スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第21回)議事録

1.日時:

令和2年11月18日(水)16時00分~18時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館9階 共用会議室3


【神田座長】
 それでは、予定の時間になりましたので、始めさせていただきます。ただいまからスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議――本日はその第21回目の会合となります――を開催させていただきます。皆様方にはいつも御多忙のところをオンライン会議という形での本日の会議に御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日でございますけれども、まず、事務局説明として、金融庁から、「コロナ後の経済社会におけるコーポレートガバナンス」として、前回の会議において指摘された事項を概観していただいて、その後、東京証券取引所から、市場区分の見直しにおけるコーポレートガバナンスに関する議論の状況について御説明をしていただきます。そして、その次に、金融庁から、プライム市場上場企業に対して求めるガバナンスについて御説明をしていただきまして、さらに、取締役会の機能発揮に関する論点についての御説明をしていただきます。それを全部済ませた後で、皆様方に討議をお願いしたいと思います。

 そういうことで進めさせていただきたいと思いますけれども、本日はワリングさんから英語での御発言がございますため、逐次通訳をさせていただきます。

 それでは、早速ですけれども、まず、金融庁から、「コロナ後の経済社会におけるコーポレートガバナンス」として、前回のこの会議において御指摘いただきました事項についての説明をお願いします。

 島崎課長、お願いいたします。

【島崎企業開示課長】
 それでは、資料1「第20回フォローアップ会議でのご意見(概要)」に基づきまして御説明させていただきます。

 前回、各メンバーの方々から、総論あるいは各テーマにつきまして、提示させていただきました題材に関しまして、様々な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 1ページ目以降、総論、そのとき提示しました取締役会、資本コストの意識等、サステナビリティ、監査の信頼性確保、グループガバナンス等について、一定のまとめ方をさせていただいたものをつけさせていただいております。

 こちらのほう、例えば総論で言いますと、コロナ後のコーポレートガバナンス、変化への対応力の加速化やデジタル・トランスフォーメーションから始まりまして、割愛はさせていただきますが、多様な意見をいただきました。ありがとうございました。13ページまで、こうした御意見について列挙させていただいております。

 14ページ目には、今後の検討項目ということで、その後いただきました御議論、課題、総論出し、論点出しなどに従いまして、そのとき御議論いただきたい事項で提示しました、取締役会の機能発揮、資本コストを意識した経営、監査の信頼性の確保、グループガバナンスの在り方、株主総会もいただきまして、あとは中長期的な持続可能性と、特にコロナ後の企業の変革に向けた諸課題として、DXや人材の話、さらに不確実性の高まりに応じたリスク・マネジメント等についてございましたので、上の課題と重なり合う部分もあろうかと思いますけれども、こうした形でコロナ後の変革に向けたコーポレートガバナンスの課題として以下の項目を中心に議論していくこととしてはどうかということで、もちろんこれには限らないかもしれないですけれども、提示させていただいておりますというのが資料1でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、東京証券取引所と金融庁から、市場区分の見直しにおけるコーポレートガバナンスに関する議論の状況、そして、いわゆるプライム市場の上場企業に対して求めるガバナンスに関する論点について、御説明をお願いします。よろしくお願いいたします。

【島崎企業開示課長】
 まず、東京証券取引所より、資料2「市場区分の見直しにおけるコーポレートガバナンスに関する議論の状況」について御紹介しまして、その後、金融庁より、資料3「プライム市場上場企業に対して求めるガバナンス」を用いて御説明をさせていただきます。

 それでは、よろしくお願いします。

【青執行役員】
 東京証券取引所の青でございます。私のほうから、市場区分の見直しにおけますコーポレートガバナンスの議論の状況について御紹介させていただきたいと思います。

 まず、資料2の3ページの議論の経過でございますけれども、市場区分の見直しは、昨年の末に金融審議会の市場構造専門グループにおきまして、上場会社、市場関係者からの幅広い御意見を踏まえた報告書をお取りまとめいただいているというところでございます。東証では、報告書を受けまして、本年の2月に見直しの骨子を公表いたしまして、現在、具体的な制度化に向けて検討を進めているというところであります。

 4ページが見直しの概要でございます。狙いといたしましては、上場会社の持続的な成長と中長期の企業価値向上というものを支えていくということにございまして、現在の5つの市場区分を、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3区分に再編するということを予定しております。その際、各市場の新しいコンセプトというものを踏まえまして、コーポレートガバナンス・コードの適用範囲についても見直しを行うということを想定している次第でございます。

 5ページ以降が、市場構造専門グループで取りまとめていただきました各市場のコンセプトと上場基準の方向性ということでございます。まず、プライムでございますけれども、コンセプトは、より高いガバナンス水準を備え、投資家との建設的な対話を中心に据えた企業だということであります。したがいまして、資料の中ほどにもございますように、今後、コードの改訂等によりまして、一段高い水準のガバナンスを求めていくこととしておりまして、本フォローアップ会議の場でもそれを念頭に御議論いただきたいと考えている次第でございます。

 そして、6ページがスタンダード市場とグロース市場でございます。スタンダード市場におきましては、プライム市場のような一段高い水準というのは不要としまして、資料の中ほどにございますように、基本的なガバナンス水準を求めるという想定をしてございます。現状では、市場第二部は全原則、JASDAQスタンダードは基本原則を対象としてございますけれども、これまで求めてきました水準が下がるということは適当ではないという観点から、スタンダード市場におきましては全原則を対象とするということを想定している次第であります。また、グロース市場につきましては、高い成長可能性を実現していく新興企業を対象としているということを踏まえまして、資料の下のほうにありますように、現在のマザーズ同様に基本原則のみの適用とすることを想定しております。

 7ページが今後のスケジュールであります。上場会社の皆様には、東証のほうから、本年内に公表予定の上場基準等の詳細と、来年春以降のところでのフォローアップ会議の議論を踏まえたコードの改訂等の内容を踏まえまして、来年9月以降に市場を選択していただくという、そういったことを想定しております。その上で、新市場区分への一斉移行の時期としましては2022年の4月を予定しているというところであります。

 続きまして、プライム市場に期待されますガバナンスに関しまして、市場構造専門グループで多く出された御意見のほうを御紹介させていただければと思います。

 9ページ以降が、取締役会の独立性、それから諮問委員会の設置や独立性といったものでございます。取締役会におけます独立社外取締役の人数につきましては、海外の状況も意識しまして、3分の1以上あるいは過半数が考えられるという御意見ですとか、あるいは指名委員会・報酬委員会の設置や、各委員会の実効性確保の検証を求めるという御意見などがございました。

 そして10ページ以降が、市場第一部の取締役会ですとか指名委員会・報酬委員会に関するデータの御紹介ということになりますけれども、右上のグラフにございますように、独立社外取締役を3分の1以上選任する会社の比率というのがおおむね6割弱ということになってきてございます。一方で、左下にありますように、過半数を選任しているという企業につきましてはまだまだ少数派という形になっているということであります。

 それから、11ページが指名委員会・報酬委員会の設置状況ということでございますけれども、両者ともに、市場第一部では6割程度という状況になっているというところであります。

 12ページがその独立性でございますけれども、両委員会とも、過半数を社外取締役とする上場会社の比率というのが6割を超えてきているというところでございます。また、委員長を社外取締役とする会社も過半数となっているという状況であります。
続きまして、13ページからが、プライム市場でもう一つ重視されております投資家との建設的な対話の関係です。

 14ページでございますけれども、市場構造専門グループでは、投資家との建設的な対話の促進のために、対話の材料となる情報の開示あるいは投資家とのコミュニケーションの機会が重要という意見がございました。

 15ページは、投資家と企業の対話のガイドラインですとかコーポレートガバナンス・コードにおきまして、投資家に対して分かりやすい説明というものが記載されている項目でございますけれども、これらのポイントにつきましては、上場会社から実際に開示として行っていただくということも重要なことではないかと考える次第であります。

 それから16ページが、積極的に情報開示をされていらっしゃる企業の開示の実例というものを記載したものでございますので、御参考としていただければと存じます。

 次に、17ページが英文開示関係でございますけれども、現在の上場会社の開示の状況につきまして、不満と考える投資家が多いということでございます。もちろん、全ての書類に英文が必要というわけではないかと思いますので、投資家のニーズと、それから上場会社の負担というものの両方を考慮しながら充実を図っていくということが必要なことではないかと考えております。

 最後に、プライム市場に求めますガバナンスをどのように実現していくかという点であります。

 19ページでございますけれども、資料の上から2つ目の四角の議論の抜粋というところを御覧いただければと思います。市場構造専門グループでは、ガバナンス・コードの趣旨からしても、コンプライ・オア・エクスプレインの枠組みというものを維持すべきという御意見が多くございまして、仮に、コンプライが求められてしかるべき事項があるといった場合には、コード以外で、上場基準などで整理をする必要があるというおまとめをいただいたところでもございます。

 御参考ということでございますが、現状の上場基準におきましては、最低限備えるべき事項につきまして、例えば、書面による議決権行使を可能とすることですとか、独立役員の選任といったことにつきまして、遵守すべき事項という形で上場規程上で定めを設けているというところでございます。

 それから、21ページ以降は御参考までにということですけれども、諸外国のコードの御紹介ということでございます。

 21ページに各国の比較を載せてございます。

 22ページが英国のコードでございますけれども、一部の条項につきまして、企業規模に応じて内容を書き分けているというところがございますので、そこを参考として掲げさせていただきました。

 駆け足になりまして恐縮でございますけれども、私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。

【島崎企業開示課長】
 金融庁でございますが、本日直接御議論いただきたい事項といいますのは、この後御説明させていただきます取締役会の機能発揮等でございますが、その前段として、プライム市場、この一段高いコーポレートガバナンスを求めていくに当たりまして、今後検討していく必要がある事項について東京証券取引所のほうからも御説明いただきましたし、私どものほうは資料3にあります1枚紙、「プライム市場上場企業に対して求めるガバナンス」ということで、一段高いコーポレートガバナンスを求めていくに当たって、先ほどの御説明にもございましたが、コンプライ・オア・エクスプレイン遵守の義務づけの、あるいはその組合せ等、あるいはやや技術的ですが、1つのコードの中で書き分けをするか等、それから一段高いコーポレートガバナンスの内容としてどのような視点から具体的にどのような項目ということで、視点ですとか、あるいは右側には主な項目、先ほど御説明のございましたような取締役会における独立社外の数ですとか諮問委員会の独立性等について、こちらのほうで記載させていただきました。

 というのが、資料3の御説明でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、続けて、金融庁から取締役会の機能発揮に関する論点についての御説明をお願いいたします。

【島崎企業開示課長】
 
 資料4の「取締役会の機能発揮と多様性の確保」ということでございまして、まず、1ページ目から3ページ目にかけまして、政府の動きについて御紹介させていただければと思います。

 総理の所信表明演説では、「コーポレートガバナンス改革は、我が国企業の価値を高める鍵となるもの。更なる成長のため、女性、外国人、中途採用者の登用を促進し、多様性のある職場、しがらみにとらわれない経営の実現に向けて、改革を進めます」ということでございます。

 2ページ目でございますが、経済財政諮問会議において、有識者議員の方から御提出いただいた資料で、社外取締役の更なる活性化、女性・中途採用者・外国人・若者等の幹部候補への大幅な登用を通じた経営人材の流動化、多様な人材の確保、コーポレートガバナンス・コードの改訂等について御意見を賜っているところです。

 3ページ目では、有識者議員の方々からさらに提出をいただいている資料について記載させていただいております。新浪議員や、柳川議員、竹森議員から、独立社外取締役や人材育成についてお話をいただいております。

 それから、18、19ページ目にございますご議論いただきたい事項との関係となりますが、このコロナ後の諸課題を認識し変化を先取りした意思決定を行う上で、取締役会における適切な知識・経験・能力の組み合わせということが一つ論点となってこようかと思います。4ページ目におきましては、JPX日経400の対象企業における独立社外取締役の属性について調べたものをつけさせていただいています。独立社外取締役が2名の企業における知識・能力・経験の組み合わせの状況については、他の会社の出身者は7割程度となりますが、独立社外取締役が3名になるとより高くなっております。それから、他の会社の出身者の具体的属性について、約80%や91%が他の会社の社長・会長・代表経験者となっております。

 続いて、5ページ目でございます。こちらのほうは取締役等に必要な知識・能力・経験の組合せということで、事業戦略に照らして自社の取締役に必要なスキルを検討して、その上でその組み合わせ・選任を実現していくことが重要であると指摘されています。下にはスキル・マトリックスを活用されている企業の例について御紹介させていただいております。

 続きまして6ページ目でございます。こちらのほうは、諸外国等のコーポレートガバナンス・コード等における知識等の組み合わせについての言及の例を挙げさせていただいております。例えば英国では、スキル、経験及び知識が組み合わさったものであるべきであると記載されています。それから同国のガイダンス等においても、スキル・マトリックスの活用についても言及されています。その他、ドイツ、ICGNについても、いわゆるスキルマトリックスについて記載がなされているところでございます。

 続きまして7ページ目でございます。先ほどまでの話は、比較的、取締役会の質といった話と関連するかと思いますが、こちらのほうで量に関する話をさせていただければと思います。先ほど東証さんからも御紹介ございましたが、2名以上独立社外取締役を選任する企業は、一部上場で95%、3分の1以上選任する企業は約60%、それから過半数を選任する企業は6%というデータを挙げさせていただいております。

 8ページ目でございます。こちらは、諸外国のコードないし上場規則においてどのように取締役会における独立社外取締役の人数が規定されているかという資料となりまして。独立社外取締役の人数について半数以上とされているものというのが多かろうという状況になっています。3分の1以上という国もございます。

 続いて、9ページ目でございます。法定または任意の指名委員会・報酬委員会を設置する企業は増加しており、東証一部上場企業全体で6割程度となっております。

 それから10ページ目に参りまして、任意の指名委員会・報酬委員会につきましては全体として社外取締役が過半数を占めているものの、社外取締役比率が半数未満の企業も相当数存在するとなっております。

 続きまして11ページ目ですが、諸外国における指名委員会・報酬委員会に関するコーポレートガバナンス・コード等の規定となります。英国などについても指名委員会は過半数が独立社外取締役とするべきとの記載がございます。ドイツについては株主代表のみで構成、フランスはほとんどが独立した取締役で構成するべきとなっております。また、同様に、英国、ドイツ、フランスにおける、報酬委員会に関する規定ついても記載させていただいております。

 続きまして12ページ目でございます。CEOの後継者計画について監督を行っている企業はいまだ約3割にとどまります。そのうち、約8割の企業は指名委員会を活用しています。

 13ページ目に参りまして、CEO等の選任基準・解任基準ともに約4割の企業が「既にプロセスを見直し、整備を行った」と回答、他方、約3割の企業は「見直しに向けた議論開始の目途は立っていない」、ないし、「分からない」と回答しています。

 続いて、ダイバーシティに関してでございますが、14ページ目で、女性役員の比率は上場企業で6.2%、15ページ目で管理職における女性の割合については15%という、データを示させていただいております。

 また、16ページ目では、中途採用に関しまして、従業員規模が大きいほど、採用率が低い等の資料を出させていただいています。

 続く17ページ目では、人材投資に関しまして、投資家の56.1%が重視する一方、企業は約4割弱のみが重視しており、また、4分の3の企業が経営戦略の実現に必要な人材を採用・配置・育成できていないというデータについて載せさせていただいております。

 最後に18ページ目、19ページ目となりますが、本日御議論いただきたい事項でございます。18ページ目ですが、取締役会の構成を中心とした機能発揮と致しまして、企業がコロナ後の諸課題を認識し変化を先取りした迅速・果断な意思決定を行うために、取締役会の構成についてどう考えるか。コロナ後の企業の変革を先導するためには、従来以上に取締役会における適切な知識・経験・能力の組み合わせを実現すること等が重要と考えられる。多様な経営経験を有する経営人材の選任等、社外取締役の質の向上も含めた取締役会の構成についてどう考えるか。また、一部上場企業において、独立社外3分の1以上選任する企業が過半数を超え、定着しつつある一方、諸外国では、過半数の選任を求める国が数多く存在しているなか、こうした状況にも鑑み、独立社外のさらなる充実についてどう考えるか。また、最も重要な戦略的意思決定であるCEOの選解任や候補者選定プロセスについて、例えば独立社外を委員の過半数とするなど指名委員会の役割・機能の充実を図ることをはじめ、取締役会の機能発揮に関してどうか考えるか、といったことを論点としてあげさせていただいております。

 また、19ページ目でございますが、同様にコロナ後の変化を先取りして意思決定等を行っていくために、社内の多様性についてどう考えるかと。現コードでも示されているとおり、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは強みとなり得ると。コロナ後の企業の変革を先導するため、取締役及びその候補であり中核人材である管理職におけるジェンダー・国際性・職歴等の多様性の確保についてどう考えるか。特に、女性・外国人・中途採用者の管理職員への登用等、多様性の確保にとって重要な人材の登用について、自主的かつ測定可能な目標・状況の策定・公表を求めることについてどう考えるか。また、社内全体としての多様性を確保するために、多様な働き方、キャリア形成など、人材育成や社内環境の整備、これについてどうお考えかということについて御議論いただければと思っております。

 駆け足になりましたが、私からの説明は以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

本日ですが、御欠席の翁メンバーと冨山メンバーから意見書を提出していただいております。そこで、事務局から簡単に概要の御説明をお願いします。

【島崎企業開示課長】
 まず、翁メンバーからでございますが、取締役会構成員について、適切な経験・能力・知識などの組合せを実現する必要と。形式的ではない、その企業の戦略に合った社外取締役のポートフォリオを投資家に説明できることが重要ですと。また、就任年数のばらつきの勘案、選定プロセスへの指名委員会の関与などについて御意見をいただいております。

 また、CEOの選解任等あるいは候補者選定プロセスについても、独立社外取締役を過半数とする指名委員会がサクセッションプランの検討に重要であるほか、報酬委員会についても社外取締役の過半数とし、そして両委員会とも取締役への活動概要の定期的報告等について重要と考えられる、と御意見をいただいております。

 また、サステナビリティにつきましては、その委員会の設置等、取締役会での議論、執行の監督についての重要性について御意見をいただいております。

 また、例えば年代別の女性、外国人、中途採用者の正規社員比率、人材育成プログラム、働き方の工夫といった社内の取締役・管理職などの多様性確保の状況についての情報開示の重要性や、無形資産投資である多様な人材の育成について、投資家エンゲージメントが行われるべきという御意見をいただいております。

 続いて、冨山メンバーでございますが、日本企業が未来投資力において欧米企業に遅れをとっている真因は、本業の稼ぐ力が乏しいとした上で、出発点は強力な経営リーダーシップ、そして強力な取締役会による選任、エンドース等の確立とのご意見を頂いております。その上で、以下、コードに盛り込むという事項について御説明いただいています。

 指名委員会の構成員には、少なくとも複数の経営者経験を有する社外独立取締役を入れ、プライム市場上場企業は、社外独立が過半数を占める委員会構成とするべき。多様性の軸に、性別に加え職歴や経営者経験、CFOなどの経営プロフェッショナルとしての企業での経験、国籍、年齢などを加えるべき。プライム市場については、社外独立取締役を過半数とすることを原則とすべき等の御意見をいただいています。

 また、経営者候補プールにつきましても、性別や国籍、キャリアパスに加え、新卒一括採用からの生え抜き、または、出戻り組を含む中途入社かどうかといった軸を設定するべき、あるいは、こうした多様性を長期的に促す方法として、女性・外国人・中途採用者の管理職員への登用についての自主的な数値目標を掲げてもらう方法も有効であろうとの御意見を頂いております。また、社外取締役が抱える情報の非対称性を埋めるためにも、社内取締役が全社的な観点等から取締役会への参画することを期待するほか、社内

 取締役の多様性、特に他社での経験、中途入社人材の重要性、社内取締役についての多様性についての御意見を頂戴しております。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、以上の御説明を踏まえて、皆様方から御質問、御意見等をお出しいただきたいと思いますけれども、本日は、今、事務局の御説明を踏まえますと、先ほど事務局から提示をいただいた論点というのがありまして、具体的には資料4の18ページと19ページになります。これらの論点を中心に御議論をしていただければ大変ありがたく存じます。

 いつものように、御発言していただける方はチャット欄にお知らせいただければと思います。そのチャットは全員に向けて書いていただければと思います。

 今日は、最初にワリングさんに御発言いただけると聞いておりますので、ワリングさん、今、どこにいらっしゃるのでしょうか。イギリスにいらっしゃるのでしょうか。よろしくお願いいたします。

【ワリングメンバー】
 ありがとうございます。神田座長、そしてメンバーの皆様、こんにちは。取締役会の機能発揮についてICGNの見方をお話しさせていただく機会を頂戴し、ありがとうございます。私の本日の発言の中心は取締役会のリーダーシップ、ダイバーシティ、独立性および選任についてとなります。

 まず最初に、リーダーシップということでございますけれども、ICGNは、一人の個人が自由気ままに意思決定することを回避するために、取締役会議長とCEOの役割の間で責任が明確に分離されることを奨励しております。そして、この2つの役割というのは非常にはっきりと違っております。CEOが自分の宿題を自分で採点するような状況ではいけません。取締役会の議長は、選任日には独立していなくてはなりません。そして、退任したCEOは、一時的な休止期間があったとしても、取締役として取締役会に残留したり、議長に就任することは推奨いたしません。

 また、もう一つ付け加えたいのでありますけれども、現在は、議長がその他の独立社外取締役とCEOの出席しない会議を定期的に持つことが一般的な慣行となってきております。

 また、独立社外取締役が議長を務め、そして過半数が独立社外取締役で構成される指名委員会を設置するべきです。そして、CEOの選任・解任のプロセスを管理し、十分な後継者計画を確保すべきです。

 日本では、企業の議長が独立している場合でも、より多くの企業が筆頭独立社外取締役を指名することを奨励したいと思います。この人は、取締役会議長や重要な株主に関して議論を要する問題が生じた際に場合に、株主との間での窓口の役割を果たすことができます。

 そして、企業は、投資家から個別、または、集団的な建設的対話の求めが出てきたときに、それに素早く対応することを奨励いたします。会社の戦略的な方向、ガバナンス、リスク管理やパフォーマンスに関する重要な全ての事項について対応を行い、対話に対してオープンな姿勢を持っていくことが必要です。

 続いて、多様性に関してですけれども、ICGNは、取締役会が多様性に関して取締役会の方針と、特に管理職に関する、より広範な企業の方針、両方を開示することを推奨いたします。この方針には特定の目標、測定可能な目標、達成するための期間が含まれるべきです。

 また、多様性に関し年次報告には、多様性に関する方針、達成された進捗状況及び取締役会の後継者計画及び会社全体として、多様性がどのように考慮されているかについての根拠が含まれるべきです。

 ICGNは、取締役会に占める女性の割合の最適な水準に関してこれという特定のポジションは取っておりませんが、最低30%または33%という閾値が有用な出発点であると考えております。

 また、多様性の考え方は、性別、ジェンダーを超えて、国籍、職業的な経歴、社会的・経済的な出自及び個人の属性など、幅広い要因を含むものであると認識しております。

 独立性ということに関しましては、冨山さんがおっしゃったことに私も同感であります。ICGNは、企業の取締役というのは過半数が独立社外取締役で構成されるべきであると考えております。そして、そうすることで少数株主の利益の侵害が緩和されることが期待されます。

 そして我々は、日本のコーポレートガバナンス・コードの中に独立社外取締役に関する明確な定義を盛り込まれることが有用であると考えております。そうすれば、それによって独立社外取締役の指名プロセスが明確な基準によってなされているという状況がさらに強化され、全ての企業においてアプローチの整合性が高まっていくと考えるわけであります。

 それから、取締役の選任ということに関しては、指名委員会が独立社外取締役の選任・評価・後継者計画において客観的な基準に基づいたプロセスに従って主導していくことが必要です。また、それぞれの個別の取締役の選任理由は、取締役の独立性に影響を与える可能性のある要因や取締役の経験が会社の多様性の方針及び戦略とどのように一致するかということも含めて、公に開示することが必要です。

 また、定期的に取締役会を刷新するために、ICGNは、取締役会の任期についての限度を開示することを推奨いたします。取締役の1年ごとの再任は、取締役会への取締役の貢献の十分な評価に基づく個人の業績に基づいて行われていくことが推奨されます。

 また、企業が取締役会全体及び委員会の業績を厳密にレビューすることを推奨いたします。また、取締役会議長も筆頭独立社外取締役か、または指名委員会によって評価されるべきです。

 取締役会が外部コンサルタントによって定期的な評価を受けるのは、非常によい慣行であると考えます。この業績の評価によって、長期在任している取締役が退任し、席を空けることによって、適切なる更新、多様性、独立性を担保することができます。
御清聴いただきましてありがとうございました。

 【神田座長】
 ワリングさん、どうもありがとうございました。一部ちょっと音声が聞き取りにくかったかもしれませんで申し訳ありませんでしたけど、また議事録等で補わせていただきたいと思います。

 それでは、ほかの皆様方から御質問、御意見をお出しいただきたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、御発言いただける方はチャット欄に発言の御希望をお示しいただければありがたく存じます。全員宛てのチャットでお願いいたします。

 それでは、田中さん、どうぞお願いいたします。

 【田中メンバー】
 ありがとうございます。今、ワリングさんのお話をお伺いしまして、たまたま私、取締役会の会長と社長CEOを兼務しているものですから、一言申し上げたいと思います。

 資料1にありますように、現在、コーポレートガバナンスの議論は、どういうことのためにやるのかというので、前回の意見の中に「変化への対応力の加速化」というのが一番初めに書かれています。かつてこのフォローアップ会議のメンバーでおられました日立の社長をやっておられました川村さんが、日立の社長になられましたときに、変化を進めるためには会長と社長を兼務したほうがやりやすいということで、まずは会長兼社長に就任されました。そのほうが変革を進めることが迅速にできるという御発言をされたのを私は記憶しております。私も全くそうだと思います。

 例えば、取締役会がどうやって議題を選ぶかというのは非常に大事で、そのときに、実は社外の取締役が取締役会議長している場合では全く中身が変わってきます。といいますのは、私のように社長CEOをやっていますと、いろんなプロジェクトがどんどん進んでおりまして、その進捗度合いによって、取締役会に対してこの段階で報告をしよう、この段階で決議をしようというのが、実際の執行状況に合わせて決めることができます。しかしながら、外部から来た社外の取締役が会長をやっている場合はそうしたことができずに、形式的な取締役会になりやすいという面があります。また、会長と社長が別々ですと、コンフリクトがその2人の間に発生してマネジメント・ディスラプションが発生することもあり、特に日本の場合はプロフェッショナルな社外取締役が非常に少ないものですから、そういうことが起きやすいんじゃないかと思います。

 ワリングさんのおっしゃっていることは分かるんですが、アメリカにおける特に東海岸の会社では、チェアマン・アンド・CEOというのは非常に多く取られている形態ですので、そのこと自身は、私は必ずしもこの段階で排除する必要はないだろうと思います。ただ、その前提がありまして、チェック・アンド・バランスはやっぱり必要で、会長兼CEOが独善的な経営をするということにならないようにチェックすることは必要だと思います。

 そういう意味では、私どもの会社の例を申し上げますと、取締役9人のうち3分の2は社外取締役です。それから、指名委員会とか報酬委員会に私、即ち会長兼社長CEO、は入っていません。また、筆頭独立社外取締役がいまして、その筆頭独立社外取締役会が社外取締役のみの会合というものをやっています。つまり、ワリングさんのペーパーに書いておられることを一つ一つ全部するのではなくて、組合せとして最もその会社にとって適した形にするということが、私としては適切であるというふうに思います。

 それから、今日お話があります資料4の18ページ、19ページについて若干コメントさせていただきますと、多様な経営経験を有する経営人材の選任等云々とあり、社外取締役の質の向上ということですけど、これは私どもも真剣にいろいろ検討した経緯があります。実際にはやっぱり実務家でなきゃ企業の経営を理解するのは非常に難しい。その人たちをエデュケートするのに非常に時間がかかるという点があります。したがって、実務家で、かつ複数の会社の経験者、それで、できれば失敗した経験のある方がいいんじゃなかろうかということで、単なる形式的な社外取締役ではなくて、そうした実体的な経験を持った人が必要だろうと思います。

 一番問題になるのは、これは実はアメリカの取締役会を経験した人が盛んに言っていたんですが、生活の糧を得るために社外取締役をやっているという、そういう人は、その社外取締役というポジションとの間にコンフリクトがあると見られます。したがって、その人たちというのは、社長とか会長の様子を見て、取締役をクビにならないように、言ってみれば忖度をするというインセンティブが働くので、生活の糧のために社外取締役をやるという候補者は外したほうがいいと、そういう意見がございました。

 それから、その次の東証一部上場企業で独立社外取締役が3分の1以上云々というのがありますが、これは前々から私は何回か申し上げているんですが、コーポレートガバナンス・コードの原則4-3というのがございますね。コーポレートガバナンス・コードの原則4-3には、取締役会の役割として、「取締役会は、独立した客観的な立場から、経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行う」と書いているんですね。独立、客観ということを考えますと、取締役会は、取締役会の3分の1が社外でということは、逆の3分の2は社内ということですね。社内が3分の2の取締役会というものが、本当に独立性とか客観性というのを持って監督できるのかなと常々思っています。つまり、3分の2の人たちは、会長、社長、それからその部下たちから成り立っているわけですね。取締役会そのものが独立性と客観性を持つということがコーポレートガバナンス・コードに書かれているわけで、これを具体的に考えると、やはり過半数が独立社外取締役であるということが少なくともプライム市場では必要なんじゃないかと思います。先ほど申しましたように、こうした考えから、私どもの会社では3分の2を独立社外にしているということがあります。

 それから、さっきもちょっと申しましたけれども、その下に委員の過半数云々って書いていますが、指名委員会なんですけれども、指名委員会の委員になると辞めさせられないという立場になると思っている人が結構いるようです。指名委員というのは、一種取締役に対する人事権を持つわけですから、やはりそういう意味では任期を設けて交代していくということが必要でしょうし、ローテーションするということが欧米では一般的だと私は聞いています。かつ、指名委員会にはCEOとか会長とかがやっぱり入っちゃいけないんですね。その人たちは指名委員会にやはり身柄を預けるという覚悟が必要で、そういう意味では、資料4では委員の過半数が独立社外取締役と書いていますが、基本的には、CEOは必要な時にだけ指名委員会に参加することとして、指名委員会そのものは全てが独立社外取締役で構成されるという必要が私はあるだろうと思います。

 最後に次のページ、多様性の話なんですけれども、これは非常に簡単な話で、CEO次第です。CEOは、多様性の問題だとか女性であるとか、こういう人材の登用というのは社長がその気になればいくらでもできます。我が社の場合は、実は昨年、今年の1月に私は社長になったんですが、その前までは女性の取締役は全然いませんでした。今は既に1名います。執行役に女性も入っています。それまではいませんでした。執行役員には、女性が2名います。これも去年はいませんでした。部長クラスにも、女性がいます。これも去年はいませんでした。ゼロのところからそういうふうにするのは、基本的にはCEOがその気になればいくらでもできます。

 ただし、このやり方なんですが、内部登用というのは、特に日本の場合には現実的に非常に時間がかかるという部分が比較感の中でありまして、こうしたジェンダーの問題も、多様性というものを考えるときは中途採用を使うということが最もやりやすい方法であるというふうに私は経験から思っています。

 以上です。

【神田座長】
 田中さん、どうもありがとうございました。

 それでは、チャットに多くの方からいただいておりますけれども、その順番で小幡さん、佃さん、神作さんの順で、小幡さん、どうぞお願いいたします。

【小幡メンバー】
 小幡です。御指名ありがとうございます。取締役会の多様性を含めたところについてのコメントをさせていただきたいと思います。

 取締役会をはじめとして、その下の会社の幹部層において、女性・外国人・中途採用の人を含めた形での多様性が必要だという、そこは全く賛同しております。特にこういう不透明な時代においては不可欠という、そういう指摘については賛同しています。

 今回のお話が東京証券取引所の新市場区分のところから話が出てきたような印象があるんですけれども、私としては、要は委員会型による会社なのか、監査役会設置会社なのかという、会社法に基づく区分の考え方と、今回の新市場区分のプライム、スタンダード、グロースという、それらの関係の整理というものを一度きちんとしたほうがいいのではないかなと思っています。そこで錯綜しちゃうとどうなのかなというふうに、ちょっと混乱するような印象は持っています。それが1点目です。

 あと2点目ですけれども、会社の取締役会において、例えば当社なんかまだアドバイザリーボード的な要素が強いんですけれども、アドバイザリーボードの形を目指すのか、いわゆるモニタリング型のほうに移行するのかということで、監査役会設置会社においても大分、取締役、社外取締役の属性というものは変わってくるのではないかなと思っています。アドバイザリーボード的なときには、やはり他社での社長・会長経験者みたいな方のほうが有効だと思うんですけれども、モニタリング型のほうになればなるほど、例えば弁護士ですとか、会計士の先生ですとか、そういった方の有効性というものがより出てくるのではないかなと思うので、そこら辺の整理というものをどういうふうにするのかなというのを考えてはどうかなと思っています。

 あと最後ですけれども、今、会社として社外取締役に何を期待するかというのが、私の感触としては、まだまだそこがはっきりしていないんじゃないかなというのが思うところです。今、招集通知に社外取締役会の選任理由ということで一定のことは書くようになりましたけれども、取締役に対して、社外取締役に何を期待しているかということの整理というものがまだ各社においてできていない状況なのではないかなと思うので、そういったところを整理するところもぜひ検討の一部に加えていただければいいのではないかなと思っております。

 以上、私のコメントになります。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、佃さん、よろしくお願いいたします。

【佃メンバー】
 佃です。よろしくお願いします。私のほうからは、本日の論点について幾つかコメントさせていただければと思います。

 まず、資料4の18ページの冒頭にございます企業が「変化を先取りした迅速・果断な意思決定を行う」、これが一番重要であると理解しております。CEOに権限を集中して、取締役会は監督に軸足を移す、つまりモニタリングボードとしての色彩を強めて、取締役会の審議は、中長期の成長戦略の策定、それから執行状況の監督、あるいは撤退を含む事業ポートフォリオの再構築などの重要テーマに集中して、執行については大胆にCEOに任せる、このことが迅速・果断な意思決定の大前提と、こういうふうに考えています。したがって、取締役会の構成につきましては、モニタリングボードの色彩を強める以上は、独立社外取締役は、例えばプライム市場においては、一段高い水準のガバナンスを求めるのであれば、当然ながら過半数、その他の市場においても少なくとも3分の1以上を占めるというのがあるべき姿でないかなと考えます。

 それから次に、指名委員会についてですけれども、そもそも指名委員会に対する期待役割というのは、現職CEOに対する職務執行状況の監督、そしてその監督結果に基づく選解任と後継者計画、これにあるわけですから、法定であれ、任意であれ、独立した指名委員会には、この期待役割を果たせるような資質を有する独立社外取締役が確保されているといったことが最も重要であると考えています。そういった意味で、具体的には、例えば洞察力、傾聴力、質問力、謙虚さ、胆力、こういったことを兼ね備えた指名委員の人選が理想的であると考えています。

 指名委員会の構成については、先ほど田中さんからもございましたけれども、現職CEOが指名委員会に入るかどうかの問題があります。日本企業では、現職CEOが指名委員会に入る場合が大多数でしたけれども、ここ一、二年ほど、現職CEOの職務執行状況を評価するために、現職CEOを指名委員としない指名委員会が増えています。現職CEOが指名委員となるか、ならないかは、当然、各企業固有の事情はあると思いますけれども、いずれにせよ、指名委員会そもそもの役割を再認識した上で指名委員会の構成を考える必要があると考えています。

 最後に、多様性の確保についてですけれども、ある東証一部上場企業の社長のお話をしたいと思います。この社長は、管理職に女性を登用することについてかなり熱心でして、女性活用に強くコミットしています。実際にその成果も出始めています。ところが、取締役会に女性が1人も入っていないと、そういうことを理由に今回の株主総会で議決権行使助言会社の反対推奨を受けて、この社長の賛成票というのは他の取締役を大きく下回る結果になっていると。一方で、ほかの企業を見ると、逆に、女性の社外取締役を1人入れて、しかしながら、女性の活用に熱心でない社長もおられると、こういう状況です。そういった意味でいうと、そもそも多様性の議論を考えていく上で、多様性の確保というのは目的なのか、手段なのか。そして、そもそも多様性の確保というのが企業価値向上に直結するのかどうかと、こういった議論の再整理が必要だと考えていますけれども、現実問題としては、企業による息の長い持続的な取組みを促す仕組みを、例えば管理職に占める女性比率など、そういった指標を自主的に公表してもらうことなどを通じて、女性活用を促すといった点も検討いただければ幸いです。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、神作先生、お願いいたします。

【神作メンバー】
  神作です。どうもありがとうございます。

 私は3点申し上げさせていただきたいと思います。まず、前提として、今日、資料で御報告いただきましたように、独立社外取締役の人数が2015年のコーポレートガバナンス・コードの導入以来かなり進んできておりまして、3分の1以上の独立社外取締役が存在するもう6割近くに達しているということです。JPX日経400では4分の3に達しています。また、任意の報酬委員会・指名委員会の活用も進んでおり、先ほどの御報告ですと、指名委員会は約6割弱、また、報酬委員会につきましては6割をやや超えているという状況です。このように、少なくとも形式的には独立社外取締役、また任意の指名報酬委員会等の設置が進んでいるということでございます。そのことを前提として、コーポレートガバナンス・コードの原則4-7の独立社外取締役の役割・責務の中で、とりわけ2番目の経営の監督を行うという機能がよりよく発揮されるという観点から、主としてプライム市場に上場される会社を念頭に置いて、3点申し上げます。

 第1は、私には、独立社外取締役の割合を何%、何分の何以上にすべきであると申し上げられる知見はございませんけれども、少なくとも社会取締役の比率の目標を定めて、できれば、それに加えて多様性をどのように確保し、反映していくかということについての目標を設定して、それを公表するとともに、定期的な見直しを求めてもよいのではないかと思います。これが第1点でございます。

 それから第2点は、任意の委員会についてでございますけれども、現在のコーポレートガバナンス・コードでは、原則の4-10、それから補充原則の4-10①において、任意の指名委員会と報酬委員会が合わせて規定されています。ところが、報酬委員会と指名委員会とでは果たすべき機能・役割がかなり違うと思われますので、報酬委員会と指名委員会については書き分ける形でコードをさらに精緻化していくことが考えられると思います。特に報酬委員会につきましては、令和元年の会社法改正により、株主総会から取締役会に報酬の決定が一任された後、取締役会から次に再一任する場合の再一任先等について情報を開示することが必要になると考えられます。その際に、プライム市場に上場される会社を前提にすると、恐らく報酬委員会が再一任の先になることが多くなると思われます。そのような観点からも、役員の報酬プランの設計方針についての十分な理解、それから業績等について評価できるための独立性・中立性を確保すべき報酬委員会のあり方等について、任意のものも含めて、少し具体的に補充原則のような形で定めていくということが考えられると思います。また、指名委員会につきましては、独立社外取締役の候補者を指名する場合と、それから経営陣を指名する場合とは、これまた機能がかなり異なると思われますので、もし可能であれば、指名委員会についても、誰を指名するのかということによって求められる組織の在り方が異なってくると思われます。特に、独立社外取締役の候補者を指名する場合には、経営陣の影響力というのは極力排除されていることが望ましいと思われます。すなわち、指名委員会の独立性が極めて高い必要があると思われます。これに対して経営陣の指名というのは、もう少し業務執行との密接な連携というのも必要になる場合があり得ると思われます。したがって、指名委員会についても、独立社外取締役の候補者を指名する場合と、経営陣を指名する場合とで、組織の在り方が違ってくるべきであるように思われます。ここについてもさらに議論を深めることができればと思います。

 最後に3点目でございますけれども、リードダイレクターについてコーポレートガバナンス・コードの中で記載をしてはいかがかと思います。指名委員会や報酬委員会が機能するためにも、独立社外取締役の間での意思疎通、情報交換というのが非常に重要だと思われますし、最初に青さんから御報告がありましたけれども、大株主、特に機関投資家と話をしたり、あるいはステークホルダーと話をしたりするときの窓口になり得ると考えられます。エグゼクティブセッションや、機関投資家のエンゲージメント活動における中心的な存在として、リードダイレクターをコーポレートガバナンス・コードで位置づけることが考えられるのではないかと思います。

 以上3点申し上げさせていただきました。どうもありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、高山さん、どうぞお願いいたします。

【高山メンバー】
 高山です。私からは、18ページの取締役会の構成を中心とした機能発揮の中で、社外取締役の質・量の向上に関して意見を申し上げさせていただきます。

 まず、社外取締役の量・人数というところでございますけれども、先ほど来、3分の1、過半数というところが話題に上っています。頂いた資料で、「プライム市場に期待されるガバナンス」というところで市場構造専門グループにおける議論が抜粋されていました。9ページでしょうか。そこで、「独立社外取締役3分の1以上等、機関投資家の多くが議決権行使基準において要求する事項を取り入れることも考えられる」、こういった議論が紹介されています。これについて私のほうから少し補足させていただきたいと思います。

 現在、機関投資家の議決権行使ガイドラインを見ますと、日本株の運用資産額で上位10社の機関投資家のうち、社外取締役の割合が3分の1以上であることを何らかの形で求めている投資家が10社中6社います。半数を超えています。親会社や支配株主がいない企業でもその対象になっています。このような状況を踏まえますと、日本企業の大株主である主要な機関投資家が3分の1という数字が非常に重要だと思っているという、この事実については、これからの議論を進める上で重視すべきポイントだと思います。

 それから、既に日本企業の多くが3分の1以上の社外取締役を有しているという事実から、私は、今回のコードでは、独立社外取締役の割合が3分の1以上いることが望ましいということについて、より明確に記載すべきだと思います。もしそれが全社に対して適用するというのが難しいということであれば、少なくともプライム市場に対しては望むべきだと考えます。

 次に、過半数についてどう考えるかということですが、将来的には過半数というのは望ましいとは思います。ただし、そのような状況になるためには、まず、社外取締役の実力の向上、質の向上、質の確保ということが極めて重要になると考えます。まずは、社外取締役の質の確保という仕組みを作った上で、次に、過半数の議論に移ったらいいのではないかと考えます。

 次、社外取締役の質の向上についてお話ししたいと思います。質の向上、実力の向上ということを考えるときに、二つのポイントがあります。一つは社外取締役を選任する時点、もう一つは選任した後のポイントです。これについては、先ほどケリーさんが御説明したICGNからの意見書が非常に参考になると思います。まず、選任する時点については、ICGNからの意見書で、3.4.1のところに独立社外取締役の選任に関する説明がございます。こちらについては、独立社外取締役の選任とサクセッションプランは指名委員会で主導されるべきであると書いてあります。私はこれに賛成します。指名委員会及び取締役会の責務として、社外取締役の選任プロセスとサクセッションプランについて、より明確にコードに記載したほうがいいと思います。

 それから、選任した後の評価というところでは、これも同じくICGNからの意見書が参考になります。意見書の3.4.3の評価、これは取締役会評価のことですが、ここには、取締役会、委員会、個々の取締役のパフォーマンスを評価する、定期的に外部評価を行うと記載されています。私はこれに賛成します。特に、指名委員会を含む委員会の評価、それから取締役個人の評価を行うことに賛成いたします。

 以上のような社外取締役の質の向上に関する内容をコードに記載したらよいと思います。では、これの対象を全社にするのか、プライム市場のみにするのかというところについては、先ほどの3分の1という数の話に比べて、こういう定性的なやり方というのは、よりハードルが低い、取り組みやすい内容であると思いますので、これについては、プライム市場、それ以外に関わらず全社に適用したらよいと考えます。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、岡田さん、よろしくお願いします。

【岡田メンバー】
 岡田でございます。私は、取締役会の機能発揮と多様性の確保についてコメントいたします。

 まず、社外取締役の数ですけれども、私は取締役会の過半数にすることに賛成いたします。現実問題としてほとんどの会社で社内出身取締役が過半数を占めているため,取締役会のほとんどの議題は経営会議等で議論され、もう結論が出ている案件で,それらを取締役会で議論するという実態です。つまり取締役会での議論が単なる形式になっているケースが多いんじゃないかと思います。そういう意味では、社外取締役が批判的な視点から自由に議論するという場が本来の取締役会だと思いますので,社外取締役を過半数にすべきではないかと思います。

 ただ、現実問題としては、社外取締役の候補が大変少ないというのも事実です。従って,私としては、過半数という数にこだわって社外取締役を増やすのは急ぐべきではないと考えます。過半数に拘りますと現行の独立性基準を満たしてるというだけでスキルのない人、例えばCEOが自分のお友達を連れてくるという可能性もあると思います。これはなかなか防げません。社外取締役を増やしていく過程では,スキル・マトリックスなどを○×だけでなく,経験年数などスキルの実態の検証とか、そういうことを十分に行うということも必要になると思います。これは指名委員会の重要な役割になってくるのではないかと思います。

 先ほど、社外取締役候補が不足していると申し上げましたけれども、原因と考えられる点ですが、上場会社のうち、企業出身の独立社外取締役のほとんどが現役の社長・会長経験者ではないかと感じております。事務局からの資料の4ページによりますと、他の会社の出身者の具体的属性、3分の1程度が社長・会長経験者以外ということなので、私が思っていたよりは多くいるのかなとは思いますけれども、それでも社長・会長経験者の半数にとどまっております。私は、社長・会長を経験していない取締役経験者にまだまだ人材がいると思っております。また、少数の人が1人で何社も兼職しているという現状に鑑みまして、社長・会長以外の人をもっと活用する仕組みが必要だと考えております。

 その意味では、これは議論のたたき台としてですけれども、報酬の有無を問わず、あるいは顧問だとか相談役など役職名に関わらず、社長・会長も含めて取締役引退後にグループ内にとどまっている役員が何人いるのか,固有名詞までは求めませんが、それを開示することを要求してはいかがだろうかと思います。企業も社外取締役人材を提供するということが社会貢献の一部であるという認識を持つべきです。ただ、1点だけ私が気になっていますのは,現状、社外取締役の報酬が低過ぎるのではないかという点です。退任前の報酬までは保障できなくとも、相当額を支払わなければ、グループ会社にとどまっていたほうが有利で楽だという現実があるわけです。

 それから,社外取締役が不足している原因のひとつに、ダイバーシティが進んでいないということがあるのではないかと思います。投資家に評価されるために、社外取締役に女性を何人入れたとか、外国人を何人入れたという数に惑わされているような気がします。私は、日本のケースですが、女性や外国人が加わることが重要なのは、彼らが日本の会社の伝統的なヒエラルキーに縛られないということではないかと思います。分かりやすく言えば,英語で訳すとどう言うのか分かりませんが、いわゆる空気を読まないということが大事だと思います。つまり、このような空気を読まない雰囲気で異論を述べる方々が多くいて、その意見を取り入れるという取締役会のあり方が大事だと思います。女性の場合は、一部の方はかなり実力もあり,社外取締役としての意識も高いのは事実ですが、この方々の絶対数が少ない。したがって、同じ方が多くの会社で社外取締役に就いております。これからじっくり育てることが重要です。会社の努力も求められますけれども、投資家の皆さんも対話などを通じて女性役員を鍛えて育てていただきたいと思います。また、本人たちも自ら進んで批判にさらされるようにして自らを鍛えてほしいと思います。

 外国人は空気を読まないというふうに申し上げましたが、直言することを期待いたします。そのためにも外国人を増やすことが望ましいと思います。最近の環境では、英語などの多言語で同時通訳をするツールも開発されつつありますので、これらを改良しながらコミュニケーションを向上させることは可能であると思います。ただ、一方では、これも報酬の話なんですが、実際に外国人の取締役を日本で採用した場合には、日本人の取締役と報酬が全く異なるケースもあると聞きます。これも課題の一つではあると思います。
 
 最後に、指名委員会について,指名委員会は本当に機能しているのかということを疑問に思っております。社外取締役が過半数を占める指名委員会が増えております。しかし日本の場合CEOは社内の取締役など社内から選任するケースが多いわけですが、社外取締役は社内の人材をほとんど知らないのが現状です。執行から上がってきた案を審議したと言っても,形式的で実質的に機能しているとは言い難いのではないかと考えます。

 そこで、ガバナンス報告書に、指名を行うに当たっての方針と手続というように具体的な方法、考え方を記載するということが望まれると思っております。JPXの資料の中の16ページの下に「後継者計画の策定・運用のプロセス」の開示例がありますが,かなり細かく述べられております。私もこの開示方法が理想的だと思いますが、ほとんどの会社においては,「CEOの選定に関しては指名委員会で検討しております」と開示するにとどまっております。この開示の充実を求めれば,結果として指名委員会を実質的に機能させる必要があるのではないかと思います。

 私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、小口さん、どうぞお願いいたします。

【小口メンバー】
 ありがとうございます。2点申し上げたいと思います。

 まずは、事務局資料の18ページのご議論いただきたい事項の(1)、取締役会の構成を中心とした機能発揮についてですが、これは2015年にコードができてからコードの中核をなす論点でありまして、2018年改訂でも深掘りされたものの、本日も残された課題としてこういう形で議論が続いている状況にあります。もちろん、この問題がいかに重要かつ難しいかという点が根底にあるのですけれども、さはさりながら、海外を見てみますと、この論点については以前に比べ議論が落ち着いてきたことを考えた場合、ガバナンス改革の一貫したキーワードである形式から実質とは逆説的に聞こえるかもしれないのですが、海外では実質を導く形式にたどり着いたことがその背景にあるのではと考えています。

 この2点目の黒ポチで触れています独立社外取締役の選任比率というのは、まさに実質を導く形式の一つと考えられるのですけれども、取締役会をつかさどる議長の属性、独立性というのも、グローバルには重要な論点だと思っています。

 8ページに諸外国の規定があるのですけれども、英国では取締役会議長に独立性を求めています。シンガポールでは、取締役会議長が独立性を有しない場合には過半数の独立社外取締役を求めるとあります。それから、先ほどケリーさんが言及されましたが、ケリーさんの資料では3.1.4で紹介されていますが、より汎用的なICGNグローバル・ガバナンス原則でも、たしか指針の2.1だったと思うのですけれども、英国と同様の規定がありまして、こういったものを見ているグローバル機関投資家が議決権行使等を通じて声を上げる根拠になっています。このように、海外においては取締役会議長の独立性の実効性については認知されておりまして、日本でも、基本原則4の中で、取締役会の役割・責務として「独立した客観的な立場からの監督」を掲げている以上、外から見ると、どうして取締役会議長について言及がないのか、むしろ不自然に映ってしまう懸念があります。ただ、その一方で、東証のコーポレートガバナンス白書を見ますと、JPX日経400の構成会社であっても、社外取締役が議長を務めている比率は4%にすぎないという現実もありますし、先ほどの御意見のような考え方もあることについては理解しております。

 しかしながら、独立取締役が議長を務めるということそのものについては、各社、既に相応数存在する独立取締役をより実質的に活用していく一環であるとの姿勢に立てば、現時点でも可能ですので、例えばプライム市場においては、シンガポール方式といいますか、独立取締役が取締役会議長、そうでない場合は過半数の独立取締役を求めるなどして、取締役会議長の独立性に言及することを考えてはどうかと思っています。これであれば、先ほど御意見のあった米国型ボードも含まれますし、そもそもコードを作ったときに閣議決定の要請にもありました、「我が国企業の実情等にも沿い、国際的にも評価が得られる」ことにつながる考え方ではないかと思っています。

 次に、ご議論いただきたい事項の(2)、多様性の確保のところですけれども、今回のガバナンス上の課題として取り上げられています中長期的な持続可能性の実現の観点からも、企業自らが問題意識を持って取り組むべき問題だと考えています。
そして、前回少し触れさせていただいたのですが、海外投資家にとって、少子高齢化の進む日本に長期的な視点で投資することへの懸念や、あるいは稼いで使う力が問われているといった問題に対しても、多様な人材をどう活用していくのかについての中長期目線での発信は、その回答の一つになるのではないかと思っています。

 ただ、日本の人事制度の硬直性というのは、残念ながら対外的にかなり刷り込まれている部分もありますので、現行の延長線上で発信してもなかなか響かないのではないかと思っていまして、そこで、この資料にあるような、女性・外国人・中途採用者の登用についての測定可能な目標や状況につき公表を求めるといった、ある意味でこれまでの日本らしくない具体的な踏み込みがあるのであれば、日本を見る目を変える意味でも、また、企業自らが変革することを後押しする意味でも、有効ではないかと考えています。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、池尾先生、どうぞよろしくお願いいたします。

【池尾メンバー】
 どうもありがとうございます。

 取締役会の機能発揮に関連してですけれども、数の議論がされているわけですが、過半数だとか3分の1だとか、そういう数の議論が今なお大切だということは、私、認めるんですけれども、同時に質の議論をする必要があって、中でも独立社外取締役の就任年限というのが大事なポイントだと思うんですね。ケリーさんが指摘されましたけれども。というのは、形式的には社外性の要因に変化がなくても、実質的には社外性というのは時間の経過とともに失われていくんですね。例えば、毎回、毎回、取締役会に先んじて内部者から議題の説明を受けたりしますよね。そういうのを繰り返している中で、だんだんと内部者のロジックにはまっていくというか、内部者のロジックをよく理解するようになるというか、そういう面があって、長くやっていると社外性が失われるという。社外性というのは放っておいても確保されるものじゃなくて、社外性を確保するための努力というのは必要で、その面であんまり長くやり過ぎないというのが大事だなと考えています。そういう意味で、年限について開示するというのは賛成です。

 ただ、外部評価機関による定期的評価に関しては、現状を考えた場合、その任に堪える外部評価機関が日本に存在するかという問題があって、一般論として、外部から評価を受けたほうが今言った社外性を確保するためにも望ましいんだけれども、日本にそれだけの能力を持った本当に有用な社外評価機関が存在するかと言われると、いろいろ探してもらったんだけど、なかなか存在しないというのが現状で、その点についてはちょっと議論したいなという感じがありますが、独立性の定義という話と関連して、実質的な定義ということをやっぱり考える必要があって、長く社外取締役をやっているとしがらみが発生するんだという、そういうポイントは重視してほしいなと思いました。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、松岡さん、よろしくお願いします。

【松岡メンバー】
 ありがとうございます。

 まず、取締役会の構成を中心とした機能発揮と多様性の確保の両方についてなんですが、前者については、私の務めております経団連の資本市場部会長としての立場からは特にございません。後ほど、御参考までに当社の状況というのを一度共有させていただきたいと思います。

 2番目の多様性の確保のお話でございますけれども、先ほど来、議論の中にもございましたが、やはり企業経営にとって多様性というのはイノベーションや新しい価値創造の源泉であって、また、経営戦略の要だという認識がございます。コロナ後の企業の変革というのをますます進めるということにおいては、ガバナンスの面からも、また経営のありようという面からも、多様性を確保するというのは重要だという認識は企業の側としてもございます。

 去る11月9日に経団連のほうから発表させていただきました提言「。新成長戦略」がございますけれども、そちらにおいても、性別や年齢、国籍、経歴、また障害の有無などと、多様性というのを積極的に推進するということを掲げておりまして、2030年までに役員に占める女性の比率を例えば30%以上にすると、こういう目標もお示ししておりまして、各企業におけるガバナンスの多様性の確保に向けた自主的な取組というのを後押しさせていただいている次第です。

 10月末に経団連のほうで発表いたしました調査があるんですけれども、コロナ以前から、やはり柔軟な働き方や、先ほどもちょっとございましたけれども、ダイバーシティに熱心に取り組んでいる企業というところほど、コロナ禍での経営の継続、BCPの対応とか経営の継続性、サステナビリティをどう有効に進めるかというところにおいてスムーズな状況が見られたという傾向がございます。また、コロナ後の非常に変動が予想される事業環境への適応や新たなプロダクトやサービスのイノベーションということについても、ダイバーシティやインクルージョンが鍵となるということに対しては、多くの企業がそのような認識があるということで回答しております。このようにしてダイバーシティ推進というのは着実に大きな流れとなってきておりまして、各社の取組を後押しする施策というのはやはり重要であると考えております。

 そういった企業各社の自主的な取組を促すという観点からいたしますと、例えば女性・外国人・中途採用のお話が出ましたけれども、それらを含めた様々な属性やバックグラウンドを持つ人の多様性を確保する、その全体としての考え方や自主的な目標の公表を求めるということには意義があると考えております。ただ、各社の多様な取組に対応すべく、公表の在り方については今後の検討が必要なのではないかなと思っております。

 また、そういった様々なバックグラウンドや属性のある人材を求める上での前提というのが重要だとも思っておりまして、例えば高度外国人が住みやすい、働きやすい国をつくるということや、仕事に従事することを可能せしめる基盤となる社会的なインフラ、サポートシステムですね、それから、例えば流動性のある労働市場や法規制、こういったような環境整備というのも不可欠なのではないかと考えております。なので、ガバナンスの文脈と並行いたしまして、こういった多様性の確保を実現するための施策及び環境整備というのをぜひ国も一丸となってお進めいただければありがたいなと思っております。

 戻りまして、先ほどの1番目のほうですね、取締役会の構成を中心とした機能発揮について、当社の状況について、いろんな御意見もございましたので、御参考になるかもしれませんので若干紹介させていただきますと、取締役のほとんどは社外取でございます。議長も社外取が務めているという状況でやってきております。執行側の私どもとしては、先ほど御指摘もございましたけれども、株主の声に耳を傾けて、執行側としての戦略や経営についてボードにお諮りし、株主を代表する立場でもある取締役間において非常に活発な議論がなされておりまして、そういう意味では、執行側と社外取を中心としたボードの機能というのは有効に発揮されていると思っております。ただ、これもいろいろな背景や状況の企業もあると思いますので、どういった仕組みなり目線というのが実行可能かつ有効なものかというのを現実的な観点で検討するということが重要ではないかと考えております。

 以上、ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それで、チャット欄で発言希望いただいている方が現在あと9名いらっしゃいまして、残り時間は27分ですので、27割る9ということで、最大でも3分以内での短めというか、簡潔な御発言をお願いせざるを得ません。いつも途中からそういうお願いをして大変申し訳ありませんけれども、意識していただければありがたく存じます。

 次に、上田さん、どうぞお願いいたします。

【上田メンバー】
 ありがとうございます。それでは、手短に3分以内でお話しさせていただきます。

 まず、取締役会の機能の発揮についてですが、今回、どうしても議論がプライム市場に偏っているような気もいたします。プライム市場は、グローバルな競争力を持つ市場で、そこに上場するという自覚を会社さんに持っていただく、こういう前提での議論は大変重要だと思います。一方で、スタンダードについても、やはり日本のスタンダードな市場に上場している会社としての形ということで、目配りも必要なのであろうと思います。その上で3点、簡潔に申し上げます。

 まず、社外取締役ですけれども、今申し上げたような市場における自覚というか、企業さんの位置づけを考えますと、ミニマム・スタンダードとしての取締役会の3分の1が社外、この辺りは求められてくると思います。さらにプライム市場あるいは子会社上場等の事情がある場合には過半数ということが、これが求められている水準ではないかと思います。さらに、そういったものの機能をさらに発揮するためとしては、取締役会議長とCEOの役割の明確化、あるいはリードダイレクターのような社外取締役あるいはその機能を発揮させる仕組みの導入というものも、ベストプラクティスとしてコードで言及してもよい段階に入っているのかと思います。やはり1人、2人の社外取締役を選ぶということと、3分の1あるいは過半数の社外取締役を選ぶという場合には、会社としても、スキルセット、スキル・マトリックスの設定であるとか、どういう人を選ぶかという質に対して、今以上に真剣に考えざるを得ない、ダイバーシティもより考えざるを得ないということになります。そのため、こういったところは、日本市場を代表する市場のコーポレートガバナンス・コードという意味からすると、日本市場がこの分野では遅れていると長年見られていたけど、そうではないということを示すためにも、今回をよい機会として、より高い水準を見せていく段階に入ったかなと思います。

 さらに、次に指名・報酬委員会についてです。既に6割の会社で設置されているということであれば、これはもう上場会社においては設置するべきであるという前提で、その構成についても現行コードの原則4-10①で主要メンバーが独立社外というようなやや曖昧な形になっていますが、ここは独立社外取締役が過半数あるいは委員長が社外の人であるといった形で独立性をより明確化しても、実務もそれについてきているようですので、より高い水準でよろしいのかと思いました。

 最後、ダイバーシティについては、どうしても属性、女性であるとか外国人・中途採用という形式に行きがちなんですが、その機能・バックグラウンド面についてもやはり目配りは必要だと思っております。同質性を排除する、異質性を入れるというところを着眼点として議論すべきであり、株主や投資家に対して見せるという意味でも、なぜその人が必要なのかという説明のためにも、このスキル・マトリックスについて必要ではないかと思います。

 また、ジェンダー、国籍のほかに、ジェネレーション、年齢的なものも一つの要素としてあってもいいのかなというふうには感じました。、今後、人材活用、ダイバーシティは対話の材料にもなってまいりますが、そうはいっても急にできるものでもないと思いますので、今後、会社の考え方・方針のようなもの、そして目標、さらに実績がどうであったかと、こういうトレースできるような形での情報の共有・提供というものがあれば、株主から見ても市場から見ても評価できる取組ということになるのではないかと思いました。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、川北さん、お願いいたします。

【川北メンバー】
 川北です。映らないようですが、御寛容ください。

 社外取締役、特にプライム市場に関して申し上げますと、端的に言うと、社外取締役について当面3分の1以上にするということは賛成で、いずれはやはり過半数を目指すべきだと思っています。

 それから、CEOとか社外取締役に関する指名委員会・報酬委員会に関しまして、これもコードに入れることには賛成です。これらの委員会について社外の比率を半数以上にする、これも必要だろうと思います。

 それから、ダイバーシティに関しましては、企業の考え方、意思決定を多様化させるという意味では方向感としては当然賛成です。ただし、その人数の基準について、基準を上げてぎりぎり規定するのは形式論過ぎます。そこで、実質を充実させるように仕向ける。実質が伴わない場合には企業の淘汰を図っていく。プライム市場であれば、そこから外していくということが同時に必要だろうと思います。

 そのためには、投資家の観点から言いますと、たとえば、社外取締役について、3社以上に就任されている方がおられるわけですが、そういうことの是非とか、それから意見にありました独立性の問題、さらに言うと必要な能力を持っているのかどうか、そういうことを対話する必要がある。同時に業績も対話の対象になる。これらのためには情報が必要です。たとえば、英文の開示とか、それから取締役のスキル・マトリックス、そういうふうな情報を提供することは非常に重要だと思います。

 ついでに言えば、今後は、システム的な能力・経験、そういうふうなものが必須だと思っております。逆に、経営を経験しているからといって、その経験が平凡なものであっては仕方がないので、そういうところを投資家として議論すべきです。

 投資家として、これはコーポレートガバナンス・コードの問題ではないと思いますけれども、取締役の選任議案に反対しているにもかかわらず、インデックス運用などでそういう企業を組み入れ続けることは、これは投資家目線からの淘汰に反していて問題だろうと思います。

 それから、これもガバナンス・コードの問題ではないと思いますが、ただし、プライム市場の観点からいうと、上場基準に関して、投資家の評価の集積である時価総額について、そのバーを当面は一定の水準に定めるとしても、定期的に、3年とか5年とか基準をアップしていく。GNPの成長に合わせてアップしていく。そういう取引所側の努力も必要だと思いますし、この取引所側の努力で言うと、親子上場の問題、これも一つの対象になる。これは後ほどの議論だと思いますけれども。

 ということで、単にコーポレートガバナンス・コードでの対応だけではなくて、それを受ける側の対応も必要だということを多少付け加えておきたいと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、三瓶さん、よろしくお願いします。

 【三瓶メンバー】
 三瓶です。よろしくお願いします。

 私、まず、取締役会の構成と多様性について、それぞれコメントさせていただきたいと思います。

 取締役会の構成について、皆さんおっしゃっているように、まず、私は最終的には過半数というのがあるかもしれないけれども、今のところ質の改善ということに重点を置くことが必要ではないかと思っています。

 とはいえ、比率についてどう考えるかということについてもちょっと触れます。比率ありきではない、数字ありきではないんですけれども、3分の1以上というのはそれなりの根拠があると思っています。というのは、まず、社外取締役を導入する目的として、権限の集中回避とか、権限集中することによって忖度が起こることの回避、それを社外の目で監督するという監督の実効性というのが1つ目です。もう一つは、一般株主との利益相反が生じるおそれ、これについて監督するということからすると、まず、権限集中回避、意思決定プロセスの透明化のためには、独立した指名委員会と独立した報酬委員会が必要だと思います。それを前提に、では、独立した委員会とは何かといったら、最低でも2名の独立社外取締役が必要であると。かつ、権限集中を避けるために、指名委員会と報酬委員会をそれぞれ委員長を別にする、または構成委員を完全に一致している状態ではないようにする、多少のずれを持たせる。そうすると合計で3名の社外取締役が必要になります。かつ、今現状で日本の例えば東証一部で見ると、平均的な取締役会のサイズの平均は8.9人というふうに報告があります。ということは、この3人確保して8.9で割ると3分の1になる。ですから、3分の1というのはそういうような意味合いがあって、単に数字ありきではなくて、意味が大事、目的が大事ということです。

 一方で、質のほうですが、私も多くの社外取締役の方と面談をしていますけれども、まだまだ、例えばコーポレートガバナンス・コードができる前に経営をされていた方なんかは、その当時の自分の経営スタイルで社外取締役として座っていらっしゃる、アドバイスされるということがあって、株主からするとちょっと違うなという部分があります。そういう意味では、まず、委員会の実効性評価というのをしていただきたい。特に指名委員会の実効性評価をしていただきたいんですけれども、その視点として、まず、企業の長期戦略等々、スキル・マトリックスという言葉がいろんな方から出ましたけれども、マトリックスの項目というのが大事で、項目とこの戦略の方向性は合っているのかということです。ある会社では、開示用のスキル・マトリックスと、裏というんですかね、指名委員会で使っているスキル・マトリックスが違うということがありました。ここでは、開示用は今の現状肯定型、現状を説明するもの。ただし、実際に指名委員会で使っているのは本来どうあるべきかというスキル・マトリックスになっています。ですから、これを全ての会社でやってもらわないといけないんだと思います。ただ、本来あるものと今とのギャップが大きい場合に、本来あるスキル・マトリックスで穴だらけのものは見せられないと思うので、指名委員会はそういったものをちゃんと活用しているのかどうかということを実効性評価で開示していただくというようなことが必要かなと考えます。また、指名委員会が提言したことが取締役会で採用決定されなかった場合、覆されるとかいう場合、こういったことがあったのか、ないのか、どんな内容だったのかということの開示も必要だと思います。こういった実効性の評価が必要だと考えます。

 もう一つ、社外取締役の質の向上の方法として対話が重要だと思っています。私たちも社外取締役と対話していますが、最初の段階では手探りのようなやり取りがありますけれども、1時間のミーティングが終わる頃には意気投合して、社外取締役の方が株主・投資家がどんなことを期待しているのかということを明確に把握されるということがあります。こういったことをどんどん積み上げていく必要があると思います。

 最後に、多様性の確保なんですが、特に1つ目の黒丸ですかね、測定可能な目標・状況の策定・公表ということなんですけれども、女性と外国人については数値目標も有効かもしれません。ただし、中途採用については数値目標というのはちょっと無理があるかもしれません。特に私が想定しているのは、執行役クラスの外部からの採用ですけれども、そういった場合は数値目標というのはあまりふさわしくないのではないか。ただ、その目的、どういうことを考えているのか、また、人材活用の実態の開示、それと、何らかの、数は少ないでしょうけれども、トレーサブルな数値開示というのは有効であろうと。例えば、採用したけれども、その方が続かなくてすぐ辞めているということであれば困るので、トレーサブルである必要があると思います。幾つかのそういった会社の事例があります。例えば小売の大手では、DXを推進するために外部から人材を獲得して、その方は執行役として新しい事業モデルを推進しているとか、様々な例がありますので。ただ、これが聞いてみないと分からないということなので、これを積極的に開示していただくということが重要かなと思います。

 もう一つ、最後のポイントですけれども、人材育成や社内環境の整備というところについては、成果を測るということが必要だと思います。これは、まず社内でPDCAを回すのに有効であることと、その内容またはその一部でいいから開示していただくと、株主からそういった活動のサポートを得られるということがあると思います。成果というのは何かというと、活性化とか新しいアイデア、発案とかいうことになると思います。コスト削減だけによる生産性改善よりも、より持続可能性やアップサイドがあるという点で有意だと考えるからです。そういうことをやっている会社もあります。やっていることを開示している会社もありますので、ぜひそういうことを推進していきたいと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、春田さん、お願いいたします。

【春田メンバー】
 すみません、時間がないところをありがとうございます。手短に申し上げたいと思います。

社外取締役の役割発揮は、非常に重要なことだと思っております。ただ、議論を聞いておりますと、社外取締役の人数や割合に焦点が行きがちだなと思っていまして、やはり大事なのは質の向上かなと思っております。そういう意味では、適切な評価基準に基づく定期的な評価、それは外部評価が難しければ内部評価でもいいと思うんですが、そういった評価をきちんとしていくということ。それから、その評価の中で、企業方針や社外取締役が与えられた役割にどれほど貢献してきたのか、または関与してきたのか、そういったことも含めてきちんとした評価をしていくことが重要だと。今、社外取締役の形骸化が言われる中で、そういったことにより形骸化を防止することにもつながってくるんじゃないかと考えております。

 もう1点は、役割を発揮できるような環境整備が特に重要だと思っております。やはり我々労働組合を含めたステークホルダーとの定期的な対話だとか企業との情報共有、こういったことも含めた体制整備が重要かと思っていまして、これが社外取締役の役割発揮につながればと考えています。

 それから、多様性の確保のところでございますけれども、多様性の確保については言うまでもなく、企業の持続可能性も含めて非常に重要なことだと思っております。その中でやはり情報開示が重要だと思っていまして、企業の多様性の確保に向けた方針であるとか目標、多様性確保の状況、人材育成、それから社内環境整備を含めた、そういった情報を開示していくことが重要でありまして、それをESG、特にSに関する指標の中に入れながら、これをうまく方針に結びつけていく。それが企業における多様性の確保を後押しする形で進めていけば、社会の持続可能性にもつながってくるんじゃないかと思っているところでございます。

 短いところではございますが、以上で終わります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、小林会長、よろしくお願いいたします。

【小林メンバー】
 これだけ世の中が急激に変化する中で、デジタル・トランスフォーメーションやサステナビリティ・トランスフォーメーションの実現や、あるいはこういうパンデミックやヘルスケアへの対応を含めて、今までの社内の経営人材だけではとても対応できないという時代認識を持つべきだと思います。そういう意味では、取締役に限らず執行役も相当、海外なり、あるいは違う業種から来てもらうことが必然的に要求される中で、取締役会はどうあるべきかを考えるべきだと思います。

 指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社・監査役会設置会社という3つの組織形態があり、プライム・スタンダード・グロースという3つの市場区分が今後予定される中、三菱ケミカルホールディングスは、プライム市場を志向する指名委員会等設置会社として、執行と監督が完全に分離されたモニタリングボードを選択しています。今のところ、5名が社外取締役で、7名が社内取締役なんですが、そもそも、社内取締役とか独立社外取締役という言葉の定義そのものが、非常に明確でない気がします。といいますのは、当社では、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の化学工学の教授が取締役を務めています。彼はかつて研究子会社のCEOをやっていたので、定義上は社内取締役ではあるんだけれども、彼のメンタリティーはもう完全に独立していますし、完全にグローバルな科学者の視点で見ているということを考えると、いわば「独立社内取締役」という感じなんですね。逆に、池尾先生が言われたように、長くやれば社外取締役といえども社内化してくるわけで、どうも外形的な社外性にだけ拘泥するよりも、監督の実効性を高めるためのデフィニションは何かということを考えるほうが重要ではないかと思います。

 加えて、ノンエグゼクティブダイレクター、監督を任務とする非執行取締役には日々の執行の情報は入って来ないわけで、むしろフェアに客観的な視点から見るという独立性を保持できているのではないかと思います。例えば私は会長なんですが、執行とは全く関係ない日々を送っているわけで、社内取締役ではあるものの、明確に独立性を持っていると自負しています。そういう実態を踏まえる中で、CEOと会長の関係性あるいはCEOと議長の関係性というのをもう少し明確にしていく必要があるんじゃないかなと思います。

 多様性につきましても、資料4の5ページに当社のスキル・マトリックスが例示されておりますけれども、当社は純粋持ち株会社なので、取締役に求められるタレントのスペクトラムというのは、傘下の事業会社とは異なります。先ほど三瓶さんから戦略とスキル・マトリックスの整合性が重要という趣旨の御指摘がありましたけれども、事業会社では安全、保安等々、そういうかなり現場やテクノロジーに近い知見が必要ですが、やはり純粋持ち株会社としては、ポートフォリオ・トランスフォーメーションを実現することに対して、どのようなスキルが有利に働くかというような、そういう視点に特化して見るべきではないかなと思います。

 次に指名委員会の件ですが、当社は5名の指名委員中、4名が社外取締役で、会長である私1名だけが社内取締役という構成になっています。去年まではCEOも指名委員だったので、社外取締役3名対社内取締役2名だったんですが、今年からCEOは入らないということにして、社外取締役が絶対多数を占める状況がつくられました。しかし、逆にそうであるからこそ、執行側の人事担当者とか総務担当者にも適宜協力してもらって、将来の経営者候補としてポテンシャルを持った人材を社外取締役に直接知ってもらうため、かなり頻繁にプレゼンをやらせるなどの機会を設けておいて、指名委員会がより身近で評価できるような環境をつくっておくことが必要なんじゃないかと思います。

 あと、日本の社外取締役の人材マーケットとして、社長・会長経験者だけでは女性を筆頭に人数が全く足りない。私の経験から考えると、現役の常務とか専務クラスの時代に社外の経営に触れると、極めて経営者としての勉強になります。そういう意味で、もっと広い人材マーケットの在り方を考えるべきなのかなと思います。特に女性は逼迫しているので、なおさらそれが重要じゃないかなと思います。

 いずれにしましても、こういうSDGsなりESGの時代に企業価値を持続的に向上させることを、本当に日本人だけでできるのだろうかと考え直さなくてはならない、そういうフェーズに入っているのではないかと思います。当社の場合、指名委員会が来年4月からベルギー人をCEOに選んだわけですけれども、やっぱりその最大のクライテリアは、企業価値をどれだけ上げられるのか、そして持続可能性ということにどれだけの哲学を持っているかという点でした。当社の場合、この辺のスペシャリティーというかポテンシャリティーに最も富んでいる人間を選択しようとすると、残念ながら社内の日本人にはならなかったというのが実態かと思っております。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 残り時間あと3分になっているのですが、4人の方から御発言希望いただいていますので、お願いいたします。武井先生、どうぞ。

【武井メンバー】
 すみません、お願いします。

 第一に、独立社外取締役の員数の点ですが、私もこの点については、プライム市場についてだけ3分の1をコンプライ・オア・エクスプレイン・ベースでということなら議論があり得るのだと思いますが、プライム以外のスタンダードも含めたコード全体であるとか、過半数であるとか、遵守の義務づけなどというのはまだ適切ではないのではないかと思います。

 先ほど独立社外取締役に対して「独立社内取締役もいるよ」というのが、多分、小林委員の先ほどのお話だと思いますが、独立社外取締役の「取締役」という部分についても、独立社外監査役も別途いるわけです。それでもあくまで「独立社外取締役」という用語にこだわっていると。そういう中で、独立社外取締役の員数だけで3分の1とか過半数とかであるといった規律を強く進めていくと、監査役会設置会社自体を否定するということになりうるのだと思います。監査役会設置会社は、御存じのとおり取締役会がマネジメントボードであって、監査役会設置会社の取締役会は重要な業務執行事項を決める会議体として会社法で強制されています。そうした業務執行事項を決める会議体に社外の方が半数前後いることを求めるという事態は、監査役会設置会社という機関設計自体の否定ということになるかと思います。しかし、日本の上場会社はおよそ監査役会設置会社を採ってはいけないということのメッセージまで出すのはちょっと難しいのではないかと思うところであり、従って、スタンダードを含めたコード全体であったり、過半数であったりとか、そういった議論は難しいのではないかと思います。監査役会設置会社である上場会社の中にも日本で相応の企業価値をきちんと出していらっしゃるところがある状況だと思うので、そういう点を指摘しておきたいと思います。

 また関連しまして、独立性という点についても、独立性とはあくまで消極要件であって、積極要件ではないわけです。積極要件はどちらかというと、先ほどもいろいろとご指摘がありましたように社外取締役の質とかが多様性のほうの話であって、独立性は消極要件なので、消極要件のところをあまり強調した話ばかりで進んでいくと、先ほどの社外取締役の質とかについてのご指摘の通り、副作用もいろいろ出てきうるかと思います。以上が1点目です。

 2点目は、多様性の関係です。スキル・マトリックスは大変大事で、基本的に、企業の方が自社にどういう経営課題やサステナビリティ課題があって、かつまた、昨今ですとDXの対応課題がどうあってとか、そういったことを踏まえてどういうふうに自社がレジリエントになっていくのかが求められていると。その観点から、まず、自社に必要な多様性についての考え方というのを先にきちんと公表すべきなのだと思います。そうした考え方の公表があった上で、多様性に関する典型事項、例えばジェンダーであったり、国際的知見であったり、中途採用者、そういった者の管理職などの体制について測定可能な目標とか状況を策定・公表していくということには意義があるのではないかと思います。これが2点目です。

 3点目が、役員の在任日数の話もありましたけど、私は、長い、短いというのはそのこと自体が多様性の一つではないかと思っています。長いから常に悪いと考えるのではなく、実際に長い任期の社外役員の方がいらっしゃったからこそ、経営トップの企業不祥事が防げた事例もあります。逆に、一定期間で定期的に社外役員全員が一斉に替わる方が多様性があってレジリエントかといいますと、そうでもないときもあるように思います。そうした点で、長い、短い自体も多様性の一つとして捉えるべきではないかと思います。これが3点目です。

 最後に4点目が、取締役会の機能発揮、活性化に関してです。大事な点として、取締役会からアジェンダ・セッティングの在り方が挙げられるかと思います。議長が社内であれ、社外であれ、アジェンダ・セッティングをどうするか。あと、議論が活性化するファシリテーター機能でして、ファシリテーター機能をどういう方がどう担っているのかが大事だと思います。このファシリテーター機能は、社外役員からコーチングが発揮されるグッドクエスチョンが発せられるような環境をつくることが大事だと思います。今の現状のガバナンス・コードでは、4-12にはよく読むとそういった点はまだ触れられていないようなので、こういったアジェンダ・セッティング、ファシリテーター機能のことをガバナンスコードの4-12に書くことが考えられるかと思います。加えまして、そういった機能を支える取締役の事務局機能についても4-12で書くことが重要かなと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは次に、岩間さん、お願いいたします。

【岩間メンバー】
 すみません、ありがとうございます。

 議論も出尽くしている感がございますが、私は、少数株主の利益の擁護という観点を軸に、取締役会の質の向上というようなことにつなげていくのはどうかと、こういう問題意識が1つございます。これは、例えば、株主総会で反対票が2割だとか3割出たときに、取締役会としてどういう具合に対応していくのかということについて、会社としてそういう対応の在り方というのを開示していくということをしていくことによって、取締役会の緊張感というのは高まるのではないかという気がいたします。

 その観点で、CEOとチェアマンが一緒であるということが是か非かということはありますが、そういうことに言及されておりますが、やはりリードダイレクターというか、そういった役割の人が社外として独立で存在するというのが、株主とのインターフェースということにも有効であろうと思います。

 それから、多様性の問題ですけれども、だんだん会社の人事というのはジョブベースに変わっていくという傾向にあるというわけで、実際に中途採用をどういう具合にしていくかということが、戦力強化、戦略面での展開力の強化ということにつながると思います。これが進んでいきますと、必然的にジェンダーであるとか外国人の問題とかそういうものの多様化が進んでいって、企業価値の持続的な向上強化ということにつながってくるんじゃないかと思いますので、そういう観点で、それぞれの会社がどういう具合にこの問題に取り組んでいくかということについて表明していくということが、投資家との間でいろいろ議論されていくということにもつながるんじゃないかと思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは次に、円谷さん、お願いいたします。

【円谷メンバー】
 どうもありがとうございます。簡潔に2点のみ意見を述べさせていただきます。

 1つ目は、私は、プライム市場への社外取締役過半数の推奨には賛成をしております。機関設計との関係ですとか監査役等の位置づけ等、十分分かっておりますが、やはり私は、現状では過半数になって責任感を持つということによる質の向上というのが今後必要になる、独立性があるだけの独立役員という時代はもうこの5年で終わったのではないかなと考えているからです。

 私の研究室での調査結果ですけれども、社内の取締役の平均年齢と比べて日本の社外取締役の方の年齢は高い平均値になっております。これは恐らくですけれども、言葉が難しいんですが、履歴書のぴかぴかした方を社外取締役に入れているからではないかと思われます。一方で、任期につきましては、社内取締役、社外取締役ともに世界で最も任期が短いというのが日本の状況になっておりますので、もう少し若いときから入れて、長く就任していただくことでその会社の中に精通する、それによっていろいろと解決できる問題があるかと思います。そうすると、ただ、なれ合いの問題がありますので、開示や対話によってその点は緊張感を維持するという方向性があるかと思っています。それが1つ目です。

 2つ目につきましては、女性・外国人ということについては、私は特に教育者という立場で、外国人の登用状況というのをぜひ開示していただきたいと思っています。日本企業は、表では、グローバル、グローバルとおっしゃっているんですけれども、やはり留学生の登用というのはかなり狭き門であるというのが私は肌感覚で持っています。それに加えて、日本人の感覚でのレールから外れている留学生、例えば軍隊に行っていて年がいっている大学4年生とか、そうなるとほぼ門前払いという状況ですので、どういった登用状況かというのを事前に開示することでそうしたギャップを埋めていただきたいというのを強く教育現場としては思っております。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、最後に大場会長、今日はつながりますでしょうか。よろしくお願いいたします。

【大場メンバー】
 大場です。私からは、一言で言いますと、原則3に示されている情報の開示ということをもう一度徹底させるということが、実効性を伴う意味で非常に重要ではないかと思います。全体感で言いますと、社外取締役を増やしてきたという実績はあるわけですが、日本の付加価値創造力、持続的な企業価値の向上に貢献したかというと、なかなか難しい面があると思います。それに対して、取締役会はどういう評価になっているのかということが何ら開示されていません。取締役会の評価は大変難しいものがあると思いますが、自己評価、他者評価を含めて、どのように開示するかというのが大変重要ではないかと思います。これが第1点です。

 もう1点は、個別の開示でありまして、武井さんからもお話ございましたけど、各社抱えている課題が異なりますので、その課題と取締役会の構成、指名委員会の委員の構成、報酬委員会の委員の構成、これがどのような課題を解決するためにポートフォリオとして選任をしたかと、取締役会の構成、委員会の委員の構成を何を狙いとしたかということ、これが開示されることが非常に大事ではないかと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 予定の時間をオーバーしてしまいまして大変申し訳ありませんでしたけれども、本日御出席のメンバーの方々全員の方から御意見をいただきました。大変貴重な御指摘を数多くいただきまして、どうもありがとうございました。また、長時間にわたってオンラインでの御参加をいただきまして、厚く御礼申し上げます。

 本日は以上とさせていただきます。

 事務局のほうから御連絡等ございましたらお願いいたします。

【島崎企業開示課長】
 次回のフォローアップ会議の日程でございますが、皆様の御都合を踏まえた上で最終的に決定させていただきたいと思いますので、御案内をお待ちいただければと思います。
事務局からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、以上で本日の会議を終了とさせていただきます。どうも長時間ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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