういうふうにするかということで、現在の限定列挙的な規制がいいのか、それとも包括的がいいのかという選択の問題はあるとは思います。私はやはり包括的な規制のほうが、2つの意味でいいんじゃないかとは思っております。まずこの分野に関しては、やはり技術の進歩というのがこれからも起こっていくということで、形を変えた形でのいろんな取引というのが将来的には起こってくる可能性というのはあるとは思います。やはり後追い的に限定してということになるよりは、ある程度包括的なルールを決めておいたほうがいいだろうということが一つはあるとは思います。
 
 それから、もう一つは、グローバルな観点ということで、事務局の資料にも、欧米との比較ということもあるとは思いますけど、それでご指摘されているのは、包括的な規定が海外では主流だということです。これはクロスボーダーの取引というのが非常に活発であるという観点等も考えれば、国際的な規制のシンクロナイズといいますか、類似の規制というのを課すというのは一つの視点なんだろうということだとは思います。
 
 それから、別の視点とすれば、デリバティブ取引、あるいは信用取引も含めてだとは思いますけれども、コストとベネフィット、両方あって、コストだけが強調する必要はないとは思いますけれども、やはり通常の原資産の取引よりは取引者にはレベルが高い知識等が必要となってくるということは、これは仮想通貨の取引にかかわらず、一般的に当てはまることなんだろうとは思います。やはり現在の資金決済法上の登録業者の審査基準よりはやはり厳しい審査基準というのが求められていくという観点はリーズナブルなんじゃないかというふうに思っております。
 
 また、その際にはやはり慎重にしなければいけないのは、資金決済法上の登録業者の規制の認定のあり方のときにも岩下メンバーがおっしゃったように、それが何かあたかも規制当局からお墨つきをもらったような感じで、その後実際に取引が一気に増えるということは好ましくありません。そういう誤解は与えないように、やはり規制するということは大事ですけれども、それは別にお墨つきを与えたわけではないというような議論というのはやはり重要だろうと思われます。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 隣の永沢さん、どうぞ。
 
【永沢メンバー】 
 ありがとうございます。前回欠席いたしまして申しわけありませんでした。事務局の資料2に従いまして意見を述べさせていただきたいと思いますが、私も岩下先生や福田先生がおっしゃったように、当局がお墨つきを与えるような印象を与えることだけは避けるべきであることをまずは申し上げたいと思います。前の資金決済法のときに取引業者に登録制を導入し、その後に起きたようなことがまた繰り返されるようなことは決してあってほしくないということをまず申し上げたいと思います。また、果たしてほんとうにこの仮想通貨デリバティブ取引というものが金融の機能を持っているのかという点についても疑問に思っております。個人が参加している取引である以上、保護する必要があり、それなりの規制を入れなくてはならないということとか、それから、現在ほかのところで横断的な規制を議論していることなども考えますと、私は専門家ではありませんが、包括的な観点からの規制を考えていかざるを得ないのかなと私自身は現時点で感じているところです。また、今回、デリバティブ取引と信用取引についての規制が議論されつつあるわけですけれども、これを特に分けて考える必要はないのではないかと思っております。
 
 規制を考えていく上で、店頭FXについて別の会議体でいろいろ議論させていただいておりますけれども、仮想通貨に固有のリスクもあることから、店頭FXに対する規制を最低限こちらにも適用しつつ、固有のリスクに鑑みた追加的な規制も考えていく必要があると思っております。
 
 そして、追加的な規制というのはこれから議論していくところとは思いますが、本日出ているものの中で、私が感じましたことを幾つか述べさせていただきたいと思います。
 
 4ページのところで特性を踏まえた対応の、3つ目の丸のところの資力についてという記載がございます。金融取引においては、プロファイリングなどを行って、お客様の資力を確認するという作業は行われているところですが、私は、これが十分に実効性を有していないと感じております。資力というところについてはもう少し明確に、ここの場合には規定しておいたほうがよいと思っております。
 
 パターナリスティックかもしれませんが、大学生の参加が仮想通貨は多いという話も聞いております。事実はわかりませんけれども、やはり仕事をしていない人がこういうところに参加をするというのは、生活基盤を崩し、生活を崩壊させることにつながると私は思っておりますので、収入のないものは原則として入れないということが大事だと思いますし、また、年収の何分の1、これはどの程度が適当なのかわかりませんが、取引に参加する際にも年収を基準とした参加というものをチェック項目として入れることを求めてはどうかと思っております。これは提案でございます。
 
 また、この不招請勧誘の禁止が入っておりますけれども、おそらくウェブ取引しか対象にならないと思いますが、中にはこれから取引が広がる中で、そうではないような取引といいますか、電話での勧誘などもあるやもしれぬと思います。私はやはり適時に情報が取得できる人しか参加すべきではないと思っておりますので、ウェブ取引ができるものというのも条件として必要なのではないかと、的外れかもしれませんけど、思っているところです。
 
 それから、5ページの経過措置のところですが、前回の教訓ということで、この点は、もっと厳しく対応していただくことを求めたいと思っております。私は経過措置が必要なのかどうかも疑問におもっておりますが、経過措置を認めるとするならば、6ページの最後のところに、ウェブサイト上の表示については、万人が明確にサイトを見た瞬間に認識できるように表示をすることを規制として導入することをお願いしたいと思います。スクロールして下のほうに表示をしてあっても、表示というふうに言われてしまってはいけないと思いますので、開いた瞬間にそれが大きく出るようにお願いしたいと思います。
 
 以上、簡単ではございますが、私からの意見でございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 森下さん、どうぞ。
 
【森下メンバー】 
 ありがとうございます。私は、今回ご提案いただいているものというのは、基本的に賛成でございます。今はやはり、先ほどのお話にもあったと思うのですが、機能とリスクが同じであれば、なるべく同じ規制をしていこうというような流れの中で、デリバティブということで機能とリスクが似ているものについては、原資産が仮想通貨であっても、同じような規制をしていこうというのは当然あるべき流れなのではないのかなというふうに思っております。
 
 ただ、ちょっと気になりましたのが、横長の資料の4ページに仮想通貨を用いた証拠金取引に係る相談などの状況について、どのような相談がなされているかというようなことについて整理をしていただいた資料がございます。ただ、これを拝見しますと、システム上の不備だとか、あるいは契約に書かれていたり、広告していることと違うことをやっているというようなことがかなり主な相談の内容となっています。そうした状況を見ますと、新たに規制を加えたことによって、それで是正される部分はあると思いますけれども、現状の問題点をほんとうに是正していくためには、実際に業務に当たっている業者の方に、しっかりとしたシステムを作っていただき、これは当然のことだと思いますけれども、やるべきことをしっかりやっていただくような部分が非常に重要なのではないかと思います。これは規制をすればそれで足りるということではなくて、実際の取引に当たっている方々がもう少し目線を上げて、取り組んでいただかないと、いくら規制を加えたからといって、実際の利用者の方からのご不満、ご相談というのは減ってこないのではないかというような気がいたします。
 
 そういったこととの関係で、資料の最後のほうで、みなし登録に関するお話があったと思います。本来、登録ということですので、比較的形式的な、一定の要件が満たされればスタートしていただくということが想定されているのかもしれませんけれども、今発生してきている問題というのはなかなかそれではうまくいかない、実際に守っていただけないような実態があるということかと思います。したがって、登録のときに実態についてもある程度立ち入って審査をすることが期待されているといったような状況があるのではないかと思います。そうすると、登録にある程度時間がかかるというのはやむを得ない部分があって、そういったようなことを前提に制度を考えざるを得ないのかなという気がいたしております。
 
 ただ、その期間について、この資料の6ページでは、新たな仮想通貨の追加を行わないですとか、新規顧客の獲得を行わないですとか、あるいはウェブサイトでわかりやすく表示をするというようなことが書かれていますので、これはほんとうにぜひやっていただいたらいいのかなと思います。
 
 ちょっと悩ましいのは、新規に特定の顧客についてどんどんポジションを拡大するというようなことがどうなのかなというのがやや気になるところですけれども、基本的に経過期間であるということで、顧客に対してもわかりやすく、あとは業容が拡大するということのないような措置を含めて、しっかりと登録審査をしていくということのほうが望ましいのではないかと思います。
 
 あと、実際にこの経過措置を利用する方がどういう方なのかということなのですけれども、それは今回、金商業の一種と同じような規制を入れるというようなことだと思うのですけれども、この仮想通貨のデリバティブというのは、じゃあ、誰ができるのかということを考えたときに、金商業一種と同じようなので、金商業一種の方はできるのか。仮想通貨交換業の方は、金商業一種の登録を別途することもなく、仮想通貨交換業の登録のままできるのか。そうではなくて、金商業一種に求められているスタンダードを、これがイコールか、あるいはどれだけ上がるのかというのはちょっとすぐに私自身もよくわからない部分もあるのですけれども、新たに満たす必要があるのか。そういったような点で、誰がどういった条件でこれができるんだろうかというような問題はあるような気がいたしまして、その点によって、この経過措置の適用をほんとうに必要とするような方々がどれぐらい出てくるのかとか、そのようなこともわかってくるのではないかと思います。
 
 ここら辺は事務局で、誰ができるようになることを想定されているのかということがひとつお伺いできればと思っております。
 
 あと、これは最後ですけれども、今回、仮想通貨ということでお書きいただいていますけれども、仮想通貨の定義をどう考えるかによって、ひょっとすると、また漏れてくるものもあるかもしれないと思います。例えば、今、暗号資産ということで、通貨にこだわらず、ICOみたいなものも比較的取り込んで、幅広く考えていったらどうかというのが一つのトレンドのような気がいたしますけれども、その仮想通貨に関する、あるいは仮想通貨等に関するデリバティブということについて規制を設ける際に、諸外国のように包括的な規制であればともかく、一つ一つ特定していくという観点では、多少フォワード・ルッキングに定義を考えるということもあってもいいのかなというような気がいたします。
 
 以上でございます。
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 ご質問にかかる部分があったと思いますが、小森さん、お願いします。
 
【小森市場課長】 
 新しいデリバティブ取引業者の対象に既存の一種業者や仮想通貨交換業者が入ることについて、どのように考えるかという点でございます。制度の組み方は、ある面でどのようにでもできる、ということが短いお答えにはなるのですけれども、もし仮に討議資料にありますように、FX業者にかかっている規制に加えて、さらに厳しい規制を仮想通貨デリバティブ取引業者に課すということになるならば、一種業者が自動的にこの新しい業務ができることにはならないということではないかと思います。
 
 それから、仮想通貨交換業者に関しましては、先ほど参考資料の6ページに現行の一種業者、FX取引業者にかかっている行為規制と、仮想通貨交換業者にかかっている行為規制の概要が比較してあります。仮想通貨交換業者にかかっている規制のほうがかなり限られたものになっておりますことからしますと、仮想通貨交換業者が、直ちにこの仮想通貨デリバティブ取引業者になれるわけではない、ということになるのではないか、というふうに思います。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。機能的アプローチからいっても、今おっしゃったように、新しい業規制がデリバティブ取引業規制という形で入れば、既存の交換業者であっても、何業者であっても、デリバティブ取引をやる以上はそれに服するということで、具体的な調整とかその他の姿はいろいろあり得るということですよね。
 
 それでは、井上さんと、それから、坂さんの順で。井上さん、どうぞ。
 
【井上メンバー】 
 先ほどはどうもご説明ありがとうございました。今の状況を放置できないということについては、各メンバーの方々がおっしゃったとおりだと思っておりまして、デリバティブ取引については、一定の、あるいは、より充実した規制が必要であるということだろうと思います。
 
 ただ、先ほど冒頭に岩下メンバーがおっしゃったように、仮想通貨についてはいろいろ評価が定まっていないところがありまして、現状は、どうも問題点に光がより当たっているようで、放置できないという意味では、規制の必要はもちろん当然ありますし、意味があるのかという投げかけにも確かにそんな面もあるとは思うんですが、しかし、評価が定まっていないというのは、今後、一定の意義を持つ可能性もあるわけで、そういう可能性を意識して、もともと現物取引といいますか、仮想通貨自体の取引が規制のもとに許されているということなのだと思います。ですので、方向性としては、適正化をしつつ、市場ができていく、さらに積極的に育成する方向となることもあり得る前提で、今後は進んでいく可能性があると思います。デリバティブというのは、基本的には原資産の取引とパラレルに考えるべきもので、原資産の取引がおよそ禁じられるということであれば、もちろん許されるべきではないのですが、適正な規制のもとに現取引を許容していくということであれば、そのプライシングのメカニズムも含めて、市場にはいろんなあり方があろうかと思いますけれども、形成されていく過程で、自然にできてくる取引ということでしょうから、デリバティブだけをとりわけ悪者と見て、原資産を通常の規制のもとで許容しているのに、デリバティブはだめということもまたちょっと極端な気がいたします。
 
 ですので、現状、足もとを見ながら、問題があるようでしたら、やや厳しめにということはあろうかとは思いますけれども、他の原資産のデリバティブ取引に対する並びの規制を横目に見ながら適正な規制のもとに、ある程度取引を、場合によっては前向きに捉えて、認めていくことも必要なのかなと思っております。
 
 実際上、どういった人たちがデリバティブ取引をしているかについて、学生であったり、個人であったりを対象として、そういった人たちを保護するルールを上乗せで考えるというのは、当然、検討過程であってはいいと思うんですけれども、デリバティブの取引をどう禁じていくのかというアプローチではなく、どう適正化していくのかというアプローチで、規制を考えたらどうかと思っております。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、坂メンバー、どうぞ。
 
【坂メンバー】 
 ありがとうございました。総論的な点について幾つかと、各論的な点について幾つか意見を述べさせていただければと思います。
 
 まず総論的な点についてですけれども、今の井上先生のお話は、やや将来にフォーカスしたご意見かというふうに感じましたけれども、やはり現状を踏まえてどう考えるかという観点からもいま少し見る必要があるのではないかと思います。
 
 一般にデリバティブというのは、リスクヘッジの手段を提供すると。特に実体経済活動にリスクヘッジの手段を提供することに意義があるということと思います。投機目的の取引は、リスクヘッジ手段に流動性を供給するということに意義が認められるということになるんだろうと思います。この点、現物の仮想通貨取引の現状を見ますと、ほとんどが投機的取引であるということからすると、そもそもリスクヘッジの対象となるような取引自体が現状どの程度あるのかという点については、非常に疑問であります。
 
 この仮想通貨デリバティブ取引が現状の投機取引である現物取引にさらにレバレッジを効かせた投機の機会を提供するということになるのであれば、その社会的有用性や社会的意義というのは極めて疑問であるというふうに言わざるを得ないと思います。
 
 かかる観点と、そもそも仮想通貨の有用性について評価が定まっていないということも考えあわせますと、私は個人的には、仮想通貨デリバティブについて違法であるということを明らかにして、禁止をするというのも一つの方向かというふうには思っております。他方で、仮想通貨のデリバティブ取引が現在存在しているということを前提としなければならないということに鑑みますと、一定の規制をきちんとしていくということはあるべき方向かとも思います。
 
 後者の観点からは、不適切な投機を防止する、あるいはマネーロンダリング等の乱用を防ぐという点からかなりきっちりとした規制が必要かと思います。規制を考えるときには、投資被害の防止という観点からも見ておくことが重要かというふうに思っておりまして、特に現状行われている多くの取引というのは、証拠金取引の形をとっているかと思いますが、この間20年ぐらいの間に、証拠金取引の形をとる投資被害というのはかなり繰り返し起きております。かつては、外国為替証拠金取引、今のFXが広く被害を及ぼしましたし、その後は、ロコ・ロンドンの金取引ですとか、あるいは時代を下っていきますと、排出権取引等においても、証拠金取引型の被害が生じております。そういった経過は十分に見ておく必要があるだろうと思います。
 
 今回、投機取引の観点から、現物の取引について規制整備がされる他方で、もし規制の緩い部分が残るということになれば、やはりそこに質の悪い人たちが目をつけるなどの問題が起こるということは当然考えられます。そういうことを防ぐためにもきちんとデリバティブ取引についても規制を入れるということは必要かと思います。
 
 特にもともとデリバティブ取引は、賭博の構成要件に該当するということで、違法性阻却が認められるためにはそれなりの整備が前提となるということになろうかと思いますので、その観点からも規制の整備は必要かと思います。
 
 それから、証拠金取引については、先ほどもお話ししましたけれども、結構昔からある形の取引ですので、参照指標に仮想通貨の価格を持ってくるということによって、それ自体に何か新しいイノベーションが起こるという可能性は低いと感じております。
 
 それから、この仮想通貨デリバティブが現物の取引にどういうふうな影響を及ぼすのかということも気になっておりまして、おそらく使われ方によっては、かえって現物の価格変動を増幅するというおそれがあるのではないかと。将来的な可能性として、決済手段としての可能性ということもあわせて考えるのであれば、価格変動を増幅するような取引というのは抑制されたほうがいいのではないか、そういう観点も必要と思われます。
 
 それから、各論的なところですけれども、3ページの記載されているところについて少し意見を述べさせていただければと思います。デリバティブとして規制の対象とするということであれば、皆さんご指摘のように、デリバティブの規制枠組みと基本的に平仄を合わせると。それから、仮想通貨については、その上乗せを図るということは必要なところかと思います。
 
 記載されている項目の中で、自己資本規制というのがありますけれども、これは基本的にはリスクの量に応じた自己資本の確保を求めるということで、リスクベースの規制という考え方に沿うものであって、この点は非常に重要なのではないかと思います。
 
 ただ、金商法の法制の中では、市場リスクと取引先リスクと基礎的リスクという、リスク項目によって、リスク相当額を把握するということになっていると思いますけれども、仮想通貨に関するリスクが、これらの項目で十分に把握できるかどうかという点については、チェックが必要かと思います。
 
 それから、店頭FXについては、業者と顧客との利益相反関係に基づく不公正取引を防止するですとか、あるいは決済リスクの管理の強化を図るという観点から、米国の制度を参考に、各業者の日々の取引データを自主規制機関及び当局に報告をするという、こういう報告制度の導入整備が進められているというふうに承知しております。
 
 仮想通貨デリバティブについても同じように、また、これについては、マネーロンダリング等への監視の視点からも同様の制度整備が行われる必要があるのではないかと思います。
 
 こうしたリスク管理やモニタリングというのは、IT関連の事業者の方々が比較的得意とするところではないかと思われますし、そうした力を発揮することが期待される分野でもありますので、より効率的な管理や情報共有、イノーベティブな取組が期待されるのではないかと思います。
 
 それから、分別管理についてですけれども、この点については、証拠金取引では、証拠金の分別管理が問題となるということなんだろうと思います。これもFXにおいては、かつてFX業者が証拠金を流用してしまって、破綻に際して、お客さんにその証拠金を返金できないという被害が生じて、その後に信託保全の制度が入れられたという経緯があります。こういった過去の経験を踏まえるべきで、仮想通貨のデリバティブについても、そういった被害の発生を待つことなく、きちんと制度整備がされるべきだろうと思います。
 
 それから、証拠金については、注の中でEUが倍率を2倍にしているという記載がありますけれども、これは何で2倍なのかということについてわかる話で教えていただければというふうに思います。
 
 それから、4ページの仮想通貨の特性を踏まえた対応についてですけれども、これについても若干幾つか述べさせていただければと思います。一つは、対象となる仮想通貨について、これは現物取引を認める通貨よりも限定するということを考えるべきではないかと思います。特に取引規模の小さい仮想通貨は、相場操縦を行いやすいですとか、あるいは価格変動の影響を受けやすいというところがあろうかと思いますので、こういった仮想通貨は証拠金取引には向かない面があるのではないかと思われます。
 
 それから、討議資料の中で文中に、社会的意義の程度と比して、投機を招くこと等の害悪のほうが大きい場合という指摘がありますけれども、ここに書かれているようなことがもし起こるとすると、また、規制が入ったとしても、そういった事態がなかなか十分改善されないといいますか、きちんとならないという状況がある場合には、規制対象となる取引であってもそもそも社会的相当性が認められないと、こういう場合もあり得るのではないかというふうに思います。
 
 それから、記載の中で、「資力が不十分であるなど、取引を行わせることが不適切であると認められる者の取引を制限する措置」というのは、これはぜひとも必要と思います。現状、仮想通貨が発展途上の技術であるということに鑑みますと、また、その仮想通貨がゼロになる可能性があるというご指摘もあるところからしますと、そうしたことを前提とすべきで、管理の方法というのは、ゼロになってもよい資産を原資とするかどうかというところが一つのチェックポイント、重要なチェックポイントのひとつになるんじゃないかと思います。
 
 仮想通貨はリスクが高い分、ある意味、ほかの金融商品に比べるとモニタリングが行いやすい面もあるのではないかというふうに思います。こうした管理の点についても、IT等による技術的工夫が期待されるところかと思います。
 
 それから、顧客に対する注意喚起の点についても極めて重要で、ここも現物の仮想通貨においてもこういった注意喚起が必要かと思いますけれども、技術的な点も含めて工夫が求められるところかと思います。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、楠さん、三宅さん、加藤さんの順でお願いします。楠さん、どうぞ。
 
【楠メンバー】 
 ありがとうございます。まず資料2の内容につきまして、全般的に賛成であるというお話をさせていただきたいのと、何点か論点についてですけれども、まず、仮想通貨FXの特性というのがほんとうに、いわゆる外為の証拠金取引と同様のものなのかという点に関して、やはり若干まだわからないというか、違いがかなりあるように感じています。やはり実需があるかないかですとか、あるいは債券のオプションであれば、価格モデルの中で、例えば償還のタイミングであったりとか、償還の価格みたいな概念があるわけですけれども、仮想通貨というのはそもそも価値の裏づけがないですし、払戻しや償還といった概念もないので、今のオプションの理論にそのまま当てはまるのかというのは、まだまだわからない点が多いと。
 
 一般的には、市場の中で流動性が供給されることによって、理論価格に収束をしていくというのが、こういったオプション取引も含めた社会的意義の一つだと思うんですけれども、仮想通貨のように、そもそも裏づけがなくて、なおかつ、発行量が決まっていて、需給がそのまま価格に直結しがちであるものというのは、ともすると、流動性を供給することによってボラティリティが増したりですとか、あるいは価格を押し上げるというような可能性というのは十分にあると。ただ、こういった点についてはまだ十分にそういった暗号資産の価格モデルというのが確立していないと思うので、ここはしっかりと注視をしていって、そういった理論を踏まえて、随時見直していく必要があるのではないかと考えております。
 
 そういった観点で、4ページ目の仮想通貨の特性を踏まえた対応という点に関しまして、私は前回、いわゆる匿名通貨に関して、もし仮にそれが実需があるのであれば、これが海外の取引所やDEXに取引が流れてしまって、完全に闇にこもってしまうよりは、交換所での取扱いを認めたほうがよいのではないかというような主張をさせていただきましたけれども、仮に主に犯罪やマネーロンダリングに悪用されていて、犯罪者がいっぱい持っているような仮想通貨があったときに、ここに流動性を供給して、価格を押し上げることが適切であるかというと、かなり疑問があると思っておりまして、私は現物として扱うべき仮想通貨よりも狭い範囲で、先ほど坂メンバーからも、流動性が低いものは相場操縦等のリスクもあるので扱わないほうがいいんじゃないかというようなお話もありましたけれども、主にあまり不適切な使途で広く使われているものに関しても、あまり市場を過熱させないために証拠金取引を認めないという考え方はあるのではないかというふうに感じております。
 
 5ページ目以降の、これをどういった法規制の枠組みで扱うべきかという点なんですけれども、少なくとも取引の性質としては、FX取引と類似していることを考えますと、少なくとも、これは決済ではない話なので、資金決済法で見るのが適切だとは思えないと。やはり金商法で見ていく。金融商品として捉えたほうがよいのではないかというふうに思います。
 
 じゃあ、一方で、既存の一種事業者というのはいっぱいいらっしゃるわけですけれども、全ての今の一種事業者がほんとうに仮想通貨の特性を理解して、商品を扱えるのかというところは懸念がありまして、これまでも議論されてきたホットウォレットの取扱い一つとっても、おそらく今の一種事業者のシステムの観点だけではなくて、仮想通貨固有のリスクというものをきちっと見ていかなきゃいけないと思うんですね。
 
 なおかつ、店頭取引の後ろ側では、カバー取引みたいな形で、仮想通貨の現物を扱うことというのは十分にあるはずですので、そうすると、おそらくその仮想通貨の証拠金取引を扱う場合には、交換業の免許と、あと、一種の金商の免許と両方を持っている必要があるのではないか。
 
 一方で、この話をすると、では、例えばこの仮想通貨の現物の取扱いをほかの業者に任せることによって、一種事業者が普通に取り扱っても問題は少ないんじゃないかという議論も出てくるかと思うんですけれども、この点についてはしっかりと議論する必要があると思いまして、おそらく米国をはじめとして諸外国の動向を見ても、既存の金融機関がどこまで仮想通貨を扱えるようにすべきかというのは、さまざまな議論が国際的にも行われているところだと思いますので、こういった議論を踏まえながら、日本として突出した対応にならないようなことというのを考えていく必要があるように思います。
 
 ありがとうございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、三宅さん、どうぞ。
 
【三宅メンバー】 
 本日はありがとうございました。私からは、まず仮想通貨デリバティブ取引や信用取引の社会的意義といった点についてコメントさせていただいた上で、本日の討議資料について全般的なご意見を述べたいと思います。
 
 現在、こうした証拠金取引等の顧客は、約14万人存在するということですが、これは現物取引の顧客数の約4%に相当いたします。その一方で、取引高としては全体の8割強を占めている状態にあります。証拠金取引等は、レバレッジを効かせておりますので、取引高が多くなるのは当然ではありますが、逆に言いますと、約14万人という、ごく一部の顧客によって仮想通貨の価格のボラティリティが増幅し、その結果として、当初、資金決済法という枠組みを整備した際に想定していた、決済手段としての活用を逆に困難にしているという面も否定できないのではないかと思います。
 
 先ほど坂メンバーからもご指摘があったと思いますが、取引の実態という面で申し上げますと、やはりヘッジを目的としたものではなく、単純にレバレッジを効かせて、投機手段として利用しているのが殆どではないかと思います。こうした点を踏まえますと、私としましては、取引の社会的意義は決して高くないと考えており、少なくとも現物市場が成熟するまでは、基本的に抑制対応とすべきではないかと思います。
 
 そのためにも、例えばですが、顧客との取引を行うに際して、資力や知識といった面で一定の基準を設定し、当該基準を満たさない顧客とは取引を行わない、というような措置が必要になってくるでしょうし、そもそも取引の対象となる仮想通貨の種類についてもある程度絞り込むことが必要なのではないかと思います。
 
 一方で、既にこうした取引がグローバルに行われていることを勘案しますと、今回の討議資料にお示しいただきましたように、既存のデリバティブ取引に対する規制、すなわち第一種金商業者に対する規制をベースとして、仮想通貨の特性を踏まえたファインチューニングとして規制の上乗せを行うというアプローチにつきましては賛同いたします。
 
 ただ、証拠金倍率が少し気になっておりまして、自主規制規則案では4倍といった水準が示されておりますが、やはりさまざまな要素を勘案する必要があるのではないかと思います。例えば対象となる仮想通貨の種類が挙げられます。自主規制規則案における4倍という水準は、ビットコインの価格変動を参考に設定されていると認識しておりますけれども、こうした仮想通貨の種類に加え、証拠金として、どういった種類のものを預託するかといった論点もあります。また場合によっては顧客の資力や絶対的な取引額といった要素も総合的に勘案しながら、保守的に設定することが望ましいのではないかと思います。
 
 それから、最後に、経過措置についてですが、やはり一定の期限を設ける必要があるのではないかと思います。予見可能性を高める上でも有効かと思いますので、例えば経過措置の期間中、継続的にモニタリングを行い、当初の計画から大幅に乖離するといった事象が生じた場合には、一定程度の時限を区切って、そこからは業務の縮退に向かわせるといったような方策も考えられるのではないかと思います。
 
 みなし業者は、ゴーイングコンサーンに重大な疑義を抱えているといった位置づけにございますので、既に永沢メンバーのほうからもお話がございましたように、やはりわかりやすく表示することが必要ではないかと思います。
 
 少し例えは悪いのですが、たばこのパッケージに表示されている警告のような、わかりやすい表示があっても良いのではないかと個人的には思っております。また、直接は関係しないかもしれませんが、仮想通貨全般に関しまして、業者以外のサイトから誘導されるケースも多いと思いますので、こうしたアフィリエイト広告などへの対応も場合によっては必要になるかもしれないと思います。
 
 私からは以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、加藤さん、どうぞ。
 
【加藤メンバー】 
 ご説明ありがとうございます。既にご発言のあった先生のご意見と重なる面が多いのですけれども、意見を述べさせていただきます。私も、仮想通貨を原資産とするデリバティブ取引の規制を考える際には、原資産である仮想通貨の取引とデリバティブ取引の相互の関係を考える必要があると思います。たしかに、現時点で、デリバティブ取引が行われることによって、原資産とされた仮想通貨の価格が安定する方向に行くのか、より増幅する方向に行くのかを予想することは困難です。しかし、デリバティブ取引の原資産である仮想通貨について、例えばビットコインにしても、何か信頼できる価格、市場価格のようなものがあるのか、不安があります。
 
 つまり、ビットコインについて相場操縦が可能であるかどうかはわかりませんが、デリバティブ取引の場合には、契約の条件、たとえばトリガー事由が客観的に定まっているということが非常に重要だと思います。つまり、どの価格に従って、最終的な取引の決済が行われるかが重要であるということです。ですから、デリバティブ取引の規制を考える際には、もちろん顧客の保護ということは重要ですけれども、そもそも原資産である仮想通貨について、公正な取引が行われている状態を確保するということをセットで考えていかないと、健全なデリバティブ市場は育たないと思います。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、中島メンバー、どうぞ。
 
【中島メンバー】 
 もう多くの方から意見が出ましたのですけれども、事務局の資料に沿って幾つかコメントを述べさせていただきます。
 
 まず2ページにある「金融規制の要否」というところですけれども、これは他のメンバーの皆さんがおっしゃられたとおり、規制を入れていくべきであるということには異存はないものと思われます。
 
 論点は幾つかありますけど、1つは、他のデリバティブ取引が一定の規制に服している中で、仮想通貨のデリバティブ取引のみを規制の対象外とするような合理性は乏しいと思われるということが1点です。
 
 それから、2点は、諸外国でも仮想通貨に係るデリバティブ取引が金融規制の対象になっておりますので、日本だけを対象外とする理由には乏しいのではないかと思われます。
 
 それから、ほかの委員からもご指摘ありましたが、現時点では、リスクヘッジの機能を果たしているというポジティブな側面よりも、レバレッジ機能によって投機を助長しているというネガティブな側面が目立っているということがあります。これらを考えると、やはり金融規制の対象にしていくべきでしょう。同じ機能を果たしているものに対しては、やはり同様な規制をかけていくというのが大原則であろうと思われます。
 
 仮想通貨のデリバティブ取引につきましては、バーチャルな資産をバーチャルに取引しているという意味で、個人的には非常に気持ち悪いなと思っていまして、違和感を感じるところがあります。ほかの委員の方の言い方をかりると、経済的な意義があるのか、社会的な意義があるのかということがやや疑問があるわけですけれども、さはさりながら、現時点で相当程度の取引がなされているということ、あるいは、今後、仮想通貨の市場がどのように推移していくかというのは不透明な面もありますので、現時点でデリバティブ取引を全面的に禁止するというのは難しいのではないかなと思われます。その意味では、討議資料にもありますとおり、「一定の規制を設けた上で、利用者保護や適正な取引の確保を図っていく」という方向性が望ましいのではないかと考えます。
 
 それから、3ページ目の店頭デリバティブ取引との類似性を踏まえた対応ということですけれども、同様なデリバティブ取引を行っている以上は、FX取引業者などと同様な規制を課すべきであるという点は同意いたします。仮想通貨のデリバティブ業者のみに規制を軽くするという必然性はないのではないかなと思います。
 
 論点の一つが、証拠金倍率の話だと思いますけれども、現状では最大25倍となっているところを、今度、自主規制案では4倍という案が出てきているという点は評価したいと思います。ただし、これでもちょっと高過ぎる可能性があるという点は一つ指摘しておきたいんですけれども、昨年の12月からシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)と、シカゴ・オプション取引所(CBOE)という2つのアメリカの取引所でビットコインの先物取引が始まっております。これらの取引所での証拠金比率(イニシャル・マージン・レート)がCMEで43%、CBOEでは44%となっており、これは証拠金倍率にすると約2倍ということになります。
 
 ここから見ると、この自主規制案の4倍でも甘過ぎるかもしれないなと考えています。
 
 こういうCMEとかCBOEというのは、さまざまなものを原資産とする先物取引、デリバティブ取引をやっている、いわばプロなので、そのプロの人たちがこれまでのヒストリカル・ボラティリティを勘案して、こういう倍率を決めているということで、我が国でも上限規制を考えるときはこういった数字を出発点にすべきではないかと考えます。多分EUでも2倍になっているというのは、こういったところを見ているのではないかなと思います。
 
 それから、仮想通貨の特性を踏まえた対応ということで、4ページ目ですけれども、一つは、ほかの委員の方がおっしゃっていましたけれども、デリバティブの対象とする仮想通貨の範囲をどうするかという点です。現物はだめなんだけど、先物ならいいよということでは、やっぱり規制の一貫性が保たれませんので、現物とイコールか、より狭い範囲に限るということが必要になると思います。
 
 それからもう一つは、知識が十分でない個人顧客を守る方策ということですけれども、この点につきましては、私は「適合性原則」を業者の方に遵守してもらうのがいいのではないかなというふうに考えております。具体的な例で言うと、株式取引ですとか、他のデリバティブ取引を全く行ったことがないような素人の人に対して、いきなり値動きの大きい仮想通貨のデリバティブ取引をさせるというのはやはり適切とは言えないのではないでしょうかということです。
 
 適合性原則につきましては、皆さんのほうがお詳しいと思いますが、勧誘を禁止するという狭い意味での「狭義の適合性原則」のほかに、業者が利用者の知識、経験、財産等に適合した形で販売を行わなければならないという「広義の適合性原則」があるとされております。こちらの広義の適合性原則を徹底してもらうことによって、素人がいきなりハイリスクのレバレッジ取引に入るということをできないようにしてはどうかというふうに考えております。
 
 それから、5ページの信用取引ですけど、これは機能とかリスクがデリバティブ取引とほぼ同様でありますので、これはデリバティブ取引と同様に規制をしていけばいいのではないかと考えております。
 
 それから、みなし業者の経過措置の話ですが、そもそもみなし業者を認めたというのは、規制の以前から取引を行っていた利用者に混乱とか不利益を与えないためという趣旨であったはずなので、その業者がその地位を利用して、いたずらに業容を拡大したり、あるいは新規の顧客をどんどん集めたりするというのは、当初の趣旨とはちょっと異なる運用になっていると思われます。
 
 したがって、これまでやっていた取引については引き続き認めるというのが趣旨であろうと思いますので、この業容拡大とか新規顧客という意味では、一定の歯止めをかけるべきだと考えます。
 
 それから、みなし業者であることの認識を徹底させるためにということで、永沢メンバーから話が出ましたけれども、この点は、前にも申し上げたんですが、「共通のみなし業者マーク」を作って、これをメインページに表示させることを義務づけてはどうかと考えています。資料にあったように、文章でいろいろ書いても、利用者はそんなものは読まないですから、やはり一覧性があって、バンと、ああ、この業者はみなし業者なんだなとわかるような、一目見て認識できるような仕組みをつくることが大切だと思います。
 
 それから、みなし業者の長期化の問題ですけれども、そもそもみなし業者というのは過渡的な経過措置であったはずなので、これが何年もわたって長引くというのはやはり好ましくないというふうに考えます。このため、登録が可能な「デッドライン」を設けるべきでありまして、もしそれまでに登録の手続が完了しなかった場合には、みなし業者としての資格を喪失するというような規定を設けてはいかがかと考えています。
 
 2017年の4月が法律の施行時点ですので、例えばそこから3年以内にするというような規定を設ければ、今、1年半が経過していますけど、残りの猶予が1年半ありますので、最低そこまでにはやるという形で、長期化の問題を避けたほうがいいのではないかなというふうに考えております。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 先ほど坂メンバーから、EUはなぜ2倍かというご質問があって、今、関係して、アメリカの状況を中島メンバーからもご紹介いただきましたので、事務局のほうからお願いします。
 
【小森市場課長】 
 EUの証拠金倍率の上限が2倍となっていることにつきまして、EUの担当当局が公表している資料から、私どもが把握していることを申し上げますと、ユーロと、例えばビットコインなど、さまざまな通貨との間の組合せというのをもとにしまして、日次の価格変動率というのをヒストリカルに出しているそうでございます。
 
 そこにはさまざまな価格変動率というのが存在しますけれども、その中で、5%の確率でロスカットが発生するようなレバレッジ倍率は何倍かというような計算をしておりまして、その結果として、一律2倍ということをEUの当局は入れているということでございます。
 
 この2倍の規制というのは、個人と法人とを区別せず一律ということでございます。また、いろいろな仮想通貨はございますけれども、仮想通貨の種類を問わず、2倍という規制だということでございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。そうすると、アメリカで、今ご指摘があったのは、取引所デリバティブのお話であって、店頭デリバティブではないと思います。ですけれども、EUはおそらく一律というふうになっているということですね。はい。どうもありがとうございました。
 
 皆様方から一通りご意見を出していただきまして、基本的にはこの資料に書かれている点に、さらにご指摘をいただいた点を加えて、検討を先に進めるということでよろしいのではないかという印象を私は持ちました。
 
 ただというか、概念整理ということでいうと、冒頭、岩下先生がおっしゃったことにちょっと関係するのですけれども、資料に金融の機能と書いてあるけど、金融なんでしょうかというのはすごく私も気になるのですが、概念整理ということで、私から岩下さんに質問させていただきたいのですけれども。
 
 デリバティブ取引というのは、原資産はおそらく何でもいいというか、変動する数字であれば成立すると思うのですよね。言葉を変えれば、デリバティブ取引というのは、変動する数字の当てっこである。ですから、この部屋に、次の回に何人の方がいらっしゃいますか、その次にと、これは数字は変動しますので、当然デリバティブ取引の原資産になり得るわけですよね。
 
 そういうときに、原資産が変動する数字であれば、どんなものであっても、金融の規制というか、先ほど表がありましたけれども、アメリカですとか諸外国では割とそういう法制度にしている国が多いようですね。それに対して日本では、現在の金商法ですと、追加していける状態には金商法制をつくったときにしてあるので、今ここでは追加すべきかどうかということをご議論いただいているのですけれども、これというのは何でも同じような規制というのが望ましいとお考えなのか、入れるものと、入れないほうがいいというものがあるとすると、その線引きは金融という切り口なのか、何か別の切り口なのかということについて、いかがでしょうか。
 
【岩下メンバー】 
 私の全くの私見でございますけれども、例えばロンドンにブックメーカーという方々がいらっしゃいますよね。例えば王女が生まれたときのその人の名前は何であるかということを当てるみたいなことをやって、それに何がしかの掛金を掛けて云々という、これも商売的にやっている人たちがいらっしゃいます。これも金融なんでしょうかというと、何となくあんまり金融っぽくはないと、私は思います。英国のFCAが規制しているという話も聞いたことがないので。そうだとすると、それなりに金融であることのポイントというのは、例えば歴史的な経緯であるとか、経済的な要請であるとか、それが金融機関が果たすべき役割であるというふうに多くの人たちが合意できるというところに何がしかの基準があるような感じがいたします。
 
 その意味では、例えば原資産が何であっても、それ自体は、この当てっこによって、お金が動くと。お金が動くから金融だという話ではなくて、やはり原資産が動くことによって、それに伴ってさまざまな経済活動が起こり、例えば株式であれば、新たな株式会社がつくられることによって、さまざまなリスクマネーが供給されるであるとか、あるいは、債券であれば、その売買によって、資金の仲介なり何なりが行われるだろうとかという、そういうことをサポートするために、そのデリバティブの機能が存在するということが、これは多分、一種、きれいごとかもしれませんけれども、必要な要件のような意識がございます。
 
 そういうふうに考えていくと、さまざまなものがデリバティブであるけれども、それらの多くは何がしかの形でそこに貢献しているというふうに考えられるので、金融の規制上の対象に、まさに先ほど坂委員でしたか。賭博の構成要件を除外するためにというふうな議論があるような意識は、私も持っておりますけれども、そういう意味があるのであれば、そういう位置づけにしてよいであろうということがある意味で社会的に合意されているのだと思うんですね。
 
 したがって、これは全く新しい分野ですから、どこがこうしているからということで決めるという話では多分ないのだと思いますけれども、仮想通貨がそういう意味での経済的な有用性を持つものであるかどうかということに、本件が金融的なものになっているかどうかということは大きくかかっていて、その部分が、まだ現状では見極め切れないので、さまざまな留保条件をつけながら、しかし、いわば金融の1分野として、そのデリバティブ取引を規制してはどうかという提案になっているのではないかというふうに私は理解いたしました。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。ほかの皆様方、いかがでしょうか。さらに追加の点、この資料2と3についてございましたら、お伺いしたいと思いますけれども。どうぞ。坂先生。
 
【坂メンバー】 
 ありがとうございました。先ほどの倍率規制のお話をお聞きして、私は、そうであれば、2倍というのは検討すべきではないかなという感想を持ちましたというのが1点。
 
 それから、もう1点は、適合性の原則について、先ほどちょっとお話がありましたけれども、これは概念整理が必要かなと思ったりいたします。基本的には、仮想通貨のデリバティブに関しては、この事務局資料の4ページにあるように、資力が不十分であるなど、不適切であると認められる者については、取引自体をこれは制限するという趣旨かと思うんですけれども、そういうアプローチが重要なのではないかというふうに考えております。
 
 適合性という言葉との関係でいいますと、狭義の適合性は多分、不適切な者に勧誘しないというところに重点があるんだと思うんですけれども、おそらく仮想通貨は、インターネット上での取引等もあろうかと思いますので、多分、勧誘レベルでは捉え切れないので、もう少し広く取引を制限するということが必要なんじゃないかということ。それから、広義のほうの適合性は、どちらかというと、その人にふさわしい説明をするというところに重点があるんじゃないかと思います。その説明ももちろん大事ですけれども、どちらかというと、取引の制限といいますか、そちらのほうに、この仮想通貨デリバティブについては、重点を置くべきではないかというふうに考えます。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 永沢さん、どうぞ。
 
【永沢メンバー】 
 ありがとうございます。私も皆様のご意見を伺いまして、倍率の制限については、今の店頭FXとは別に考えていく必要があると思いました。中島メンバーからプロが参加しているCME、CBOEでの考え方についてご紹介がありましたけれども、そういった海外の状況も参考にして考えていく必要があるのではないかと思いました。
 
 それから、もう一点、先ほど申し上げ忘れましたが、不招請勧誘と一言で言ってしまいますが、この場合の不招請勧誘というのは具体的にどういうことを考えるのかというところもありまして、私はテレビコマーシャルをどう考えるのかも大事ではないかと思います。現実のところ、テレビコマーシャルはどうなんだろうかと思います。広告・勧誘規制というところの括弧の中にありますけれども、これからの回で議論の機会があればと思っております。ありがとうございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 楠さん、どうぞ。
 
【楠メンバー】 
 先ほど倍率の話がありまして、2倍の根拠というのは非常にEUのルールについて、明快にご説明いただいたところだと思うんですけれども、ここというのは結構大事な論点で、事業者さんへの影響も大きいところだと思うので、たしか業界団体さんのほうで、4倍という自主規制ルールをご検討されていらっしゃったと思うので、それについてもどういう根拠でその数字を出されたのかというのは、一度きちっとご説明いただけると大変いいかなというふうに思いました。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 この時点で、奥山さん、いかがでしょうか。どうぞ。
 
【奥山オブザーバー】 
 仮想通貨交換業協会、奥山でございます。先に、仮想通貨のデリバティブ取引に対しての金商法適用でございますが、基本、協会内のコンセンサスはまだ確保できているわけではございませんが、私の現時点での認識として、根拠となる合理性が必要だというふうに思っておりますので、不用意な案のお墨つきにならないということ自体を前提にさせていただきながら、必要なものであるというふうに認識しております。
 
 その上で、委員の先生方からご指摘を先ほどいただいておりました部分につきましても、多くの部分に関しましては、金商法に倣った自主規制の中で、自主規制団体が取り組まなければいけない要素が非常に多いのかなというふうに思っております。
 
 例えば適合性の原則につきましても、例えば永沢先生ご指摘のような資力ですとか、学生の取引をデリバティブに関して禁止するですとか、所得に対しての制限はどうするんだと。また、金融商品の他の部分の経験ですとかそういったものの適合性の中にはちゃんと盛り込みながら、口座開設審査ですとか、継続的な取引審査が必要なわけでございまして、そういったところは、具体的に適合性をどう見るんだ、どう判断していくんだというところにつきましては、自主規制団体側のやっぱり規則整備、こういったところが多く必要とされるところなのかなというふうに思っております。
 
 いずれにせよ、デリバティブ取引を野放図に助長するわけにはまいりませんので、こういったところに対しての金融庁認定の自主規制団体ということになりましょうか。こちらのほうの取組というものが早急に求められるところではないのかなというようなところを考えておるところでございます。
 
 すみません。論点、倍率の話に戻りますけれども、まず取引量ですね。市場流動性が高まるということ自体は、先ほど価格変動を増幅するという話ももちろんあったわけでございますけれども、一般的に市場流動性が高まるということ自体は、釈迦に説法で恐縮でございますが、価格発見機能が充実するということでございます。流動性がないマーケットに関しては、流動性がないほうが相場操縦に起因したりですとか、あるいは乱高下ですとか、そういった希薄化した市場に対しての狙い撃ちのような価格変動がやっぱり助長される可能性が高いわけでございます。したがいまして、ある程度、市場流動性があるということ自体は、市場としても整備されますので、格付機関ですとか、あるいはアナリスト等による価格の水準提示等も行われ始めるということでいいますと、市場流動性を高めていくということ自体は、マーケットの健全な市場発達を促していくということに関しては、非常に重要な観点であるのかなというふうに思っているところでございます。
 
 そして、倍率なんですけれども、すみません。現在の4倍という倍率の算定根拠については前々回にご説明させていただきましたが、私見でございますが、4倍でいいというふうに、私としては思っておりません。そもそもやはりボラティリティ、変動率に応じた形でデリバティブに対しての倍率というのは適切に定められるべきだというふうに思っておりますので、現在の4倍水準は、25倍でやっている業者が多い中で、暫定的に置かせていただいている水準でございます。中長期的に適切な仮想通貨のデリバティブ倍率が何倍が適切なのかというところは、協会としましても、しっかり検討を進めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
 
 ただ、現在、FXに適用されておりますように、一律何倍というような表現が適切なのかというと、そうも思っておりませんで、例えばTetherのように、完全にドルにペッグしたような、そういった仮想通貨もございまして、こういったものに関しましては、基本的にはそんな1日何十%という変動は、原資産に対しまして、やっぱり起こさないわけでございまして、ビットコインはある程度安定している仮想通貨でもございますので、そういった部分で言いますと、他の仮想通貨を見ますと、先ほど委員の先生方、皆様ご指摘のように、4倍のレバレッジでも高過ぎるんじゃないのか、というようなものもたくさん見受けられるわけでございまして、そういった部分では、ボラティリティに応じた形で、やはり決済リスクですとか未収金発生リスク、こういったところを丁寧に勘案させていただきながら、各仮想通貨のデリバティブ取引を金商法の中に入れるのであれば、適切な倍率設定を自主規制も含めた形でどう設定していくかという検討が必要なのではないのかなと考えておるところでございます。すみません。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、岩下さん、加藤さんの順でどうぞ。岩下さん。
 
【岩下メンバー】 
 岩下です。今、奥山さんから、Tetherのお話が出ましたので、ちょっとだけコメントをさせていただきます。Tetherという、ケイマン諸島でしたか、ヴァージン諸島に本社を置く法人が発行しております仮想通貨。これは実際にはBitfinex社という香港の仮想通貨取扱業者と役員構成が同一の会社でございますが、こちらが発行しているUSDTと市場で呼ばれております通貨については、1ドル等に極めて近い価格変動をしているというのは事実であると私も認識しております。
 
 ただ、問題は、最近、Griffin、Shamsという、テキサス州立大学の先生方の研究によれば、Tetherの実際の取引の内容をブロックチェーンから解析したところ、一種のビットコインの価格操作のためにTetherの資金が使われていて、その金額は日本円にして約3,000億円ぐらいに達するというような分析結果が学術的なレポートとして出ております。
 
 もしそれが事実だとして、ブロックチェーンの記録を押さえたものですから、かなり信憑性が高いと、私も論文を見て感じましたが、今のところ日本では多分仮想通貨取扱業者の中でTetherを取り扱うというふうに登録している先はないと思いますので、国内では取り扱われていないと思いますが、この種のステーブルコインというのはこれから出てくる可能性は当然ございます。そのステーブルコインというのは実質的には、ドル建ての短期の無利子の社債のようなもの、例えて言うなら、まさにドルの紙幣をプリントして、それによって、他のさまざまな仮想通貨を購買できるというような性格のものになっています。
 
 かつ、その価格をドルにリンクさせるということは、マーケットにある程度介入することによって可能は可能なんですが、問題は、じゃあ、それはいつまで可能なのかと。もしGriffin、Shamsが書いているように、実質的にはTether社が資産側にビットコインを持ち、負債側にTetherを持つ。ただ、負債側といっても、ICOトークンと同じように発行した仮想通貨なので、別に負債じゃないわけですよね。負債ではないので、別に債務超過とかそういうことにはならないわけですが、ただ、理論的には、1ドルに維持するためにいつでも介入しますと言っているからには、市場に売りが出れば買わなくちゃいけないわけです。買わなくちゃいけない立場をずっと貫くとすると、それはもちろん誰に対して何を約束して1ドルだと言っているのかにもよるんですけれども、どこかのタイミングで、1ドルであるという約束が破られると、その途端に1Tetherが暴落してしまうのではないかと。これは随分前から仮想通貨周りで言われているTether問題でございまして、そうなると、現在のボラティリティが幾らであるから、したがって、今後もそうであるという形の推論というのが、実はこういう種類の推論というのは非常にしにくいということが多分、まさにそういう典型的な事例が今、Tetherという名前で出てきたなというふうに感じております。
 
 仮想通貨の場合は、そもそも価格発見機能といって、根源的価値というか、理論価格はゼロであるという主張が、エコノミストの間では多い中で、何を発見するのかという部分も含めて、なかなか難しいところが多々ございますので、とりわけ通常のFXあるいは株式等のデリバティブ取引と同じロジックで、果たしてその証拠金倍率を適正であるという判断をしてしまってよいものかというのも、これもまた大変悩ましいところだなと思います。
 
 ただ、残念ながら、これについては答えは持っておりませんので、問題提起をするだけにとどめたいと思います。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。加藤さん、どうぞ。
 
【加藤メンバー】 
 ありがとうございます。先ほど奥山様のご報告を伺っていて、1点確認したい点が出てまいりました。現在、日本仮想通貨交換業協会は、資金決済法上の自主規制団体でありまして、今後、仮に仮想通貨関連のデリバティブ取引が金融商品取引法の規制対象になった場合、それに関連する自主規制団体は、金融商品取引法上の自主規制団体になると思います。仮想通貨を原資産とするデリバティブ取引に関する規制を考える際に、日本仮想通貨交換業協会が金融商品取引法上の自主規制団体にもなるということを前提にしていいのか、ご意見いただければと思います。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 奥山さん、どうぞ。
 
【奥山オブザーバー】 
 すみません。現時点でまだ資金決済法上の認定自主規制団体にもさせていただいておりませんので。そういった部分で言いますと、金商法認定の認定自主規制団体が他の協会様、あるいは新設されるのか、当協会に来るのかというのは当然未定でございますし、まず私どもとしましては、資金決済法上の認定自主規制団体になることに全力を尽くしながら、現在進めておるところでございます。
 
 ただ、当協会のカバレッジ範囲では、資金決済法上に、前々回ご説明させていただきましたが、周辺領域への取り組みとして、その他の附帯業務ということの中で、現在の仮想通貨のデリバティブ等に関しましても暫定的に自主規制規則の中に盛り込ませていただいているようなそういう状況でございます。
 
【神田座長】 
 制度設計はまたこれからということで。どうもありがとうございました。
 
 中島さん、どうぞ。
 
【中島メンバー】 
 証拠金倍率の件ですけれども、おっしゃるとおり、リスクに応じてということはいいことだと思うんですが、一方で、やっぱりコインによって、このコインは4倍、これは2倍、これは3倍というふうになってしまうと、非常に複雑な規制になってしまって、利用者にとってもわかりにくいということがありますので、やはりできれば単一の倍率規制のほうが望ましいのではないかと考えております。それが1点。
 
 それからもう1つは、適合性原則の話も出ましたけれども、仮想通貨の場合、難しいのは、対面販売でないので、そこで適合性を確認するところの手段がなかなか難しいという点があります。
 
 例えばですが、デリバティブ取引の画面に入る前に、投資家の適合性をチェックするような別の画面をつくって、そこで一定の審査がオーケーにならないと、デリバティブの画面に入れないというような手段が考えられますけれども、それで100%カバーできるかどうかというのはまた別の問題かなというふうに考えておりますが、そういう仮想通貨としての難しい面があるかなというふうには考えています。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 楠さん、どうぞ。
 
【楠メンバー】 
 今の適合性の話と関連してですけれども、世の中的には、改正銀行法の影響で、銀行もAPIを提供する方向になってきておりますし、あるいは政府としても、マイナポータルAPIの整備でもって、前年度所得であったり、納税額というのは、今後APIでとれるようになってまいりますので、一つは、そういった環境というのは、整備しようと思えば整備できますし、あるいは現状の本人確認書類の提出が写真等で、画像で送っているようなものというのも一部ありますので、そこは何か適切な、改ざんされにくい方法で確認するということは、非対面であってもある程度はできるんじゃないかというふうには思っております。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 今日は、もし時間があれば、お手元の資料4についても、前回の追加ということになるかとは思いますけれども、ご意見があればいただきたいと思っているのですけれども。これは事務局から特にご説明は不要だということですので、ご覧いただいて、もしご意見があればお出しいただければと思います。いかがでしょうか。
 
 信託協会、ご意見ございますか。
 
【中野オブザーバー】 
 ありがとうございます。信託協会、中野でございます。オブザーバーではありますが、資料4に関して意見を述べさせていただきます。
 
 3ページにございますけれども、前回、交換業者の倒産リスクへの対応として、仮想通貨の信託の義務づけに関するご議論がございました。これについて、メンバーの方々からいただいたご意見と重なるところがございますけれども、意見を申し上げたいと思います。
 
 まず一般論としては、信託が新しい金融取引の発展に貢献できるのであれば、望ましいことと考えております。
 
 次に、前回の資料に記載がございましたけれども、私法上の位置づけが明確でない点について、これは私どもとしても同じ問題意識を持っておりますけれども、こちらについては、法律論でございまして、専門家によるご議論を注視してまいりたいと考えております。
 
さらには、仮に信託が有効に機能し得るとして、各交換業者が取り扱う全量・全種類の信託引き受けが円滑な取引を阻害しないか、現実的に可能かといった点につきましては、実務的に幾つかの課題があるものと認識しております。
 
 まず1点目は、システムやセキュリティリスク等に関する態勢整備であります。仮想通貨を受託するということは、受託者がサイバー攻撃の対象となるおそれもありまして、受託に当たっては、仮想通貨の盗難、流出リスクに備える必要があります。さらに、今後登場する新たな仮想通貨も含めまして、仮想通貨ごとのシステムや実務フローの構築など、全種類の仮想通貨への対応が現実的に可能かという問題点がございます。
 
 2点目は、コストであります。事務システムやセキュリティリスク等に係る態勢整備を含むコストがどれぐらいかかるのか、今後の新たな仮想通貨の登場の可能性等も含めまして考えますと、現時点では十分見通せるものではありません。また、コストは信託報酬にはねるということもありまして、そのコストが交換業者、ひいては利用者にとっての負担につながるものと考えます。システム、コスト面とも共通ではありますけれども、先々を見通し得ない中で、義務が先行して決まるということには懸念を持っております。
 
 3点目は、少し違う視点ではございますが、レピュテーションリスクの観点です。仮に仮想通貨が流出した場合などにつきまして、私ども受託者のレピュテーションリスクをどう考えるかという点も気になるところではあります。
 
 以上の実務上の観点を踏まえますと、全量・全種類の仮想通貨の信託義務づけは、現実的には難しいと考えておりまして、一律の義務化によりまして、受託者の受託能力が将来のイノベーションのボトルネックとなるおそれもあり得ると考えております。
 
 また、信託各社においては、そもそも信託を引き受けるかの判断、引き受ける際の交換業者や仮想通貨の種類の選定基準、これらを含む引受審査基準を作ることになりますけれども、当該基準は各社ごとに異なるものと思われます。信託を保全手段の選択肢の一つとすることは考えられるといたしましても、受託者の、いわばビジネスジャッジに左右される事項につきまして、一律の義務化は必ずしもなじまないのではないかと考えているところでございます。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 では、楠さん、どうぞ。
 
【楠メンバー】 
 ありがとうございます。2ページ目の、いわゆる匿名化に関する論点でありますけれども、多分、ご意見の2ポツ目が私の意見で、マネロン対策の観点からは取扱いを一定認めたほうがいいんじゃないかという意見を前回述べさせていただきましたけれども、1点補足させていただくと、ここで「厳格な本人確認などを課した上で」の、この「など」の部分でありまして、より重要なのは、目的確認だと考えております。実需でもって匿名通貨が必要となる場合というのはかなり限定されてくる。場合によっては、犯罪等に巻き込まれていることもあり得る話ですので、単に口頭で確認するというレベルじゃなくて、例えばランサムウェアで身代金を要求されているような場合であれば、画面キャプチャを残しておくとか、ある程度きちっと証跡を保存していただく。
 
 あと、やはり従前の金融機関間の送金と大きく異なる点というのは、基本的には、SWIFT等使って送金している場合というのは、相手先のアドレスというのもきちっとKYCされたものですけれども、仮想通貨、匿名通貨の場合には、送金先のアドレスというのは必ずしも取引所等のKYCされたアドレスとは限らないので、そうすると、ブロックチェーンで資金の流れをある程度追うことはできるんですけれども、果たしてその交換所からお金をおろした方が、果たして犯罪の犠牲者なのか、それとも犯罪者とグルで換金のところのお手伝いをしているのかと、かなり不明瞭になってくるケースというのは出てくると思うんですね。
 
 そういったときにきちっと抗弁できるだけの証拠を残しておいていただくということと、必要に応じて、それを交換所に対して申告していただくようなことというのを考えていただく必要はあるのかなというふうに思います。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、井上メンバー、岩下メンバーの順で。井上さん、どうぞ。
 
【井上メンバー】 
 ありがとうございます。前回の最後に、全種類・全量の信託保全の話が出たときにちょっとコメントしたいと思ったんですけれども、そのときは時間がなくてできませんでした。今、協会からもお話がありましたが、全量・全種類の信託を義務づけることがあまり現実的じゃないというのは、業界の状況を正確に知っているわけではないのですが、おそらくそうなのかなと想像はしております。ですから、前回も申し上げましたように、いろいろな保全の仕方があって、それらを組み合わせるようなことも考えたほうがいいし、いきなり最初から全額を保全することが難しいのであれば、相応の部分の保全を考えたほうがよくて、そういう意味では、何か一つの方法に全てを頼ることは必ずしも必要ないと思っています。
 
 ただ、仮想通貨に関する信託の保全について、ちょっと誤解がもしあったらと思って、申し上げたいのは、必ずしも仮想通貨を信託する必要はないということです。現在のほかの金融取引業者に関する保全措置も同じですけれども、基本的には顧客勘定になっている預かり資産相当額の金銭を信託すれば、それによって責任財産から相応の財産が隔離されますので、例えば取扱いが難しい、あるいはまだセキュリティ上の問題がある、システム上対応できない仮想通貨に関しては、こまめに要保全額を評価計算して相当額の金銭を信託保全することも十分あり得ると思います。
 
 ただ、それはそれで業者に見合いのキャッシュを積ませることになるので、大変な負担になるだろうなと想像しますが、繰り返しになりますけれども、組合せによって保全を考えればよいのであって、全ての種類の仮想通貨について管理のためのシステム上の対応をしなければ信託を使えないということではないという点は申し上げておきたいと思います。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 岩下さん、どうぞ。
 
【岩下メンバー】 
 何度も申しわけございません。前回欠席をさせていただきましたので、この資料4についても若干コメントをさせていただければと思います。
 
 まず、仮想通貨の技術的な理解というのは大変難しいなといつも思うんですけれども、この資料の中でも、例えば3ページでしょうか。一番下の行に、「ウォレット内の仮想通貨」という表現が出てきます。これは多分、当委員会ではもうある程度よく知られたことと思いますが、ウォレットの中に仮想通貨は入ってないんですよね。ウォレットの中に入っているのは、あくまでも秘密鍵です。そのウォレットの中に入っている秘密鍵によって書き換えを指示することができる、世界中のノードに入っているブロックチェーンの中に書かれたものが、仮想通貨の実体です。そういう意味では、ホットウォレット、コールドウォレットの議論というのも、結局、みんな銀行預金みたいなイメージを持っているわけですね。銀行預金の勘定というのは確かに銀行のシステムの中にあって、そのセンタライズした仕組みを前提としています。その銀行の中のデータベースを書きかえることが、すなわちその人の預金を例えば増額したり、減額したりするということにつながるという、そういう、割と一般的な理解があります。それに対して、仮想通貨はそもそもそういうセンタライズした仕組みではありません。仮想通貨がホットウォレットやコールドウォレットの中にあるというのは、あくまでも比喩でありまして、ホットウォレットやコールドウォレットというのを利用した秘密鍵を使って、さまざまな取引を行うことができるものが世界中のブロックチェーンに書かれているのであるという理解が割と大事なのだと思います。
 
 その意味は、多分それが先ほど井上委員からもお話のあった、あるいは信託協会さんからもお話のあった信託保全という議論の中につながってくるわけでございまして、信託で何かを保全するという議論をする場合に、じゃあ、一体それは何を預かるんですかと。例えば信託銀行が秘密鍵を預かるんですかというと、でも、秘密鍵自体は、例えば秘密鍵のコピーというのが多くの場合、つくられるんですね。最初に秘密鍵をつくったときに、その秘密鍵をいわばバックアップするための別のデータをあらかじめつくっておいて、万一の場合はそれでリカバリーできるようにするみたいなことをするという実務があったりします。もちろんそういうのをやらない方式もありますけれども。
 
 そういうことを考えると、例えば秘密鍵を、誰かがつくった秘密鍵をコピーしてもらって預かるとすると、その秘密鍵の管理が信託銀行だけが可能なわけではなくて、いろんな人が実は可能になってしまうので、それはあまり保全したことにはならないわけでありまして、そういう意味からも、信託銀行による保全、あるいは第三者による保全というのは、今、井上先生がおっしゃったような別途の財産による保全というのが一つの手ではありましょうし、あるいは、もし仮にほんとうに仮想通貨を保全するのであれば、それはアドレスをつくり、秘密鍵と公開鍵をつくるところから、全て信託銀行が、信託銀行の中で行わなければ、実はあまり意味がないことになってしまいます。
 
 それでも、信託銀行がきちんとそれを管理できるかという技術的な問題があるのだということは認識しておく必要があることではないかと、この表現を見て、思ったところであります。
 
 それから、もう一つは、匿名通貨についてでございます。匿名通貨が現状よくない目的のために使われているという認識は、マーケットを見ていても、私も持っておりますし、それをできるだけ日の当たらないところに置いておいたほうがいいだろうという気持ちはあるんですが、ただ、一方で、先ほど楠委員もおっしゃったことなんですけど、結局多くの通貨が匿名的に使うことが可能になっちゃっているんですよね。
 
 例えば典型的に言うと、ビットコインというのは、あれは一応、ビットコインをちゃんと通常の業者から購入すれば、多くの場合、ビットコインを持っていますという、その権利書だけをもらう形ですから、その権利書を持って、それで売ったり買ったりしましたということであるとすれば、それは当然、誰とひもづいているかというのは全部、その業者によってわかるわけですよね。
 
 だけど、一旦それをその人がちゃんと秘密鍵と公開鍵のペアを持って、ブロックチェーン上に存在するビットコインのオーナーになってしまうと、その取引自体はもう取引所の外に出てしまいます。そうなると今度は、例えばその人がほかに幾つかのビットコインのアドレスをつくっておいて、そこを点々とさせれば、それも全部ブロックチェーンをたどればわかるということは、わからないではないわけですけども、そこも上手にやると、わからないようにすることは実はできてしまう。これはまさに今年の1月26日に発生したコインチェック社のNEMの盗難事件の結果、盗まれた580億円が、その後、2月から3月にかけてのわずか1カ月の間にマネーロンダリングをされてしまったときに、まさにこの手法が使われました。犯罪者側はビットコインをTorと言われる匿名ネットワークを使って、いわゆるダークウェブというところで換金をしたわけですが、換金をしたときに、主にビットコインに換金したと言われています。そのビットコインの所有者が誰であるかということは、確かにブロックチェーンをたどればわかるのですが、でも、それが毎回アドレスを変えて、まさにサトシ・ナカモトが理想的な方法として書いたように、匿名的に使えるようになってしまっていた。という意味では、ビットコインだって匿名通貨だというふうに言えなくもないわけですね。
 
 だから、そう考えていくと、基本的に我々は2015年のFATFガイダンスに戻ったところで、フィアットカレンシーとバーチャルカレンシーと交換する部分について、トレースしようと。そこから先はわからないよというのが多分FATFの考えだったと思います。そこは最低限守ればよくて、ただ、そこから先のわからないところもできればビットコインのトレーサビリティなどを上手に使いながら、特に警察と捜査当局にはちゃんとチェックしてほしいと思います。ところが、それを邪魔するのがMoneroであり、Dashでありということだとすると、できるだけそれは使わないでほしいという、それは警察が捜査をしやすくするという程度の意味において、それが望ましいことなんだろうと私は理解しています。
 
 その意味で、どうしても匿名通貨を使う必要が、例えば楠委員のおっしゃるようなケースであるのであれば、それを全く否定するということではないわけですが、ただ、匿名通貨を一般的に扱えるようにしてしまうというのは、犯罪者側が大して工夫をしなくても、先ほどのNEMを盗んだ犯人と同じようなことが簡単にできてしまえるという意味において、あまり望ましいものではないという認識を持つことが大事であろうというふうに理解しています。
 
 すみません。長くなりました。以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、森下さん、中島さんの順で。森下さん、お願いします。
 
【森下メンバー】 
 手短に2点だけ。まず2ページに関してですけれども、「匿名性が高いなど、利用者保護又は交換業の適正」と書いてありますので、匿名性が高いというのは一つの例であって、真に達成すべきは、「利用者保護又は交換業の適正かつ確実な遂行」ということだと思いますので、場合によっては多少、何をもって匿名性が高いか低いかはあるにせよ、その「利用者保護又は交換業の適正かつ確実な遂行」に資するかというところで判断をしていく。ほかの手段、いろんなものでそこは実現できるのであれば、匿名性の部分は多少下がってもいいと。そのようなことで、本質が大事なのではないかというのが1点でございます。
 
 2点目は、3ページに関してですが、信託との関係で、やはり私法上の扱いが難しいというようなお話もありました。技術的に何ができるかということがあると思うのですが、今の問題点は、交換業者に対して仮想通貨を預けている人がどういった権利を持っているのかということ自体が、はっきりしていないという点がそもそもの問題ですので、これは前回も申し上げさせていただいたんですけれども、これは多少、業法を逸脱するかもしれませんが、どういった、具体的にこういったことが請求できるとか、こういったことが求めることができると、それは平時においてもそうですし、破綻時においてもそうですが、そういったようなものを一歩進めていかないと、いつまでも私法上、不明確ですと。だから何が起こるかわかりませんというような状態が改善されないのではないかという気がいたします。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 中島メンバー、どうぞ。
 
【中島メンバー】 
 匿名性の通貨についての議論が出ましたので、一言申し上げます。こういう通貨は、多分、使う必要がある人は、禁止しても使うと思うんですよね。自分でネットワークに入って、ウォレットをつくって、秘密鍵を管理して、そういう形でイリーガルなアクティビティをする人というのはやってしまうと思うんです。
 
 そこはもう禁止できないんですが、ただ、それを一般の人がそういう通貨を使いやすくするかどうかということがここで今、議論されていて、しかも、金融庁の認めた登録業者にそういう通貨を、取扱いを認めるかどうかということが議論になっているわけで、それはやっぱり必ずしも望ましいこととは言えないのではないかなというふうに思います。
 
 ビットコインも確かに匿名性はありますけれども、だからといって、ビットコイン含めて、全部認めてもいいじゃないかというのはちょっと乱暴な議論かなというふうに思われまして、やはりその辺は区別して、取り扱っていいものと、望ましくないものというふうに分けて議論したほうがいいのではないかなというふうに思います。
 
【神田座長】 
 ありがとうございました。
 
 楠さん、どうぞ。
 
【楠メンバー】 
 今の点に関してなんですけれども、私の主張は決して、匿名通貨をほかの、ビットコインをはじめとしたものと同じように扱うべきであるということを主張するつもりはございません。ただ、2015年のFATFのガイドラインの考え方に従うならば、重要なことはきちっと本人確認されたアカウントにできるだけ取引を寄せていって、犯罪等が起こったときにトレースしやすくするということがもともとのFATFガイドラインであり、資金決済法改正の趣旨だというふうに考えておりますので、そうすると、現状、ビットコインの現物での引き出しを認めている以上、現物を引き出して、DEX等で取引をすれば、Moneroなり、入手できてしまうわけですから、そういった形でDEXを使われるよりは、きちっと目的を明確にした上で、交換所で取引をいただいたほうが、結果として、ある程度無実を晴らしやすい形で暗号通貨を利用できるんじゃないかというのが私のご提案になります。
 
 あと、もう一点、ビットコインというのは、これはどんどん仕様が変わっているものでありまして、先般も10月6日、7日とスケーリングビットコインというイベントがありましたけれども、ここでもかなり多くの技術提案が行われておりました。そこの中で匿名性を高める技術に関しても、幾つも技術提案がありまして、もともとビットコインが目的としていた仮想通貨の世界というのは、匿名性がある世界なので、たまたま今、DashとかMoneroのほうがビットコインよりも匿名性が高い形で設計されているという状況はありますけれども、こういった技術は今後一部にとどまるのではなくて、ビットコインをはじめとした主流の仮想通貨にそういった機能拡張が施されることも十分に可能性として考慮した上で、規制の枠組みについて考えていく必要があるように思います。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 大体時間が来たと思います。本日も大変活発に、また、有益なご指摘、ご発言を多数いただきまして、どうもありがとうございました。
 
 さらに、事後でお気づきの点等がございましたら、事務局までメール等、電話等でお知らせいただけましたら大変ありがたく存じます。
 
 本日いただきましたご説明やご意見を踏まえて、さらに先に進みたいと思います。今後さらに議論を深めていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 
 次回の研究会の日時につきましては、皆様方のご都合を踏まえた上で、後日、事務局からご案内をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 
 それでは、以上をもちまして、本日の研究会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

 
―― 了 ――

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