文化審議会著作権分科会(第61回)(第21期第1回)

日時:令和3年7月19日(月)
10:00~12:00

場所:オンライン開催

議事

1開会

2議事

  1. (1)文化審議会著作権分科会長の選出等について【非公開】
  2. (2)デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方について(諮問)
  3. (3)第21期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について
  4. (4)小委員会の設置について
  5. (5)平成30年著作権法改正による「授業目的公衆送信補償金制度」の本格運用について(報告)
  6. (6)「著作権法の一部を改正する法律」について(報告)
  7. (7)その他

3閉会

配布資料

資料1
第21期文化審議会著作権分科会委員名簿(143KB)
資料2
デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方について(諮問概要)(552KB)
資料3
デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方について(諮問)(274KB)
資料4
「知的財産推進計画2021」等の政府方針(著作権関係抜粋)(1.9MB)
資料5
DX時代に対応した著作権制度・政策の見直しに関する「課題の整理」骨子(DX時代に対応した著作権制度・政策の見直しに関する勉強会)(1.5MB)
資料6
第21期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について(案)(121KB)
資料7
小委員会の設置について(案)(96KB)
資料8
「授業目的公衆送信補償金制度」の本格運用について(498KB)
資料9
「著作権法の一部を改正する法律」関係資料一式(1.6MB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(262KB)
参考資料2
デジタル時代に対応した著作権施策の在り方について(これまでの経緯)(1.3MB)
参考資料3
令和2年度著作権分科会における審議状況と今後の主な課題(309KB)
参考資料4
文化審議会著作権分科会における著作物等の流通促進のための権利処理の円滑化等に係るこれまでの検討経緯(504KB)
参考資料5
いわゆる拡大集中許諾制度の概要等について(641KB)
参考資料6
一般社団法人音楽情報プラットフォーム協議会の設立に関するプレスリリース(185KB)
参考資料7
オーファンワークス対策事業の概要(1.7MB)

資料1について、会議後に差し替えております。
また、資料6、資料7について異議なく、案の通り了承されました。
了承された資料については、以下の通りです。

資料6
第21期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について(120KB)
資料7
小委員会の設置について(94KB)

議事内容

○今期の文化審議会著作権分科会委員を事務局より紹介。

○本分科会の分科会長の選任が行われ、茶園委員が分科会長に決定。

○分科会長代理について、茶園分科会長より鈴木委員を指名。

○会議の公開について運営規則等の確認。

※以上については、「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき、議事の内容を非公開とする。

(配信開始)

【小倉著作権課長補佐】

失礼します。文化庁の事務局でございます。ただいま大臣が到着されたようでございますので、大臣より御挨拶をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【萩生田文部科学大臣】

皆さん、おはようございます。文部科学大臣の萩生田光一です。

諮問の御説明の前に、コロナ禍における文化芸術活動について、一言申し上げたいと思います。

文化芸術活動は私たちが生きていく上で必要不可欠なものであります。新型コロナウイルス感染症により依然として大きな影響を受けておりますが、文科省としましては文化芸術活動の支援に全力で取り組んでまいります。引き続き委員の皆様方の御協力をお願い申し上げたいと思います。

さて、本日は、デジタルトランスフォーメーション時代に対応した著作権制度・政策の在り方について諮問をさせていただきます。

現行の著作権法は、昭和45年の制定以来、著作物の公正な利用に留意しつつ、著作者の権利の保護を図り、我が国の文化の発展に寄与してまいりました。

また、多様なコンテンツを利用した産業が成長を続ける中、社会の変化に対応した見直しを行いながら、現在でも文化の枠にとどまらず、経済や産業とも切り離せない制度となりつつあります。

特に近年は、デジタル化、ネットワーク化の急速な進展により、誰もがスマートフォンやコンピューターでコンテンツを創作し、インターネットを通じて流通し、さらなる創作のために容易に利用することができるなど、大きな影響を与えています。

このような時代において、人々の生活により豊かにしていくコンテンツを生み出すためには、クリエーターの意思を尊重しながら、迅速に著作権の処理が行われ、その利益の享受が新たな創作につながる仕組み、この絶え間ない創作活動の好循環を実現し、その効用を最大化していくことが必要だと思っております。

こうした問題意識の下、今後の方向性を検討いただくに当たっては、何よりも「権利保護・適切な対価還元」と「利用の円滑化」のバランスをいかに図るのかが極めて重要だと思います。今回の諮問では、「権利保護・適切な対価還元」と「利用円滑化」の両立を基本としつつ、DX時代に対応した新たな著作権制度・政策の在り方について総合的な検討をお願いするものです。

具体的な検討事項はこの後事務局から説明させますが、今後の我が国の文化芸術活動のあるべき姿を描きつつ、制度論にとどまらない幅広い政策論の御議論をいただきたいと考えております。

委員の皆様方におかれましては、大所高所から忌憚のない御意見を積極的に賜りますことを心からお願いを申し上げたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【茶園分科会長】

萩生田大臣、どうもありがとうございました。

ただいまの大臣の御発言、御諮問の趣旨を踏まえまして、著作権分科会といたしましてはしっかりと議論してまいります。

大臣はここで退席されます。萩生田大臣、御出席どうもありがとうございました。

(萩生田大臣退席)

【茶園分科会長】

順番が逆になりましたけども、改めて御紹介させていただきます。先ほど分科会長の選出が行われまして、分科会長に私、茶園が就任いたしました。

また、分科会長代理として鈴木委員を指名いたしましたので、御報告をいたします。

既に議事2の「デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方について(諮問)」に入っております。先ほど萩生田大臣から御説明いただきましたけれども、諮問の詳細につきまして、矢野次長から御説明をいただきたいと思います。では、矢野次長、よろしくお願いいたします。

【矢野文化庁次長】

文化庁次長、矢野でございます。私から諮問事項等の詳細につきまして御説明申し上げたいと思います。

資料3の諮問文を御覧いただきたいと思います。今の大臣の御挨拶にもございましたとおり、本諮問は、2ページ目の理由、2ページ目の一番下段から3ページ冒頭にございますように、DX時代に対応したコンテンツの創作の好循環の実現、ひいては我が国の文化芸術の持続的かつ健全な発展に資する著作権制度・政策の在り方について、「権利保護・適切な対価還元」と「利用円滑化」の両立を基本とし、御審議をお願いしたいというものです。

審議事項といたしまして、資料3の3ページの中ほどにございますとおり、第1に、DX時代に対応したコンテンツの利用の円滑化とそれに伴う適切な対価還元方策についてでございます。

デジタル技術の進展に伴う社会・市場の変化を踏まえ、コンテンツの利用円滑化とクリエーターへの適切な対価還元の両立を図るため、過去のコンテンツ、一般ユーザーが創作するコンテンツ、権利者不明著作物等の膨大かつ多種多様なコンテンツについて、いわゆる拡大集中許諾制度などを基に、様々な利用場面を想定した簡素で一元的な権利処理が可能となるような方策について御審議いただきたいと思います。

その際には、クリエーターや著作権者、ユーザー、事業者を含む幅広い関係者の意見を丁寧に聴取した上で、それらの意見を尊重し、権利保護と利用円滑化のバランスを確保しつつ、適切な対価還元の実現が可能となる制度についての御検討をお願いします。

また、デジタル化・ネットワーク化に対応した取組が政府をはじめとする公的機関や企業等で推進されるに当たり、これらに対応する基盤としての著作権制度・政策に関する課題と対応策についても御検討をお願いしたいと思います。

第2に、諮問文の3ページ下段にございますとおり、DX時代に対応したコンテンツの権利保護、適切な対価還元方策についてでございます。先ほども申し上げましたとおり、新たな技術の出現・革新により、著作権侵害の対応も多種多様なものに変化しております。今後の著作権侵害に対する実効的救済及び我が国のコンテンツの海外展開について御審議いただきたいと思います。

また、コンテンツの流通・利用が国内外に多様化する中で、クリエーターへの適切な対価還元の在り方も検討していく必要があります。クリエーターと各種事業者の関係性の実態や状況を踏まえ、著作権制度・政策での対応が必要可能なものについて、他の法制度や運用との関係にも留意しつつ御審議いただきたいと思います。

本件については、この4月に文化庁内に勉強会を立ち上げ、研究者、権利者、ユーザー、ICT関係者、経済団体等幅広い関係者からの意見を伺ってまいりました。勉強会ではデジタル時代の著作権について現行法制にとらわれない議論も行われました。

一方で、著作権法制のコンテンツの流通促進や新たなビジネス展開といったことも大切ですが、文化の振興を図ることが根底にあることはこの勉強会でも認識が共有されたところでございます。

本日の諮問事項にはこうした趣旨を盛り込ませていただいております。勉強会での議論のまとめについては、本日資料5としてお配りしております。

最後になりますが、我が国の文化芸術の強みをさらに高めることを視野に入れた著作権法制の検討は、ここ文化審議会著作権分科会においてしっかり議論していく必要がございます。委員の皆様方におかれましては、積極的な御議論を賜りますよう心からお願い申し上げます。

どうぞよろしくお願い申し上げます。以上でございます。

【茶園分科会長】

矢野次長、どうもありがとうございました。

諮問に関する御質問、御意見の時間は、後ほどまとめて取りたいと思います。

次に、議事3の今期の著作権分科会における検討課題と議事4の小委員会の設置に入りたいと思います。

先ほどの諮問を踏まえまして、事務局に資料を御準備いただいております。それでは、事務局から説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】

それでは、資料4から7を用いまして、主な検討課題、小委員会の設置について御説明させていただきます。

まず資料4に、「知的財産推進計画2021」等の政府方針について、著作権関係の抜粋をさせていただいたものをまとめさせていただいております。

簡単に御説明いたしますと、先ほど諮問にも上がっておりました、利用円滑化、対価還元・保護というところが、資料4の6ページからその内容が示されております。

資料4の6ページの「施策の方向性」と小見出しがついているところですが、先ほどの利用円滑化は2つ目のポツ、また権利者情報データベース等については3つ目に書いてございます。また、その下には契約支援であるとか、続きまして7ページには海賊版対策といったところを紹介しております。

また、諮問文につきましても言及がされております。

規制改革実施計画につきましては、資料4の19ページにございます。特にここでは、19ページのbの欄、こちらに著作物の利用円滑化、権利者への適切な対価還元の両立を含めた検討を行うこととされておりますが、こちらにつきましては、令和3年、検討、結論、令和4年度、措置というスケジュール感が区切られておりますので、こういったものに基づきまして文化庁としても議論を進めていきたいと思っております。

また資料5につきましては、先ほど文化庁次長の説明にもございましたが、文化庁で開催してきた勉強会について、主な勉強会のメンバーの御意見をまとめたものを課題の整理として示しております。

資料5の1ページの冒頭の枠囲みにつきましては、主な概要をまとめたものでございますが、こちらにも、2行目、3行目のところですが、著作物の円滑な利用と保護、権利者への適切な対価還元の両立によるコンテンツクリエーションサイクルを最大化といったこと。

また、その次のパラグラフにつきましては、権利者情報、意思を集約するデータベースの構築・充実、集中管理の促進、裁定制度の抜本的見直し、いわゆる拡大集中許諾制度、権利制限等の各種方策を総合的に検討し、必要な措置を取るといったことをまとめさせていただいております。

3ページにつきましては、利用円滑化について、5ページからは、権利保護・適切な対価管理について、それぞれまとめておりますので、御覧いただければと思います。

また、資料6を御覧ください。資料6に第21期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について案を示させていただいております。

先ほどの諮問等も踏まえまして、審議事項を大きく4つ。まず1つ目、著作権関連の基本政策に関することとして、DX時代に対応した著作物の権利保護・利用円滑化・適切な対価管理に係る基本政策について。

審議事項②著作権法制度に関することとしまして、研究目的に係る権利制限規定の創設、独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与、DX時代に対応した著作物の権利保護・利用円滑化・適切な対価還元に係る法制度についてとしております。

この研究目的、独占的ライセンシー等に関する検討は、昨年度からの継続議題となっております。

審理事項の③著作権の国際的な課題に関することとして、著作権保護に向けた国際的な対応の在り方、国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方、我が国のコンテンツの海外展開における著作権に関する課題及びその対応についてを挙げております。

また、審議事項④使用料部会に関することとして、著作権者不明等の場合における裁定に係る補償金の額についてを挙げさせていただいています。

これら課題を踏まえまして、資料7になりますが、小委員会の設置の案を示させていただいております。

そちらの1ポツ設置の趣旨にございますように、3つの小委員会を設置するとしております。基本政策小委員会、法制度小委員会、国際小委員会。

また2つ目に、2番として、各小委員会の審議事項をまとめております。

3ポツ各小委員会の構成は、分科会長が指名する委員、臨時委員及び専門委員により構成するとしております。

4ポツその他としましては、各小委員会の運営に関し必要な事項は、当該小委員会が定めるとしております。

事務局からの説明は以上となります。

【茶園分科会長】

どうもありがとうございました。ただいまの事務局の説明を踏まえまして、小委員会の設置につきましては、資料7のとおり、分科会の決定とさせていただきます。

それでは、今期の分科会における検討課題、特にDX時代に対応した著作権制度・政策の見直しにつきまして、議論を行いたいと思います。

構成員皆様全員から御意見を頂戴したいと思っております。1人当たり、2分から3分程度で簡潔に御発言をお願いいたしたいと思います。

それでは、まず井村寿人委員からお願いしたいと思います。井村委員、よろしくお願いいたします。

【井村委員】

日本書籍出版協会の井村です。よろしくお願いいたします。

既に皆様御存じのとおり、出版社は一部の大手を除いては中小零細な企業です。そしてそのほとんどが、専門書に限らず、狭い分野に向けた専門性の高い出版物を刊行しており、そういった分野において権利制限が行われることの影響は各社にとって大変大きなものになります。

今年度から正式に運用がスタートした教育分野での権利制限では、市場への影響が大きいことから補償金制度が導入されましたが、隣接権等を有していない出版者の多くには受け取る権利さえもなく、限られた資金を投下し、教育のために刊行した書籍がデジタル化され、使われても、出版社には何の補償もないのが現状です。

今年度法改正が決まり、施行に向けた検討が開始されます図書館資料の送信では、そういった点を御配慮いただき、改正の説明文書の中では出版社にも受け取る権利があると明記いただいております。しかし、それさえも法律で保障されたものではなく、著者及び著作権者の皆様に御説明をし、御理解をいただいて初めて正式なものになると理解しており、教育分野のようなことにならないか、多くの関係者はいまだに危惧をしております。

今後新たに、拡大集中許諾制度も含め、出版物に関わる権利制限を御検討いただく際には、出版物を発行している全ての出版社がきちんと補償を受け取れるような、そういう立てつけにしていただきたいと願っております。そうでなければ対象分野に向けた出版物の発行はますます厳しいものになってしまうことが懸念されます。

それともう1点、教育と図書館での権利制限について、それぞれ関係者の話を聞いていて感じている点ですが、利用者の現場でのニーズが改正時に想定されていたものと微妙にずれているような気がしております。実際教育においては施行準備段階で審議中には想定されていなかった様々な問題が発生してきたようにも感じております。現場での多様な意見から真のウォンツがどこにあるかを探り当てることは大変難しい作業だと思いますが、それだけに、より一層慎重に時間をかけてニーズの検証を行っていただきたいと願っております。

以上、僣越な発言になりましたが、何とぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【茶園分科会長】

井村委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、大渕哲也委員、お願いいたします。

【大渕委員】

東京大学の大渕でございます。よろしくお願いいたします。

まず、資料2の審議事項1.に関しましては、権利保護・適切な対価還元の下支えがあって初めてここにありますような利用円滑化が実現できます。これを大前提とした上で、簡素で一元的な権利処理方策の実現を図ることが肝要だと思います。権利者と利用者双方にとってウィン・ウィンになることが最も重要でございますが、そのためには簡素で一元的な権利処理方策が不可欠となると理解しております。

それから次に、同じく1.の2つ目の黒丸であります。先ほど御説明ありました点ですが、これはやはり何といっても、具体的な課題の洗い出しと同課題の解決方法の探求という具体的な作業が必要になってくると思います。

それから次に、検討事項2.でありますが、これにつきましては、最初の大きな黒丸でございますが、間接侵害等の実効的権利救済についての国際標準並みの実現確保が不可欠であると思料いたします。それから、我が国コンテンツの海外展開方策も重要と思います。

それから2つ目の大きな丸であります。国際関係が近時重要でありますが、直近の国際的な動きとして、ここにありますバリューギャップ問題という点が重要な問題として浮上しておりますので、この検討が不可欠と思料いたします。

そして全体といたしまして、議論のための議論ではなく、何といってもきちんと結果を出すことが肝要でございますので、その点ではフィージビリティーが重要であることは言うまでもないかと思います。そのために、ニーズの洗い出しないし立法事実の検証が不可欠となります。何といっても法制度として無理がないものを考えていく必要があると思います。あまり法的ハードルが高いと、フィージビリティーが欠けて、せっかく議論しても実現できないと意味がないと思います。

全体といたしまして、法律改正はもちろん重要なのですが、それだけではなく、運用改善のほうもきちんと視野に入れていく必要があると思います。この点では先ほどの点でやはり権利集中化が鍵となるので、これに向けての努力が不可欠と思料します。

なお、法律改正につきましては、創設規定よりも確認規定のほうが実質的ハードルが低い点を付言したいと存じます。

以上でございます。よろしくお願いいたします。

【茶園分科会長】

大渕委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、華頂尚隆委員、よろしくお願いいたします。

【華頂委員】

日本映画製作者連盟、通称映連の華頂でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、DX時代に対応した著作権制度・政策の在り方についてという課題でございますけれども、映画製作者にとりましては、やはり権利保護と適切な対価還元策が気になるところでございます。

適切な対価還元策につきましては、先ほどの「知的財産推進計画2021」の抜粋7ページにも記載がございましたが、途中から読ませていただきますと、「私的録音録画補償金制度については、新たな対価還元策が実現されるまでの過渡的な措置として、私的録音録画の実態等に応じた具体的な対象機器等の特定について、結論を得て、可能な限り早期に必要な措置を講ずる。(短期、中期)(文部科学省、内閣府、総務省、経済産業省)」となっております。

本件につきましては、文化庁著作権課の御担当者に御尽力をいただいているところでございますが、早期の課題解決に向けまして、さらなる御対応、御調整をお願いする次第でございます。

一方の権利保護に関しましては、海賊版がフィジカルからデジタルに置き換わる中で、インターネット上の海賊版被害はますます深刻化しております。相変わらず漫画の被害が顕著となっておりまして、近時のリサーチでは、かつて史上最悪と言われた漫画村、漫画村の倍の規模ですね、現在稼働している上位10サイトのページビュー、これは直近5月の実績で月間3億ページビューを超えているという非常に危険な水域でございます。そのような中、通信環境が5Gとなれば、2時間の映画本編のデータをたった数秒でダウンロードできる時代となります。そうなれば漫画とともに早晩映画も海賊版のメインターゲットとなることは明白であります。

官民挙げて様々な施策を講じておりますが、即効性、実効性という意味ではなかなか難しいというのが、先ほど申し上げました漫画の状況を見ても明らかでございます。

このような中、1つの対応策としてのサイトブロッキングにつきましては、様々な議論がありまして、その実現に向けては高いハードルがあることは理解しておりますが、いま一度検討すべきではないかと考える次第でございます。著作権分科会で申し上げるのは適当でないかもしれませんが、それほどの危機であるということも併せて御認識いただければと思う次第でございます。

以上でございます。

【茶園分科会長】

華頂委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、河島伸子委員、よろしくお願いいたします。

【河島委員】

同志社大学の河島です。

このようなDX時代に適した著作権制度の在り方というものを抜本的に考え直していく必要があるであろうということは、研究者としましては何度も発言してきたような内容だと思いますので、基本的には大変いい方向に向かっていて、文化庁もついに、私たち、分科会でついにこれを取り上げるのかという、大変期待に胸が膨らむと、そういうような思いでございます。

まずそれが大前提なんですけれども、あともう一つ、最近、自分の研究内容として調べていて、基本的な情報としてやはり欠けているのではないかと思うことがありまして、それもこの審議の過程で調査としてやっていただけたらありがたいなと思っていることがございます。

何かといいますと、著作権収入により、著作権もしくは人格権のほうも含めてもいいかと思いますけれども、失礼しました、隣接権のほうです、隣接権も含めてのことですけれども、実際にアーティストやクリエーターという人たちが収入の中でどれだけ著作権というものに依存しているのか。彼らの収入にとっての著作権、隣接権の重要性というものがどのようになっているかということが意外に分からないという実情があるかと思います。

それで、アメリカやヨーロッパのデータがないわけではなかったんですけれども、調べておりますと、デジタルDXが進む中で、実はかなり減っているという実情もありまして、それは権利侵害されているということでは必ずしもなく、アメリカの場合ですと、このような利用については以前はライセンス料がもらえていたものがフェアユースとなって今はもらえないとか、いろいろな理由もあるようですし、それから音楽の分野ですと、ライブ市場のほうがむしろ重要になってきていて、音楽の自分のデータそのものはユーチューブなどで無料で公開し、そしてファンをつくり、ファンの人たちをライブ会場に寄せて、そしてそこでお金をもらうというビジネスモデルが成立している業界なんですね。全員ではなくてごく一部のプロのアーティストかもしれませんけれども、トップの人たちはそちらに向かってきていた。したがって、著作権収入自体は減っているという事実があるんですけれども、それがまたこのコロナ禍で、この一、二年の間にライブというのは当然かなり減っていますので、どうなっているのかということもますます分からなくなってきています。

したがって、諮問に答える小委員会というのでしょうか、そちらのほうで、とにかくアーティスト、クリエーターへの還元をということを1つ重要な課題と考える、1つの基軸として考えるのであれば、その実態というのが本当にどうなのだろうということを日本に関してぜひ知りたいなということが思っていることです。

以上です。よろしくお願いいたします。

【茶園分科会長】

河島委員、どうもありがとうございました。

では、続きまして、河野康子委員、よろしくお願いいたします。

【河野委員】

日本消費者協会の河野でございます。今期の諮問事項でありますDX時代に対応した著作権制度・政策の在り方については、効果的で実効性のある対策の具体化に向けて、先ほど御紹介されましたけれども、先行して課題の整理が行われている勉強会の取りまとめを尊重しつつ、関係者の方が力を結集して臨むべきかと考えています。

私は一般消費者ですから、DXの進展によって創作された多種多様なコンテンツを気軽に楽しめる状況というのは大いに歓迎するところでございますが、一方で、文化芸術の再生産や持続可能性につながる権利保護と適切な対価還元は技術の進化に追いついていないと感じています。これまでに積み残してきた一般ユーザーが創作するコンテンツや権利者不明著作物等の円滑な権利処理の件、また情報技術の進展による海賊版や、バリューギャップのような新たに顕在化した問題解決には、古い商習慣や従来のやり方から少し離れて、もっとデジタル技術を活用した効率的な手段を採用する時期に来ていると思いますし、そのための技術開発や人材育成への投資を進めるべきではないかと考えます。

最後に、DX時代に対応した著作権制度・政策の普及啓発、教育方策の強化が必須だと考えています。この間ずっと言われているとおり、社会全体の著作権への理解が不十分であり、特にデジタルネイティブの若年層にとっては、何をもって権利侵害となるのか、どうすれば対価の還元ができるのか、こういったことが分かっていない状況です。

先日逮捕者も出たファスト映画は確信犯だと思いますが、例えば人気のキャラクターを使ったオーダーケーキの販売などは、著作権の知識が不十分、かつ画期的な対価還元の対策もないことから生じるミスマッチだと思いますし、ぜひ、学校教育でタブレットなどの活用が進む今だからこそ、具体的な事例を挙げつつ、個人の楽しみと権利者への正当な対価還元の関係性を分かりやすく理解できるような工夫が求められると思います。

私からは以上でございます。

【茶園分科会長】

河野委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、鈴木將文委員、よろしくお願いいたします。

【鈴木分科会長代理】

3点、研究者の立場からごく簡潔なコメントをさせていただきます。

まず、課題設定について、DX時代に対応したという限定はあるものの、非常に基本的なところから見直すとも取れる大きな課題設定ですので、まずは勉強会の成果を踏まえつつ、短期的な課題と中長期的な課題を整理する必要があろうと思います。その際、中長期的な課題については、先送りということではなく、どのように検討を進めていくかという道筋を示すことができればよいと思います。

第2に、拡大集中許諾制度が、短期的な対応策の有力候補として挙がっていると認識しました。そのことについては基本的に賛成したいと思います。その関連で2点申し上げたいのですが、1つは、拡大集中許諾制度は決して万能の政策手段というわけではございませんので、何に適するのか、何に適さないのかということを見極めることが大事だろうと思います。

2つ目に、この制度の関係でいろいろまだ調べるべきことがあるとは思いますけれども、その関係で申しますと、1つは、最近の法改正で入った授業目的公衆送信補償金に関する制度、これは広い意味では拡大集中許諾制度的なものと言えると思いますので、その最近の経験というのは役立つだろうと思います。

それからもう一つは、全く趣旨・目的が違う制度ではありますけれども、我が国で七、八年ぐらい前でしょうか、導入された消費者団体訴訟制度というのが、法的な観点からは一種のクラスアクションの制度でありまして、我が国におけるそのような制度についての試みとして、検討課題、検討過程も含めまして参考になる面があるんじゃないかと個人的には思っております。

以上は拡大集中許諾制度の関係です。

第3に、諮問事項にも言及がございますけれども、プラットフォーマーの役割や責任の問題は避けて通れないだろうと思っています。この点については、国際的な動向、特に欧州の新しい著作権指令の下での最近の動向などを注視して私自身も研究を進めたいと思っております。

以上でございます。

【茶園分科会長】

鈴木委員、どうもありがとうございました。続きまして、返田玲子委員、よろしくお願いいたします。

【返田委員】

返田でございます。まず、図書館に関わる権利制限規定につきましては、昨年この場で精力的に議論いただきまして、法改正に至りました。関係された皆様、ありがとうございました。引き続き、施行に向けてのよりよい成果が得られるよう、私ども図書館関係者も含め、精力的な検討を進めていく必要があると考えております。

古い話で恐縮ですけれども、日本図書館協会では2007年に図書館に関する権利制限の要望の背景となる図書館像についてという提言というか、意見を表明させていただいております。当時、図書館がパッケージ系のメディアだけではなく、インターネット系においてのメディアへの対応についても必要ということ、印刷媒体と電子媒体を組み合わせて利用できるハイブリッド図書館を目指すべきであるということを当時言っておりまして、コロナ禍、昨年からの検討課題である、コロナの時代においての重要性がここのところ、こういった面でも増しているかと思います。また、これは図書館の基本ですが、行政情報、学習情報へのアクセスの保障の機関であるという認識の下に、こういった点についての対応も今後必要になっていくかなと思います。

先ほどの文書については、既に15年近くの時間経過はございますけれども、引き続き国民の情報アクセス、より簡易に便利になるといった今後の仕組みの検討課題、今回の拡大集中処理等のこともあるかと思います。こういった点についても図書館の役割の認識を持って皆様にまた御検討いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

以上です。

【茶園分科会長】

返田委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、田村善之委員、よろしくお願いいたします。

【田村委員】

東京大学の田村です。研究者の立場から発言させていただきます。

デジタル時代あるいはインターネット時代の意義と、それが著作権制度に与えている課題を認識し、明確に特定する必要があるだろうと思います。

とりわけ今回は、アクセスが非常に容易になり、それとともに大量処理が可能となっていることを背景として、著作権制度の根本が問われているように思っております。

つまり、アクセスが容易になり、大量処理が可能となった反面、しっかり保護しなければいけない著作物と、個人著作物に代表されるような保護しなくてもよいものとを区別するコストが非常に甚大になっています。しかし、現在は、この保護すべきものとしなくてもよいものの区分けを、利用者が探索しなければならないことが原則で、そのために、せっかく技術的に大量処理が可能となっているにもかかわらず、権利処理のコストが甚大となって、なかなか利用が進まないという問題があるかと思います。

そうすると、保護を求めて手を挙げる作業、これはフラグを立てると呼ばれていますが、どちらがフラグを立てるのかが課題です。今は、全ての著作物に著作権が一つ一つあり、著作者のうち誰を保護しなければならないのか、ユーザーがフラグを探さなければいけないことが問題です。

特に、今回議題になっている拡大集中許諾、あるいは著作権の制限といいますと、どうも権利を弱めるかのように見え、また、そういった制度ももちろんあり得ますので、権利者側からの反発も強いようです。他方、今のようなデジタルインターネットの状況に鑑みれば、問題は、権利処理のコストです。この際、肝要なことは、権利者がフラグを立てることを求めるようにして、権利者処理のコストを低めることです。例えば、裁定許諾の補償金を収受する権利や、拡大集中許諾からのオプトアウトを、権利者に求めます。そのようにして、集中処理や権利者不明著作物の裁定等で出現率を加味した補償金とすることで、ユーザーの利便性を図るとともに、逆に権利者が手を挙げた場合には十分な金額を払うということにすれば、手を挙げさえすればきちんとした保護が与えられるということで、ウィン・ウィンの関係になるのではないかと思います。

まとめますと、とにかく権利を弱めるということではなくて、保護すべきものはしっかり保護し、その場合に、フラグを立てるコストをどちらが負担するかという問題に焦点を当てると、いろいろと話がまとまりやすくなるのではないかと思っております。

以上です。

【茶園分科会長】

田村委員、どうもありがとうございました。続きまして、中沢けい委員、よろしくお願いいたします。

【中沢委員】

中沢けいです。日本文芸家協会常務理事をしております。今回からこの委員会に参加させていただきました。

私が関わってきました世界は、活版という言葉がよく使われますが、実際は活版ではなかったんですが、活版印刷以来培われてきました著作物の取扱いに関係していた世界です。

こうした新しいデジタル技術の登場によって著作権者の保護ということはどうしてもトライアンドエラーにならざるを得ないのだろうと考えております。

また、技術の進歩により、使用者側のニーズも変わってくるということがあるのではないかと思います。

今、諸先生方のお話を承っておりまして、いわゆる従来型の紙に文字を刷る印刷の世界では、出版社が担ってきた役割というものが大きな組織の中で制度化されて動いていくことになるのではないのかなということを感じました。

出版社の場合には、出版ということもありますが、編集という作業が非常にクリエートな作業で、編集によってある価値判断が決まっていくわけですね。今、ちょっと前にお話にあった、保護すべき著作物か、そうでないかの区別というのは、実は今まで従来型の紙に印刷した出版物ですと、編集者がその著作物を読んで、それにある程度の価値判断を加えて本という物体にすることによって成り立っていたわけです。これをネットの世界でどういう機能として生かしていくかということが皆さんお考えの課題なんだなということは、今日お話を伺ってよく分かりました。

あえて申し上げますと、今まで出版社が担ってきた編集という機能はとてもクリエーションなものだということは改めて認識していただきたいと思います。

それから、活版印刷が培ってきた著作物に対するリスペクトという考え方が基底にあって、初めて著作権というものが成り立つのではないかと私は思っているんですね。

ところが、このリスペクトの感覚が時代によってどんどん変化していくことにいささかの困惑を覚えているものです。最初に申しましたように、新しい技術が登場して、それを世界的なものにしていくためにはトライアンドエラーは避けがたいということで、ここで皆様の御議論を聞かせていただいて、ではどのような対応があるのか、あるいは、法で保護する部分の現実と商習慣として確立していかなければならない現実の区分けはどこにあるのかということを学ばせていただければありがたいなと思っております。

以上です。

【茶園分科会長】

中沢委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、畑陽一郎委員、よろしくお願いいたします。

【畑委員】

日本レコード協会の畑でございます。今期から著作権分科会に参加させていただきます。よろしくお願いします。

今期の分科会の検討テーマが、DX時代に対応した著作権制度・政策の在り方ということでございますけれども、これには権利者からの委任に基づく集中管理がどこまで有効に機能するかという点も1つの大きなポイントではないかと考えております。

日本レコード協会では2006年から放送番組のネット配信を対象として、レコード製作者の送信化権の集中管理事業を開始しています。今、700を超えるレコード製作者の委任をもって、多数のサービスに対して集中管理に基づく許諾を発行しておりまして、昨年11月からは、関係権利者団体の協力を得まして、ネットオリジナルコンテンツの一斉同時ストリーム配信、いわゆるウェブキャスティングも集中管理の対象に加えてやっております。今、運用の安定化に取り組んでおりますとともに、利用者のニーズを踏まえながら、探りながら、管理範囲の拡大を検討しているところです。

今後の分科会での検討におきましては、権利保護・適切な対価還元、そして利用円滑化、これらの両立化を図るということでございますけども、我々権利者団体としましては、過度に利用促進にぶれることなく、権利者の意向、あるいは権利者による個別のビジネスの実態、そういった点にも留意しながら、また、先ほどからお話も出ておりますけども、DX時代において既に大きな役割を果たしておりますプラットフォーマーとの関係性についても、EUの「デジタル・シングル・マーケットにおける著作権指令」等に代表されるような先例、いわゆるバリューギャップ問題の解決方策も含め、今後慎重に検討ができればと考えております。そういった場面において、当協会が培ってきた知見をもって御協力をしていきたいと考えております。

また、他方では、新たな制度・政策を検討する上で、それを支える運用面の基盤整備の状況、そういったものを踏まえることも必要と考えております。著作物等の利用円滑化を促進する上で、広範囲な権利情報を網羅的に集約したデータベースの構築、これは極めて重要な取組だと思っております。先ほど田村委員から、権利者の意思を示すフラグを立てるというお話がございましたけれども、それを立てるプラットフォームとしてのデータベースは重要な基盤ではないかなと考えています。

また、いろんな場面で利用されたコンテンツを特定する例えばフィンガープリントのような技術基盤でありますとか、特定されたコンテンツを一意に特定するユニークな識別子、いわゆるコンテンツID、そういったものが広く基盤として利用可能になっているということも重要と考えております。

文化庁さんでは、平成29年度から権利情報集約化等に係るデータベース及び検索サイトの構築事業を音楽分野から実施するということで3年間取り組まれました。私もその事業に深く関与させていただきまして、今年4月からはその成果を民間で引き継ぐ「音楽情報プラットフォーム協議会」という一般社団法人を立ち上げております。

まだまだスタートを切ったばかりですけども、今後様々な連携を深めて、情報の網羅性を上げていくと同時に、このような情報基盤を活用したアプローチも今後の検討の一助になればと考えておるところでございます。

以上でございます。

【茶園分科会長】

畑委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、広石美帆子委員、よろしくお願いいたします。

【広石委員】

NHKの広石でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

まず昨年度は、放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化のための御議論を集中して行っていただき、無事にさきの国会で改正著作権法案が成立しました。放送事業者として、関係する皆様方に改めてお礼申し上げます。ありがとうございます。

放送のインターネット同時配信等もそうですが、今やコンテンツ流通の主流はネット配信となってきていますので、著作権制度についても、それを踏まえて検討する必要があります。

ネット配信では大量にコンテンツを流通させることが可能ですが、ビジネスの観点からすると、アクセス回数がそれほど期待できない場合は、著作権料と権利処理のコストをかけてもペイできないと判断されれば、正規の配信は諦めざるを得ません。

その一方で、不正にアップロードされたコンテンツがインターネット上にはあふれています。海賊版をなくすためには正規版を流通させることが重要ですが、正規でコンテンツを流通させようと思ってもコストを回収できないという問題が出てくることもあります。特に権利処理にかかる人件費等のコストは重要な課題だと思います。集中管理ができてない著作物等の場合、ノンメンバーの権利処理には多くの労力がかかっていますが、それらは人件費なので、権料よりも高いです。さらに所在不明だったりすると費用がさらにかさみます。

今、NHKでは音楽の使用報告にフィンガープリントを用いていますが、これまでの人力での報告に比べると随分と楽になっています。

NHKでは不明権利者について裁定制度を一部利用していて、実際に事後に判明した権利者の方がいらっしゃいますが、これまで特段のクレームはなく、むしろ古いコンテンツが利用されて喜んでいらっしゃる方もおられました。

具体的な制度として拡大集中許諾制度や補償金つき権利制限規定などが議論されていますけれども、申し出があればきちんと使用料が支払われる制度であれば、権利者の権利を不当に害することはないように個人的には思います。

また、これだけ権利者が増えていくわけですから、例えば使用料の分配を受けるための権利者の登録制度についても検討する時期に来ているのではないかとも考えています。

権利処理コストをなるべく低く抑えられるような制度面の改善、また、デジタル技術を使っての権利処理の円滑化などを進めていただき、著作物等の利用円滑化につながるよう願っています。

大変難しい課題ではありますが、今年度の著作権分科会の各小委員会での御議論、御検討に期待したいと思います。

以上です。ありがとうございます。

【茶園分科会長】

広石委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、前田哲男委員、よろしくお願いいたします。

【前田(哲)委員】

弁護士の前田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

私はDXという言葉自体から何らかの結論を導くということはできないのではないかと思っております。もっとも、諮問の中で指摘されておりますように、デジタル化、ネットワーク化が急速に進展していること、それによって著作物の創作、流通、利用の態様に大きな変化が生じていることは、まさにそのとおりと思います。

重要なのは、それによってどういう課題が生じているのかを具体的に把握して、それに対する実現可能な解決策を検討していくことなのだと思いますし、それが今回の諮問の御趣旨ではないかと私は思います。

そして、具体的に生じている課題というのは、1つではなく、多種多様なものでございます。課題の1つは、諮問の中で御指摘されておりますように、著作物を創作、公開するのが従前のように少数のプロの創作者だけではなくなっていて、多くの人が著作物を公表することが可能になってきたこと、しかもそれが大きな経済的価値を持つようになってきたけれども、プロではない創作者へのアクセスが難しくて、権利処理が困難になっているという現象が生じているかと思います。

この点の解決方法としては、拡大集中許諾が大きな論点の1つにはなるでしょうけれども、その導入の可能性や是非だけに議論を絞ることは適切ではないと思います。拡大集中許諾はもちろん1つのアイデアでしょうけれども、唯一のアイデアではありませんし、また、先ほど鈴木委員からも御指摘がありましたように、万能のものでもありません。裁定制度の抜本的な見直しとか、既存の集中管理団体による集中管理の促進、あるいは許諾の推定なども解決策として考えられるでしょうし、これらの解決策は相互に排他的なものではございませんので、これらを組み合わせていくことによって解決策を考えていくこともできると思います。

また、解決の手法としては、先ほど大渕委員からも御指摘がありましたように、必ずしも法改正だけではなくて、ガイドラインの策定などのいわゆるソフトロー的な手法を組み合わせていくことも十分考えられるところかと思います。

全く別の課題として、国境を越えた大規模な侵害行為が多発しているという問題がございます。これについては、令和2年改正でリーチサイト規制などが設けられてきましたけれども、さらに対策を強化することが必要と思います。その観点から、今後、インターネット上の媒介者の役割をどう考えていくべきかという議論が求められていると思います。

そのほかにもいろいろ課題が生じているかと思います。私は、課題自体は多種多様なものであって、それらの解決策にも多種多様なものが考えられるため、限られた時間の中にはなると思いますけれども、論点を絞り込むのではなくて、視野を広く持って多角的に検討していくことが必要ではないかと思います。

以上です。ありがとうございました。

【茶園分科会長】

前田哲男委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、前田優子委員、よろしくお願いいたします。

【前田(優)委員】

日本民間放送連盟の前田でございます。よろしくお願いいたします。

まず、先ほど広石委員のほうからも言及がございましたが、昨年度の本分科会におきましては、放送番組の同時配信等に関する権利処理の円滑化に関する御議論をいただきまして、ありがとうございました。お礼を申し上げます。

続きまして、本年度の諮問に関するところでございます。諮問概要のところに大きく審議事項1と2がございますが、まず1のほうの利用円滑化に関しましては、こちらにも書かれておりますとおり、権利情報の集約ですとか、著作権等管理事業者による権利の集中管理の促進、それから不明権利者の権利処理に関する手続の負担軽減などが放送事業者としても必要ではないかと考えております。

その具体的な制度の事例といたしまして拡大集中許諾制度というのが1つ挙がってはおりますが、この制度に限らず、既存の著作権等管理事業法なども含めまして、管理事業を行っていらっしゃる方々、事業者さんが積極的に権利処理の円滑化に向けた集中管理の担い手となるような制度づくりが必要だと考えております。

また、対象となる多種多様なコンテンツということで、過去コンテンツ、それから一般ユーザーが創作するコンテンツなどが挙げられておりますが、本当にニーズがあるところ、あとは事業者としてそれで事業が成り立つかどうか、そういったところも含めて、ニーズがあるところに対応ができる実効性のある制度をつくっていくための工夫が必要だと思います。

もう一つの2ポツのほうの今度は権利保護のところでございます。まず、こちらの最初のところにコンテンツの海外展開方策というのがありますが、委員の方からも言及ございましたとおり、インターネット上の海賊版対策につきましては、特に海外での侵害行為については放送事業者による働きかけだけでは対応するのが難しいというのが現状でございます。日本のコンテンツの海外展開の促進と併せまして、海賊版対策についても引き続き、諸外国への協力要請、それから国際的な枠組みでの対応を進めていただきたいと考えております。

すみません。最後に、クリエーターへの適切な対価還元というところで1つだけ申し上げさせていただきますと、先ほど華頂委員のほうからもありましたとおり、文化庁様の御尽力を承知した上ではございますが、今回の「知的財産推進計画2021」の私的録音録画補償金の記述につきましては、あのような記述にとどまってしまったのがやや残念ではございます。この制度は、各関係者の御協力の下で成り立つという制度ですので、クリエーターへの対価還元が長年行われていないという状況を少しでも早く解消すべく、理解を得られないものかと考えております。

民放連からは以上でございます。

【茶園分科会長】

前田優子委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、丸山ひでみ委員、よろしくお願いいたします。

【丸山委員】

公益社団法人日本芸能実演家団体協議会理事、実演家著作隣接権センターの運営委員を務めております丸山ひでみです。よろしくお願いいたします。

今期からこちら著作権分科会に出席をさせていただきますので、少し御挨拶を兼ねて発言をさせていただきたいと思います。私は団体の役員としてここに参りましたが、10代の頃から実演家であり、現在も実演家としてやっております。その中で先輩方が皆さん団体に入っておられたことから興味を持ちまして、私としましては、実演家をもちろんやりながら、団体の中でもいろいろと発言をしていけたらと、そう思いながらもう20年ぐらいになるのでしょうか、やっております。

今期、まず、先ほどの御説明がありました、DX時代に対してというところの諮問の話でございますけれども、私はこのテーマは実演家にとっては非常に重要なものだと思っております。デジタルネットワーク化が進展して、実演家がコンテンツの担い手であり、文化の担い手であることは何も変わりはないのですけれども、今の実演家の活動の取り巻く環境が急激に変化をしております。そういったこの激動の中で、しっかりと実演家の権利や立場が保護され、良質なコンテンツの創出サイクルが守られるような仕組みづくりをしていく必要があると思っております。

そういう仕組みづくりの重要性は、特に今、このコロナ禍の中で、生の実演に大きな制約がかかっておりまして、多くの実演家が大変な思いをしている今、一層高まってきております。

私も著作権分科会の一員として、積み残しのままになっている私的複製に関する対価の還元に関する問題、それから、改めまして、議題として上げていただいたバリューギャップ問題を解決するために具体的にどのような仕組みをつくっていくのがよいか、皆様と一緒に考えていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【茶園分科会長】

丸山委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、宮いつき委員、よろしくお願いいたします。

【宮委員】

宮いつきです。日本美術家連盟と、あと多摩美術大学、そちらのほうの関係でここに参加させていただいています。一応私が所属しているところというのは、どちらかというと、アナログとデジタルといったらアナログ型の権利者サイドというのが美術家連盟のほうの立場でありますので、これからDX時代に向かって、アナログとデジタルのイコールフッティングになるのかどうか分からないんですが、そちらのほうのアナログのほうはどういうふうになっていくのかなというようなことが非常に気になるところでありますが、美術のほうでも、ほかの分野に比べて、大学なんかで関わっていますと、割と著作権の意識がそれほど強くないんじゃないかなというような気は前からしていました。それがここ何年かで、そういう勉強会ですとか、かなりそういう説明会なども、学生に向けて、教員に向けてある中で、デジタルとアナログの、美術の多くのプロではない方たちの著作権みたいな、著作物が非常に増えて、それが非常に流通しているということと、あと一応プロであるというところのその著作物みたいなところのやり方がうまくいくのかなという、どういうふうに一緒になっていくのかなというところが、非常に私はちょっと興味を、興味をというか、うまくいくといいなというふうなことで一応ここにも参加させていただいております。

拡大集中許諾書とか、いろいろ集中管理とか、そういったことがちゃんと両側にも通じるというか、そういうことでうまくいくような法案とか、そういったものができるようにというふうには考えております。よろしくお願いいたします。

【茶園分科会長】

宮委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、宮島香澄委員、よろしくお願いいたします。

【宮島委員】

こんにちは。日本テレビの報道局で解説委員をしております宮島香澄と申します。今回から参加させていただきます。よろしくお願いいたします。

これまでにDXやデータに関わる審議会ですとか、あるいは今回の知財の報告をまとめた、その傘下の知財の構想委員会などで今まで議論に参加してきました。今回、相当難しいテーマなんですけれども、詳細設計に関しては、この後多分詳しく委員会で具体的に議論されると思いますので、私からは俯瞰で見て、コンテンツを利用している立場、コンテンツをつくっている側の立場、そして放送を送り出したり、一般の視点という、そういったところから少し委員会の議論にもお願いをしたいと思っております。

1つは、今回は利用の促進と権利保護と適切な対価の還元をうまく組み合わせて視座を取っていかなければいけないということで、制度設計もとても難しい部分があると思います。

一方で、そこを詳細に気をつけながらも、それぞれに気を遣いながらも、最後の出口のところはできるだけシンプルで、そして理解と利用がしやすい仕組みにしてほしいと思います。

といいますのは、今の制度、今できている制度でさえも、必ずしも利用者に理解が届いていないので、完全には使われていないと思うんですね。よほどどうしてもこれを使いたいというものがあれば、使えるように限界までみんな努力をするんでしょうけれども、日常のコンテンツ利用の中では、著作権という難しい問題がありそうなものに関しては、取りあえず判断を避けるというか、よほど必要なものじゃない限りは、ここじゃなくてもいいようにしよう。つまり、今、権利がフリーになっているものの中から使おうとか、あるいは判断がつかなくて難しいので、ここはモザイクしてしまおうとか、どちらかというとそういう安全志向のほうに行ってしまうことが結果的にコンテンツの十分な良い利用につながらない可能性があるのではないかと思います。

結局出口のところが複雑だと、分かりにくいから、とにかくここのエリアには立ち入らないで安心なところで済ませようということになりがちですし、それは教育すればいいんでしょうけれども、次々に変わる新人さんやADさん全部がそこまでたどり着くのは実際難しいというところがありますので、今回の制度設計においては、簡素で一元的というところにとても強い期待を持っています。

例えば、企業のデータ利用のための不正競争防止法でもガイドラインをつくったんですけれども、私から見ても、ガイドラインそのもの、すごく分かりやすく頑張ってつくったんだけども、やっぱり複雑なんですね。そうすると、それを理解できるのは企業の中でもごく知財関係の一部の人だけとかいうふうになって、利用が期待したほど進まないのではないかという懸念がありまして、今回つくった制度がとにかく利用されるような形で外に出るということを期待したいと思います。

それから、今度はコンテンツ制作者側から見ますと、バリューギャップは本当にひどい状況になっていると思います。これは著作権の問題だけではなくて、プラットフォーマーの在り方とか公取の世界も組み合わせてだと思うんですけれども、とにかく取材とかにかけた手間や費用とはかけ離れた形でしか提供ができない状況というのがいろいろなところにあって、それでもやっぱりまずは認知してもうことが大事というところで、安かったり、無料でも出すというような状況が今できていると思います。これはほかの部門で収益を上げられる組織だったらまだ可能なんですけれども、個人でやっている人や、非常に本質を追求しようとしているような小さい集団では、そこでちゃんとした対価が得られないということは持続性に関わることだと思いますので、ここは非常に大事な、注目しているところです。

さらに一般の立場で申し上げるんですけど、今までの議論の中でも、一般の人が発信をすることになるので、著作権教育が大事だというお話がほかの委員からもありました。これはもちろん本当にそう思います。今までいろいろな審議会とかいろいろな政策で、みんな一般の理解が必要だ、一般に教育が必要だと言うんですけれども、実際問題としてその教育がなかなかうまくいかないんですね。というのは、学校の情報教育の授業で取り上げてもらえれば、そしたら分かるとか、副教材の本を作れば、そしたら学生は理解するというものではもうなくて、みんな、本当に日常の中で使っているので、日常の中で著作権の存在というのを感じさせなければやっぱり駄目だなと思います。映画館に行くと、映画を録画するのは禁止ですみたいなことが一番最初に出ることが多いんですけれども、様々な工夫をして、いわゆる学校の授業とかでの教育だけではなくて、ふだんやり取りしている中で、みんなが著作権という存在や、その意味合いとかその重要性というものに気づくような形での教育、啓蒙が非常に必要だと思っております。

よろしくお願いします。

【茶園分科会長】

宮島委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、本木克英委員、よろしくお願いいたします。

【本木委員】

本木克英と申します。今期から文化審議会の著作権分科会に参加させていただきます。

1970年の現行著作権法の制定以来、映画監督には、著作権を保持しないものの、いろんな映像団体との団体協約によって追加報酬という形で、2次利用以降、利益を得ている者として、その権利処理をして、現在3人で行っているのが日本映画監督協会です。

会員は490名になりましたが、映画に限らず、様々な映像の監督たちが集まっております。その中でも、今、宮島委員のお話にありましたように、著作権に対する意識が、著作権運動を基本にしながらも、著作権獲得運動にほとんど興味のない会員もいるというのが現状です。

それから、実はコロナ禍において、文化庁には、文化芸術活動の継続支援事業でかなりの会員監督たちが助成金を受けまして、それには本当に感謝申し上げますが、一方で現場で撮影ができないという事態にもなっておりましたが、現状から言いますと、映画がいわゆるおうち時間の中でグローバル配信企業によってかなり利用されていまして、これによるいわゆる著作権収入、我々は追加報酬と言っていますが、が支払われることがままありまして、それによりかなり生活上助かったという会員の声が多数あります。

とはいえ、これらのグローバルな配信プラットフォーム企業がどのような基準で監督への配分を決めているのかということが不明でございます。多くの俳優さんやスタッフからは、日本映画の企業にはない追加報酬を頂いたという方の声も多くあります。

それから、著作権から適切な対価支払いの基準が明確ではないところでございますので、ますますこれからDX時代も進展していくでしょうから、拡大集中の許諾の研究も非常に興味がありますし、DX時代における、我々としては集中管理団体がやはりどうしても拡大した状態で必要であろうと。先ほどから議論にもされている権利処理に関わる人材確保、それからそれにかかる費用が大変だという話もありますが、一部意見では、AIを活用した、要するに配信して、利用者の目に触れた時点で、それがどの権利者が持っているものであるかということが自動的に徴収できるような仕組みにいずれなっていけばいいのではないかという意見もありました。

そのためには、各様々な制作委員会によって権利が分かれており、利用できないという作品もかなりありますので、データの集積と管理、これも必要になってくるのではないかと思います。

まだまだこれから検討していく課題ではあるとは思いますけれども、DX時代に対応した著作権制度によって法律が変わり、我々映像をつくる映画監督たちにとっても、これまでの不利な点がないように今後注視していきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

【茶園分科会長】

本木委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、森田宏樹委員、よろしくお願いいたします。

【森田委員】

東京大学の森田宏樹と申します。研究者の立場から簡潔にコメントさせていただきたいと思います。

研究者の立場からしますと、法制度の整備がここでの課題になりますけれども、いずれの諮問事項も適切な対価還元方策に関わるものでありますが、適切な対価還元そのものは、法制度の整備によってなされるわけではなくて、新たな状況に適したビジネスモデルが形成されることによって実現されるものでありまして、そうした現状に適合的なビジネスモデルを促進するような機能を持つ法制度を整備してゆく必要があると思います。

その観点から見ますと、法制度を導入する場合にも、問題によっては、ある種の実験的な手法といいますか、とにかく射程を限定してでもある法制度を導入してみて、それがもたらす効果を見極めながら、必要に応じて手直しをしつつ、それをさらに拡大していくといったようなスタンスを採ることも重要ではないかと思います。議論を尽くしているけれども、なかなか成案を得ることができなくて、そのまま長年月経過してしまうという事態は避けるべきではないかと思います。

そういう基本的なスタンスを前提に、2つ諮問事項にありました利用円滑化と権利保護の2点について申し上げたいと思います。

このうち、利用円滑化のほうについては、簡素で一元的な権利処理が可能となるような方策の候補としまして、いわゆる拡大集中許諾制度が挙げられております。私自身は、この拡大集中許諾制度についての平成28年度の調査研究に参加いたしましたが、諸外国の状況を調査するだけでなくて、それを日本法に導入する際にはどのような課題があって、何をクリアしなくちゃいけないか、クリアするにはどういう方法があるかということについて、ある程度の理論的な詰めは終えている段階になろうかと思います。

そこで、本年度は、こちらはどちらかというと短期的な課題としまして、具体的にどういう場面を想定した制度の利用を考えるのかということと、この拡大集中許諾制度は、日本には従来存しない法制度でありますので、これを日本の法制度の中に組み込むとしたらどういう問題があるのかという制度設計を具体的に検討していくということが重要ではないかと思います。こちらは短期的な課題でありますので、できるだけ集中的に議論を行って、成案を得るように努めるべきではないかと思います。

他方で、コンテンツの権利保護につきましては、デジタルプラットフォームについては、2019年のEUの著作権指令で、特にコンテンツ共有サービスにつきましては、従来とはやや違うポリシーの転換があったように見えます。それを受けまして、EU各国では国内法化も進んでいる状況にありますが、ただ問題そのものは全く新たな問題ではなくて、従来の延長上といいますか、連続性のある部分と、それから変更があった部分の両方があるかと思います。どこがどう変わって、それがどういうインパクトを持つのかという点を見極めて、ポイントを絞って議論を深めておく必要があるのだろうと思います。これは、新たな国際的な動向でありますので、すぐにそれを見極めることは難しいかもしれませんが、大きな問題であるがゆえに議論が拡散しがちであると思いますので、ポイントを絞って議論をしていく必要があるのでないかと思います。

簡単ではありますが、私からは以上です。

【茶園分科会長】

森田委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、山﨑敏委員、よろしくお願いいたします。

【山﨑委員】

日本映像ソフト協会の山﨑と申します。私自身は、東宝東和という会社で主に外国映画の輸入配給をしております。JVA、日本映像ソフト協会は、その名が示しますとおり、日本の映像コンテンツ、映像ソフトコンテンツの流通に関わるビジネスをする会社が会員となっております。

私どもの映像コンテンツ業界において、このたびの議論の中で最も関連しているというか、我々の役割というのは、やはり健全なソフト流通、映像コンテンツ流通を守る、保護する立場に我々があるということだと思います。

そこになりますと、5Gの時代の到来を迎えまして、我々のビジネスチャンスも広がっているとは思うんですけれども、一番心配されているのは、やはり海賊版の被害が増大するということは予想しております。

なので、我々の業界のほうから1点集中で申し上げるとすると、やはり海賊版サイトの問題というのが深刻でございまして、そこに関しては、実効性のある方策を持って官民が連携して取り組んでいくことが重要だと思います。そこの実効性の部分ということで我々がなす役割というのを明確に示して行動ができるようにできたらよろしいのではないかと考えております。その点においては皆様のほうからの御指導や御支援をいただきたいなと考えております。

私からは以上です。どうぞよろしくお願いいたします。

【茶園分科会長】

山﨑委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、山下敏永委員、よろしくお願いいたします。

【山下委員】

日本新聞協会を代表しまして参加しております山下です。新聞社としては、朝日新聞社に所属をしております。

今回のDX時代に対応した著作権制度・政策の在り方について本格的な議論に入るということで、非常に期待感を持っております。と同時に、円滑な利用の側面だけに目が行ってしまい、バランスを欠くことのないようにお願いをしたいと思っております。

DX時代に対応した施策が諮問されておりますが、その中では1番目がコンテンツの利用円滑化、2番目がコンテンツの権利保護、3番目、それに伴う適切な対価還元というのが3つの柱だと。非常にここを重要と思っております。

3番目の対価還元につきましては、今日委員の皆様からも数々のお話ありましたが、デジタルプラットフォームサービスが重要なポイントと捉えております。諮問理由の中でもプラットフォームとクリエーターの間のバリューギャップというのが指摘されております。

参考になると思われるのが諸外国の事例であります。EUの著作権指令17条では、コンテンツ共有サービスのユーザーが著作権で保護された著作物等をアップロードしたときは、当該サービスのプロバイダーが著作物等を公衆に伝達し利用可能にする行為を行ったと規定するという内容が含まれております。つまり、ユーザーよりもプラットフォームの側により多くの責任がある、重要性があると言っているわけです。日本でも、御存じのように、海賊版に加えて、SNSでの無許諾利用というのも頻発しておりますが、EUの例などを参考に実効性のある施策を検討していただきたいと切に思っております。

私からは以上です。ありがとうございました。

【茶園分科会長】

山下委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、最後になりましたけれども、渡辺俊幸委員、よろしくお願いいたします。

【渡辺委員】

作曲家の渡辺俊幸です。

このDX時代を迎えまして、音楽という面で、現状は、いわゆるCD等のパッケージものの売上げはどんどんと激減していき、その分、デジタルコンテンツ、デジタルプラットフォームサービスに係る様々なコンテンツからの収益は上がっていっている。

そういう現状でありますが、作家への適切な対価還元というところで見たときに、例えば音楽系の様々なサブスクリプションサービス、その収益自体は伸びているんですが、それが個人に分配されるときに、果たしてそれが本当に適切な対価還元がされているんだろうかという点に関しては、世界的に見ても作家は非常に収益が縮小している傾向にあるという認識になっています。

そして、映像系のいわゆるグローバルな配信プラットフォームの企業、様々な映像系のコンテンツを配信しているわけですが、そこにも音楽家は関わっているわけですが、そういった場合に、そういった企業が、配信する映像作品そのものをつくってしまうという現代なんですね。それもハリウッド映画クラスのものをつくると、そういう時代を迎えて、そのときに、従来ですと、音楽家はそこにおいて著作権も保護された中で仕事をしているわけですが、現状はそういった大企業が作曲家に音楽を発注する際に、バイアウトということを義務づける傾向が出てきた。これは作曲家にとっては非常に大きな問題で、買取りされてしまうということで、権利を失ってしまうというような現実が起こってきている。これはハリウッドの著名な作曲家たちも非常に大きな問題として捉えている現実であります。必ずしも全ての作曲家がそういう目に遭っているわけではありませんが、若手の新たな作曲家がそういった形で依頼を受けて、権利を失っているというような現実も出てきている。

そして、そういった現実を考えますと、先ほど前田委員がおっしゃった、華頂委員もおっしゃいましたけれども、私的録音録画補償金についての2020年の知的財産推進計画において、新たな対価還元が実現されるまでの過渡的な措置として、私的録音録画の実態に応じた具体的な対象機器の特定という、対象機器の特定をするべきである、しなさいというような指示が出ているにもかかわらず、それがなかなか結論が出ていない。私が感ずるところは、それはやはり企業側とクリエーター側とのバランスでなかなか結論が出ないのであろうと。文化庁さんも非常に努力をしてくださっていると私は思いますが、長年にわたって結論が出ないというのは、やはり大企業とクリエーターということで見たときに、どうもクリエーターというのは弱い立場になってしまっているのではないかということを強く感じます。

ですから、今回、適切な対価還元ということを議題に取り上げていただいて話し合っていただく際に、そういうクリエーターの立場が弱くならないようにぜひとも御検討をお願いしたいと思います。

それから、河島委員が先ほどお話しされていました、クリエーターの著作権がどのぐらい自分の収益において大事なものであるかということについてですが、私は音楽家なので、音楽の分野に関してはお話ができるのでお伝えしますが、作曲家の場合、歌もののいわゆる歌詞つき楽曲というふうに呼びますが、皆さんがカラオケなどで歌う歌ですね、こういったものを作詞家、作曲家がつくった際には、つくった時点においては委嘱料はありません。すなわち、その時点においては無料で提供するというのが現実であります。

ですから、あくまでも歌詞つき楽曲をつくった際には、作詞家も作曲家も、CDが売れる、あるいは配信される、あるいはカラオケで歌っていただく、そこで初めて対価を得ていくというのが現実であります。ですから、本当に著作権が大事なんですね。

そして、もう少し詳しく言いますと、映画音楽系の作曲などをした場合など、私などもそういう仕事をしておりますが、歌もの以外の場合は委嘱料を頂けます。

細かいことでありますが、こういう機会なので、お伝えさせていただきます。

以上です。

【茶園分科会長】

渡辺委員、どうもありがとうございました。出席していただいている委員の先生方全員から御意見を頂戴いたしましたけれども、この段階で、特に発言されたいということはございますでしょうか。

では、渡辺委員。

【渡辺委員】

SARTRASのことで、今回の話は少し離れますが、今集まったお金を分配する際に、今のところ、1,000校のサンプリングにおいて分配する際の作家を特定して分配していくというようなことになっておりますが、1,000校、1,000の学校というふうに書かれていますが、実際は大学においては1つの学部も1校に数えるというようなことが書かれております。果たして、集まったお金を分配する際に、1,000校、それも1つの学部も1校と数えるというようなサンプリングの仕方で本当に適切な分配ができるんだろうかということをJASRACの理事会においても多くの理事が危惧しているという発言がありましたので、文化庁サイドの御意見を賜りたいなと思います。

【茶園分科会長】

事務局、何かございますでしょうか。

【日比著作物流通推進室長】

文化庁の日比でございます。今御質問の件は、この後の議題で進捗状況を御説明する中でお話ししようと思っておりましたが、御質問のサンプル数の関係につきましては、これは調査を受ける教育機関の負担も考慮をして、バランスを取って、SARTRASにおいて念頭に置かれているものということでございます。

いただいた御意見につきましては、私どももSARTRASにお伝えをして、御相談をしていきたいと思っております。

以上です。

【渡辺委員】

ありがとうございます。

【茶園分科会長】

ありがとうございました。特にこの段階で御意見、御発言ございますでしょうか。

では、どうもありがとうございました。

小委員会におきましては、先ほど御論議いただきました今期の著作権分科会における主な検討課題に沿いまして審議を進めていくことにしたいと思っております。

なお、著作権分科会におきましては、文化審議会著作権分科会運営規則第2条、これは参考資料1の7ページのところにありますけれども、これによりまして使用料部会を設置することが決められております。使用料部会とただいま設置を決定いたしました各小委員会に属すべき委員につきましては、文化審議会令第6条第2項、これは参考資料1の3ページのところにありますけども、これ及び文化審議会著作権分科会運営規則第3条第2項、これは参考資料1の8ページのところですけども、の規定によりまして分科会長が指名することとされております。

これにつきましては、後日、指名の上、事務局を通じまして皆様にお知らせさせていただきたいと思っております。

では、次に進みまして、本年度から本格運用が始まっております授業目的公衆送信補償金制度、これにつきまして事務局から説明をお願いいたします。

【日比著作物流通推進室長】

それでは、御説明いたします。資料の8を御覧ください。まず初めの2ページ分を飛ばしていただきまして、パワーポイントを基に作りました資料の1ページと書かれた資料を御覧ください。

授業目的公衆送信補償金制度につきましては、教育におけるICT活用を促進するために、オンラインによる遠隔授業等におきまして著作物を利用する際の権利処理を簡便にしつつ、権利者に対して補償金を支払っていただくという制度でございます。

1ページ目にございますように、補償金は、中ほど、「児童生徒等1人当たりの年額」と書いてある金額につきまして、学校などの教育機関の設置者が指定管理団体であるSARTRASに一括して支払うという仕組みでございまして、これによって、著作物の利用の都度許諾を得ずに利用が可能となるという仕組みでございます。

パワーポイントの2ページ目でございますが、補償金の分配スキームです。教育機関にお願いをするサンプル方式による利用報告に基づきまして、著作物の分野ごとの著作権等管理事業者に補償金の分配を委託をいたしまして、できる限り個々の権利者に分配をするという方針でございます。

ただ、先ほども御質問いただいたように、全ての権利者に分配をし切ることには限界がございまして、著作権の保護や著作物の創作の振興・普及のために、クリエーター全体に資する共通目的事業というものを行いまして、これに支出するということも考えております。

パワーポイントの3ページ目を御覧ください。指定管理団体(SARTRAS)の概要ですけれども、これは法律に基づいて文化庁が指定する唯一の指定管理団体でございまして、資料の右側にあるとおり、教育現場で利用が想定される各分野の権利者団体により構成をされております。

資料の4ページを御覧ください。著作物の教育利用に関する関係者フォーラムというものが別途行われております。こちらはこの制度の円滑な利用に向けての環境整備を行うために、先ほどの権利者団体だけでなく、利用者側としまして、各学校種、設置者の種別ごとの団体から推薦される委員の方々に御参加をいただいて、主にこの制度の運用指針について御議論いただいてきたということでございます。

資料8の1ページ目に戻っていただきまして、現在の進捗状況を御説明いたします。この制度は、昨年のコロナの流行に伴って急速に拡大したオンライン授業のニーズに対応するために、当初の予定を早めて施行をいたしまして、昨年度に限って権利者団体の皆様の格別な配慮により特例的に無償ということになされたわけでございますが、今年度からは認可された補償金額に基づいて本格運用を開始しているところでございます。

この仕組みは、SARTRASが設けたシステムにより、基本的に教育機関の皆様からのオンラインでの手続で申請をしていただくということになっておりまして、資料の1ポツ(1)申請状況というところにありますように、本年6月30日現在におきましてSARTRASに登録をされた教育機関の設置者の件数は合計で1,656件でございます。

また、その下の表ですけれども、教育機関の種別ごとの件数を載せておりますが、学校数ということになりますけれども、この表の一番下合計のところを御覧いただきますと、SARTRASへの登録件数は1万8,275件ということになっております。

表の一番下に参考として、昨年度無償で早期施行した際のSARTRASへの教育機関からの届出数を示しておりますが、ここの数字と比較しても大体これぐらいの規模での申請が今来ているという状況になります。

この下の表の右側に文科省統計総数というところがございますが、各学校種別の全体の数、これが合計で5万6,912の学校・教育機関があるということになっておりますが、これらのうちの1万8,275というのは32.1%ということになります。

また、教育機関としての登録をした後に具体的な補償金算定の基礎となる学生数等を申請をしていただきますが、その申請まで終えている機関が20.9%ということになっております。

これらの数字は、今後もこの申請を受け付けておりまして、8月末までをめどに申請をいただくということにしておりますので、さらに増えることを予想しております。

2ページ目を御覧ください。(2)番の補償金のSARTRASから教育機関への請求状況でございます。5月、6月と分けて請求しておりますが、合わせて約18億円の請求をしております。SARTRASとしては今年度の計画として27億円ということを予定をしております。

(3)番、分配につきましては、先ほども出てまいりましたが、①番、分配のために必要な情報を得るための教育機関への利用報告のお願い、こちらは7月中にとございますけれども、先日7月16日付で依頼を発送しているところであります。

②番にありますとおり、この提出を待ちまして、本年9月頃以降に実際の受託団体の決定ですとか、利用報告の整備の作業に入っていくということにしております。

次の2ポツ、SARTRASライセンスに向けた取組の状況でございますが、こちらは、今御説明した補償金制度というのは、授業の過程における著作物利用が対象でございましたけれども、授業の外を含みます教育機関における著作物利用につきまして、この補償金制度を補完するものとしてSARTRASが包括的にライセンスを提供すべく準備をしているということでございます。現在ここにありますような①から④の利用類型を対象に来年度開始を目指して検討しているということになります。

最後、3ポツですけれども、先ほど御説明した関係者フォーラムにつきましては、今年度もスタートをしておりまして、今月より順次専門ワーキンググループにおいて、ここにある制度の普及啓発ですとか、運用指針の改定、あるいは今御説明したライセンス等に関する検討を行う予定としております。

御説明は以上でございます。

【茶園分科会長】

どうもありがとうございました。今の御説明に関する質疑の時間は次の議題と併せて取りたいと思っております。

続きまして、さきの国会で成立いたしました著作権法の改正につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】

資料9を御覧ください。令和3年改正法の概要になります。

こちらにつきまして、内容は、昨年度御審議賜りましたように、1番、図書館関係の権利制限規定の見直し、2番、放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化というものでございます。

こちら、全会一致で成立いたしまして、6月2日に公布となりました。

施行期日は、資料9の一番下に書いてあるとおりでございまして、現在施行に向けて、文化庁、また関係者と議論をしながら進めております。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

事務局からの説明は以上でございます。

【茶園分科会長】

どうもありがとうございました。それでは、議事5の授業目的公衆送信補償金制度の本格運用、そして議事の6、令和3年著作権法改正の事務局からの説明につきまして、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。何かございますでしょうか。

では、返田委員、お願いいたします。

【返田委員】

資料9の著作権法の一部を改正する法律の概要の改正の概要の1の②で、図書館においても、これが実行されますと、補償金の支払い主体は図書館等の設置者になりますが、実際にはエンドユーザーである利用者が負担するということになるかと思います。これは図書館としては初めてのことになり、今後に大きな影響を与えることでもあります。既に文化庁の御担当のほうにおかれましては、難しい調整を各方面と行っていただいていることかと思います。図書館のほうからも、特に実行に向けては、予算措置についてとか、実際図書館側でどういう準備をどういうふうにしたらいいのかといった点についても質問とか不安に思う声が寄せられておりますので、大変なこととは思いますけれども、引き続き調整のほうをよろしくお願いいたします。

それから、ちょっとずれたことで申し訳ないんですが、この場でひとつお伝えさせていただきたいと思うことがあります。著作権法31条の対象となる図書館等の範囲についても昨年御議論いただきました。一定のまとめをしていただいているところです。これにつきましても、各団体と昨年もヒアリング等を行っております。こちらにつきましても引き続きお願いいたしたいと思います。

以上2点、どうぞよろしくお願いいたします。

【茶園分科会長】

どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。

では、ほかに何かございますでしょうか。

よろしいでしょうか。

では、どうもありがとうございました。では最後に、議事7のその他についてでございます。事務局において、参考資料6として、一般社団法人音楽情報プラットフォーム協議会の設立に関するプレスリリース、そして参考資料7として、オーファンワークス対策事業の概要を用意いただいておりますので、これらの御説明をお願いいたします。

【日比著作物流通推進室長】

それでは、参考資料の6と7を御覧ください。まず参考資料の7をごく簡単に御紹介いたします。文化庁では、著作物の利用円滑化を図る運用改善の取組の1つとしてオーファンワークス対策事業というものを昨年度より3か年の計画で行っております。

この資料の1ページ目の真ん中にございますように、著作物を利用したくても権利者が誰か分からない、見つからないといったようなものに対応するために、権利者情報を集めたデータベースを構築するという事業、それから、左下ですけれども、権利者を探し出せたとしても権利処理がうまくいかないというような、特に著作権に詳しくない方がきちんと契約を結べるようにというような契約書作成支援システムの構築やガイドラインの作成、それから、右下ですけれども、著作権者に連絡がつかない場合の最終手段となる文化庁長官による裁定制度、これが扱いやすくなるようにということで、あらかじめ裁定に必要な補償金額の目安を知ることができるシミュレーションシステムの構築という、この3本柱で事業を行っているところでございます。

御説明した1点目に関しまして、特に先ほど畑委員から御紹介のあった音楽分野におけるデータベースの構築というのが進んでおりますので、その御紹介でございます。参考資料の6を御覧ください。

こちらは音楽情報プラットフォーム協議会による今年4月1日付のプレスリリースでございますけれども、この資料の中ほどに記載していただいているとおり、文化庁において2017年から3年間行った実証事業によりまして、特に音楽分野からコンテンツの権利情報を集約したデータベースの構築と、それから一括検索サイトを設けるという事業を行ってまいりました。これは2019年度末に終了いたしまして、基本データベースというのが構築をされております。

こちらにつきまして、プラットフォーム協議会、通称MINCと呼んでおりますが、このMINCという団体、民間で運営する法人がこの運用を行っていくという体制が今年度から整ったということになります。

飛びまして、この資料の一番最後、4ページ目を御覧ください。MINCのデータベース検索サイトの仕組みを示した図がございます。既にこれまで、旧MINCといたしまして、レコード協会やCPRA、JASRAC、NexTone等によって、それぞれ持っていた権利情報を集約する試みが行われておりましたけれども、それを基に、さらに右側にあるようなインディーズレコードの情報、あるいは個人クリエーターの情報等を集約をして、文化庁事業により、一括検索サイト「音楽権利情報検索ナビ」というものをつくったということになります。

資料の2ページ目に行っていただきまして、MINCの御紹介でございます。先ほど御発言いただきました畑委員がこの法人の代表理事をお務めになられまして、その他関係する音楽、著作権、それから隣接権の関係団体が正会員として入っております。さらに3ページに行きまして、関連する事業者等も賛助会員等として参加をされているということになります。

このウェブサイト、既に一般公開されておりますので、ぜひ御覧いただければと思います。

3ページの一番下にありますように、現在、CDの音源に加えまして、配信音源合わせて992万曲が公開をされているということになっております。

御説明は以上でございます。

【茶園分科会長】

どうもありがとうございました。

ただいまの御説明につきまして、何かございますでしょうか。

よろしいでしょうか。

では、本日の議題全てに関しまして何か御発言等ございますでしょうか。

よろしいでしょうか。

では、ほかに特段ございませんでしたら、本日はこれぐらいにしたいと思います。

最後に、本日御出席いただきました三谷政務官から御挨拶をいただきたいと思います。それでは、三谷政務官、よろしくお願いいたします。

【三谷大臣政務官】

文部科学大臣政務官の三谷英弘です。

本日は、活発な御議論をいただきまして、誠にありがとうございました。

私は常々著作権法に定める許諾権等の著作権があるからこそ、クリエーターによる創作活動やコンテンツビジネスの発展、ひいては文化芸術の振興があるということを様々な機会に説明をさせていただいております。

本日の諮問にありました利用円滑化方策も、単に利用しやすくするというのではなく、その先に適切な対価還元を元手にしたクリエーターの次なる創作活動や文化芸術活動自体のさらなる発展につながるものでなくてはならないと考えています。

その上で、海賊版対策をはじめとする著作権の権利保護方策についても、バランスよく議論を行うことが大切です。

今日の議論の中にありましたけれども、昨年行われました放送のインターネット同時配信等に関する様々な議論からいろいろ私も勉強させていただいております。そういった議論の場にも参加をさせていただいておりますけれども、その当時から言われておりましたいわゆる蓋かぶせについては、法改正をすればそれが解消できるのかといえば、必ずしもそうではないような感じもしましたが、少なくとも前回の法改正の中身については、著作権法制度を起因とする蓋かぶせについては少なくとも対処をしようということで様々な御議論いただきまして、中身については本当にバランスのよい議論ができたと思っておりますし、すばらしい法改正ができたと思っておりますが、果たしてそれで問題提起をされておりました蓋かぶせが本当になくなるのかどうかというのはしっかりとこれからの推移を見守っていきたいと思っておりますし、今後のビジネスの展開もしっかりと拝見させていただきたいと思っております。

いずれにいたしましても、こういう様々なある意味問題がありますが、それに標的をつくって、それを撃ち落とすがごとく、それが目的になってはいけないわけでありまして、ニーズがある、実効性がある、そういった制度をしっかりと目指して法改正の議論を進めていただきたいと思っておりますし、それに向けての精緻な議論、それをしっかりと行っていただきたいと思っております。

本日はまさに様々な観点からの御意見をいただくことができました。大きなテーマであるからこそ、様々な可能性、様々な方策を見据えて、今後の各小委員会においても御審議をいただきたいと思います。

本日はどうもありがとうございました。

【茶園分科会長】

三谷政務官、どうもありがとうございました。

先ほど申しましたとおり、部会及び各小委員会に属すべき委員につきましては、後日お知らせいたしますけれども、各小委員会におきましては、本日の各委員の御意見を踏まえまして検討を行っていただきたいと思っております。

最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いをいたします。

【小倉著作権課長補佐】

次回の著作権分科会につきましては、各小委員会における検討状況等を踏まえつつ改めて日程の調整をさせていただきたいと思っております。

今後ともよろしくお願いいたします。以上です。

【茶園分科会長】

ありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会(第61回)を終了とさせていただきます。本日は活発な御議論どうもありがとうございました。

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