文化審議会著作権分科会国際小委員会(第2回)

日時:
令和4年11月21日(月)
10:00~12:00
場所:
オンライン開催
(3F2特別会議室)

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)国境を越えた海賊版による著作権侵害に対する対応について
    2. (2)その他
  3. 閉会

配布資料一覧

第22期文化審議会著作権分科会 国際小委員会(第2回)

令和4年11月21日

(配信開始)

【上野主査】それでは、定刻になりましたので、ただいまから文化審議会著作権分科会国際小委員会の第2回を開催させていただきます。御多用の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。

本日も新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、基本的に委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して御出席いただいております。皆様におかれましては、恐縮ですけれども、カメラをオンにしていただきますとともに、御発言の際には私から指名させていただきますので、カメラの前で大きく手を挙げていただくか、御自身でミュートを解除して御発言いただければと存じます。

議事に入ります前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容によりますと、特段非公開とするところには及ばないと思われますので、既に傍聴の方には、インターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところでございますけれども、この点、特に御異議ございませんでしょうか。

ありがとうございます。では、本日の議事は公開ということで、傍聴の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。傍聴される方々におきましては、会議の様子を録音・録画することは御遠慮いただいております。また、音声とカメラをオフにしていただくようにお願いいたします。

まず、本日の配付資料の確認を事務局よりお願いいたします。

【加茂下海賊版対策専門官】本日の資料は、議事次第下にあります一覧のとおりでございます。

【上野主査】それでは、議事に入ります。本日の議事は議事次第のとおり、1、2という2点となります。

まず1でございますけれども、「国境を越えた海賊版による著作権侵害に対する対応について」というところでございます。まずは事務局から、資料1「文化庁の海外における著作権保護の推進」について御説明をお願いしたく存じます。お願いいたします。

【加茂下海賊版対策専門官】事務局から失礼いたします。資料1を御覧ください。文化庁の海外における著作権保護の推進のための取組について、簡単に御説明申し上げます。

1ページ目ですけれども、こちらがその取組の全体像をお示ししたものでございます。右肩にありますとおり、本年度予算額、約2億円弱となっております。大きく3つの柱で構成されておりまして、1つ目が著作権制度の整備、2つ目が権利行使強化の支援、3つ目が普及啓発、それぞれ、この3本の柱を基に各種事業を進めております。

1つ目の柱の著作権制度の整備では、国際機関である世界知的所有権機関(WIPO)に信託基金を拠出しまして、WIPOとの協力の下、様々な事業を実施しております。それらの事業を通じて、アジア太平洋地域の途上国における著作権制度の整備や国際条約への加入の促進、それを担う人材の育成を支援しております。

左下の2つ目の柱、権利行使強化の支援では、政府間の覚書に基づく2国間協力事業ですとか、アジア諸国でのトレーニングセミナーの実施、また、ハンドブックの作成といったことを行っております。また本年度、新たに相談窓口を開設しました。

右下、3つ目の柱の普及啓発では、主に東南アジアにおいて著作権保護の推進や違法コンテンツの流通防止に向けた普及啓発活動を行っています。これらの事業を通じまして、国内外の著作権侵害を抑制するとともに、権利者の権利行使の実効力を高めることで、正規流通がさらに促進されることを目指しております。

続いて2ページ、3ページ、4ページ、5ページ、この4つのページにつきましては、それぞれ3つの柱に基づいて、具体的にこれまでどういった事業を実施してきているのか、また、本年度の実施計画をまとめたものでございますので、後ほど御覧いただければと存じます。

6ページ目を御覧ください。ここからが、本年度実施しております事業の主なものでございまして、3点御説明申し上げます。まず6ページですけれども、昨年度の国際小委員会において取りまとめていただきました中間まとめにも言及されているとおり、本年8月末に、海賊版による著作権侵害の相談窓口を開設いたしました。また、それに先駆けてポータルサイトを公開しまして、これまで文化庁で実施してきました事業で得られた情報をまとめて公開しているところでございます。相談窓口の開設から数か月たちましたが、現状としましては、個人クリエーターや中小のコンテンツ企業さんから、例えば、自分の創作物、写真、漫画、イラスト、そういったものを無断で利用されたというような相談が多く、また、海外の事業者が絡むものが多い傾向でございます。この相談窓口につきましては、必要とされるところに情報が届きますよう、引き続き周知に努めてまいりたいと考えております。

次の7ページでございますが、こちらは来月、東南アジア向けに開催するトレーニングセミナーの概要でございます。昨年度の国際小委員会では、海外展開と海賊版に関する2本の中間まとめを取りまとめていただきました。その中で、正規版の流通と海賊版対策は両輪として取り組むことが重要と言及されておりまして、それを受けて、本年度初めてVIPOさんに実施していただく事業でございます。日本のアニメ映画を事例として取り上げ、東南アジアの国・地域において、海賊版対策と正規版の流通をいかにして促進するかを考える内容となっております。東南アジアを対象としたプログラムですけれども、一般に公開しまして、日本からも視聴可能ですので、多くの皆様の御参加をお待ちしております。

続いて8ページでございますが、こちらも来月開催しますトレーニングセミナーの概要です。こちらは、中国・北京で開催いたします。日本コンテンツにとって最大の市場である中国において、毎年、CODAさんに実施していただいている事業でございます。これまでは日本から中国に対して教えるというようなセミナーでしたけれども、中国市場での日本のコンテンツを保護していくことが喫緊の課題となっていることから、本年度から日中双方で学び合うという内容に変更しております。

最後のスライドは、政府で策定しておりますインターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニューです。これまで御説明しました各事業については、主にこの中の、上から4つ目、「国際連携・国際執行の強化」に位置づけられている事業でございますので、参考としてつけました。なお、昨年度の中間まとめについては、本日の資料、参考資料2につけておりますので、適宜御参照いただければと存じます。

駆け足ですが、説明は以上でございます。

【上野主査】どうもありがとうございました。ただいま御説明がございました資料1につきまして、委員の皆様から御質問等ございますでしょうか。特段よろしいでしょうか。

井奈波委員、お願いいたします。

【井奈波委員】今の御発表の6ページについてですが、相談窓口を設けていただきましたことは、非常に積極的な取組だと思っております。この相談窓口への相談内容やどれだけ相談内容があったかなど、今後、取りまとめや発表される御予定があるのでしょうか。どういう相談が寄せられているかという前例はこれから非常に参考になるものだと思いますので、そういった取組があればいいと思いまして、質問させていただきます。

【加茂下海賊版対策専門官】事務局から失礼いたします。井奈波先生、御質問ありがとうございます。年度末をめどに、個人情報の観点を大丈夫なようにして取りまとめをして公表したいと考えております。

【井奈波委員】ありがとうございます。今の時点で、例えば、どのくらいの件数があるかなど、概要はお分かりになるのでしょうか。

【加茂下海賊版対策専門官】件数につきましては、数十件程度でございます。

【井奈波委員】例えば海外、国内の案件などの内訳とかはいかがでしょうか。

【加茂下海賊版対策専門官】今、データのようなものは手元にございませんので、また追って共有させていただきます。

【井奈波委員】ありがとうございます。非常に興味ありますので、よろしくお願いいたします。

【加茂下海賊版対策専門官】ありがとうございます。

【上野主査】ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。では、もし追加の御質問等ございましたら、後ほど意見交換のお時間でも頂戴できるということでございますので、少し議事を進めさせていただきます。

本日は、3名の国内の関係者の方から、国境を越えた海賊行為の現状や課題、その対応などを伺いまして、その後に御議論いただきたいと考えております。

最初に、電気通信大学の渡邉委員、続きまして、一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会の伊東英昭様、最後に一般社団法人ABJ・集英社の伊東敦委員に御発表いただきたいと存じます。

まずは、簡単に趣旨を事務局から御説明いただけますでしょうか。

【加茂下海賊版対策専門官】事務局から失礼します。まず、お一人目、渡邉委員からは、日本コンテンツのインターネット上の海賊版サイトの状況について、最新の調査結果を踏まえた定量分析を御発表いただきます。お二人目、本日、コンピュータソフトウェア著作権協会、ACCSの和田委員が御欠席でございますので、代わって伊東英昭様より御発表いただきます。内容は、ゲーム及びソフトウエアを中心とした侵害状況と、ACCSが取り組まれている侵害対策等についてでございます。3人目、一般社団法人ABJ・集英社の伊東委員からは、出版業界の海賊版サイトの現状や対策等について御発表いただきます。

【上野主査】ありがとうございます。それでは、時間の関係上、恐縮ですけれども、御発表の時間は各20分ということでお願いできればと存じます。それぞれの御発表後に質疑応答の時間を設けたいと思いますけれども、もし時間がありましたら、最後に全体を通しての意見交換の時間を設けたいと思います。

それでは、今日はオンラインということですけれども、渡邉委員から御発表いただきたいと思います。

【渡邉委員】本日はオンラインで失礼いたします。「日本におけるインターネット上の海賊版サイトの定量化と分析」という題で、電気通信大学の渡邉恵理子が発表させていただきます。本調査は、MPA(Motion Picture Association)というアメリカ映画協会から委託を受けて、株式会社Photonic System Solutionsが実施して、電通大の渡邉が監修した調査の結果になります。

まず、発表の概要です。初めに、2022年の海賊版サイトの調査の概要。1月にも一度お話しさせていただいていると思いますが、その更新という形になります。2022年の調査対象の海賊版サイトの特徴と海賊版サイトの訪問数の調査結果。正規サイトの訪問数との比較、海賊版サイトの総訪問数の5年間の推移、最後にまとめというような形で発表させていただきます。

2022年度、今年度の海賊版サイトの動向調査の概要をこちらに示してあります。まず、調査の実施期間は、2022年7月から9月30日までの3か月間調査を行いました。この調査の期間に、翻って調査の対象期間として、2019年7月から2022年7月までの3年間を調査の対象としています。調査対象のコンテンツは、映画、テレビ、アニメ、漫画で音楽は入っておりません。調査対象のサイトタイプは5種類で、ストレージサイト、今後「Host」と呼びますが、P2Pのサイト、リーチサイト、ストリーミングサイト、オンラインリーディングサイトの5種類を調査の対象としています。

調査の手順と方法に関して説明いたします。海賊版サイトのリスト化・抽出。ここが一番大変な作業になるんですが、インターネット上のあらゆるサイトの中から海賊版サイトをリスト化して抽出していきます。こちらは、後に示す7つの方法により抽出しています。

続いて、海賊版サイトを絞り込んで、全ての海賊版サイトを調査するには非常に労力がかかりますので、本調査で対象とする海賊版サイトを決定していきます。

続いて、海賊版サイトの基礎データの収集として、サイト名、URL、サイトタイプ、主なコンテンツタイプ、サイトの状態、サーバーに関する情報を取得して収集しています。サーバーに関する情報は、Netblock Ownerという、ドメインにひもづいているIPアドレスを管理している会社を調査して、後にまとめてあります。

続いて、海賊版サイトの訪問数データの収集ということで、Similar Webというものを使って、月間総訪問数、デバイス別の月間訪問数を調査して、これらの情報を基に、海賊版サイトの傾向を定量的に今年度分析した結果をお伝えいたします。

まず、調査対象とした海賊版サイト、インターネット上から抽出してきた海賊版サイトに関してお伝えいたします。日本からアクセス可能な海賊版サイトを7つの方法で3,695件抽出いたしました。こちら、7つの方法というのは、我々の持っているデータベースや調査報告書のデータやLumenのデータベース、透明性レポート、まとめサイトによるリスト、Similar Webの上位のサイトやグーグルなどの検索によって、全部で3,695のサイトを抽出しました。

続いて、こちらの3,695サイトを、初めのステップで、ポルノや音楽、ゲームなどを除外しています。また、目視でチェックして、著作権侵害サイトではないと思われるもの、また、URLが不明で調査ができないサイトも除外しています。こちらは、You Tubeやニコニコ動画などにも違法コンテンツが挙がってはいる場合もありますが、違法なコンテンツだけがアップロードされているサイトを抽出しているので、そちらのUGCサイトは除外しています。

次のステップで、こちらの3年間の調査の期間中に、月間訪問数が一度でも10万アクセスを超えるサイトを抽出しています。また、海賊版サイトでなくなったサイトを除外しています。これらのファーストステップとセカンドステップを踏んで、3,695サイトを1,090サイトまで絞りました。こちらは、2022年度は昨年よりも223サイト増加して、1,090サイトになっています。同じようなステップで海賊版サイトを抽出していくと、2020年度が731サイト、2021年度が867サイト、2022年度が1,090サイトということで、確実に増加してしまっていることが分かります。

続いて、2022年度調査の海賊版サイトの特徴に関して示します。サイトタイプのアクティブ状況に関してが、こちらに示してあります。1,090サイトのうち、サイト数としてはストリーミングサイトが多く、次にHost、続いてLeech、続いてP2P、続いてオンラインリーディング、数としてはこの内訳になっていました。

こちらの1,090サイトのうち、調査段階でアクティブなサイトは46%、調査段階で閉鎖されていたりエラーでアクセスできないサイトが48%、無関係なサイトや他のドメインにリダイレクトされているのが6%となっています。アクセスできないサイトの割合が、昨年度に比べて5%増加しておりまして、海賊版サイトが様々なドメインを渡り歩いている可能性がこちらの結果からうかがえます。

続いて、2022年の調査対象の海賊版サイトの特徴に関して、サイトタイプ別のコンテンツタイプの内訳を用いて示していきます。こちら、P2P、ストリーミング、オンラインリーディング、Leech、Hostとなっておりますが、P2Pはこちらの水色、青の部分。ストリーミングは、フィルムやテレビ、アニメが多いことが分かります。続いて、ストリーミングもテレビやアニメが多いことが分かります。オンラインリーディングサイトは、全てが漫画となっています。リーチサイトは、フィルム、アニメ、漫画がそれぞれ多くありまして、Hostは分からないものが多くなっています。こちらが、2022年度の調査対象海賊版サイトの特徴の一つとして、海賊版サイトへの総アクセス数に対する上位のサイトの比率を示しています。こちら、結構重要でして、2021年6月のグラフがこちら、2022年、今回の上位サイトの比率がこちらになります。これはどのように見ていくかといいますと、2021年度の海賊版サイトの分布と比較しますと、こちらが上位10サイトの訪問数になりますが、2021年度は上位10サイトで63%を占めていたんですけれども、2022年度だと半数を切って、42%に減っています。上位100サイトの訪問数は、2011年度は93%だったんですけれども、2022年度は87%になっています。これはどういうことかと言いますと、これまでは特定のあるサイトに集中して海賊版が見られていた。上位10サイトで63%のアクセス数があったわけなんですが、それが減っているのは、特定の著作権侵害サイトへのアクセス集中が減少して、生まれては消える多くの海賊版サイトが広く利用されている状況になってきているだろうということが推測されます。

こちらの赤の部分を見ていただきたいんですが、こちらがオンラインリーディング、Leech、Hostなどと色分けされていますが、依然としてオンラインリーディングの比率は高いですが、いろいろな効果があって減少しています。逆に、リーチサイトが若干増加していることが分かります。

続いて、海賊版サイトの特徴として、上位の100の海賊版サイトで使用されているNetblock Ownersの内訳に関してお伝えします。海賊版サイトがどのようなサーバーで成り立っているかを調べるのはとても重要ですが、非常に難しいので、簡単に調べられるドメインにひもづくIPアドレスを管理している会社の数を集計しています。こちらは、海賊版サイトのホスティング会社ではありません。こちらが2019年、2021年、2022年のグラフになっております。青がCloudflareで、オレンジがアザーズ、ほかのNetblock Ownerになっています。依然として50%以上がCDN事業者、コンテンツ・デリバリー・ネットワーク事業者のCloudflareが使われていることが分かります。

次から、海賊版サイトの月間総訪問数の推移に関して示していきます。横軸が時間、縦軸が日本からアクセスされている月間の訪問数になります。こちら、新型コロナウイルス感染症の影響により、外出自粛が勧告されたこの辺り、2020年の4月以降から2021年の10月頃まで海賊版サイトのアクセスは増加して、2022年1月で5.1億でピークとなりました。それ以降は減少傾向が続いています。2021年11月から2022年2月までの間で、日本で最もアクセスの多かった3つのオンラインリーディングサイトが閉鎖されたためであると、こちらの現象は考えられます。

続いて、海賊版サイトの月間総訪問数をサイトタイプ別でグラフ化した資料をお示しします。如実に高いピンクのグラフですけれども、これはオンラインリーディングになっています。オンラインリーディングが増減する一方で、他のサイトタイプ、Leechやストリーミング、P2P及びHostの海賊版の傾向は、調査期間を通じてそれほど変化なく、常にいるという状況になっています。

こちら、デバイス別の評価になります。赤がデスクトップ、青がモバイルになっていますが、モバイルからのアクセスが2020年6月以降急速に増加して、2021年3月以降はデスクトップをこの辺から上回っています。これは、ほとんどのオンラインリーディングサイトがモバイルデバイスから閲覧されているためになります。この傾向は2021年10月ぐらいまで続いて、その後、主要サイトの閉鎖に伴って急激に減少しています。

こちらに、1,000万回以上訪問された海賊版サイトへの訪問数の傾向に関してお示しします。1,000万回以上訪問されたサイトをタイプ別に抽出して、傾向を可視化しました。こちらがP2P、ストリーミング、オンラインリーディング、Leech、Hostになっています。これはどう見るかというと、P2Pはいつもの海賊版サイトがいつもあるなという、ストリーミングもそうなんですが、オンラインリーディングは2020年の初めから増加傾向で、2021年10月から2022年2月にかけて急激に減少しています。また、減少したと思ったら、この辺にぽろぽろぽろぽろ、いろんなサイトが増えているというのが、要するに、生まれては消えて生まれては消えてというのが激しく行われているのが分かります。また、リーチサイトも、実はこちらと同様にいきなり出始めているものがありまして、オンラインリーディングサイトの閉鎖によってアクセス数が増えているのかなと予測されます。

続いて、正規版サイトの訪問数から海賊版サイトを考察することをやってみた結果を示します。海賊版サイトへの訪問数に対する一つの考察として、正規版サイトの訪問数を比較しています。日本で訪問数が多い正規版サイトの上位20サイトの訪問数を調査しています。これらのサイトの訪問数は、リスト化できた正規版サイト、71サイトの約80%を占めています。調査は、漫画サイト及び動画、アニメ、映画、テレビサイト及び、それぞれ10サイトをこちらのようにピックアップしています。アマゾンは、ショッピングサイトの訪問数と区別ができなかったので除外してあります。正規版サイトと海賊版サイトの訪問数の推移に関して示しています。2019年11月頃から正規版サイトのアクセス数は増加してきまして、2020年5月頃から海賊版サイトのアクセス数が増加していまして、1,090の海賊版サイトと20個の正規版サイトの比較にはなりますが、アクセス数は20個の正規版サイトに匹敵している様子がうかがえます。

こちらを動画系と漫画系に分けて考えてみると、こちらが正規版漫画サイトと海賊版漫画サイトの総訪問数の推移になります。正規版のサイトのアクセス数が増えると海賊版はなくなるんじゃないかというような話がよくあるのですが、正規版サイトのアクセス数が増えても海賊版サイトのアクセス数に影響があるということは見受けられなくて、アクセス数が減少せずに、どんどん海賊版が増えてきました。海賊版サイトのアクセス数が増加して、こちらのグラフですと正規版が低迷している様子が分かります。ただし、正規版サイトの視聴者がアプリに流れていることはあり得るかもしれないので、これで何か確実なことが言えるわけではありませんが、海賊版の漫画サイトの訪問数が増加し続けて、11月頃から減少傾向にあります。漫画系の場合は海賊版サイトでも良画質で閲覧できるので、質的な差が生まれにくいことも、海賊版サイトへアクセスが増加してしまう理由の一つと考えられるかと思います。

最後に、日本における海賊版サイトの総アクセス数の5年間の推移に関して示してあります。こちらは、2020年度、2021年度、2022年度の調査結果を統合して、5年間の推移を可視化してあります。こちら、2018年3月、非常に有名になった「漫画村」の話ですが、「漫画村」で3.6億、ピークとなりました。その後に低迷しているように見えています。主要サイトの閉鎖で減少傾向にありましたが、その後、海賊版サイトのアクセスが2020年4月、コロナの後ぐらいに急増して、その後、「漫画村」よりもよっぽど多い形で5.1億でピークになって、様々な御努力によって少し減少しているという状況です。こちらを見ていただくと、それでも4億程度ありますので、いまだに非常に多くのアクセス数になっていることが分かります。

最後にまとめます。2022年の調査においては、日本からの月間アクセス数が1回でも10万を超える海賊版サイトは1,090サイトあって、223サイト増加しました。上位100サイトを調査すると、アクセス集中が減少して、生まれては消える多くの海賊版サイトが分散して利用されている状況が最近のトレンドになっていることが分かります。アクセス数上位の100のネットブロックオーナーを調査すると、50%以上がCloudflareを利用しています。月間総訪問数の推移としては、「漫画村」がピークだった3.6億回のピークの1.4倍がありまして、現状、7月になりますけが、総アクセス数が4億程度ありました。5年間の月間アクセス数の推移を振り返ると、いろいろな事件というか、思い出せるトピックがあったと思いますが、海賊版サイトのアクセス数は増え続けています。海賊版サイトの訪問数、動画は減少傾向で、漫画は増減が見られるものの増加傾向にあります。このように、海賊版サイトはより巧妙化・複雑化して、総アクセス数は増加していることが分かります。

以上で私の発表を終わります。ありがとうございました。

【上野主査】どうもありがとうございました。それでは、ただいまの渡邉委員の御発表につきまして、御質問等いかがでしょうか。御自身でアンミュートしていただいても結構ですので。

【今村委員】今村ですけど、よろしいですか。

【上野主査】今村委員、お願いいたします。

【今村委員】大変詳細なデータの収集と分析をいただきまして、いろいろ疑問は浮かんだんですけども、先生がそれぞれ御説明していただいて解決したので、これといった質問はございません。ただ、やっぱり漫画が一番狙い撃ちされているという印象とか、動画の海賊版の問題は、音楽と同じように克服しつつあるのかなという若干の印象を受けました。漫画の海賊版サイトの訪問数で、スライドの16ページ目に、正規版のサイトの訪問者数も増えているけれども海賊版サイトへの訪問者も増えていて、これも単に海賊版が増えているだけじゃなくて正規版も増えているようなので、オンラインリーディングの漫画のマーケット自体も、この3年間の間に大きくなってきていることも当然背景になっていると見てもよろしいものなんでしょうか。要するに、市場自体が大きくなっているから、訪問者数もそれぞれ増えてきていて、大きくなった中で侵害サイトの訪問者が増えていればまだ救いはあるような気もするので、その点、そうなんだとは思うんですけれども、確認させていただければと思いました。

【渡邉委員】そこは、私の口からはなかなか申し上げられなくて、多分、次のABJの伊東さんがちゃんとしたことをおっしゃってくださるんじゃないかと思います。私のほうでは、あくまでも訪問数の定量的な分析という形で、市場などに関しては分からないところなので、控えさせていただきます。すみません。

【今村委員】分かりました。了解いたしました。

【渡邉委員】予想で言うことができないので。

【上野主査】ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

唐津委員、お願いします。

【唐津委員】発表ありがとうございました。唐津です。私は手続的なことをお伺いしたいんですけれども、一番最初に、リスト化が一番大変というお話をされていて、非常な労力だとは思うんですが、権利行使するにしても何にしても、多分出発点がリスト化になると思いますのでお伺いしたいんですけれども、実際、例えば最初に3,695件を抽出して、それを1,090件に減らすという過程で、AIを利用したりして自動的にできる部分と人力で対応する部分とあったかと思うんですけれども、大体どれくらいの時間というか、手間をかけて、こういった作業をされているのかをお伺いしてもよろしいですか。

【渡邉委員】基本的には人海戦術のパワーのほうが大きいです。作業の中身の詳細を、お伝えできないのですが、人海戦術もAI的な機能もどちらも使っています。海賊版サイト、海賊版サイトではないことを見つける場合も、実際に目視で確認する必要があり、サイト数が1,090サイトありますから作業量はとても多いです。正規で配信しているのかどうかの確認には正規リストとの比較が必要で、そのリストの更新も重要です。そのため、システムだけで解決できるようなことではなく、マンパワーのほうが大きいです。

【唐津委員】ありがとうございます。

【上野主査】ありがとうございました。

森下委員、お手を挙げられましたでしょうか。お願いします。

【森下委員】森下です。渡邉委員、詳細なデータの共有をいただきまして、本当にありがとうございました。大変参考になりまして、勉強になりました。私から質問と、もしかしたらこうしたらいいんじゃないかという提案についてお話をさせていただきたいと思います。

まず、すごく残念だったのは、普通は正規版の流通が増加をすると海賊版が駆逐されていくというのが、映像のサイトでは昔結構あったりしたのですが、漫画の現状だと両方育ってきてしまっているという、すごくいびつな成長が見えるのがとても残念だなと思いました。

私からの提案は、1つは、漫画だけは画像がきれいに出てしまうので、どうしても拡散しやすいということで、質が下がるようなことが、一番最初に出版社が出すところでうまく工夫ができるのであれば、もしかしたら解決になるのかなと思ったのが1点です。

Cloudflareを50%使われていることがあるとデータからお伺いしたのですが、Cloudflareさんに協力要請ができないのかなと思った意見が2つめです。

最後に質問なんですけれども、冒頭のところで、サイトの抽出の数を最終的に今年1,090サイトということで抽出されたとお伺いしたんですが、日本からアクセスできないところは省いていらっしゃるとお伺いしました。これに関してどれぐらい、例えば日本からアクセスできない数がこれの何百倍もあるのか、それとも、例えば中国とかに限って、幾つかのすごく小さい国であるのかという、そこら辺の数量的なことは、お分かりになる範囲で結構ですが、教えていただけますか。お願いします。

【渡邉委員】御質問ありがとうございます。まず、一番初めの漫画に関する画質、それはやはりこちらからは制御できないので、そこは難しいかなと。要するに、海賊版サイトの人たちが運営しているサイトになりますので、そこに我々から手を加えるのは現状だと難しい。それこそサイトブロッキングするとかそういう話になってしまうので、現状だとそういうことは難しいと思います。

2番目のCloudflareの御質問なんですけれども、それはそれこそ伊東さんに聞いたほうがいいかもしれない。いろいろな対策をやられて、分かっているのに何でというところが多分皆さんあるので、そこはやっぱりやっていかなきゃいけないところなんじゃないかなと、御指摘のとおりかと思います。

3番目の日本からアクセスできないところに関してなんですけど、もしかしたら私の言い方が悪かったかもしれなくて、日本からアクセスできないというか、日本からのアクセスの総訪問数を調査していて、日本からアクセスできないサイトというよりは、海賊版サイトは世界からアクセスされているんですけれども、そこの中の日本からのアクセスに限った総訪問数として調査をしておりまして、例えば、人気があるサイトは世界からのアクセス数のほうが多くなったりとか、ほぼほぼ日本語のサイトだからアクセスされてないとかというような形の訪問数で調査していますということで、日本からアクセスできないサイトというわけではないです。

【森下委員】ありがとうございました。私が勘違いしておりました。

【上野主査】どうもありがとうございました。

茶園委員、お願いいたします。

【茶園主査代理】どうもありがとうございました。海賊版サイトがどのようなものであるかをよく分かっておりませんので、お教えいただきたいことがあります。おそらく正規版サイトであれば、利用しようとすれば、そこにアクセスして、登録するとか利用料を払うとかというようなことをすると思うのですけれども、ここで対象にされている海賊版サイトでは、一般にはどのようになっているのでしょうか。そこにアクセスして、コンテンツを見ようとする場合に、登録のような手続が必要とされるのか、そのようなことは何もしなくてもよいのか、また有料とされているのか、あるいは無料で見ることができるのか。そのような点についてお分かりになりましたら、お教えください。

【渡邉委員】茶園先生がおっしゃった全てがあるんですね。全部無料で見れるものもあれば、登録して、海賊版サイトなのにお金を取るようなサイトもありますし、広告収入の、裏側に広告があったりするところもありますし、そういう意味で言うと、考え得る全て、茶園先生が今おっしゃってくださったような海賊版サイトが全てあると思っていただければと思います。

【茶園主査代理】大体の傾向とかはありますか。

【渡邉委員】基本的には、無料で広告収入を得ているというのが、そういうところが多いです。

【茶園主査代理】どうもありがとうございました。

【上野主査】ありがとうございました。それでは、よろしいでしょうか。では、渡邉委員、どうもありがとうございました。

【渡邉委員】ありがとうございました。

【上野主査】続きまして、伊東英昭様に御発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【伊東英昭様】コンピュータソフトウェア著作権協会、ACCSの伊東でございます。本日は発表の機会をいただきまして、ありがとうございます。私からは、ソフトウエアの侵害の状況とACCSによる対策について御説明をさせていただきます。

まず、ソフトウエアはゲームソフト、ビジネスソフトに大別をされますけれども、これらの侵害の類型としましては、海賊版販売、違法アップロード、いずれも共通しているものになります。それから、ゲームソフトに特有の問題としましては、この後御説明いたしますが、セーブデータの改造という問題がございます。また他方で、ビジネスソフトに特有の問題としましては、ビジネスソフトを使用するための指令符号、いわゆるプロダクトキーなどと呼ばれているものや、アカウントの不正流通というものが侵害の態様としては確認されております。

それでは、具体的にゲームソフトの侵害とその対策から御報告をさせていただきたいと思います。まず、ゲームソフトの海賊版、コピー品の流通でございますけれども、こちらは、古くはファミコンですとかアーケードゲーム、こういったものの、いわゆるレトロゲームのコピー品が国外で、主に中国等で製造され、ショッピングサイト、オークション、フリマアプリといったようなところで販売、流通している実態がございます。コピー品の形態としては、記録媒体、円盤にコピーをするというタイプのものもありますけれども、最近非常に多く出ているのが、コンシューマーのゲームを模倣したハード機器などに複製した上で流通をしているタイプのものになります。

具体的には、少し見づらくて恐縮ではございますけれども、正規のコンシューマーゲームの形をした機器の中に、クラシックゲームが500タイトル入っていますという説明がなされているようなものがございます。これは、大手ショッピングサイトの販売の事例でございます。また、同じように、こちらはアーケードゲームでございますけれども、アーケードゲームが1万タイトル内蔵されていて、価格は6万程度ということで販売をされてございます。こうしたレトロゲームの海賊版販売に関しては、集中的な削除という対応を実施しております。

具体的には、大手のショッピングサイトにおいて昨年の5月から9月、それから本年の3月から8月ということで、二度にわたり集中的な削除を実施いたしました。削除の件数としましては、2回の合計で延べ865商品を削除してございます。これ、微妙な型違いですとか色違いも含むものではあるのですけれども、そうしたものを865商品削除することによりまして、先ほど申し上げましたとおり、1つの機器の中に多数のゲームが含まれておりますので、その内蔵されているタイトル数をカウントし、1ゲーム当たり500円から1,000円ぐらいで販売されていることがございますので、それを積算いたしますと、被害の総額、推定されるものとしては、559万掛ける500ということで28億相当、この削除を行ったものに限って言っても、この程度の被害があると推定されております。この削除の取組を行った結果、目立つ出品については一定程度減少したのですけれども、他方で、再出品ですとか、分かりにくい出品も増えておりまして、今後対応を検討していくことにしております。

具体的には、こういった形で、著名なゲームですけれども、ゲームの画像を反転させております。恐らく検索等に引っかからないということだと思うのですが、画像を反転させてみたりですとか、あるいは、こちらはちょっと見づらいんですけれども、機種名、コピー品の機器の機種名があるのですが、この機種名の部分をぼかしてみるといったことをしてみたりですとか、あるいは、どういったゲームが含まれているかということを、ゲームの名称を具体的にせずに、一部ゲームのキャラクターのアイコンなどを用いて暗示をさせるといったことを行っている状況が確認されております。

なお、ゲームのソフトそのものではないのですけれども、最近、このショッピングサイトでは、ゲームの違法なキャラクターグッズを集中的に大量に販売するようなものも確認されておりますので、こちらも越境で流通されていることを確認していますので、今後集中的な対応を進めていくことを考えてございます。

続きまして、違法アップロードのケースでございます。さきの渡邉先生からの発表にもございましたとおり、ゲームについても違法アップロードは確認をされておりまして、先ほどの海賊版のケースではレトロゲームが中心でございますが、アップロードにつきましては、最新のゲームを含むものが、国外のサイバーロッカーを中心に確認されております。その提供の方法としましては、リーチサイトですとか、主にBitTorrentなどのファイル共有ソフトを通じたアップロードが確認されておりまして、可能な場合には削除要請等を実施しております。

その具体的な例でございますが、こちらは5年ほど前に販売されているゲームではあるのですが、こちらがフリーダウンロードということで説明をされている、いわゆるリーチサイトでございます。このタイトル以外も、右側を見ていただくと、ほかのタイトルについてもダウンロードが可能というものでございます。それから、こちらは非常に著名なトレントのトラッカーサイトでございますけれども、複数のトレントファイルがここで掲示をされている状況でございます。

最後に、ゲーム特有の問題としてのセーブデータの改造でございますが、ゲームは御承知のとおり、ある程度プレーをしていきますと、その状態を保存するためのゲームデータ、セーブデータというものがつくられることになります。当然、セーブデータについては改変されてしまうと困るので、メーカー側で技術的に改変できないように処理をしておりますけれども、この技術的な制限なり利用制限手段を回避して改造を施す、そのサービスを行っているものだったり、あるいは改造するためのツールを提供することが問題視されております。特に最近のゲームは、オンラインでやり取りをすることが多くございますので、不正にセーブデータが改造されて、不正な状況で強いユーザーが出てきてしまうと場が白けてしまいますし、ビジネス上も影響があるということで問題視しているものでございます。

これについての対策としては、国内で改造の代行を行っているようなサービス業者だったりツールの販売業者は摘発をしているところでございますけれども、他方で国外の改造を可能とするようなツールの販売などについては継続されてしまっている状況でございます。

一例となりますけれども、こちらは最新のゲームでございますが、全種のアイテムを代行依頼することができますよということで説明をしているものでございます。また、こちらについても、同じく別の最新タイトルのゲームでございますが、真ん中の辺に、パラメーターについて、こういうふうに具体的に改造することができますよと指定をしているものでございます。それから、こちらは国外のSaaSによる提供を行っているツールでございますが、とあるハード機器の改造ツールが約50ドルで販売をしているというものでございます。こちらと同じものについては、国内で販売を行っていた大手の業者については摘発されておりますけれども、国外では変わらずそのサービスが継続されている状況ということで、被害を確認している状況でございます。

続きまして、ビジネスソフトの侵害状況と対策についてでございます。こちら、コピー品の販売についてでございますが、アプリケーションソフトについては、非常に精巧な形のコピー品ディスクが国外で製造されて流通していることを確認しております。他方でOSについては、USBとかDVD-Rといったような比較的分かりやすい形状のものが国内で作られて、それがネットオークションやフリマアプリを通じて流通していることを確認しております。分かりやすいものについては、事業者への削除要請を行ったり、あるいはCIPP、インターネット知的財産権侵害品流通防止協議会という民民の協議会があるのですが、こちらに対する情報提供などを行うといった対策を行ってございます。

そのコピー品の例でございますが、こちらは最新のOSでございますけれども、市販のUSBメモリーに収録、記録して販売をしているタイプのものもございますし、こちらはアプリケーションソフトでございますが、一見すると非常に精巧で本物のように見えますけれども、こちらの製品については該当するエディションの正規のものはないものになりますので、精巧なコピー品が流通していることを確認しております。

実際、こういう精巧なコピー品につきましては、日本国に流入したものについて、それを販売していたという事例について、警察による摘発事例もありますけれども、この後申し上げますとおり、製造元が国外になりますと、根本的な解決になかなか至らず、困っている状況であるということになります。

それから、ビジネスソフトについては、違法アップロードについても確認をされております。ただ、この後申し上げますとおり、ビジネスソフトは、アップロードされているものをダウンロードして直ちに使えるわけではなくて、ビジネスソフトでございますので、使用するために必要な指令符号であるプロダクトキーと呼ばれているものや、あるいはアカウントなども必要となりますので、それらとセットにした形で、プログラムが国外のサーバーだったりウェブサイトにアップロードされていることを確認しております。

こちらも、削除要請先等が判明すれば削除要請等も実施しておりますし、販売されるケースが多いので、販売されている場合には、利用機関に対しての口座の凍結などの実施をしているところでございますが、しかしながら最近ですと、銀行口座等は使用せずに、支払いについてはECサイトのポイントを使って支払ってくださいと。あるいは最近ですと、暗号資産による支払いといったケースも出てきておりますので、この種の対応をされてしまうと、なかなか権利者としてはハードルが上がってしまうことになります。

そして、ビジネスソフトについて特有で、かつ今、最も問題にしているものとして、指令符号やアカウントの不正流通というものがございます。ビジネスソフトは、さきに説明のとおり、使用するためのプロダクトキーやアカウントというものが必要になるのですけれども、どうもこれが国外を中心に不正に発行されて、それが国内に流入して販売されていると。ネットオークションやフリマアプリ、あるいはウェブサイトなどで販売をされているという実態を確認しております。

具体的には、こちらも少し見づらくて恐縮でございますが、最新の統合アプリについてですが、個数89個出品されていて、1個246円で販売されているといったものがございます。次に、具体的にアカウントについては、こちらも最新の統合アプリですが、認証済みのアカウントとして販売されておりまして、これを購入すると、販売者からIDに相当するメールアドレスやパスワードが送付されてくる、そして、プログラムについては正規の入手元を紹介するというような形態が確認されてございます。

アカウントの不正流通については、大手のインターネットオークションさんと協議を重ねた上で、本年の1月と4月にトライアル的に出品の削除を143件実施してございます。もともとアカウントの不正流通については、法的な当てはめについて難しい部分もあると理解しておりまして、不正アクセス的な要素であったり、あるいは購入者が購入したものの使えなくなってしまうといった点から、オークション事業者さんとの間で基準を設けて、トライアル的に削除を実施したものでございます。これまでの数万といったような規模ではありませんけれども、絶対的な数としては決して多くはないかもしれませんが、こうした形で今後も継続して実施をしていくということで考えております。

結果、オークションでのアカウントの出品については一定程度減少したのですけれども、他方で、ショッピングサイトですとか、あるいは、アカウントそのものの流通ではなくて、不正なアカウントを入れ込んだ中古パソコンなどの販売も確認をされております。こちらがショッピングサイトですけれども、アカウントが241円といったような価格で販売されておりましたり、あるいは、こちらは中古パソコンの販売なのですが、アプリケーションソフトのインストールをすることが選択できますよと。恐らくここでは、不正なアカウントが認証されているのではないかと目されているところでございます。

以上、駆け足でございますが、ゲームソフト、ビジネスソフトともに色々な態様の侵害があるということで、ACCSにおいては侵害対策を実施しておりますけれども、その基本的な考え方でございます。図の上になりますけれども、まず侵害について、直前の防止を期するために、実態の確認だったり注意喚起などを行っております。しかしながら、それをしても乗り越えてくるものがございますので、左下になりますけれども、権利行使の支援、直接的には刑事事件による対応であったり、場合によっては権利者による民事の支援というものがここに含まれてまいります。このような形で権利行使に至った場合には、例えば刑事事件であれば広報したりですとか、あるいはキャンペーンを行うことによって普及啓発を行うことで将来的な侵害の防止を行う、この3つのスリーステップスキームというものに基づいて侵害対策を実施しているところでございます。

この活動を行う中で、国外が関与するケースにおいて課題と思われることを何点か述べたいと思います。まず、多くのコンテンツと同様だと思いますが、国外で製造だったり不正に発行された侵害品が国内に流通している状況であります。国内において流通の措置の防止を講じたりですとか、あるいは国内に関係者が浮上した場合に、それについて対応したとしても、やはり根本的な解決につながらないという点を危惧しているところでございます。

2点目として、対象サイトなどに直接連絡しようと思っても、そもそも連絡先を設けてないケースもありますし、また、言語などの問題で困難であるケースも多くあると考えております。

3点目として、国外でのプラットフォームが利用されている場合には、そのプラットフォームに対しての削除要請だったり相談をすることも可能性としてはあるわけですが、その際の必要事項として、例えば権利の疎明の問題だったり、本人確認について、免許証だったりマイナンバーを求められることがあるなど、その範囲ですとか限度がサービスごとに異なることがあって、これが対応を困難にさせているのではないかと考えております。

それから、侵害行為者に対して直接的な権利行使を行う点に関しては、一部権利者においてはそこをクリアしながら対応しているケースもありますけれども、多くの場合は、そもそも民間、権利者ではなかなか特定に至らないことも多いですし、仮に特定できた場合であっても、時間やコストの点からハードルが高くあるだろうと考えております。仮に、その後に事後的な回復のための損害賠償請求等を行おうとした場合でも、算定が各国において異なるといった点があり、総じて見れば、侵害抑制のための対策はやはり困難であると考えてございます。

最後に、政府及び関係省庁に期待することとしまして、私は侵害対策支援の実務を行っておりますので、4点ほど述べさせていただきたいと思います。まず1点目が、対策手法を皆で共有できるような仕組みがあるといいのではないかということです。著作権法はもちろんでございますが、昨今は著作権法以外、例えば商標法や不正競争防止法といったものに基づく対策を講じることがございますので、こういった事例について関係者が情報共有することができれば、コンテンツ全般での対策の強化につながっていくのではないかと考えております。

2点目としましては、各国間、特にプラットフォーム事業者や実務者を念頭に置いておりますが、悪質なサイトなどについて情報共有できる仕組みがあるといいのではないかと考えております。悪質なサイトなどの情報共有ができますと、当事者、諸外国における問題意識について醸成することにもつながると思いますし、実際に国外での対策についてもスムーズにいく可能性があるのではないかと考えております。

3点目としまして、これはこれまでも多く御尽力いただいているところですが、国外の捜査当局に対する侵害行為者の摘発の積極的な働きかけはぜひ行っていただけるとありがたいと考えております。

最後に、やはり実務的な観点からも、時間はかかるかもしれませんが、やはり最後は啓発が一番重要だということで、この点についても引き続き、権利者、権利者団体としても努力していきたいと思いますし、政府等においてもまた引き続き積極的に実施をしていただきたいと考えてございます。

以上、簡単ではございますけれども、発表とさせていただきます。ありがとうございました。

【上野主査】どうもありがとうございました。それでは、ただいまの伊東英昭様の御発表につきまして御質問等、いかがでしょうか。

渕委員、お願いいたします。

【渕委員】伊東様、詳細な報告ありがとうございました。少し状況を教えていただきたいところがございまして、違法にアップロードされている場合に、対象サイトへの直接連絡する手段を見つけるのが困難であるということを最後のおまとめでおっしゃっていただいたと思いますが、レトロゲームの海賊版販売等では、大手ショッピングサイトには連絡がついて、削除要請などをなさっているということでした。また、次のスライドで、違法にアップロードされたものに対しても削除要請等をなさっているということだったのですけれども、これは難しい中でも何とか連絡がついた場合になろうかと思いますが、実際、削除要請等を実施した場合に、それに対する反応と申しますか、きちんと削除はなされている状況にあるのでしょうか。その辺りの相手方の対応はどのような感じでしょうか。よろしくお願いいたします。

【伊東英昭様】御質問いただきまして、ありがとうございます。実務的な感覚から申し上げますと、やはりやっている側も悪いということは当然承知もしておりますし、また、権利者からの通知なり削除要請に基づいて削除されるケースはあまりないというのが実感としてはございます。

【渕委員】そうですか。あまり削除されないという感じなのでしょうか。

【伊東英昭様】はい。こちらから削除要請なり注意喚起をした場合であっても、もちろん個人のユーザーで注意喚起を受けたからやめようかという者もいることはいるのですけれども、どちらかというと、やはり削除要請をしても無視されるケースが多いと感じております。

【渕委員】そうですか。それはなかなか厳しいですね。状況を教えていただき、ありがとうございました。

以上です。

【上野主査】ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

生貝委員、お願いします。

【生貝委員】御説明ありがとうございました。私から2点、今の渕先生のお話と少し重なるかと思うんですけれども、まず1点目として、全体的にゲームでもビジネスソフトでも、やはりショッピングサイトですとか、あるいはオークションサイトなどでの出品が多いといったときに、当然そういったサイト、プラットフォームでは、出品者の身元はある程度把握はしているであろうところ、特にアカウントは当然ある程度固定されていると思うので、繰り返し違法あるいは問題のある出品を行うアカウントを停止するであるとか、あるいは削除するといった対応はどのくらい行われているのかというのが1点目の御質問です。

もう一つは、これは詳細を知りたいというぐらいなんですけれども、配付資料の中だと最後から2番目の「侵害対策支援を行う実務者としての雑感」の2番目のところに、プラットフォーム事業者や実務者における悪質サイト情報共有といったときに、ここのプラットフォーム事業者はどういったタイプのプラットフォームを提供している事業者さんを指しているのかを教えていただければ幸いです。よろしくお願いします。

【伊東英昭様】御質問いただきまして、ありがとうございます。まず1点目でございますけれども、ここは権利者側としては非常に歯がゆく思っているところではあるのですけれども、いわゆるプラットフォーム事業者による本人確認の問題だと理解しておりまして、非常に精緻に、販売者なりアカウントの本人確認を行っているケースもあるとは思うのですが、他方で実務的な感覚で申し上げますと、その本人確認が徹底されているのだろうかという観点で言うと、若干疑問があるケースがございまして、そうすると、なかなかそこに登録されている情報が真正なものではないこともままあると、実務的な感覚としては持っておりますので、そうしますと、本人確認が程度として十分なものであろうかという観点から、再出品などについての防止が必ずうまく機能しているだろうかというと、非常に悩ましいのかなというのがございます。

2点目のプラットフォーム事業者との情報共有という観点の御質問についてでございますが、プラットフォーム、色々なサービスがあると思いますけれども、例えばサーバーの事業者だったりドメインの事業者だったり、広くウェブのサービスを行うプラットフォーム事業者ということを、あくまで雑感ではありますが、念頭にしてございます。

以上です。

【生貝委員】ありがとうございました。特に1点目の販売事業者の本人確認は、多分、著作権侵害以外にも共通することが多い課題かと思いますので、いろいろな議論が進んでいくとよいなと思います。ありがとうございました。

【上野主査】どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょう。

唐津委員、お願いいたします。

【唐津委員】御発表ありがとうございました。ビジネスソフトのプロダクトキーの販売が増えているというお話のところで、こちらに関する法的な当てはめが難しいというお話があって、その中で、不正アクセスですとか、購入者が購入したものを使えなくなるというあたりを根拠に削除を要請しているというお話だったのですが、具体的にプロダクトキーの販売がどういう仕組みで行われているのかをお伺いしてもよろしいでしょうか。

【伊東英昭様】御質問いただきまして、ありがとうございます。プロダクトキーの販売に関しては、ネットオークションですとかフリマアプリ、専用のショッピングサイトなど共通するところではあるのですが、メーカー側が正規の方法で発行したものではなくて、不正に発行されたプロダクトキーというものが、オークションサイトやフリマアプリを通じて販売されているというものなのですけれども、具体的にどういうふうにそこが発行されているのかというのは、これはケース・バイ・ケースということがございますので、流れとしては、主にこちらが把握しているのは、国外などで不正に発行されたものが、メーカー側が認めない不正な流通方法によって販売をされているということでございます。説明になっておりますでしょうか。

【唐津委員】そうしましたら、不正アクセスというのは、不正にプロダクトキーを発行するときに、何らかの形で、例えば、メーカーのデータなどに不正にアクセスしているという、そういった趣旨になるんでしょうか。それとも、不正なプロダクトキーでアクセスすること自体が不正アクセスという……。

【伊東英昭様】失礼いたしました。その意味で申し上げますと、プロダクトキーはプロダクトキーとしての法的な当てはめがあろうかと思うのですが、先ほど申し上げた不正アクセスの助長の要素等については、これはアカウントについてでございまして、先ほど見ていただいたように、アカウントの中身、IDとしては、例えば、メールアドレスだったりパスワードがございますので、これが不正に発行されたアカウント、つまりIDやパスワードを用いてアクセスすることになるので、不正アクセスの要素が出てくるのではないかと判断したものでございます。

【唐津委員】分かりました。ありがとうございます。

【上野主査】どうもありがとうございます。ちょっと確認させていただきます。プロダクトキーは、条文上の「指令符号」に当たるだろうと。これに対して、アカウントのほうが「指令符号」に当たるというのはちょっと難しい可能性がある、そういうご趣旨でしょうか。

【伊東英昭様】はい、おっしゃるとおりです。

【上野主査】ありがとうございます。あと私からも1点お伺いさせていただきたいんですけれども、セーブデータの改造に関しまして、オンラインゲームに関して、セーブデータの改造、あるいは改造ツールの提供、あるいは改造するサービスなどが行われているというお話でした。これを違法とする法的な根拠についてなんですけれども、データ自体は著作物ではないかと思うわけですが、一定の場合には利用制限手段の回避等に当たるとか、あるいは不正競争防止法上の不正行為に当たるとか、さらには同一性保持権の侵害に当たるとか考えられるかと思います。こうした行為が違法であるとするならば、その根拠についてはどのようにお考えでしょうか。

【伊東英昭様】これは事例ごとによる部分はありますけれども、上野先生がおっしゃったように、いずれにも当てはまるケースがあると考えておりますが、典型的に現在摘発されたケースにおいては、不正競争防止法に基づく技術的制限手段の役務提供ということで、根拠を用いて対応しているところでございます。セーブデータそのものは、確かに著作権法上の著作物ではないと考えられますので、そこで不正競争防止法に基づく対応を進めているところでございます。

【上野主査】どうもありがとうございました。ほかによろしいでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。

続きまして、伊東敦委員に御発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【伊東敦委員】今、御紹介にあずかりました伊東です。ここにありますとおり、タイトルはすごいタイトルを、昔、週刊誌編集部にいたので、こんなタイトルをつけてしまいましたけれども、一般社団法人ABJという、出版社やIT通信事業者の皆さんと横断的に組成している海賊版対策の団体で、なおかつ、日常的には集英社という出版社で海賊版に対して向き合っているところがありまして、その両方の観点から皆様に現状と対策と問題点をお伝えしようかと思っております。

9か月前から、特に今年は動きが多くて、かなりいろいろなことが進行しまして、ここに書いてあるいろいろな対策は全て一応、私がそれなりに関わっている対策と御理解いただければと思います。ABJとして関わったケースもあれば、出版社として関わったケースもありますし、あるいはCODAさんやACCSさんの会員でもありますので、CODAさんやACCSさんと一緒にやったケースもございます。

このように非常に対策は進行しまして、先ほどのPSSの渡邉先生からも似たようなデータが提供されていると思いますけれども、特にこれ、出版物だけに関して、それも上位10サイトの動きを合計しているものなので、微妙に渡邉先生のデータと違ってくる部分がありますけれども、それはそういう御理解していただければ。「漫画BANK」という巨大な海賊版サイトと、それに匹敵する超巨大2サイトが閉鎖になりましたので、上位10サイトのアクセス数の合計が2021年秋だと4億あったのが、現状は2億と半減しております。2億にがくっと減って、その後は新興サイトが次々と出現して、2億を超える超えないでもみ合っている状況が続いておりまして、2億減って、それが1億と、どんどん減っていけば、私の仕事もなくなって万々歳だったんですけれども、なかなかそういうわけにはいかない状態が続いております。

これが10月の上位10サイト、墨塗りしてURLとサイト名は消してありますけれども、こういう状態になっておりまして、注目点は2つございまして、まず赤囲みのところ、9月にアクセス数がたった26万しかなかった海賊版サイトが、10月には6,147万アクセスという、正確にまだ定義はしてないんですけれども、1億を超えると超巨大海賊版サイトとして定義していいのかなと個人的には思っておりまして、その1億に近づきそうな勢いで成長しているサイトが1位にいます。2位も、計測不能とありますけれども、ほぼゼロだったものが3,309万ということで、これも本当に1か月で3,000万に伸びてしまうという、そういう海賊版サイトがございまして、4億から2億に減っても油断はできない状況が続いております。

あと、右側の態様のところで、「ベトナム系濃厚」とか「ベトナム系」と書いてありますけれども、ベトナム系と断言しているのは、発信者情報開示請求等々でベトナムからのIPアドレスが大量に出てきたので、ベトナム系と確定していいだろうと。「ベトナム系濃厚」と書いてあるのは、それの関連サイトということで、恐らくベトナム系であろうということで、そう書いておりますけれども、上位10サイトのうち7サイトがベトナム発になっておりまして、3位、4位、5位にいる海賊版サイトに関しても、恐らく中国だったりどこか海外で、我々が確認している限り、日本国内に運営者がいるという痕跡はございません。それは上位10サイトに限ったわけではなくて、一般社団法人ABJで現在確認している海賊版サイトはおよそ1,000あるんですけれども、99%は国外に運営者がいるケースと推定しております。

さっき申し上げたとおり、合計アクセス数が4億から2億に半減したので大成果と本当に皆さんに自慢したいところですが、なかなかそういうわけにはいかなくて、そもそも「漫画村」の最盛期、2018年の3月は月間アクセス1億という異常事態であり、現在、その2倍の2億アクセスという状態になっていまして、要するに異常事態が常態化していると言えます。

あと、さっき申し上げた短期間でアクセス数を激増させるサイトも含め、いろんなサイトが、後で説明しますけど、ドメインホッピングしたりして、新しいサイトになっても、あっという間に1,000万、2,000万、5,000万のアクセス数を稼ぐという状態が続いておりまして、いつアクセス数が爆発的に増加し、2021年の秋を最悪の状態だとすると、その状態に戻ってしまうんじゃないかという危機感を抱えながら、今対策をしている状況になっております。

じゃ、なぜそういう危機感が、単なる感覚じゃなくて理由があるという説明なんですが、問題が山積みしています。ベトナム系に関しては、超巨大2サイトを閉鎖に追い込めましたけれども、残念なことに逮捕者が出ていません。やはり逮捕されて罪に問われない限り、自分も一丁もうけてやろうという連中が後を絶たないということで、ベトナム発の新規サイトがいまだに続々登場しております。

それと、さっきお見せしたとおり、頻繁にドメインが変わっています。上位にいる有力サイトも、本当に頻繁にころころとドメインを変えております。それから、オンラインリーディング型の海賊版サイトに関しては、原則、広告を表示して収益を上げるタイプなんですけれども、そういった海賊版サイトに対して出稿をいとわない海外の広告事業者が本当に多数存在しております。もうければ何でもやってやるというような考え方、あるいは日本のコンテンツ、漫画に対してあまり理解がなくて、漫画、何それ? と感じている広告事業者もいるかもしれません。さらに問題は、昔だとドメインがころころ変わると、何となくうさんくさくて、そのサイトにアクセスしたくないというような海賊版ユーザーが多かったと思うんですが、今はドメインが頻繁に変わることを前提に、あっ、変わった、じゃ、次、どのドメインかな、どのURLかなというのを簡単に見つけて、新サイトにわらわらと群がる海賊版ユーザーが本当に増えてしまいました。この4つの問題で、今後、全体のアクセス数が急増するのではと危機感を持っています。

これは、短期間にドメイン移転、リダイレクトを繰り返す海賊版サイトの実例です。今年の3月の段階で海賊版サイトAというのがあったんですが、そのときは月間アクセスが約1,100万でした。そこから、Bというドメインにリダイレクトして、またAに戻ったり、今度はCという新しいサイトになって、今度またAに戻ってというような感じで、要するに、新しいドメインをつくって、そこにリダイレクトして、その新しいドメインを周知して、次に新しいドメインをつくって、またそれを周知してというようなことを繰り返して、我々の対策を避けるリスクヘッジを行っているのではないかと推測しております。

結果として、2022年11月1日現在、いろいろ新しいサイトをつくって、リダイレクトを繰り返した結果、現在、A、C、D、Fの4サイトが運営中ですが、その合計アクセス数は、彼らのもくろみどおり、1,100万から1,700万に増加しております。先ほど2枚目のスライドで申し上げたとおり、検索エンジンの表示抑制や広告出稿停止やセキュリティーソフト警告、青少年フィルタリングなどは、ドメインで登録して、そのドメインに対して広告を出さないでください、そのドメインを青少年フィルタリングにかけてくださいというように我々は対策を実施しているので、ドメインが変わってしまうと全ての対策は0になってしまうということで、新しいドメインが登場したら一から登録はやり直さなきゃいけない。登録をやり直して、新しい海賊版サイトの名前を協力してくれる皆様にお伝えしますが、即日で反映されることはなくて、どうしても時間がかかったりしますので、対策の空白期間が生じてしまうのが現状になります。今説明したことを、こんな感じでまとめてあります。

あと、ドメインホッピングに対応するユーザー、本当に「漫画村」のときであったり「漫画BANK」のときであったり、その後、「漫画BANK」と一緒に成長したベトナム系2サイトのときはドメインを変更しなかったので、「漫画村」に関しては2回ほど変更しましたけれども、そんなに頻繁には変更しなかったので超巨大サイトに成長したというのが過去の分析です。それは、さっき言ったとおり、頻繁に変更するとちょっと怪しげな海賊版サイトかなと思ったりしちゃうのでアクセス数が集まらないはずなんですけれども、今のユーザーはドメインがころころ変わっても、すぐに見つけて群がり、巨大サイトに成長させてしまいます。この次のスライドでお見せしますけれども、ブログや掲示板やSNS、あるいは検索エンジンを活用したりしているのではないかと思われます。また、サイト運営者も、さっきお見せしたドメインホッピングの例によりますけれども、リダイレクトや複数サイト同時運営というテクニックを使ってリスクヘッジしていて、いろんなグループサイトを周知しているという結果ではないかと思います。

これが、ユーザーが共有しているであろうツイートだったり掲示板の書き込みだったり、あと、検索エンジンに関しても、対策済みの海賊版サイトはドメイン単位で丸ごと表示されないんですけれども、新規の海賊版サイトは、あ海賊版サイトを探しやすいある魔法の単語を入れると、今、その検索結果の上位2つは新規の海賊版サイトが登場しています。今、2サイトほど墨べたで出ていますが、この2サイトは10月の中旬ぐらいから急成長し始めております。やはり検索結果で上位に表示されると、アクセスを集めてしまうという状況になっています。

あと、広告事業者に関しても、本当はこの場で皆さんに、どんなひどい広告が出ているかお見せしたいところですが、わいせつ物に当たるような広告ばっかりですので、お見せできないのが残念ですが、非常に下品な広告が海賊版サイトに表示されています。

2枚目のスライドで、日本国内の広告事業者さんや広告団体さんと協力して、あとCODAさんのお力もいただいて、日本国内の真っ当な企業の広告はメジャーな海賊版サイトには表示されなくなりました。しかし、海賊版サイトの連中は、そういう真っ当な企業さん、広告配信事業者ではなく、海外にいる、確信犯的にもうけてやろうという連中に広告を発注していて、その代表例がスペイン・バルセロナにある、割とヨーロッパでは大きめな広告配信事業者なんですけれども、そういったところから広告をもらっています。27サイトの海賊版サイトに出稿していたこの会社に対して、10月中旬に出版社とCODAさんで要請を送りました。幸いなことに11月頭に、27サイトの海賊版サイトのほぼ全部から広告は表示されなくなりましたけれども、これは単に要請なので、要請を送っても彼らが対応しなかった場合は、恐らくスペインのバルセロナかどこかで、訴訟を提起しなきゃいけない状況だったかと。そもそも要請を送る作業もCODAさんに御負担いただいて、バルセロナの弁護士事務所に要請文をスペイン語で書いてもらったという手間もかかりますし、その要請に従わなかった場合は訴訟を提起しなきゃいけないということで非常に手間がかかります。このスペイン・バルセロナの広告事業者は対応できましたけれども、同様に、複数の海賊版サイトに出稿している海外の広告事業者は複数ありますので、今、それへの対応を検討中です。しかし海賊版サイトがたくさん登場していて、海賊版サイトそのものに対し、頑張ってしらみ潰しにしておりますが、その上、さらに広告事業者までしらみ潰ししなければならないという、そういう状況になっています。広告事業者を潰せばいいじゃんって簡単におっしゃる方が多いんですけれども、その広告事業者も全世界に有象無象たくさんあるので、それを1個1個しらみ潰しにしなきゃいけない状況はなかなか厳しい状況かと思います。

結果、新規サイトに、今、短期間でユーザーが群がり、アクセスが集中してしまうという状況が出現しております。

これが分かりやすくグラフにまとめたものですが、薄いブルーが「漫画BANK」と、閉鎖に追い込んだ超巨大ベトナム系の2サイトの6か月ぐらいのアクセス数の伸びです。薄いブルーのほうは6か月たっても2,000万ぐらいまでしか伸びないという、そんな状況だったんですけれども、昨今のサイトは、本当にもう1か月、2か月で数千万にいってしまうという、急にアクセスを伸ばす状況になっておりまして、我々は本当に危機感を募らせております。

今後の課題ですが、さっき申し上げたとおり、ベトナムでこれは本当に文化庁さんや経産省、総務省、外務省、内閣府など、いろんな省庁の皆さんの協力を得て、その結果、閉鎖に追い込めたのですが、残念ながらまだ運営者の摘発には至っておりません。諦めたわけではなくて進行はしておりますけれども、現時点ではまだ摘発に至っておりません。それから、ドメインが簡単にころころ変えられるということで、本人確認の問題とか、悪質な事業者にドメインを提供するなとか、いろいろとICANN、レジストラ、レジストリ周りに関しては非常に協力できる余地はあるんじゃないかと思っているんですけれども、彼らもインターネットの自由であったり、レジストリ、レジストラは商売ですので、なかなか我々に協力してくれる状況にはなってないので、それをどうやって連携していくかが今、重要課題になっています。

それから、広告事業者は、さっき申し上げたとおり、しらみ潰しには限界があるので、WIPOアラートなど、より実効的なものにしていただくなど枠組みが必要かなと思っています。それから、海賊版ユーザーの啓発、日本だけでなくて、海外に向けてもいろいろ啓発していかなきゃいけない。日本国内の場合、いろんな事業者さんだったり捜査機関に対して、「『鬼滅の刃』が侵害されています、『ONE PIECE』が侵害されています」って集英社が申し上げると、それは大変だと言って非常に協力してくれる状況にはなっています。しかし、海外に関しては、いろんな事業者さんに我々が海賊版サイトで困っていますって言っても、反応は非常に薄いです。ですので、そういった日本のコンテンツが日本にとって非常に大事で、しかも海賊版サイトに蹂躙(じゅうりん)されていることをしっかり海外に向けてもアピールしていく必要があるかと思います。

あと、今までお見せしたサイトに関しては、日本人向けの日本語のデータが載っている海賊版サイトですが、英語版に翻訳されたり、中国語やベトナム語やいろんな各国語の言語に翻訳されている海賊版サイトが多数ありまして、というか、それが8割ぐらい占めております。そういった各国語に翻訳された海賊版サイトへの対応も、今後、漫画の世界進出という意味では非常に重要になってきます。

もちろん、海外における正規版流通の促進もしっかりやっていかなきゃいけないし、日本国内に関しても、コンテンツを買うことに関して冷静な若い読者に対して、いかに漫画を触ってもらうかというような正規版の流通もしっかりやっていく必要はあると考えております。

今、ベトナム対策、本当に皆さんの御協力を得て頑張ってやっておりますが、仮にベトナム対策が成功したとして、次にインドネシアだ、ミャンマーだ、マレーシアだというふうに海賊版サイトの本拠地が別の国に移ったときに、またゼロから現地の警察だったり現地の政府と連携を取って対策を築き上げなきゃいけないことは非常に大変だと思いますので、もうちょっとシステマチックに海外での現地政府や捜査機関との連携がうまくいかないかなと強く望む次第です。

以上が私の発表になりますが、前のお二人のところで幾つか質問が出たので、それに関して一緒に答えさせていただきます。まず、漫画の海賊版に関しては、皆さんがおっしゃっていたとおり、画質は正規版とほぼ遜色がないです。残念ながら、epubデータとかというのは、ちょっと技術の知識がある人だとDRMを解除して画像だけ抜くことは可能ですし、あるいはもっと単純にタブレットやPCで正規版を表示して、スクショを撮ると、要するにほぼ同じクオリティーの画像が撮れますので、正規版と海賊版のクオリティーの差は実質ございません。

さらにたちが悪いことに、さっき海賊版サイト、1,000サイトって申し上げましたけれども、その1,000の運営者が全員、正規版を買って、自分たちでデータをつくっているかというと、例えば『ONE PIECE』100巻とか『こち亀』とか200巻あって、それを全部買っているかというと、そういうわけではなくて、残念ながら、現行ある海賊版サイトからデータを、言葉は悪いですけど、ぶっこ抜くことが簡単にできるので、要するに、ほかの海賊版サイトからデータを持ってきて、簡単に海賊版サイトが運営できるという状況になっております。

そこに絡んでくるのがCDN事業者で、1,000万、2,000万、5,000万という巨大なアクセスをさばくためには、通信回線が非常に太くないと駄目なんですけれども、太い回線を普通にプロバイダーから買うと、多額のお金になっちゃいます。ところが、CloudflareをはじめCDNを使うと、Cloudflareなんか無料で結構なものが使えるので、多数のアクセスを簡単にさばけるようなサイト運営ができます。

そもそも、アニメとか映像の動画の海賊版を配信するためには、非常に太い回線のバックボーンが必要なんですけれども、今申し上げたとおり、漫画の海賊版はデータがそもそも少ないし、なおかつCDNを使うことによって安価に海賊版サイトが運営できて、なおかつ世界的に人気が高いので、漫画を使ってもうけようという連中が海外に多数存在するという状況になっております。

あと、正規版に関して言うと、漫画の紙プラス電子の売上げは、2020年が6,126億円で2021年が6,759億円ということで、10%増となっております。しかし、電子って、もうちょっと前あたりだと、年に15%、20%、30%近く前年比を超える伸びを見せていたので、この10%増は実は伸び悩みじゃないかというのが正直な感想です。2021年、超巨大サイトが跋扈(ばっこ)していたおかげで、ただ読みされた金額、一般社団法人ABJで1兆円という金額を試算しております。実際に売上げが1兆円減ったというつもりはないという意味で、ただ読みされた金額と言っているんですけれども、もし1兆円分ただ読みされたもののうち海賊版サイトがなかったら、もしかすると1割や2割の人は、海賊版で読めないから仕方ないから買うかって思ってくれたとして、じゃ、仮に2割として2,000億円という状況であれば、現状6,759億円という2021年の売上げが2,000億円プラスして9,000億円近い売上げになっていたかもしれないと思うと、海賊版サイトの影響は無視できないかなと思っております。

以上、伊東の発表になります。ありがとうございました。

【上野主査】どうもありがとうございました。それでは、ただいまの伊東敦委員の御発表につきまして、御質問等いかがでしょうか。

須子委員、お願いします。

【須子委員】伊東さん、情報の更新をありがとうございました。先ほど来から、ベトナムの海賊版サイトが非常に深刻なんだというお話がございまして、逮捕者が出てないということも事象面から分析されていましたけれども、なぜベトナムなんでしょうか。そういう海賊版サイトが生まれてしまう、何か特筆すべき土壌があるんでしょうか。

【伊東敦委員】御質問ありがとうございます。あくまで推測なんですが、5年前ぐらいまでは、中国発あるいは日本に来ている中国人留学生グループが、日本の漫画やアニメや音楽のコンテンツを勝手に翻訳したりして非常に悪さをしていて、京都府警さんとかをはじめ、ここにいるACCSの伊東さんと一緒に摘発したりして、中国系に関して言うと、割と抑え込むことができました。そのとき、やっぱり中国人留学生が日本にたくさんやってきていて、日本のコンテンツに慣れ親しんで、これは面白い、じゃ、これでもうかるんじゃないかと、そういう発想、流れで海賊版を運営していたと推測されます。

そこから5年たって、皆様御存じのとおり、ベトナムからは実習生の方がたくさんいらっしゃっていまして、正確な数字は自信ないんですけれども、20万人ぐらいいらっしゃると。東京に住んでいてコンビニに行くと、コンビニの中で、ベトナムからいらっしゃった人たちが頑張って働いている方とか見られると思うんですけれども、恐らく日本にやってきて、日本の漫画やアニメに触れて、これはもうかると、中国と同じ発想で始めたんじゃないかと思われています。

ベトナムでは、日本人向けの海賊版サイトも運営していますけれども、ベトナム国内向けのベトナム語の漫画海賊版サイトも多数ございますし、あと、英語に翻訳された漫画の海賊版サイトもあれば、英語の字幕を入れたアニメの海賊版サイトとかもベトナム発のものが確認されていますので、日本のコンテンツを使って全世界でもうけようという発想に至ったんじゃないかと推測しております。だから、できれば実際に運営者を捕まえていただいて、そのバックグラウンドとかが取調べで分かったりするといいかなとは思っています。

以上です。

【須子委員】ありがとうございます。

【上野主査】ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

森下委員、お願いします。

【森下委員】伊東さん、すごく血のにじむような努力をずっとされてきていて、しかも、ある程度成果が出られたというのは本当にうれしいなと思ってお伺いしていました。先ほどの御質問にもお答えいただきまして、ありがとうございました。画像の件とCDNの件、大変理解できました。

私からはまず、先ほどベトナムのお話があったんですが、日本人の関与はどうなんでしょう、日本人が関与して、そういったこと、悪行を働いているのかということが1つと、あとは海賊版ユーザー、もしくは正規版、全体の漫画の、いわゆるファンの方々は実際は恐らく増えているんだと思うんですけど、海賊版ユーザーの層、例えばもともとは若い人たちだけがすごくアクセスしていて、その人たちが10年ぐらい同じような状況を経ていくと、その方たちもどんどん年を取って、しかも若い人たちもまたそこに参入してきて、増えてきているような状況になっているのかという。海賊版ユーザーの層というか、どういった方々が使われているのかというところまでの分析をされているのかをお伺いしたかったです。よろしくお願いいたします。

【伊東敦委員】ベトナムに関して言うと、もしかすると日本国内に協力者はいるかもしれませんが、それが日本人かどうかというと、さっき申し上げたとおり、ベトナム実習生が関わっている可能性もございます。ただし、現時点では、日本国内に関係者がいるという証拠は、今のところ出ていません。もしかするとベトナム国内で摘発が進むと、その取調べの過程で、日本国内に協力者がいたとかというような情報が出てくるかもしれませんけれども、それは全く未知数になります。

あと、海賊版のユーザーに関して言うと、これも我々、特に一般社団法人ABJの課題なんですが、その課題を解消するために、昨今の状況を踏まえて、海賊版ユーザーの動向調査をやろうとしているので、それが出来次第、皆様にきちんとした御報告はできるとは思います。「漫画村」が登場する以前は、海賊版サイトのユーザーというのは割とPCに詳しくて、ちょっとネットの悪いところとかを探検しちゃおうというような層が多かったように感じます。ところが、「漫画村」とその前に存在した「フリーブックス」というオンラインリーディング型の海賊版サイトが立て続けに登場して、社会問題化した結果、ありとあらゆる層に海賊版の存在が広まってしまい、「漫画村」騒動のときは、テレビの渋谷か何かの街頭インタビューで、「授業中の暇潰しに読んでいました」とかって明るく語る高校生のインタビューとかが出ていたりしたので、中学生、高校生から大人まで海賊版サイトという存在が広まってしまったのが現状の認識です。

さらに、海賊版でただで読めることを中学生、高校生が知ってしまって、なおかつ、今どきの子供たち、YouTubeやTikTokで、コンテンツはただで楽しむという、そういう習慣が非常に強い層ですので、彼らが5年、10年、20年たって、今後、漫画の電子書籍やコミックスなどは買わない、海賊版で読めばいいかというような、そういう消費動向になってしまったら、恐らくいい面白い漫画を生み出す土壌が非常に毀損されるんじゃないかと、これは本当におびえているというか、非常に心配しております。

以上になります。

【森下委員】御説明ありがとうございます。本当にそうだと思います。正規版流通の促進がすごく大事だとおっしゃっていただいて、まとめにもあったんですけれども、先月、フランクフルト・ブックフェアに日本の漫画を、持っていき、ビジネスを行ってまいりました。フランクフルト・ブックフェア自体は、普通は小説とか実用本がメインなんですけれども、漫画の需要はまだまだこれからというのをすごく手応えを感じておりまして、正規版で成約なども幾つかできましたので、これから展開をしていければなと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【上野主査】どうもありがとうございました。

それでは、唐津委員、お願いいたします。

【唐津委員】伊東様、ありがとうございました。私からも2点、ドメインホッピングと啓発に関してお伺いしたいんですけれども、まず1つ、ドメインホッピングに関して、非常に頻繁に発信者は行っているんだけれども、ユーザーはすぐに新ドメインを見つけてしまうというお話がありました。そのときに、例えば探しやすいキーワードで検索をかけるという方法や、あとはツイッターでそういった情報を発信している人がいるというお話があったんですけれども、例えば、検索のほうから、そのキーワードでの検索の制限をかけるというような方向でのお願いは難しいのかですとか、ツイッターで海賊版情報を出す人のアカウントを凍結してもらうという方向では難しいのかという、そういったあたりが1つ目です。

2つ目で、先ほどもちょうど中高生から大人まで非常に広がっているというお話があったんですけれども、今回の委員会の冒頭でも御挨拶のときに触れたように、夏休みにちょうど霞が関こども見学デーというところで、私自身が小学生を相手に著作権のワークショップをするという経験をしまして、小学生というのは、ある意味、ぎりぎりまだ自分でそういった海賊版サイトにアクセスするところまではいかないけれども、インターネットの世界に触れているという段階で、まだ正義感ですとか、これはいいこと悪いことという意味では非常に素直な段階だなと感じました。こういった低年齢層から、それこそ漫画はフリーで楽しむものという認識がまだない低年齢のお子さんたちへの啓発活動は何か考えていらっしゃるのかなというのが2点目の質問です。よろしくお願いします。

【伊東敦委員】まず、ドメインホッピングに関しましては、検索に入れる言葉が、正確に言うと一般名詞なので、グーグルさんとかに対して、その一般名詞で検索して引っかからないようにお願いするのは非常に難しいかと思います。グーグルさんとはもう、二、三年以上、この海賊版サイトを検索に引っかからないように何とかできないかというような交渉を重ねてきて、つい先日、枠組みがまとまって、グーグルさんと出版社の協力及び裁判所の関与によって実行され、悪質な海賊版サイト全体が検索エンジンで検索しても引っかからないようにするという実験がこの10月から始まりましたので、その成果を今見ている状況です。よりアグレッシブにグーグルさんにやっていただきたいような気がするんですけれども、グーグルの本国が結構大変そうで、ジャパンの方にこれ以上頑張れと言うのもなかなか大変な状況かなとは思っております。あと、唐津先生も御存知の福井先生に聞くと、もっと詳しく教えていただけるかもしれないので、聞いていただければと思います。

あと、若年層への啓発ですが、おっしゃるとおり、これは非常に大事かと思っておりまして、今後の課題かとは思っていますけれども、現状、総務省さん系がやっているe-ネットキャラバンというネットリテラシーの講座がありまして、コロナ前だと、年間50万人の小中高の生徒さんと保護者が参加するネットリテラシーの出前講座的なものがあって、3年前かな、総務省さんと交渉して、海賊版サイトへのアクセスは駄目です、危険ですという周知は開始しております。

あと、文化庁さんにも、やっぱり学校現場での著作権教育というのは大事だよねという話をしていて、取りあえず今年8月に、教職員向けの講習会に私、参加させていただいて、海賊版被害の状況を先生方に強く訴えまして、正確な数字は把握してませんが、実際オンラインで参加された方と、その後、アーカイブを視聴した先生方、1万人ぐらいいらっしゃったということなので、その1万人の先生が30人、40人の生徒に海賊版のことを教えてくだされば、30万人、40万人の子供たちに伝わるというようなことを、できれば毎年繰り返していきたいかなと思っております。ですので、唐津先生が参加された夏休みのというようなところにも、パネルを置いたり海賊版の啓発の漫画を置いたりできたらいいかなとは思っております。

以上です。

【唐津委員】どうもありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。

【上野主査】どうもありがとうございました。時間が押してまいりましたけれども、もし全体を通して御意見などございましたら、最後にお出しいただければと思いますけれども、よろしいでしょうか。

茶園先生、お願いいたします。

【茶園主査代理】今の御報告について1点お聞きしたいことがあります。渡邉委員の御報告のところでもあったのですが、あるサイトが急に巨大化するといったお話がありました。複数ある海賊版サイトは、その中でアクセス数の獲得という競争をしていると思うのですけれども、巨大アクセスになるというのは、どのようなことからそうなるのでしょうか。アクセス数を増大させるために、いろいろと工夫をしているといったことがあるのでしょうか。

【伊東敦委員】伊東から説明させていただきます。やっぱりサイトの名前とサイトのURLを過去の有名な海賊版サイトに近いものにすると、検索に引っかかりやすくなったり、あるいは、さっき申し上げたとおり、リダイレクトして新しいサイトにつなげて、それを何度も繰り返して、どんどん新しい海賊版サイトを周知していくとか、既存の人気の海賊版サイトの特定の何作品かを読もうとすると、新しいドメインの新規の海賊版サイトに飛ぶように設定するとか、かなり海賊版サイト運営者側もドメインを変える前提に、新しいドメイン名を周知するようなテクニックを駆使していると我々は見ております。

【茶園主査代理】例えば、簡単に見ることができるとか、見やすいようにするとか、そういう工夫みたいなことが行われているのかなと思ったのですけれども、必ずしもそういうことではないということでしょうか。

【伊東敦委員】見やすいように工夫という意味で言うと、登録とかしないで見られる、お金を払わないで見ることができるのが最大の工夫かと思います。それは、人気の海賊版サイトは当たり前の手口です。ただし、広告表示をたくさん入れ過ぎてもうけに走ると、広告表示がうざいから見たくないというユーザーの声もあるので、広告のさじ加減は収益とのバランスで、海賊版サイトの個性が出るかなとは思ったりしています。

【茶園主査代理】どうもありがとうございました。

【上野主査】どうもありがとうございました。本日は大変活発な御意見をいただきましたので、事務局におかれましては、ただいまいただきました御意見を踏まえまして、国境を越えた海賊版による著作権侵害に対する対応について御検討いただければと存じます。

その他、全体を通しまして特段ございませんようでしたら、本日はこれぐらいにいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

では、最後に事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【加茂下海賊版対策専門官】本日はありがとうございました。次回の本小委員会につきましては、年明け、1月13日10時からの開催を予定しております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

【上野主査】それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会国際小委員会の第2回を終了とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。

――――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動