このページの本文へ移動
 
  
 

「新型コロナウイルス感染症と日本の経済社会」調査研究報告書

令和3年5月発行

目次
(役職は令和3年4月現在)

はじめに

全文(PDF:256KB)

奥 愛、三角 俊介、虫明 英太郎

(財務省財務総合政策研究所総務研究部)

 第1章 COVID-19 行動科学視点から見た対応(講演録)

全文(PDF:728KB)

要旨

橋本 英樹

(東京大学大学院医学系研究科/公共健康医学専攻保健社会行動学分野教授)

 第2章 with/after コロナの働き方の展望(講演録)

全文(PDF:1246KB)

要旨

鶴 光太郎

(慶應義塾大学大学院商学研究科教授)

 第3章 日本の「教育格差」とコロナ禍(講演録)

全文(PDF:664KB)

要旨

松岡 亮二

(早稲田大学留学センター准教授)

 第4章 コロナ禍における社会課題解決とインパクト投資(講演録)

全文(PDF:906KB)

要旨

安間 匡明

(社会変革推進財団(SIIF)エクゼクティブ・アドバイザー)

 第5章 ポストコロナ社会に向けたデジタル化の課題(講演録)

全文(PDF:724KB)

要旨

山岡 浩巳

(フューチャー株式会社取締役)

 第6章 東アジア国際分業と国際通商秩序:2021年の課題(講演録)

全文(PDF:1628KB)

要旨

木村 福成

(慶應義塾大学経済学部教授/東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)チーフエコノミスト)

 

(※)本報告書の内容や意見はすべて執筆者個人の見解であり、財務省あるいは財務総合政策研究所の公式見解を示すものではありません。

 


第1章
COVID-19 行動科学視点から見た対応(講演録)

報告者
橋本 英樹(東京大学大学院医学系研究科/
 公共健康医学専攻保健社会行動学分野 教授)

【要旨】

コロナへの対応は、エビデンスがなく、省庁またぎでの迅速な対応が必要であり、何を優先し何を評価指標にすればよいかの判断がつかなく、改めて行政の力が試された機会であった。振り返って惜しむべき点は、第一波から第二波の間の時間を活かすことができなかった点である。医療現場との情報共有体制が不十分であったためデータ整備が行われておらず、正確な情報がつかめないまま第二波を過ごしてしまった。分析するための共有財産であるデータの整備が行われていないのは大きな問題である。 独自で調査したパネルデータを用いてコロナ疲れ(ファティーグ)について分析を行った結果、自粛などに対する飽きではなく、情緒的・感情的な疲れであることがわかった。コロナ疲れに対しては気を引き締めるよう呼びかけるのは逆効果であり、安心材料を提供することが必要なのである。政策立案に関してはマクロシミュレーションなどを用いて行われるべきであるが、具体的なメッセージとして発信する際には、行動する消費主体である国民がどのように受け取るのかを考える必要がある。こうしたリスク・コミュニケーションの重要性を理解し、国民が安心感を持つことができるよう様々な対話のチャネルを作っていくことが必要である。 地域医療でも、資源の流動性を機動的に高めるようなシステムを作ることができるかが重要である。

 

目次へ


第2章
with/after コロナの働き方の展望(講演録)

報告者
鶴 光太郎(慶應義塾大学大学院商学研究科 教授)

【要旨】

テレワークの推進による多様な働き方の実現によって、従業員の生産性や企業の業績は向上する。しかし、従来は「大部屋主義」「対面主義」の効果が過信され、新たなテクノロジーの導入も進んでいなかったことがテレワークの普及を阻害していた。テレワークの問題点とされていることは、テクノロジーの活用や意識的なコミュニケーションによって大部分が解決可能である。コロナ後は、むしろ職場に集まって仕事をすることに対する本質的な意味付けが必要となる。また、三密は大都市の機能の根幹だが、テレワークが「対面主義」を変えるのであれば、地方移住でも大都市圏の企業で働くことが可能となる。今後は、生活様式だけではなく、生活の価値観そのものが大きく変わる可能性がある。

 

目次へ


第3章
日本の「教育格差」とコロナ禍(講演録)

報告者
松岡 亮二(早稲田大学留学センター准教授)

【要旨】

「教育格差」とは、子供本人に変更できない初期条件である親の学歴、世帯収入、職業などの社会的、経済的、文化的な要素を統合した「社会経済的地位(Socioeconomic status, SES)」や出身地域などの「生まれ」によって学力や最終学歴といった結果に差があることを意味する。近年だけの事象ではなく、戦後日本社会で育ったすべての世代で教育格差は存在する。教育格差は幼児教育の時点で確認でき、小・中学校の期間に縮小しない。SESによって学力に差があるまま学力選抜である高校受験を行うので、高校教育制度は結果的に生徒を「生まれ」によって別学校に隔離していることになる。「みんな」が持っている可能性の喪失を最小限に抑えるために、「正しさ」に酔うことなく教育論議を行う必要がある。建設的な議論をするためには、近代社会の主な価値である「平等」と「自由」には相反する目標と教育機能が伴うこと、「同じ扱い」だけでは格差を縮小できないこと、さらには、教育制度に選抜機能があることを認識したうえで、縦断調査(パネル調査)などでデータを収集し、コロナ禍への対応を含め、効果のある実践・政策を模索することが求められる。

 

目次へ


第4章
コロナ禍における社会課題解決とインパクト投資(講演録)

報告者
安間 匡明(社会変革推進財団(SIIF)エクゼクティブ・アドバイザー)

【要旨】

インパクト投資とは、財務的なリターンに加えて、社会的・環境的な課題を解決する効果(インパクト)を創出することを意図した投資である。欧米ではインパクト投資の規模が近年急速に拡大しており、多様な金融プロダクトが展開されている。コロナ禍の中、インパクト投資は、悪化した経済格差などの問題を解決する手段としても注目を集めている。日本もインパクト投資に関する取組みが広がりつつあるが、その規模は欧米と比較して小さい。今後の対応として、インパクトの評価手法の国際標準化など、金融市場での洗練化された取組みや、民間企業のかかる投資行動を政府や自治体が誘発・推進・連携していくことが求められる。

 

目次へ


第5章
ポストコロナ社会に向けたデジタル化の課題(講演録)

報告者
山岡 浩巳(フューチャー株式会社取締役)

【要旨】

ポストコロナ社会においてデジタル化を進める上では、デジタル技術で何を実現したいのかという目的を明確に定める必要がある。支払手段のデジタル化・キャッシュレス化が多様な形で急速に進み、中銀デジタル通貨の動きも加速するなど、通貨間競争は激化している。この中で日本がマクロ政策の自律性を確保していくには、円そのものの信認の維持が重要となる。そのためには、財政健全化の不断の取組みや金融システムの安定が引き続き求められる。デジタル化により、企業活動や行政の規制・監督のあり方も大きく変わる。また、社会がどこまでデータの共有を認めるべきかを正面から問う必要が出てくる。デジタル化が世界的に進む中で、日本は「自由で民主的な社会を前提とするデータの活用」という考え方を積極的に世界に向けて訴え、デジタル技術も活用しながら新たな価値の実現に取り組む姿勢をアピールしていくことが求められる。

 

目次へ


第6章
東アジア国際分業と国際通商秩序:2021年の課題(講演録)

報告者
木村 福成(慶應義塾大学経済学部教授/東アジア・アセアン
 経済研究センター(ERIA)チーフエコノミスト)

【要旨】

2021年を迎えるにあたり、国際分業や国際貿易秩序は様々な課題を抱えている。東アジアの生産ネットワークはコロナショックの中でも維持されているが、経済の回復に時間がかかると負の需要ショックが長引くことが懸念されている。トランプ政権下で関税戦争から大国間の対立へと激化した米中対立は、バイデン政権下でも継続することが予想され、米中両国に挟まれたミドルパワー諸国は対応を迫られている。国際貿易秩序の混乱を背景にメガFTAsの交渉が進んでおり、日本はメガFTAsのハブとして、協定の活用や内容の充実化に取り組んでいく必要がある。また、COVID-19の影響でICTの導入が各国で加速し、国際分業体系にも影響を与えていることから、それに対応した政策が求められている。

 

目次へ

 

ページ先頭へ