文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第2回)

日時:令和2年10月19日(月)

13:00~15:00

場所:AP虎ノ門 B室

議事

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化について(ワーキングチームからの中間まとめの報告)
    • (2)著作権行政をめぐる最新の動向について(報告)
    • (3)その他
  3. 閉会

配布資料

資料1-1
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する制度改正等について(中間まとめ)(令和2年10月12日放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム)概要(716.9KB)
資料1-2
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する制度改正等について(中間まとめ)(令和2年10月12日放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム)(328.6KB)
資料2-1
「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」等の公布及び一部の施行について(通知)(令和2年9月30日)(268.1KB)
資料2-2
リーチサイト規制施行後の状況(一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構提出資料)(366.4KB)
資料2-3
違法音楽アプリの根絶に向けた特設サイト「あの音楽アプリは、もう違法。」を開設(一般社団法人日本レコード協会提出資料)(825.3KB)
資料2-4
著作権教育・普及啓発の状況について(568KB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(408.2KB)
参考資料2
第20期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会委員名簿(235.8KB)
参考資料3
第20期文化審議会著作権分科会における検討課題について(令和2年6月26日文化審議会著作権分科会決定)(190.1KB)
参考資料4
基本政策小委員会の運営について(令和2年8月4日基本政策小委員会)(109.2KB)
参考資料5
「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化」に関する検討に当たっての基本方針(令和2年9月4日放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム)(183.6KB)
参考資料6-1
総務省提出資料(「放送コンテンツの同時配信等における権利処理円滑化に関する放送事業者の要望 取りまとめ」概要)(211.3KB)
参考資料6-2
総務省提出資料(放送のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する放送事業者の要望 取りまとめ)(別紙を含む)(598.5KB)

議事内容

【末吉主査】ただいまから文化審議会著作権分科会基本政策小委員会第2回を開催いたします。本日は御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。本日は新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため,基本的に委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。

また,議事1に関しまして,総務省情報流通行政局情報通信作品振興課の三島課長,放送事業者を代表してNHK知財センター著作権・契約部長の広石様とテレビ東京ホールディングス法務統括局番組契約部長の丸田様にも陪席いただいております。

皆様におかれましてはビデオをオンにしていただくとともに,御発言いただく際には,自分でミュートを解除して御発言いただくか,事務局でミュートを解除いたしますのでビデオの前で大きく手を振ってくださいませ。

議事に入る前に,本日の会議の公開につきまして確認いたします。予定されている議事の内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方々には入場していただいているところですが,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉主査】ありがとうございます。それでは本日の議事は公開ということで,傍聴者の方々にはそのまま傍聴いただくことといたします。傍聴される方々におかれましては,会議の様子を録音・録画することはどうか御遠慮くださいますようお願い申し上げます。

本日は,先日就任されました三谷英弘文部科学大臣政務官に御出席いただいております。三谷政務官から一言御挨拶をお願いいたします。

【三谷文部科学大臣政務官】皆様,こんにちは。

9月18日付で文部科学大臣政務官を拝命いたしました三谷英弘と申します。著作権分科会基本政策小委員会第2回の開催に当たりまして,一言御挨拶申し上げます。

私は弁護士として,エンターテインメントをはじめ知的財産の分野に深く関わらせていただいた経験がございます。その経験を通じまして,著作権制度はコンテンツ産業,クリエーターを保護するとともに,コンテンツの円滑な流通を図るための要となる非常に重要なものと認識しております。だからこそ,時代に変化に応じて,著作権制度について機敏に見直しを行っていく必要もございます。

そういった中で,本日の議題であります放送番組の同時配信等は,デジタル時代における視聴者の利便性向上,コンテンツ産業の振興などの観点を含め,特に早急な対応が求められる重要な課題と考えております。

視聴者,放送事業者,そしてクリエーターの全ての皆様にとって利益となる措置が講じられますよう,委員の皆様方におかれましては,ぜひ精力的に御議論を頂ければと考えております。また,この課題に限らず,我が国の著作権制度・著作権政策の在り方について,大局的な視点からの御意見も頂ければ幸いです。

私からの挨拶は以上です。どうぞよろしくお願いします。

【末吉主査】ありがとうございました。

事務局に人事異動があったようでございますので,事務局からその紹介と,併せて配付資料の確認をお願いします。

【大野著作権課長補佐】それではまず人事異動の紹介をいたします。10月1日付で文化庁次長として矢野和彦が着任しております。

【矢野文化庁次長】どうぞよろしくお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】続いて,配付資料の確認をいたします。お手元の議事次第に記載の配付資料の一覧を御覧いただければと思います。

資料1-1と1-2が放送の同時配信等に関しましてワーキングチームでまとめていただいた中間まとめに関する資料でございます。1-1が概要版,1-2が本体となっております。

次に資料2-1が,先般成立した著作権法等の改正に関する施行通知,資料2-2が,リーチサイト規制に関してCODAから御提出いただいている資料,資料2-3が,リーチアプリに関してレコード協会から御提出いただいている資料でございます。また別途,資料2-4といたしまして,著作権教育・普及啓発の状況について事務局で整理した資料を御用意しております。

また別途,参考資料1から6-2まで基礎的な資料をおつけしております。不備などがございましたらお伝えいただければと思います。

【末吉主査】それでは議事に入りますが,初めに,議事の進め方につきまして確認をしておきたいと思います。

本日の議事は,1,放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化について(ワーキングチームからの中間まとめの報告),2,著作権行政をめぐる最新の動向について(報告),3,その他,の3点となります。

早速議事に入りたいと思います。議題1「放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化について(ワーキングチームからの中間まとめの報告)」です。10月12日に開催されました放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチームにて,中間まとめが取りまとめられました。まず,本ワーキングチームの座長である私から概要を報告した上で,事務局から補足説明をしていただきます。

放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関しまして,ワーキングチームでの検討状況等を御報告いたします。本課題については,9月上旬以降ワーキングチームにおいて集中的に議論を進めてまいりました。8月末に総務省が取りまとめた放送事業者の要望を基に,幅広い権利者からのヒアリングを行いつつ議論を進め,10月12日に制度改正の方向性を示す中間的な取りまとめを行いました。

中間まとめでは,視聴者・放送事業者・クリエーターの全てにとって利益となるような措置を迅速に講じるとの基本方針の下,同時配信等に当たって想定される著作権制度上の様々な課題について,具体的な対応策を示しております。

今後はこの方向性に沿って,年末までの間に,より具体的な制度設計等についての議論を重ねていくこととなります。

中間まとめの具体的な内容については,事務局から追加説明をお願いします。

【大野著作権課長補佐】それではお手元の資料1-1に基づきまして,中間まとめの概要について補足させていただきたいと思います。なお,資料1-2が中間まとめの本体になっておりますので,必要に応じて御参照いただければと思います。

まず,資料1-1の1ページを御覧いただきたいと思います。上の段の検討経緯・今後の予定は先ほど座長から御報告があったとおりですので割愛いたします。

下の段の基本方針についてでございます。まず,この同時配信等が視聴者の利便性向上,コンテンツ産業の振興,国際競争力の確保等の観点から非常に重要な取組であることを確認しております。

その上で,2つ目の丸にありますように,放送と同等の権利処理を可能とする制度改正等を目指して,幅広い関係者の意見を丁寧に聴きながら,制度・運用の両面から総合的に対応を進めていくことにしております。

対応に当たりましては,3つ目の丸ですけれども,視聴者から見た利便性を第一としつつ,一元的な権利処理の推進と権利保護・権利者への適切な対価の還元のバランスを図り,視聴者・放送事業者・クリエーターの全てにとって利益となるような措置を迅速に講じていくことにしております。

その際の留意事項を2つ挙げております。一つは,多様なサービス形態や実態変化等に柔軟に対応できる仕組みを構築すること,もう一つは,この課題を通じて,著作物の創作・流通・利用のサイクルを維持・活性化するために,放送事業者からクリエーターに適切な対価が支払われるようにすること,これらが極めて重要としております。こういう基本方針を定めたところでございます。

次に2ページを御覧いただければと思います。ここからが制度改正の方向性を示す部分になります。まず総論といたしまして,制度改正によって利用円滑化を図っていくサービスの範囲をどう設定するかという部分でございます。

この議論は同時配信をきっかけに始まったわけですけれども,ワーキングチームにおいては,同時配信に限らず,追っかけ配信,一定期間の見逃し配信も含めて,幅広く利用円滑化を図っていくことが基本となっております。

また,2つ目の丸にありますように,放送対象地域との関係を問わず,た番組内容の一部変更,CMの差し替えも認めるなど,放送事業者からの御要望に基づいて柔軟な仕組みを構築することにしております。

具体的なサービスの範囲を画する要素は,下の丸1から丸7までに記載したとおりでございます。

まず丸1が見逃し配信の期間でございます。これは定型的に何日と定めるのではなくて,見逃し配信という性質を踏まえて過度に期間が拡大しないことには注意しながら,実際に即した柔軟な期間設定を可能にすることにしております。例えば毎週放送の番組は1週間,月1回放送の番組は1か月など,番組の性質などに応じて柔軟な設定があり得ることもお示ししております。

丸2では,放送対象地域に関わらず,インターネットを使った同時配信等を可能とすることにしております。

丸3は,放送で流す番組との差異でございますけれども,権利処理ができないなどに伴いまして,放送番組の内容を最小限に変更することや,CMの差し替えも可能とすることにしております。

丸4の配信の形態につきましては,ストリーミング形式と書いておりますけれども,ダウンロードができない形で,すなわち放送事業者が配信している期間だけ見られるような形での同時配信等を対象にすることにしております。

次に丸5は実施主体でございます。これは放送事業者が自ら配信している場合もあれば,民放のTVerのような形で別会社をつくって配信している実態もございますので,放送事業者が主体的に実施していると評価できるものであれば,配信プラットフォームが自前かどうかを問わず,対象に含めることにしております。

次に丸6の対価徴収の有無につきましては,無料配信のサービスを基本にしつつ,柔軟に対応できる余地も残すことにしております。背景としましては,視聴者の利便性と書いておりますけれども,放送と追加のコストを支払うことなく配信が見られることが重要であること,また,その他のネット配信におきましても有料のサービスが様々ございまして,放送番組以外では許諾を取って配信されている実態もございますので,そういったサービスとのイコールフッティングなどを考慮したということでございます。

最後の丸7は,ラジオ・衛星放送・有線放送の取扱いでございます。これまでもこうしたものと地上波のテレビ放送などについて,著作権法上,特段の区別はしてきていないわけですけれども,ラジオなどにつきましては,権利者から音楽配信ビジネスとのバッティングなどが懸念されるという御意見も頂いておりますので,権利者の利益を不当に害しない範囲で,一方では可能な限り対象に含められるように,丁寧に実態把握をした上でさらに取扱いを検討することにしております。

次に3ページを御覧いただければと思います。ここからが具体的な措置の内容になります。まずこちらで全体像を御紹介したいと思います。(1)から(5)まで記載しておりますけれども,同時配信をめぐっては非常に様々な課題がありますところを,大きく5つの柱で法改正などを行うことで総合的に課題の解決を図っていこうとしております。

まず(1)が権利制限規定の拡充でございます。放送では許諾なしに著作物等を利用できる規定について,同時配信等に拡充していくものでございます。

次に(2)許諾推定規定の創設でございます。放送番組での利用を認める契約をする際に,必ずしも利用条件が詳細に明らかになっていない場合もあるという御指摘を頂いておりまして,こうした場合に対応するために,権利者が契約時に別途の意思表示をしていなければ,放送だけではなくて同時配信等での利用も許諾したと推定することで,ワンストップでの利用を可能にするものでございます。

(3)と(4),これはレコード・実演,いわゆる著作隣接権に関しまして,円滑に許諾が取れないアウトサイダーの部分について,報酬請求権化することで事前の許諾を不要にしようという内容でございます。なお,このアウトサイダーという用語につきましては,資料の右肩に米印で記載しておりますが,あくまで,これまでの経緯などを踏まえて議論のための仮の呼称として使っているものでございまして,具体的な定義・範囲が整理された後,適切な呼び方・用語についても検討することにしているところでございます。

次に(5)裁定制度の改善でございます。こちらはまず丸1,協議不調の場合の裁定制度について,同時配信等に当たっての協議が調わない場合にも活用を可能とすることにしています。また丸2,権利者不明の場合の裁定制度につきましても,民放についての補償金の供託免除,「相当な努力」の緩和,申請手続の電子化などによって利便性を向上させることにしております。

また,一番下に米印を記載しておりますけれども,制度改正とは別途,運用面の諸課題についても総合的な解決を図る観点から,総務省,文化庁も関与しながら当事者間の協議の場を設置し,早急に検討を進めていくことにしております。

次に,4ページ以降で,それぞれの措置の内容について少し補足的な御説明をさせていただきます。

まず(1)権利制限規定の拡充でございます。これは先ほど申し上げましたとおり,基本的に全ての規定について,同時配信・追っかけ配信・見逃し配信を対象にしていく方向になっておりますが,若干の規定につきましては慎重な検討が必要という整理になっております。

特に丸2,38条3項,営利を目的としない公の伝達等については,もう少し精査が必要になっております。具体的には,38条3項前段におきましては,非営利・無料で行う公の伝達について権利が制限されており,こちらについては,同時配信・追っかけ配信・見逃し配信を全て対象に含めることも検討の余地があるという整理になっております。

一方で後段の営利や有料で行う場合につきましては権利者側から強い懸念が示されていることも踏まえまして,権利者の利益を不当に害しないように,対象サービスの範囲については取扱いをさらに精査していくことにしております。ただ,少なくとも同時配信につきましては,対象に含めることに理解を示している権利者団体も多く,また放送とリアルタイムで同じコンテンツが流れるということですので,権利者の利益も不当に害しないだろうということで,少なくとも後段についても同時配信は対象に含めることは共通認識になっております。

それから丸5,44条,一時的固定につきましては,見逃しまで対象に含めることを基本としておりますけれども,一部,ライセンスに基づいて利用されている実態があるという報告も頂いておりますので,そういったところの精査は引き続き行うことにしております。

続いて5ページに参りまして,(2)許諾推定規定の創設でございます。特に借用素材について課題として挙げられていましたけれども,借用素材を含めた著作物,それから映像実演に関しましては,放送と配信といずれも許諾が必要という仕組みになっております。その契約上,同時配信等の可否が必ずしも明確になっていない場合も多いという指摘がされておりまして,そういった場合の利用円滑化を図っていこうというものでございます。

一方で,米印に記載のとおり,権利者が同時配信等を認めていないことが明らかである場合にまで強制的に同時配信等ができるようにすることは困難ですので,あくまで権利者の意思が明確でない場合の措置だと御理解いただければと思います。

具体的には2つ目の丸に記載のとおり,放送及び同時配信等に係る許諾権原を有する者,すなわち放送と配信の両方について許諾を出せる立場にある人が放送番組での利用を認める契約を締結した際に,別段の意思表示をしていない場合には,放送だけでなく同時配信等の許諾も行ったものと推定するという規定を設けることで,権利処理を可能な限りワンストップ化していこうというものでございます。

その際,どこまで推定を及ぼすかということが論点になりますけれども,現時点では同時配信・追っかけ配信・見逃し配信を全て推定の対象に含めることを検討することとしております。

一方で,下から2つ目の丸ですけれども,権利者側からは,この推定規定が設けられることで,クリエーターが不利な条件での契約を強いられるのではないかといった懸念も示されておりますので,その払拭のための対応についても併せて検討することにしております。

いずれにしましても,一番下の丸にありますように,この推定規定につきましては,権利者側の懸念はしっかりと払拭しつつも,安定的な利用が可能となることが非常に重要でございますので,今後具体的な適用条件などについて分かりやすいルールづくりを行う必要があるということになっております。

続いて6ページを御覧いただければと思います。(3)がレコード・レコード実演の利用円滑化でございます。こちらは御案内のとおり,放送については報酬請求権である一方,配信については許諾権が設定されておりまして,場合によっては放送では流せるけれども配信ができない場面が生じることが指摘されておりました。

このため,2つ目の丸にありますけれども,同時配信等に当たって円滑に許諾を得られない,いわゆるアウトサイダーの権利に関しては,通常の使用料相当額の補償金を支払うことを前提に権利制限規定を創設することにしております。すなわち,アウトサイダーについては報酬請求権化することによって,事前許諾が不要で円滑に使えるようにするということでございます。なお,このアウトサイダーの定義ですとか補償金の運用のスキームなど詳細な中身については,今後年末にかけてさらに検討を深めることになっております。

次に(4)映像実演の利用円滑化でございます。映像実演につきましては,特に過去に制作された放送番組をリピート放送する際の同時配信の権利処理が課題として挙げられておりました。リピート放送につきましては基本的に報酬請求権になっておりますが,そのリピート放送の同時配信等を行うとその部分だけ許諾が必要となるため,配信が困難ではないかという指摘がされていたものでございます。

このため,リピート放送と同じような状況にするため,初回放送時の契約に特段の定めがない限り,実演家の許諾は不要としつつ,通常の使用料相当額の報酬の支払いを求めること,すなわち,許諾を不要にしつつ報酬をしっかり確保する措置を講ずることにしております。ただ,この措置につきましても,集中管理が行われている場合には円滑に許諾が得られることから,集中管理されている部分については許諾権のまま存置することも考えられる旨,記載しております。なお,アウトサイダーの定義,補償金スキームなど詳細については,レコードと同様,今後さらに検討を深めることにしております。

次に7ページ,(5)裁定制度の改善でございます。大きく丸1と丸2と2つございます。

まず丸1が,著作権法68条に定める協議不調の場合の裁定でございます。現行法上,放送を行う場合に対象が限定されておりますけれども,同時配信・追っかけ配信・見逃し配信に当たって協議が調わない場合にもこの制度を活用できるようにしております。また,著作隣接権にも準用することにしております。

丸2,著作権法67条に規定する権利者不明の場合の裁定でございます。こちらは放送事業者の要望に基づきまして,3つの措置を行うことにしております。

1つ目は補償金の事前供託免除の拡大でございます。民放事業者につきましても,権利者が現れた場合における補償金支払いの確実性を担保するための要件を設定しつつ,供託免除の対象に加えることにしております。この具体的な要件については今後ワーキングチームでさらに検討を深めることにしております。

2つ目の措置は「相当な努力」の要件緩和でございます。特にCRICのウェブサイトに7日間広告掲載をしないといけないことが課題として指摘されておりました。現状の運用では,7日間の掲載が終わった後に申請を頂くことにしておりますが,これを広告掲載直後から申請できるようにすることで,利用開始までの期間を1週間と短縮することにしております。

3つ目は申請手続の電子化でして,こちらは可能なところから速やかに電子化を進めることにしております。なお,手数料納付の電子化につきましては,電子決済システムなどの整備が必要でございますので,政府全体の取組を踏まえながら対応を行うことにしております。

8ページ以降は参考資料ですので,説明は割愛いたしますが,検討スケジュール,委員名簿,ヒアリング団体の一覧などをおつけしておりますので,必要に応じて御参照いただければと思います。

ひとまず事務局からは以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。

ただいま事務局から説明がありました内容等につきまして御質問,御意見等がございましたらば,御発言をよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。

【高杉委員】高杉でございます。

末吉座長はじめ,ワーキングチームの委員の皆様には短期間で中間まとめを取りまとめていただいたことに,まず敬意を表したいと思います。今後,具体的な制度設計の検討に入ると思いますけれども,私から3点申し上げたいと思います。

一つは,基本方針に書かれていますとおり,放送事業者からクリエーターに対して適切な対価が支払われるようにすることが極めて重要と考えております。放送事業者の要望に基づいて,手続の面で放送と同等の権利処理を可能とする制度改正の方向性が示されておりますけれども,この改正はクリエーターに対して適切な対価還元がなされることを前提にしたものであると理解しております。7月の規制改革実施計画においても,インターネット配信まで見据えた,放送事業者と権利者がウィン・ウィンの関係となる契約を促す観点から,放送事業者が権利者に支払うべき適切な使用料について議論を行うよう,放送事業者と権利者の間で検討の場が設けられるよう必要な措置を講ずると明記されております。

今後具体的な制度設計の検討が行われまして,法改正に進むためには,権利者の合意を得ることが必要と考えております。この合意のポイントはやはり適切な対価還元がなされるかどうかでありますので,速やかに協議の場の設置をお願いして,議論が開始されるように進めていただきたいと思っております。

それから2点目です。これは資料1-2の中間まとめの詳細版のほうに書いておりますけれども,こちらの3ページの一番上ですが,今回制度改正を行った後も,同時配信等の実施状況等を丁寧にフォローアップして,必要に応じてさらなる対応の検討を行うことも求められるものと考えられると整理されております。今回,多くの放送事業者から要望があるということで,制度改正の検討が進んでいるわけでございますけれども,改正後,実際に多くの放送事業者により同時配信等が行われているのかどうか,さらには適正な対価の還元がなされているのかどうか,これも検証事項の対象とすべきだと考えております。

それから最後ですけれども,この3ページに検討に当たっての視点が記載されておりまして,4点全て重要な視点であると思いますけれども,特にウの権利者の利益にどのような影響を与えるかという視点が極めて重要と考えております。本来,法改正は当事者間の契約で解決することが困難な点について行うのが本筋であると私は理解しておりますけれども,対象とするサービスの範囲など具体的な制度設計に当たりましては,くれぐれも既存のビジネスとかライセンス実務に影響を与えないように十分注意していただきたいと考えております。

私からは以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。

ほかに御意見,御質問はいかがでございましょう。菅委員,どうぞ。

【菅委員】今,お話にありましたけれども,過去,私も原作した映画を流されていたのに知らない場合があったんですね。後から友達から「やってたよ」と言われてびっくりしたと。ですから,アウトサイダーに対しても,割と自由に配信ができるようになるということは,必ず権利者を探し出して連絡をするというような一節が私は欲しいと思っております。知らないうちに利用されて,下手をしたらそのままで終わってしまう場合がありますので,そこをちゃんとしていただきたいというのが私の意見です。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。

ほかにいかがでございましょうか。岸委員,どうぞ。

【岸委員】今回の放送番組のネット同時配信の関連で規制の改革をすることで,内容に関しては特に異存はないのですけれども,規制改革会議の場で河野大臣も言っておりましたし,私は河野大臣に面識があるもので,その後話したときにも強く言っていたのですけれども,要は制度改正をするだけでは不十分で,やはり制度改正によって放送番組の同時配信ができるようになると。その場合の利益分配をどうするかという部分でやはりしっかりメカニズムを民民でつくらないと駄目である。ある意味で制度改正とこの利益分配の仕組みの確立を同時にセットすることが大事なのだということは河野大臣も言っておりましたので,実際その観点は著作権法の枠組みの中でも非常に重要だと思っています。とにかく,この利益分配の仕組みは当然総務省で研究会なりを立ち上げてやることになると思うのですけれども,これをなるべく可及的速やかに立ち上げていただいて,本当に河野大臣も望んでいるような同時決着をしっかりできるようにすることが大事だと思っておりますので,その部分を文化庁からもしっかり総務省に働きかけることを頑張っていただきたいと思っております。

すいません,以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかにいかがでございましょう。中村委員,どうぞ。

【吉村委員】ありがとうございます。経団連の吉村と申します。よろしくお願いします。

今回,権利者側への配慮もうたいつつ,放送番組のインターネット同時配信に向けた議論の方向性がここまで来たということで,それ自体はすごく歓迎したいと思います。他方で,まだ中間まとめなので,細かいところでは議論が積み残しのものがあると思います。そこについて,先ほど岸委員からもありましたけれども,放送事業者と権利者の意見の隔たりが多分大きいところも実際にはあるのだと想像します。そういったところを,実態も含めながらうまく議論を詰めていただいて,より望ましい姿に近づくように,今後もワーキングでも議論を深めていただきたいと思っております。

私からは以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。

中村委員,どうぞ。

【中村委員】通信・放送融合が政策課題に上げられてから30年近くになるのですけれども,それを進める著作権制度が本格的に議論されたのはほぼ初めてでありまして,それが日本のデジタル対応の後れを物語っているわけです。今回,大きな方向性をこの短時間で打ち出すことになったことを歓迎いたします。

私の唯一最大の懸念は,これは国民にとっては利便の向上ですけれども,先ほど来指摘がありましたようにステークホルダーが了解するかということで,放送局も権利者も納得のいく落としどころとなれば,これはとても大きな成果と言っていいと思います。実に短期間にもかかわらず業界と調整して,この中間まとめまでたどり着いてくれた文化庁と総務省,その他の関係者に感謝申し上げます。政府サイドの働きを評価すべきだと私は考えています。

ただ,法案策定までに細部の重要な積み残しがありますし,運用で対応する重要事項もございます。これも先ほど来指摘がありますけれども,政府関係者にはステークホルダーの協議の場を設けるといったこと,もう一汗かいていただきたくお願いを申し上げます。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。

ほかにいかがでございましょう。上野委員,どうぞ。

【上野委員】ありがとうございます。

ご説明によりますと,レコード・レコード実演の利用円滑化の詳細につきましては,今後さらに検討されるというお話で,「アウトサイダー」の定義ですとか,あるいは「補償金スキームなどの詳細」についても今後検討されるのだろうと思いますが,特にアウトサイダーとの関係では,指定管理団体とするかどうかも課題になるとうかがいました。もし仮にこの補償金請求権を指定管理団体のみが行使できるように制度設計する場合で,かつ事実上レコードやレコード実演に関する権利管理団体あるいはそれと実質的に同じような団体が当該管理団体としての指定を受け,さらに法律上あるいは事実上,アウトサイダーに帰属すべき補償金を当該指定管理団体が収受するということになりますと,その使途というものが大きな問題になるのではないかと思っております。

一般論としては,アウトサイダーに帰属すべき補償金を指定管理団体が収受した後,本来の権利者であるアウトサイダーに分配できずに残ったものは,支払者に返却するとか,当該団体が共通目的に使うとか,文化庁で文化目的に使うとか,いろいろな選択肢があるかと思いますけれども,本来アウトサイダーに帰属すべき金銭である以上,たとえ一定期間経過した後であっても,それがインサイダーである団体内部の構成員に分配されてしまうことがないように制度をつくるか,あるいは運用をチェックする必要があるのではないかと考えます。今の段階ではその点のみコメントさせていただきます。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。福井委員,どうぞ。

【福井委員】福井でございます。

まずはこのたびのワーキングチームの皆さん,各省庁,まさに短期間でこれだけ意欲的な提言をまとめられたことに敬意を表したいと思います。大きな方向性について歓迎いたします。その上で,私の不勉強,不理解かと思いますけれども,若干の御質問と要望を申し上げたいと思います。

まずは資料1-1のページの2にあります,対象サービスの範囲を画する要素の中の丸6,無料配信サービスを基本とするというところです。つまり,見逃し・追っかけ等で有料配信サービスが今後行われるときには権利制限をしないという意味に受け取りました。それはつまり,現時点では有料配信は恐らく多くないのだと思いますが,今後もサービスとしてはしにくいことを意味するのかなと思いました。

それでこうした放送・通信のさらなる進展は十分図れていけるのでしょうか。また,有料配信がしにくい状況の中で,権利者への十分な利益還元が図っていけるのでしょうか。事務局の御理解を伺えればと思いました。

2つ目です。7ページです。権利者不明の場合の裁定で,補償金の事前供託免除はまさに必要なことであって,大変賛成なのですが,今,民放事業者が対象となっています。これも私が不勉強で,この主体は民放事業者だけに絞るので問題はないのでしょうか。例えば,民放事業者からのライセンスによって他の配信事業者がそうした再送信や追っかけのサービスを行う場合にも,これでカバーできるのでしょうか。あるいはそういうサービスはあり得ないという御理解でしょうか。

最後に,アウトサイダーという言葉について解説をたくさん頂きましたので,初回に発言した者として申し上げます。今後,用語を整理されるということで,私はやはり用語の変更を検討されたほうがいいのではないかという思いを持っています。

この会議に先立って海外での用例を改めて若干見てみましたが,権利の集中管理の文脈ではやはりアウトサイダーという言葉の出現はかなり少ないように感じました。もちろんアウトサイダーという用例もあるのだろうと思いますけれども,ノンメンバーのほうがずっと多いような気がしました。

この点,アウトサイダーは中立的な用語として使われることもありますが,あまりよくないニュアンスで使われることもあるように思います。しかし,各種の団体への加入は個々の権利者が様々な事情や信念で加入する・加入しないを決められていることだと思います。非加入であることが何か非正常状態であるようなニュアンスが出てしまうとするならば,今度は逆に権利者団体のほうに求められる条件が多分出てくるだろうと思いますので,あまり非正常状態であるというようなニュアンスのある言葉は避けたほうがいいのではないか。こんなふうに思ったところでした。

私からは以上となります。

【末吉主査】ありがとうございます。この点,では事務局からお願いします。

【大野著作権課長補佐】3点御指摘,御質問を頂いております。

まず1点目の無料配信サービスの関係,こちらは資料1-2の3ページを一旦御覧いただきたいと思います。今回,権利制限などによって利用円滑化を図るサービスの範囲が非常に重要なものとなりますので,丁寧に議論を進めてきております。このページの真ん中辺りに検討に当たっての視点を書き出しておりますが,これに照らしてそれぞれの要件・要素を判断するという枠組みで議論してまいりました。アが視聴者の利便性向上,イが放送に準じた公益性の有無,ウが権利者の利益への影響,エがその他インターネット送信等とのバランス,この4点に照らしてそれぞれの要素を議論してきたところでございまして,対価徴収,無料配信という部分につきましても,この4点の視点を踏まえると,基本的には無料サービスにすべきではないかというのが,現時点でのワーキングチームでのまとめでございます。

ただ,4ページ目の丸6,本文を見ていただきますと,若干含みを持たせておりまして,無料配信サービスを対象とすることを基本とするとしつつ,ただし,同時配信等の実態等に応じて迅速・柔軟に対応できる余地を残しておく必要もあるということで,今後サービスが発展し,有料での同時配信,有料での見逃し配信などが広く定着してくることも想定されますので,それを阻害しないように柔軟な余地も残しておこうということでございます。いずれにしても,ここは年末までにかけて,より具体の詰めを行っていくことになろうかと思います。

それから2点目は裁定制度の供託免除の関係でございます。今回,放送事業者様からの御要望に基づいて措置を検討するという枠組みになっておりますので,民放事業者が主体になる場合を対象にすることにしております。その他の部分については,ニーズと,今認めている供託免除の主体とのイコールフッティングといいますか,そことの整合性などを踏まえながら,改めて議論していくべきものかと理解しております。

それから3点目のアウトサイダーという用語については,前回から御指摘を頂いているとおりでございまして,これからよく整理をして,適切な用語を使っていきたいと思います。ただ,ノンメンバーという概念と今回権利制限などをする対象が必ず一致するかというと,そうでない場合もあり得るため,そこは概念・定義をしっかり表しつつ,誤解を招かない用語を適切に選択していく必要があろうかと思っております。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかにいかがでございましょう。

【福井委員】福井ですが,今の点で1点だけ。

【末吉主査】どうぞ。

【福井委員】確認ですけれども,仮に民放事業者からのライセンスに基づいて同時配信や追っかけ配信が他の配信事業者によって行われるとした場合,裁定申請の主体になるのはどちらという認識で事務局は考えていらっしゃるでしょうか。

【大野著作権課長補佐】そこはまだ検討できていないというのが正直なところでして,放送事業者様からは自分たちを免除の対象に含めてほしいという御要望を頂いていますので,まずはそれに対応しようということでございます。

先ほど正確に申し上げませんでしたけれども,今の法律の枠組みで供託免除をするとしているのは国,自治体,NHKなどでして,これは公共性がかなりあるということと,補償金支払いの確実性が担保されている,この2点を考慮しておりますので,放送事業者であれば民放事業者についてもクリアし得ると思うのですけれども,そのほか様々な主体ということになりますと,ほかの別の観点からの考慮ということも慎重な議論は必要になると理解しております。

【末吉主査】ありがとうございました。

太田委員,お待たせしました。太田委員,どうぞ。

【太田委員】大変優れた中間まとめで,ステークホルダー全員のウィン・ウィンを目指すということと,国際競争力にも配慮するということで,基本的に大変優れたものとして賛成したいと思います。さて,「法と経済学」的な経済理論から見ると,こういう制度がうまくいくかどうかの一番重要なところは,取引費用です。「コースの定理」によれば取引費用がゼロないし小さければ制度はうまく機能すると期待できます,取引費用の中の交渉費用が高い人たち,ここでは,大手でない権利者等,そしていわゆるアウトサイダーの人たちの交渉費用をどれだけ下げることができ,交渉の場に入ってきてもらうかが重要となります,全員が交渉に入ることができて少ない交渉費用で各自の権利の実現を図れれば制度の目的は達成されます,その点でアウトサイダーの定義が先送りされているので,実際のこの制度がどういう動きをしてうまくいくかどうかがある意味で先送りされている印象がありますので,どのように定義して,どのようにすくい上げるのか,その方向性を少し教えていただければ,と思います。

もう一つ,営利でない,無償ということなのですけれども,視聴者が払わない場合でも送信者は営利の目的で活動できますね。例えば広告収入を広告主から取るとかです。そういう形で多額のプロフィット・メーキングできる場合があるのですが,その場合と視聴者が無償か否かのみを基準とすることとの関係を,僕が聞き落としたのかもしれませんが,教えていただければと思います。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。この点も事務局からお願いします。

【大野著作権課長補佐】まず,アウトサイダーの定義についてですけれども,資料1-2,本文のほうの9ページを御覧いただきたいと思います。2つ目の丸で,このアウトサイダーの定義について記載しております。基本的には,集中管理がされているか,されていないかで判断することとしつつ,ただしということで,少し留意事項を書いております。

丸1は,集中管理されていなくても,権利情報データベースに登録されて,データベース上で適切な使用料で確実に許諾する旨が明らかにされている場合にも,権利制限してしまうことが正当化できるのかということ。

もう一つは丸2で,日本の著作権等管理事業者が管理していない外国原盤も多いわけでございまして,こういったものについて我が国の管理事業者が管理していないことをもってアウトサイダーとして権利制限することについては,諸外国との関係でも慎重な精査が必要ではないかということ。この丸1,丸2をどうしていくかというのが検討課題として残っております。一方で,大枠としては既に固まっていると言えるかと思っております。

それから営利と有料の関係でございますけれども,著作権法上は,一応営利という要件と無料という要件は切り分けて規定がされているものもありまして,それぞれのサービスなどの必要性や許容性を議論する中で適切に要件設定を行うべきものと理解しております。今回は,先ほど申したような視聴者から見た利便性など様々な観点を踏まえますと,広告収入などで放送事業者が別途利益を得ることはそれほど問題にする必要はなく,それを問題にすると民放がほぼ対象にならないことになってしまいますので,営利というものは要件としてかぶせないことにしつつ,視聴者から追加のコストなく見られることを重視して,無料配信という切り方を現時点ではしているということでございます。

ただ,先ほど申し上げましたとおり,これは固定した取扱いではなくて,今後実態などを踏まえながら,柔軟な検討の余地も残しておくというのが現時点での中間まとめとなっております。

【末吉主査】ありがとうございます。よろしいですか。

【太田委員】はい,ほぼ分かりました。

【末吉主査】ありがとうございました。

ほかにいかがでございましょう。瀬尾委員,どうぞ。

【瀬尾委員】ありがとうございます。

実は今の中で裁定制度ですけれども,裁定制度自体がもう大分長いこと,そのありようが変わってきていて,これまでは非常にここぞという時,最後の一番という時にどうしようもなくて使うような制度が裁定制度だったというような立てつけがあって,これは非常にハードルの高い利用方法だったと思います。

それが一般的にオーファンと呼ばれているものが大変広くなってきて,汎用で使われてくるようになってきた。そういうことによって制度が変わっていき,裁定制度が利用しやすくなってきている。また,権利者団体もそれに対して大いに協力をしているところです。このような方向性はについては非常にいいことですし,今回のいわゆる放送についてもこの裁定制度の迅速化とか利用のしやすさの向上は,私は歓迎する方向で考えています。

ただ,この制度の難しいところは,オープンにし過ぎてしまうと,今度はざるになってしまう可能性があるんですね。今回は対象が絞られていますから大丈夫なのですけれども。これが過剰に一般化していくと,何でもかんでも裁定に回してしまおうというような形になってしまう可能性があって,いささか危険も感じられると考えます。現実的に実証事業の中で分かったことですが,本当に悪用ということが出始めています。オーファンワークスの実証事業を文化庁さんから受託させていただいて,権利者団体7団体で4年間やりましたけれども,最後のほうにはやはり悪用のケースが出てきたんです。つまり,何でもかんでも取りあえず裁定に入れてしまえと。通ってしまえば使えちゃうでしょうといって,調べもしないでやるようなことも出てきていたりもするので,そういった意味ではある一定のフィルタリングをしていくようなこととか,何かそういう工夫が必要かなと思います。

ただ,全体的にコンテンツの匿名化と流動性がやはり非常に高くなってきている。プロだけではないコンテンツが広がっていることを踏まえて,裁定制度の利活用については今後も拡張して広げていくべきだと思われます。

また,先ほどのアウトサイダーにもありますけれども,アウトサイダーというのは私もちょっと言葉としてはいかがなものかと思うところがございます。ノンメンバーの人間のクリエーターが非常に増えている現在,そういった方たちをどのようにこの創作のサイクルに取り込むかは権利者団体でも考えますけれども,制度としても,一種の登録制度の拡充等を踏まえて,何らかのデータベースなり何なりを整備していくことも必要なのではないかと考えます。

裁定制度について肯定しつつも一定のブレーキを,という意見と取っていただければよろしいかと思います。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。

河野委員,お待たせしました。どうぞ。

【河野委員】ありがとうございます。

私は,一般の視聴者として,今回のワーキングチームの中間取りまとめに関しましては,著作物の視聴環境が多様化している中で,社会の変化に応じた柔軟な対応を示してくださったことに感謝申し上げたいと思いますし,この方向性がしっかりと担保されて,社会実装となってほしいと思っております。

その上で,やはり視聴者としますと,私たちからは見えないところでの対価のやり取りになりますので,当然のことながら権利者の方へ本当に適切な還元が行われることを強く望みたいと思います。特に,先ほどからアウトサイダーという形で言われておりますけれども,交渉力の弱い方への配慮をしっかりしていただきたいと思います。

それから2点目ですが,関係者の皆様はよく分かっていらっしゃると思いますけれども,今は既に放送という仕組みに加えて,インターネットという新たなツールがございますけれども,放送という仕組みから外れたところでコンテンツを創り,それを活用し,それを視聴して,受益をするという,新しい仕組みが回っていっていると思っています。

うっかりしていると,この既存の仕組みの中での利益分配等だけを考えていると,別のところで経済活動が回っていってしまう可能性もございますので,今回の取りまとめの3ページの一番下に書いてくださっておりますけれども,当事者間協議の場を設置し運用面の諸課題の解決を図るというところ,これまで長い間この問題に関わっていらっしゃって,お互いに権利者のために,社会便益のためにということで活動してくださった皆さんがぜひ歩み寄って,よりよい解決方法を探っていただきたいと思っております。法改正まで短期間ですけれども,ぜひこの辺りの力の発揮に期待したいと思います。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。

ほかにいかがでございましょう。今子委員,どうぞ。

【今子委員】今子です。

同時配信等に係る権利処理の円滑化について検討を進めていただき,非常によかったと思います。ありがとうございます。

視聴者の利便性向上の観点と権利者の適切な対価の還元のバランスを図って制度化していくのは非常に重要だと思っておりますので,例えば推定規定の在り方などについて,その観点を忘れずに検討を進めていければよいと思っております。

それから,先ほど福井先生から御指摘のあった2ページ目の有料配信のところにイコールフッティングの観点ということが書かれておりますが,イコールフッティングは非常に重要な観点であると思っております。この有料配信のところだけではないのではないかと思っておりまして,その点についても忘れずに検討を進めていければと思っています。

この放送の同時配信等の議論が終わったら,ウェブキャスティングの議論も速やかに行うという話であったので,それについてもお願いしたいと思っております。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかにいかがでございましょうか。委員の皆さんからの御発言はもうございませんか。なければオブザーバーからもちょっと発言を取りたいと思いますが。

竹内委員,どうぞ。

【竹内委員】ありがとうございます。今,何人かの委員の方から当事者間協議の場の設置ということで御発言がございましたけれども,私も実際に当事者間協議を経験した立場で申し上げますと,これはやはり非常に有効であると考えております。

しかし同時に,当事者間だけですとどうしても難しいポイントも出てきますので,やはり第三者的な中立的な立場の方もこの協議の中には入っていただけるようなルールはつくられてもいいのではないかと考えているところでございます。ぜひ引き続き御検討いただければと思います。

以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかに委員の方で御発言がある方はおられますか。菅委員,どうぞ。

【菅委員】再びすみません。今ちょっとお聞きして思ったのですけれども,夢のような話なので,聞き流していただければと思うのですけれども。とにかくこの人は今どこにいるというオーファンワークスが多くなっていると思います。あと,アマチュアですので,連絡先が分からないというふうになっていると思います。それを探し出すのが邪魔くさくて連絡が行かない場合が大変これから多くなってくると思います。それは自分のアイデンティティーの問題とかいろいろありますし,権利の問題もありますので,もしよければなのですけれども,国の力で,お役所の力でそういう行方不明者を探すような仕組みもしくは団体をつくっていただければ安心できるなという夢のような話でございました。

ありがとうございます。

【末吉主査】ありがとうございます。

委員の方,ほかにいかがですか。よろしいですか,委員の方々は。

ではオブザーバーの丸田さん,どうぞ御発言ください。

【丸田氏】テレビ東京の丸田でございます。在京キー局5社を代表してお話をさせていただきますが,私からは2点お話をさせていただきたいと思います。

まずは今回の中間まとめですけれども,こちらについては同時配信等を可能な限り放送と同等の扱いにすることを目指すものであって,限られたスケジュールの中で,文化庁様とワーキングチームの委員の先生方におかれましては,非常に前向きな内容の方向性を打ち出していただいたと評価しております。11月以降ワーキングチームで具体的な制度設計の議論に入っていくことと思いますが,その際にぜひとも使い勝手のよい制度となるように御検討いただきたいと願っております。

それから,委員の先生方からクリエーターの方々に対しての適切な対価の支払いについて幾つか御意見がございました。こちらについて申し上げておきたいと思います。一部権利者の皆様の中には誤解があるかもしれませんので,この場ではっきりと申し上げたいと思います。私ども放送事業者が要望しておりますのは,あくまでも同時配信等の権利処理手続の円滑化です。新しいサービスを始めるに当たって相応の対価をお支払いするのは当然であって,対価をなしに済ませようという意図は毛頭ございません。放送と配信で権利処理手続が分かれて煩雑になってしまうという問題の解決を図ることが,私どもが最も要望しているところでございます。

ただし,在京キー局5社におきましては,まだ同時配信を実施しておらず,ビジネススキームも固まっておりません。恐らく開始当初は皆様が期待されているような利益を上げることは難しいと思われますので,使用料の額については民民の協議の中で,権利者の皆様に御理解・御協力を賜ることもあろうかと思いますが,一切対価を支払うつもりがないということではございませんので,その点を申し伝えたいと思います。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかに御発言はございますか。福井委員,どうぞ。

【福井委員】ありがとうございます。

今,複数の委員から裁定制度についての御発言がありましたので,私も再度発言させていただきます。この重要性は瀬尾委員などもおっしゃったとおり,幾ら強調しても,し過ぎることはないと思うのです。あるいは委員の皆さんの中で実際に自ら申請者として裁定制度を利用された方は多くはないかもしれませんが,我々は日常的に行っています。そして,権利者団体による実証実験は非常に有意義なものだったのですが,実証実験外で一般の方が行おうとすれば,今もって決して使い勝手のよい制度ではありません。これは行われてみれば恐らくすぐ分かることかと思います。

よって,菅委員からも御指摘があったとおり,それをサポートするような仕組みをつくり上げていくことが,今後のデジタル推進や創造のサイクルにとっては鍵になると思いますので,改めて申し上げておきます。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかにはよろしゅうございますか。

それではありがとうございました。本日皆様方から頂いた御意見等も踏まえながら,引き続きワーキングチームでの議論を深めてまいりたいと思います。

それでは次に議題2「著作権行政をめぐる最新の動向について(報告)」です。まず,インターネット上の海賊版対策に係る著作権法の改正の一部であるリーチサイト規制に係る規定が,本年10月1日に施行されました。こちらにつきまして事務局より説明をお願いします。

【大野著作権課長補佐】それではお手元の資料2-1を御覧いただければと思います。海賊版対策を中心とする著作権法等の改正につきまして,先般,通常国会で成立し,6月に公布されておりましたけれども,その一部が10月1日から施行されるということで,この施行通知を関係団体宛てに発出したところでございます。

今回の改正は,平成31年2月の著作権分科会報告書に基づいておりまして,非常に多岐にわたる改正事項がございます。そのうちリーチサイト・リーチアプリの対策,それから著作物利用の円滑化ということで,写り込みの権利制限の拡大,行政手続の権利制限の拡大,それから著作物の利用権に関する対抗制度の導入,これらの内容につきまして10月1日で施行されておりますので,その内容などについてこの文書をもって関係団体にお知らせをしたところでございます。後ほど御紹介があろうかと思いますけれども,関係団体におきましては,既に円滑な施行に向けた取組が進められているところと承知しております。

なお,侵害コンテンツのダウンロード違法化をはじめとして,その他の改正事項につきましては来年1月から施行されるものも多くなっておりますので,引き続き円滑な施行に向けた準備を文化庁として進めていきたいと思っております。

簡単ですけれども,事務局からは以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。

引き続き,改正著作権法上のリーチサイト規制に係る規定の施行後の状況につきまして,コンテンツ海外流通促進機構の代表理事,後藤委員より御説明をお願いいたします。

【後藤委員】後藤です。貴重なお時間を頂きましてありがとうございます。それでは私より,簡単ではございますけれども御説明をさせていただきます。

10月1日に無事に施行いただきまして,この間,文化庁事務局におかれましては多大なる御尽力を頂きまして,深く感謝を申し上げます。

現在,CODAにおきましては,MPA,Motion Picture Association等々と連携しながら,日本のリーチサイトの実態について,施行前,施行後ということで再調査をしております。また,悪質なサイトについては内偵をしておりまして,詳しい状況については今日申し上げることができませんので,簡単な御説明となります。

次の資料ですが,あるリーチサイトの状況でございます。これはトップページに記載されている内容がこのような形で,改正・成立してから実際の施行までの間で,もう閉鎖しますというようなことであります。そして10月1日18時現在においてはビデオプレーヤーのみの提供で,リーチ行為を中止しているということで一定の効果があったと。これはあるサイトの例でございますけれども,そういう効果がございました。

次のページですが,リーチサイト規制の影響。直接な影響ではございません。その確証はないのですが。8月14日ですが世界最大のアニメ海賊版サイト「kissanime」「kissmanga」が閉鎖されました。これは世界的に大きなニュースであります。その中で,この一番上にあります「TorrentFreak」という海賊版等の情報を広く発信している情報サイトでありますけれども,ここで取り上げられております。そのkissanimeやkissmangaがやめた背景には,日本の著作権法が改正されたからではないかというような論調であります。その下の「Geek Culture」も同様な趣旨の内容を書いております。ただ,その真意はちょっと分かりません。

ということで,我が国のこのリーチサイト規制ということで,世界的にも注目されたところでありますので,こういった効果が出ていると思っております。

また一方で,我々としては広報啓発の検討を進めておりまして,10月1日から今回の著作権法改正を受けて,不正商品対策協議会とCODAで不正商品撲滅のキャンペーンということで,啓発動画を配信しております。女優であり歌手等々でマルチに活躍されております,のんさんに御出演いただきまして,このビデオを10月1日から配信しているということでございます。本日は皆様お忙しいところ恐縮でございますけれども,せっかく作りましたので,ちょっと内容を御覧いただければと思います。

(動画再生)

【後藤委員】どうもありがとうございました。

【末吉主査】ありがとうございました。

ただいま御説明いただいた点につきまして,皆様から御質問等がございましたらここでお受けしたいと思いますが,いかがでございましょう。

福井委員,どうぞ。

【福井委員】後藤委員,御説明どうもありがとうございました。

CODAの活動に敬意を表します。また,この間の法改正,利用者の懸念と権利者の方々の厳しい状況のバランスを取った法改正が導入されて,そのこと自体を評価したいと思います。

そうではありますが,海賊版の現在の状況についても同時に恐らく御報告するのがフェアであろうと思います。私が存じ上げているのは漫画ですけれども,現在漫画の海賊版でアクセス数上位10サイトのアクセス数の合計は過去半年間,再び上昇を続けており,現在の上位10サイトのアクセス数の合計は月間で約1億5,000万アクセスとなっています。これは半年前には1億を切っておりましたので,既に150%。恐らく「漫画村」の最盛期のアクセス規模に現在迫っているであろうと感じています。漫画村が大きな社会問題化した後,通信界,出版界などと権利者との間での協力関係は飛躍的に進んだと思います。民間でできる努力は尽くして,それでできる限り抑え込んで,抑え込んでこの水準です。

日本法が及ばない地域に本拠地のあるサイトが多いことがやはり大きな原因になっているだろうと思います。現在,本拠地の中心と言える国や地域はある程度絞り込まれてきています。ですから,政府間協力やあるいはICANNなどの団体を中心とするインターネットコミュニティー,世界のインターネットコミュニティーの協力関係が今後は鍵になっていくであろうと感じます。

以上,私からのインプットになります。

【末吉主査】ありがとうございました。

ほかにいかがでございますか。よろしゅうございますか。

それではありがとうございました。引き続きまして,違法音楽アプリの根絶に向けた取組につきまして,日本レコード協会の常務理事,高杉委員より御説明をお願いします。

【高杉委員】お時間を頂きましてありがとうございます。

資料2-3でございます。リーチアプリを規制する改正著作権法の施行に合わせまして,特設サイト「あの音楽アプリは,もう違法。」を開設いたしました。音楽業界は2013年頃から違法な音楽サイトに誘導するリーチアプリに悩まされてまいりました。昨年,音楽関係6団体で無許諾の音楽アプリの実態調査委員会を立ち上げまして,有識者委員によって実態調査と業界に与える影響等を分析していたただき,9月に報告書を取りまとめております。その中では特に10代・20代という若年層による違法アプリの利用が多いとの結果を踏まえまして,10月1日の改正法施行に合わせまして,啓発サイトを立ち上げたものでございます。

当日,NHKさんの朝のニュース,それからテレビ朝日さんのワイドショーなどで取り上げていただきました。さらに136件のネットニュースでも報道いただき,注目いただいたこともございまして,当日,サイトへのアクセス数も7万3,000件を超えました。また,ツイッターでのユーザーの反響もおおむねプラスの意見が多くて,今回の法改正が国民に受け入れられているという印象を持っております。

私ども日本レコード協会では,今後この特設サイトのコンテンツをさらに充実させる予定でございまして,本日昼に新しいコンテンツをリリースいたしました。声優さんを起用した違法アプリに関する啓発アニメを公開しておりまして,既に今,サイトから見られる状況になっております。ぜひ皆さんも一度サイトをのぞいていただければと思っております。今後ともユーザーへの啓発に積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

私からは以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。

ただいま説明を頂きました点につきまして,御質問等がございましたらお願いいたします。いかがでございましょう。

菅委員,どうぞ。

【菅委員】今年から参加しているのに度々発言してすいません。

やめなさいと言われてやめるものでは,子供はないですね。小学校・中学校・高校というのは大変お小遣いが少ないので,例えば単行本1冊買っても500円が飛んでしまうような状態では,新規の書籍とかを買うことはなかなか難しい。そしてCDでも,やはり1,500円を出してシングルを買うのは難しい。だからサイトに流れてしまう状況があると思います。ですから啓発作業につきましても,ここではダウンロードだったら200円で済みますよと。もちろん正規でですよね。ダウンロードということは紙とかメディア媒体のお金がかからないわけですから,多少安くなっているわけです。ですから,安いところだとダウンロードでこれが見られますよ,例えば1か月間無料でこの作品が読めますよというような,正規で手軽に見られる,そういう誘導があれば少しは違法サイトに流れることが少なくなるのではないかと思います。

加えまして,今,インフラで例えばアマゾンなどでも電子書籍が安くなっていますけれども,電子書籍で買った場合にアマゾンが50%取っていくわけです。権利者にはもう最高でも25,下手すると15ぐらいしか入ってこない。その状態で権利者がじゃあもう電子配信オーケーですよと言えるかというと,本当に月額何百円しか入らないのだったら,じゃあもうこれはやめてくださいと言うしかない状況でもあります。

ですから,情報提供をして,ここではちゃんと見られますよということと同時に,もう少し権利者が許可を出しやすいようなお金の動きも考えていただきたいと思っております。とにかく,みんな,お金ないです。本当に。いろいろ漫画喫茶に行ったりとか,そういうふうにして安く読もうとしている状況なので,そこを踏まえてもっと現実的な,ここだったらこうですよという情報があればいいなと思いました。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかにいかがでございましょう。よろしゅうございますか。

ありがとうございます。それでは次に参りましょう。次は,著作権教育・普及啓発の状況につきまして,事務局より説明をお願いいたします。

【池野著作権課長補佐】著作権教育・普及啓発の状況について御説明申し上げます。

従来より委員の皆様からも,国民に対する著作権の普及啓発や著作権教育が非常に重要であるという御意見を賜っております。また,来年1月施行の著作権法等に関する法律の一部を改正する法律の附則第2条に基づき,国民が違法ダウンロードの防止の重要性に対する理解を深めることができるよう,啓発その他の措置を講じるとともに,学校その他の様々な場を通じて違法ダウンロードの防止に関する教育の充実を図らなければならないことからも,文化庁といたしましても,より一層国民に対する普及啓発に取り組む必要があると認識しております。

本日は,文化庁が取り組んでおります著作権に関する普及啓発内容について,配付資料2-4に基づき御説明申し上げたいと思います。

はじめに,令和2年度の著作権に関する普及啓発事業の予算といたしましては,主に国内向けではございますが4,200万円措置されております。

まず,資料の左側の部分に記載しております対象者別講習会としまして,各自治体と共催で一般,行政機関,学校,図書館,美術館・博物館職員の方々を対象とした著作権セミナーを年に13か所程度開催しており,著作権制度の概要説明や身近な事例を取り上げながら,著作権の考え方を説明し,著作権制度の知識や意識の向上を図っております。

そのほか,教職員向け,図書館等職員向け,都道府県の著作権事務担当者向けの各種講習会をそれぞれ年一,二回程度ずつ開催しているところでございます。今年度につきましては,コロナウイルスの流行を考慮し,オンライン配信による講習も併用しながら実施しているところでございます。

次に,普段から著作権を学習できるツールとしまして,各種の教材資料を作成しております。資料の中央に記載しております著作権教育関連としまして,まず一般向けの制度全般を学習していただくための「著作権テキスト」,次に小中高等学校の学習指導要領においても著作権などの知的財産について取り扱うこととされておりまして,学校における著作権教育において教員が円滑かつ効果的に指導できるように,あらゆる教科の授業で活用できる手引書として「著作権教育5分間の使い方」という教材を作っております。そして,子供から大人向けのQ&A形式で学べる「著作権なるほど質問箱」,それから小中高生向けとして,漫画で著作物の利用に関する事例に触れながら著作権の基本的な考え方を学べる教材として「はじめて学ぶ著作権」などを作成しまして,文化庁ホームページの著作権制度に関する情報サイトに掲載したり,各種講習会で周知・配付するなど,広く普及啓発を行っております。

その他の普及啓発活動といたしましては,資料の右側部分に記載しておりますが,7月に,広く国民に親しまれて認知されておりますハローキティを著作権広報大使に任命し,「STOP!海賊版」の普及啓発を実施することとしており,今後ユーチューブ広告を利用した啓発動画の配信や文化庁公式ツイッターなど,若年層にリーチしやすいSNSを活用して情報発信していきます。そのほか,関係団体・関係省庁とも連携して普及啓発活動を実施してまいります。

なお,資料の下段に記載しておりますとおり,侵害コンテンツのダウンロード違法化に関する普及啓発につきましては,来年1月の施行に合わせて,ダウンロード違法化の内容を分かりやすく示したリーフレットやQ&A,解説資料等を作成したり,著作権広報大使のハローキティを利用した啓発動画や教材等の作成・配付などにより,集中的に実施してまいります。

簡単ではございますが,文化庁が実施及び今後予定しております著作権に関する普及啓発内容について御紹介させていただきました。ありがとうございました。

【末吉主査】ありがとうございました。

ただいま説明いただいた点につきまして御質問等がございましたらお願いします。どうぞ。

中村委員,どうぞ。

【中村委員】ありがとうございます。

著作権教育の大部分はネットリテラシー教育と重複していくことになると思います。今年パソコンが子供1人1台の普及ということもありまして,ネットリテラシーあるいは青少年のネット安全利用の取組も一方で盛んになっていきますので,これはぜひとも総務省,内閣府,その他でも取り組んでいることと連携あるいは一体化して進めていただければと思います。お願いいたします。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。河野委員,どうぞ。

【河野委員】ありがとうございます。

私も今の中村委員と同じことを考えておりました。コロナ禍において,教育現場ではリモート授業が主流になっております。当然のことながら,授業用の資料では様々なコンテンツが利用されるわけですけれども,ぜひここで,毎回ではなくても,キティちゃんもしっかりと登場させて啓発を進めつつ,わざわざ学ぶというよりは,日常の中から,いわゆるOJTでしっかりとこの著作権の在り方,それから自分たちの振る舞いについて学ぶ機会が増えていけばいいと思いますし,今年度は思いがけず,この機会はかなり広がっていると思いますので,上手に活用していってほしいと思っております。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかにいかがでございましょう。太田委員,どうぞ。

【太田委員】著作権に関する普及啓発内容に関しては,これは例えば法教育と重なるのではないかと思います,法教育は,法務省や文科省,弁護士会などで取り組んでいらっしゃっていて,基本的な権利義務の考え方や主権者としての自律等を小中高で教える政策を検討しています,僕も少し関与していて,法教育教材の作成に関与したことがあるのですが,法教育を推進する上で言われるのが,小中学校は指導要領で教えなくてはならない内容が多く時間が足りないというか,法教育用の時間を見つけられないというようなことをお聞きします,法務省等ほかの省庁の法教育との連携等はどのようになっているのかを教えていただきたいです。

もう一つは,啓発動画や教材等は良くできていると感じますが,では,これらは実際どれくらいのパーセンテージの小中学生が既に見ているのでしょうか,あるいは先生方が見ていらっしゃるのでしょうか,その点のデータはあるのでしょうか。

以上です。

【末吉主査】今の御質問いかがでございましょう。

【池野著作権課長補佐】1点目の他省庁との法教育の連携につきましては,正直,まだこれからという状況になるのかなと思っております。まずは文科省と文化庁とで連携して,学校教育現場でしっかりと教育できるような体制づくりをしていきたいと思っております。

それから,文化庁が作成している資料への利用アクセス数につきましては,正確な数字は今は持っておりません。実は2年前に文化庁が普及啓発方策で作った教材について,どれだけ小中高等学校で認知されているかを調査したのですけれども,残念ながら非常に認知度が低かったという結果が出ております。ですので,まずは作成している教材を知っていただくためにいろいろなところで情報発信していかなければならないということで,今は鋭意工夫している状況でございます。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。

【太田委員】ありがとうございます。学校の先生は大体,法というと,それだけで腰が引けているようですので,ぜひ頑張っていただきたいと思います。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかにいかがでございましょう。久保田委員,どうぞ。

【久保田委員】今,中村先生からも言われた件とまた角度が違うのですけれども,知財教育の一環として,ぜひ著作権教育という位置づけも一緒に足してもらいたいということがあります。それで,福井先生と一緒に大学の中で著作権教育の必修化運動をしています。また知財教育拠点大学である山口大学の知財教育の一環としても著作権教育を必修化することもやっている。この辺についてもどこにどういう形でお願い,実施していくと必修化につながるのか,教えていただければ幸いです。

【末吉主査】ありがとうございます。そこは検討してもらうことにしましょうかね。

【久保田委員】もしもし。

【末吉主査】今のは御質問ですか。

【久保田委員】そうです。事務局への質問です。

【末吉主査】そうですか。では事務局で分かる限りでどうぞ。ちょっとまだ分からないかな。

すいません。まだ準備されてないみたいなので,今の久保田委員の御質問は宿題として承りたいと思います。よろしいでしょうか。

【久保田委員】はい。

【末吉主査】恐縮です。

瀬尾委員,どうぞ。

【瀬尾委員】今,教育の話が出たのでちょっと申し上げますけれども。教育の補償金制度,35条の施行が今年行われまして,今,SARTRASという補償金協会では有償の金額の申請を行っています。そして来年の4月からを一応予定して,今いろいろな御審議を頂いたり,関係の皆様とお話をしたりしているのですけれども。中でもやはり非常に重要なこととして著作権教育があります。

今回,この中で普及啓発ということですけれども,いわゆる海賊版に対応するためということだけよりも,そもそも著作権に対してどのように新指導要領の中で自然に学んでいかれるかというようなフェーズに来ていると思います。これは生徒さんたちだけではなくて,学校の先生たちにも大変大きな課題です。これは単純に何かを作ってやれば,資料を配れば済むというものではなくて,基本的な授業の中に,特に小学校の新指導要領の中のアクティブラーニングのようなものの中に自然に身についていくような授業が,私は必要だと思っています。

こういった意味では,単純に何かを,海賊版だけをやるとかいうよりは,今後の初等中等教育,それからもちろん高等教育も含めて,どのようにしたら教員と受ける側,それが共有しながら著作権の根本的な考え方自体から学んでいかれるかというのを考えていただきたい。どうしても,これまでは何かが起きると,付け焼き刃とは言いませんけれども,対症療法的にこの普及啓発がうたわれてきたように私は感じます。

ですので,もうここまで来ると,基本的にはいろいろな方たちがこれを総合的に広げていくフェーズに来ていると思いますので,この著作権に関する普及啓発事業は,視野をもうちょっと拡大して,そしてもっと教育関係者と連携して,そして新しい制度と新しい遠隔授業,もしくはこういった新しい違法ダウンロードの時代の中でどうしていくのか,そういう大きなテーマの中でプロジェクトとしては拡大していただきたい。これは切に望みますし,補償金制度の中でも普及啓発は大きなテーマですから,ぜひ補償金協会等と全てが協力した上でこれを進めていただきたいと思います。積極性とその範囲については,より拡大を望みます。意見です。

【末吉主査】ありがとうございました。福井委員,どうぞ。

【福井委員】ありがとうございます。

久保田委員に名前を出していただいたので。私ももう何回目かにはなりますが,こうした著作権教育は非常に大切だと思っています。そしてそこで大切なのは,これをやると違法だよ,NGだよということだけではなくて,こうだったら使えるよと,これはオーケーだよという,使える教育も一緒にしてあげることだと思うんです。

というのは,現場では今,真面目な人ほど萎縮するような,この萎縮も大きな問題として持ち上がってきていると思うんです。できる利用を諦めてしまっている例も多々見受けられるように思います。

ですから,このルールに従えば,あるいはこの制限規定があるから使えるよということを同時に教えてあげるような教育,それはある意味,教育を受ける人にとってのメリットにもなると思うんです。つまり著作権を学ぶと得するよと。諦めていた利用ができるようになるよと。そういうことを感じさせてあげる。そんなことも同時に大切ではないかと思います。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

この点はよろしゅうございますか。どうも貴重な御意見,ありがとうございました。

そのほか,全体を通しまして何か御指摘がございますれば最後に承りたいと思いますが,いかがでございましょう。

よろしゅうございますか。ありがとうございます。ほかに特段ございませんようですので,本日はこのくらいにしたいと思います。

最後に事務局から連絡事項がありましたらば,お願いいたします。

【大野著作権課長補佐】本日は同時配信等につきましても,それから著作権教育普及啓発についても活発に御議論いただきましてありがとうございます。今後のワーキングチームでの議論,それから文化庁としての施策に大いに生かしていきたいと思っております。

次回の小委員会につきましては,同時配信等に関するワーキングチームでの議論の状況を踏まえて,改めて日程を調整させていただきたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。

【末吉主査】ありがとうございました。それでは以上をもちまして,文化審議会著作権分科会基本政策小委員会第2回を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

── 了 ──

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