文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第2回)

日時:令和4年12月21日(水)

10:00~12:00

場所:オンライン開催

議事

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)デジタルプラットフォームサービスにおけるクリエイターへの対価還元に関する調査中間報告(電子書籍)
    • (2)分野横断権利情報データベースに関する研究会報告書について
    • (3)その他
  3. 閉会

配布資料

資料1
分野横断権利情報データベースに関する研究会 報告書 概要(456KB)
資料2
分野横断権利情報データベースに関する研究会 報告書(3.5MB)

議事内容

【末吉主査】  それでは、定刻を過ぎましたので、ただいまから文化審議会著作権分科会基本政策小委員会第2回を開催いたします。

本日は御多忙の中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。

本日は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。皆様におかれましては、ビデオをオンにしていただくとともに、御発言いただく際には、自分でミュートを解除いただきまして御発言をいただくか、事務局でミュートを解除いたしますので、ビデオの前で大きく手を挙げてください。

議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照しますと、特段非公開とするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方々にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところですが、特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉主査】  では、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方々にはそのまま傍聴いただくことといたします。

なお、本日は、中川委員が途中で御退席、今子委員及び岸委員は途中から御参加される予定であります。

次に、事務局から配付資料の確認をお願いします。

【木南流通推進室長補佐】  先ほど吉村委員からも御連絡をいただきまして、途中で御退席をされる予定でございます。

それでは、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第を御覧ください。

配付資料としましては、議事次第のとおり、資料1及び2、これらに加えて、表紙右上に赤字で「投影のみ」と記載がある本年度実施している調査研究に関する資料が1点でございます。

以上でございます。

【末吉主査】  最後に事務局から紹介のありました資料につきましては、調査研究を委託している三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社様から、調査途上での御報告であるため、投影のみの取扱いを要請いただいております。

この要請を受け、ウェブ会議とそのライブ配信の画面上投影することとし、文化庁ホームページには掲載しておりません。御承知おきいただくとともに、お取扱いには御注意をいただけるようお願い申し上げます。

それでは、議事に入ります。本日の議事は、議事次第のとおり、(1)、(2)の2点となります。早速、議事1のデジタルプラットフォームサービスにおけるクリエイターへの対価還元に関する調査中間報告(電子書籍)に入りたいと思います。

こちらは前回検討の進め方として確認したとおり、音楽以外の分野として、電子書籍や映像分野における対価還元の実態を把握するため、その調査研究を文化庁から三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社に委託しています。

本日は、調査途上での報告ではありますが、一定の進捗が得られている電子書籍分野について、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の萩原様に御発表いただきます。

それでは、準備が整いましたらば、よろしくお願いいたします。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(萩原様)】  皆様、こんにちは。今御紹介あずかりました三菱UFJリサーチ&コンサルティングの萩原と申します。デジタルプラットフォームサービスにおけるクリエイターへの対価還元に関する調査の中間報告させていただきたいと思います。

それでは、お時間も限られていると思いますので、早速ですが、内容のほうを御紹介させていただきたいと思います。

調査のタイトルとしては、繰り返しになりますが、「デジタルプラットフォームサービスにおけるクリエイターへの対価還元に関する調査」、こちらまだ最終的な報告ではないのですが、現状知り得る限りのところについて御紹介できたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

では、調査の背景につきましては、先ほど座長から御説明あったと思いますが、令和3年に文化審議会における諮問、こちらにおいて、デジタルプラットフォームサービスの流通・利用が国内外に多様化する中で、クリエイターの皆様に適切な対価還元ができているのかという観点から調査したほうがよいのではないかということで、昨年度はとりわけデジタルプラットフォームサービスに顕著な移行が見られるとされている音楽分野を対象に調査されていました。本年度については、とりわけ市場規模が伸びているのではないかと思われる電子書籍と映像、こちらの2分野について調査を進めているところでございます。こちらの実態をちゃんと把握することによって、今後の著作権政策に反映していくというところを目的としているというところでございます。

本調査のスケジュールですが、ざっくり御説明しますと2つのテーマ、電子書籍、映像とございますので、まずは電子書籍のほうを年内にあらかた調べて本日の発表に向けて準備を進めてきたところでございます。

調査方法は、有識者、割と俯瞰的に把握されているかなということで業界団体の方々、こちらを割と手厚めに調査をしつつも、あと個別の事業者の中でも特徴的な企業にお伺いすることで全体像を把握してきたところでございます。年明け以降、映像分野についても調べてまいりたいと考えております。本日の発表は電子書籍を中心に御紹介できたらと考えております。

まず6ページ目、こちらでは、まず電子書籍の市場について改めて確認ということでさせていただいております。冒頭、市場規模が伸びているというお話をさせていただきましたが、紙の書籍の市場に対して、2015年時点ではおおよそ1割程度ぐらいだった電子書籍の市場ですが、2021年には4,662億円と、約3倍まで成長しています。

出版業界全体で見ると、2018年頃まで市場規模は縮小していたのですが、主に電子書籍が牽引するような形で出版市場全体が伸びてきているといったところです。

後ほど、次のページでも御紹介しますが、外資系ではAmazon KindleやApple Booksとか、内資でもhonto、KOBOなど、いろんなサービスが展開されているところでございます。

書籍単位で見ていくと、都度課金のサービスもかなり多いのですけれども、サブスクリプションモデルもあります。例えば、Kindle Unlimitedみたいな定価読み放題みたいなものから、雑誌とかで楽天マガジンはじめ、様々な雑誌系のアプリで都度課金のほかに定額配信のビジネスモデルもございます。あと、漫画アプリのように都度課金に広告収入を組み合わせたものも見られるところです。

こういったいろんなサービスがある中で、この電子書籍市場のうちのかなり高い割合、9割が電子コミックが占めているというところについても御留意いただいて、後ろの調査結果も見ていただければ大変幸いでございます。

補足ですが、音楽分野とはまたちょっと違う特徴としては、電子書籍市場は、外資、内資を含めてかなり様々な電子書籍のストアやアプリが存在しているのというのも一つ特徴かなと考えております。

さらには、これはユーザーに対して使ったことあるかという、利用しているアプリがどれかというようなアンケート調査結果をみると、いわゆる内資系・外資系のサービスがあるほか、その内訳も出版社が運営されているものからサードパーティーの電子書籍アプリまでかなりたくさんあります。簡単に言うとプレーヤーが多いというところも御留意いただきながら後段見ていただけると大変ありがたいかなと思っております。このため、契約形態も多様となっており、後段ではどういうパターンがあるのかということも含めていろいろ御紹介できたらと思っています。

8ページ目のスライドです。まず全体的な取引構造について御紹介させていただいた後に、一つ事例をお示ししながら、どのような料率でやられているのかということも御紹介できたらと考えております。ただし、補足させていただきますと、我が国の場合は、紙の書籍における商流、流通については、いわゆる再販価格維持制度というところで、いわゆる出版社が書店での価格を指定できるという仕組みになっておるところですけれども、電子書籍についてはそのような制度がありません。その点はかなり特徴なのかなと思っています。

それだけが要因だということには必ずしも言い切れないのですが、紙の書籍は物が実際あるものですから、それで取引方法というところがある程度固定化されているのかもしれません。他方、アプリになるとかなり様々な販売方法があるというところが旧来の書籍の流通方法と電子書籍の大きな違いだと考えているところでございます。

あともう一つ留意点としましては、料率についてコメントされるのは当然のことながら、再販価格維持制度がある、なしにかかわらず、かなり多くの方々はあまりお話しいただけません。後段で御紹介させていただく料率のお話についてはあくまでも一例だということは十分御留意していただいた上で、お話聞いていただければ大変幸いだなと思っています。

もう一つの留意点としては、著作者、出版社と雑誌も書籍も同じ図で表現していますが、まず文藝書、漫画、こちらについての著作権者は、多くの場合は著者。雑誌については、出版社が著者については原稿料をお支払いして、権利は出版社のほうに移転しているというところについては、こちらも併せて御留意いただければと考えています。

では、すいません、前置き長くなりましたが、上から資料を紹介しますと、紙の書籍については、著作者の方が出版社の方と出版契約を行って、その後、印刷された物になった書籍が取次を介して書店に運ばれて読者に届くと。基本的にはこういう形になっているところです。電子書籍の流通方法は①として、紙の書籍をある程度なぞらえた形で、著作者の方が出版社に電子書籍をお納めした後に電子取次と言われている方々にお渡しして、いわゆる電子書店を通じて読者に読んでいただくというケースがあります。結構①と②の間というのもとても曖昧なのですけれども、②として電子取次を介さずに出版社の方々が実際電子書店とのやり取り、やり取りというか、そちらも管理するという形で電子書店に直接お納めするケースもあります。

また、先ほど、①と②の境界線が曖昧かもしれないと申し上げたところとしましては、実際のところ、電子取次がかなり多様な動きがされています。例えばなのですけれども、電子書店のシステムも含めて電子書店にお納めして、電子書店の方々はいわゆるブランドかぶせて、それで読者の方々に電子書籍を読んでいただいているというケースもございます。

そう考えると、結構電子取次の在り方、かなり多様なので、①と②についてはかなり境界線が微妙なのではないかと申し上げたのはそういったところがございます。

続きまして、③は出版社自体が電子書籍書店を経営しているケースということで、イメージとしては漫画アプリみたいなものをイメージしています。これは、例えば出版社が運営されている漫画アプリ、有名なところでいうとジャンプ+とかがあります。逆に、電子書店から参入されて、その電子書店が編集部門を持っているケースもございます。

④は、著者ご自身が実際に電子書籍のファイルを作って、直接電子書店でお売りして読者にお届けするといったようなものになっています。たとえば、Kindleデジタルパブリッシングのようなものを想定しています。

④の亜種みたいな形では、例えば芸能プロダクションなどの法人が写真集など自ら編集して、電子書店で直接販売しているというケースもあるということは伺っています。この辺りもある意味④の一部として位置づけているところでございます。

続きまして、①~④の取引構造について、ちょっと一部繰り返しになりますが、簡単に御紹介できたらと考えています。①は、紙の書籍に類似したケースということで、出版社、取次、電子書店が全て介在するパターンということになっています。

文藝書の書籍資料については、漫画のような専門ストアがないので、こういったケースが採用されていることが多いといったことと、雑誌についても、おおよその場合は電子取次を通じて電子書店で販売することがほとんどと伺っておるところです。

②は、取次がないというケースになります。①との境界が曖昧だなんていうところを申し上げましたが、電子取次が電子書店のシステムを電子書店に対し行っているというケースもありますというところです。また、電子取次がグループ内に出版社を持っていて、結構自社内グループでの取引というのもあるという話も伺っておるところです。なかなか取次というところがあるのかないのかという考え方は、結構インタビューしていても、ここら辺の考え方はという話もいただいているところです。

取次の有無についていろいろ申し上げているところですが、緩衝機能として取次が結構担っていただいているということもあります。他方で、著作権使用料は、出版社に対する入金額で著作者の方々に一定料率お支払いしているケースが多いので、取次の有無で、出版社に入る入金額が変わってくるところでございますので、取次がどのような位置づけで参加されているかはとても重要なのかなと認識しているところでございます。

続きまして、③のように漫画アプリなどを想定した出版社自身が電子書店を運営しているというケースです。

繰り返しになりますが、出版社自体が電子書店を運営しているケースもあれば、電子書籍アプリということで参入した以降に、いわゆる編集部門を設けて、作品を集めているだけではなくて、著者の方々から作品を納めていただくものとなります。そして、場合によっては独占販売のような契約で著者に作品を納めているケースもあります。

特にサードパーティーのアプリで顕著なようですが、こういったアプリを通じて人気になった漫画が実際ドラマ化され、メディア化に積極的なアプリもあるみたいです。こういったドラマ化などの2次利用という形で、利用料という形で著者に還元されているというルートもあるというご紹介となります。

新規で出てきたアプリの方々もこういった努力もありますが、一番下の矢印、永年編集部を持っている出版社の方々は、やはり漫画家のみなさんを育成していくというノウハウがかなり蓄積されているので、漫画アプリを新たな新人漫画家の発掘という位置づけにされている会社もあります。

④のケースは、著者自身が電子書店と直接契約して販売しているケース、いわゆるセルフパブリッシングということで、例えば代表的なものですと、Kindleダイレクト・パブリッシングみたいなところがあります。

他方で、全体的には我が国の場合は米国などと比べてそんなに多くないという御意見が有識者や業界団体の方々からもいただいています。この背景としては、一応今回の調査では対象外としていますが、日本の場合は、「小説家になろう」みたいな、投稿できるサイトがいろいろあります。こういったところは、著者は執筆するだけでよいのですが、いわゆるセルフパブリッシングは、電子書籍自体も自ら対応しなければならないということで、出版スキルも求められます。投稿サイトが存在していることもいろんなサイトがあるというところが一つ要因となっているのではないかという御意見をいただいておるところでございます。

また、①~④以外にもアプリストアとの関係性についても整理しています。今回、プラットフォーマーということで御案内させていただいていますが、プラットフォーマーと呼んだときに、いわゆる電子書店もあれば、アプリストアもプラットフォーマーとして考えられます。

お伺いしていると、特にストア型と言われている都度課金して電子書籍を買うようなものというものについては、アプリ内の決済がない場合も多く、ブラウザを介して購入します。この場合にはアプリの料率、アプリストアの料率というのは影響を受けません。

一方で、漫画アプリのように、アプリの中でコインなどを買って、それを使って漫画を読むといったものもございます。こういったものは、アプリ内決済が多く採用されていますので、アプリストアに一定程度の料率が払われます。

当然のことながら、アプリストアの料率が変わると直接的に収入に影響してくるといったところになっていますので、プラットフォーマーとしては、アプリストアが関与しない場合と関与する場合の両方あると思っていただければと思います。

ただ、ストア型でアプリ内決裁を利用していない方のお話も聞いてみると、やはりユーザーの動線の観点から見ると、アプリ内での決済というのが本来望ましいのですが、料率が高いということもあって導入できていないというお話も伺っています。

全体的な構造についてご紹介させていただいたのですけれども、実際のところ、著者の方々から見て、あるいは権利者、雑誌でいうと出版社の方々から見てどういう傾向があるのかというところも簡単に御紹介できたらと思っています。

上から文藝書等ということで見ていきますと、料率等など、いわゆる経済的条件は当然のことながら契約書に明記されています。出版業界については、長らく厳格な書面を用意するという文化はなかったようですが、最近では出版権の設定を目的として、原則契約書が取り交わされておりますと聞いております。

また、漫画について見ていくと、これも同様に料率等の経済的条件は契約書に明記されています。ただ、出版社を通じて流通するようなケースは契約がかなりしっかりされていることに対して、漫画アプリは新規参入の方々もかなりいらっしゃるので、契約の在り方には非常にばらつきがあるそうです。たとえば、日本書籍出版協会が出されているひな形というのを適切に使っている場合もあれば、ネットにあるような契約書をそのまま利用したのではないかと疑われるようなものもあり、著者に対して提供先を明確に伝えられてないというケースもあるようで、ケースによって契約内容のばらつきがあります。望ましくないケースとしては、いわゆる基本契約みたいなものと、あと個別契約みたいなものの2本立ててやられるケースにおいて、基本契約だけあって個別契約みたいなものとか、金銭面は別途協議しか書かれてないというケースもあると伺っています。

雑誌は、先ほど申し上げたとおり、出版社の方々が著作権を有しています。通常、ライター・カメラマン・モデル事務所の方々との契約は、電子書籍化する場合についての報酬を含んだ形で設定されることが多く、雑誌で用いられた素材で、別冊を作るまたは書籍化するといったケースでは、都度契約をして、そのときに別途対価が発生しています。

次に、契約締結後に関する契約の履行状況ということで、対価の算定根拠になるような販売実績などの定期的な説明状況については、いわゆる最初印税が印刷物を基準に計算されるので、販売部数というのは紙の書籍の場合については必ずしも著者に伝達されないことが多いです。

そういったことに対して、電子書籍の場合は、少なくとも電子書店から出版者には売上げと支払通知がセットで行われていますよというお話を伺っています。

長期間にわたって売れ続けることもあるので、販売額が一定水準ごとに通知を行うといったような取決めをされているケースもあります。

また、2つ目としては、販売実績に応じた契約変更の有無はないようです。このイメージとしては、例えば、特定の部数まで著作権使用料の8%であるけれども、一定部数から10%、12%みたいな変更があるのかという御質問をさせていただいたところ、こちらについては一般的には行われていないということでした。蛇足的なお話をすると、紙の書籍の時代からも、翻訳本は出版部数に応じて料率が変わっていく契約となっているという話は伺っているところでございます。

また、契約に伴う付帯条項の実態ということで、セール時やプロモーションの取扱いということで、例えばアプリの中でトップページに表示することなど、陳列する場所についての通知はあるかどうかについてお伺いしたところ、基本的にはそういったものは、全体的な仕組みについての御説明はあるけれども、基本的にはどういうふうに陳列するかは都度説明があるものではないということでした。

また、電子書店の割引の扱いについては、事前に通知が行われるかは、電子書店や出版社との間の関係性によって結構扱いが異なるということで、事例に通知される場合もあれば、通知がないという場合もあるそうです。

このあたりも電子書店と出版社との関係性によるところで、電子書店が勝手にやったんだから書店のほうで割引額を補填し、通常通りの入金額にするケースもあれば、後で通知があったが著者や出版社に後で通知されるケースもあると伺っています。ただし、後者のケースは、金額に関してはトラブルになる可能性があるので、事前に通知するケースが多いという話を伺っています。

漫画は、原則正しく行われているそうですが、業界団体に相談があったケースを見ると、単行本化する予定だったんだけど、それが流れてしまったとか、あとは連絡なく勝手に無料のプロモーションがされていたとか、無料配信される巻が、事前に約束した数と合わなかったという話があると伺っているところでございます。

雑誌は、出版社が管理されているということで、お話を聞いた限りでは、原則編集長が知らないことは起こらないということで、セール時のプロモーションについては事前に通知があるという話を伺っております。

対価還元における料率ということで、あくまでも一例として御紹介させていただきます。一応背景的なお話もいろいろ書かせていただいています。やはり電子書籍ができていく背景としては、先ほどの図でいうと①に該当するのですけれども、紙の書籍と電子書籍が似たような流通をしているという傾向もかなり見られます。

この背景としては、出版社がかなりリードして電子書籍市場を切り開いてきたというところが背景にあるのではないかという御意見をいただいています。

2000年前後の電子書籍の黎明期には、販売価格を電子書籍が売れるように引き下げつつ、かつ著者に対する報酬を販売額に対してやや引き上げるような対応がとられたと伺っています。

その後、公正取引委員会から再販価格維持制度は電子書籍には対応されないことや、Amazonとかが日本の電子書籍市場に入ってきたということも踏まえて出版社への入金額ベースになったと聞いております。料率は一例ですが、出版社への入金額のうちの25%あるいは20%とかが著者への報酬額という事例が見られているところでございます。

著作権使用料は、出版社に入金された金額をベースに算出しているというケースが多いようですが、著作権使用料を電子書店での販売額の一定パーセントを著者に還元するというふうに設定されている会社は現在でもあると同時に伺っているところでございます。

また、固定報酬のケースや、定額配信での還元されているのかも補足的にご説明したいと思います。

まず、固定報酬が採用されているケースを見ると、もともと紙の時代から雑誌への連載とか広告については基本的には原稿料みたいな形で固定報酬となっており、電子書籍の場合にも適用させているケースがあります。

また、紙の時代から単行本等でも固定報酬の場合があります。例えば、官能小説とか、一部ジャンルや、駆け出しの作家に対して固定報酬としているケースもあるとのことでした。また、通常重版される作家に対して、著作権使用料の料率が通常より高いケースもあるようで、出版社と著者の関係性も影響します。

また、専門書と学術書については、料率設定とかは一般書籍と同じケースもあれば、固定報酬というケースもあるようです。これは、専業作家の方々だと著作権使用料の収入だけで生活されていることになりますが、専門書と学術書はそうではないということもあるようで、買取りで著作権使用料を設定されているのではないかと御意見いただいているところでした。

また、電子コミック、こちらについてはかなり多様性があるということで、いわゆる巻売りというような1冊で売っているものは、多くの場合は比例報酬となりますが、話売りと言われている1話だけ購入できるケースについては、原稿料と同様の整理となっており、固定報酬でお支払いしているケースがあります。ただし、話売りの場合にも、比例報酬となっている場合もあるという話を伺っていて、どっちが多いのかについては結構分からないという御意見もいただいているところでございます。

あえて固定報酬としているという理由についてお伺いすると、やはり原稿料は著者にとって収益の見込みが立つので、漫画家のみなさんの生活費という意味では、比例報酬を待って売上高に応じてお支払いするよりも固定報酬のほうがよいのではないかと判断されているのかと考えているというお話を伺っているところでございます。

 また、続きまして、定額配信における報酬ということで、ユーザーから支払額のうち一定割合をお支払いしているケースと、いわゆる1回読まれるとページ数に応じてお金が払われているというケースがあるようです。前者については、例えば一定額に対してユーザーが読まれた分量に応じて案分して、それを足し上げて出版社に還元しているということでした。

独占販売における報酬においては、出版社への入金額の25%という事例を紹介しましたが、この料率が35%以上のケースもあるということでした。独占販売で興味深いケースとしては、漫画アプリの会社と専属契約をして固定報酬でお支払いしているケースもあるという話も伺っています。

他方で、先行販売での料率の変更をしている事例はないようでした。

前回の本会議において、ユーザーに対するメリット、デメリットも整理してほしいという意見があったと伺っていますので、簡単ですけれど、御紹介させていただきます。

改めてですが、電子書籍については、公衆送信権を根拠に、ユーザーは閲覧する権利をもらっていることになります。ユーザーは紙の書籍と異なり、紛失することや、破けてしまった、濡れてしまったということがなく、仮に誤って消してしまったとしてももう1回ダウンロードすることができる点がメリットとなります。また、文字が拡大できる、保存スペースが不要、デバイスがあれば読め、自動読み上げ、いわゆるTTSと呼ばれているものを使って読書バリアフリーを確保できるところがメリットだという意見が挙げられました。

他方で、デメリットということでページをめくる感覚が得られないことや、デバイスのバッテリーが必要であることのご意見のほか、紙の書籍と異なって所有はしていないというところが大きな違いとなっています。

また、前回の本会議において、電子書籍は所有していないため、ユーザーが契約している電子書籍が撤退したりする場合において、ユーザーにリスクがあるのではないかというご意見いただいたとも聞いております。ただし、今のところ、撤退した事例はあっても、現時点では不利益を被ったというケースは明確にはないと聞いております。

電子書籍事業から撤退したとしても、他社が事業継承して別サービスへ継続するケースもあります。冒頭申し上げたとおり、電子取次が電子書店にシステムを納品して、ブランドは電子書店のものをかぶせているというケースもあるので、そういった場合については、電子取次が取引のある他のサービスや、直接運営するような形で引き継ぐというケースもあると伺っています。

また、撤退したときに、その会社のほかの事業で運営をしているポイントで還元するというケースもあります。なかなか全ての電子書店においてこういったポイントで還元するというやり方もできないのかもしれません。

電子書店事業が他社に引継がれることによるユーザーへの不利益は明確には確認できませんでした。他方で、権利者側では少しだけ意見がありました。契約書面上の内容は変わらないのですけれども、譲渡されたことによって、今までの契約内容の運用方法や商慣習が微妙に変わってしまってやりにくくなったなどのお話はちらほらとは聞かれているところです。

時間がかなり過ぎてしまったので簡単ですが、一応電子図書館についても簡単に御紹介しますと、電子図書館については、対価還元方式ということについては、借用回数に比例して報酬を支払うケースもあれば、数冊分の単価で電子図書館に販売して、同時接続数みたいなところを、例えば3冊分だったら3冊をキャップにして貸し出すというようなケースもあるということでした。後者のケースのほうが多いという話を伺っています。

その他補足的なところですが、全体的なところの書籍と電子書籍の構造の違いということで取引のパターンがかなりいろいろあるというところの違いもありましたが、従来の紙の出版については、取次が間に、書店に対して取次は1社ずつというケースが多いというところでした。電子書店については、電子取次1社で電子書店がカバーされているということで、ちょっとその辺りがたすき掛けになっているという話は伺っています。

また、紙の場合でも電子書籍の場合でも、取次が書店と出版社の間のバランスを取ってくれていて、料率とかの交渉などをスムーズにやれているのもやっぱり取次が間に入っているからではないかという話は多くの方々からお伺いしていたところでございます。

また、こちらも補足となるのですけれども、紙の書店の場合については、在庫になった場合、出版社が保管コストや裁断コストなどのリスクを負ったりしますが、電子書店の場合はそういったリスクは比較的少ないのではないかという意見もありました。もちろん作るときに一定のお金をかけて電子書籍も作られるのですが、比較的そういったリスクが違うのではないかという話や、仮に落丁みたいなものが、落丁は同じなのかもしれませんが、電子書店側から御意見いただいたこととしては、EPUB3という規格をクリアできると、いわゆるあとはビューワー、いわゆる電子書店側で表示するという形になります。電子書籍のもととなるソース、書籍のデータについては、各書店で使われている同じものをどの書店でも使っていかなければならず、これがうまく表示されないときに、ビューワーがシステム上で工夫をしなきゃいけないというところが結構負担感あるという意見もお伺いしているところでございます。

ちょっと最後は補足的な内容となり、まとまりとしては良くなかったのですが、弊社からの発表は以上となります。長時間にわたりましてお時間いただきまして、ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました、萩原様。

ちょっと冒頭、末吉のほうから1点だけ確認なんですが、我々、著作権者に対する対価の還元ということを考えているんですけれども、まだ分析中だとは思うんですが、現段階で電子書籍における対価の還元という観点から特に問題があるという御指摘があればちょっと一言伺いたいんですが、いかがでしょう。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(萩原様)】  おそらく音楽分野のときはそのあたりについて強いニュアンスであったのかなと推測しています。我々もそういった問題がないのかということについては、いろんな角度からお伺いしたところです。

ただ、簡単に結論を申し上げるとそんなにないというような結果になっています。その辺りについては2つ要因が挙げられていて、やはり取次というところがうまく緩衝材になって、割と適切な市場となっているのではないか。もちろん料率はかなり会社によって設定の方法とか考え方は大分違うみたいなのですけれども、それでも問題があるようなケースというのはあまり明確には見られていないというところが1つです。

あとは、やっぱり出版業界が割とリードして電子書籍市場がつくられてきたというところもあります。割と出版のときの文化というところも引き継がれているので、割と紙も電子もそんなに変わらないのではないかという意見もありました。もちろん多少のポジショントークはゼロではないとは思いますが、著者系の団体、出版社系の団体、電子書店系の団体、いろんな主体に、お伺いしましたが、その辺りについての不満は明確には見られなかったと確認しておるところでございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。

それでは、ただいまの御発表につきまして、皆様のほうから御質問、御意見いかがでございましょうか。

菅委員、どうぞ。

【菅委員】  ありがとうございます。簡単に自己紹介いたしますと、電子書籍黎明期からずっとやっておりまして、自分でEPUBをつくってKindleにもまくということをやっておりますプロの作家でございます。ちょっと修正と、あと、追加の情報を流します。御存じのことがありましたら申し訳ありません。

まず、昨日の段階でいただいた資料なのですが、8ページですね。8ページ見ていただいて、この図式に当てはまらないものも最近は出てきております。例えば、私がEPUBを作ります。EPUBのまままくということができるようになっております。今、電子書店というのが全て入っていますけども、電子データを決済できる、例えばSquareさんとか、あるんですね。そういう場合には、私がホームページなりECサイト、自分のECサイトで、これをダウンロードしてください、販売額は幾らです、決済はSquareですというふうにできるようになっていますので、必ずしも電子書店が入らない場合があります。

今まで電子データというのは嫌われていまして、物がないものを売るというのは、多分そういう決済のところも嫌がることでしたので、例えばいまだにヤマトフィナンシャルなどは電子データは販売できないことになっているんですけども、Squareが出てきて、いろいろ出てきて、今は電子データを自分で売る。これは漫画家さんも同じです。電子データとしてのものを自分で手売りをすることができるようになっています。

そしてもう一つ、pixivなどなんですけども、pixivを電子書店と言っていいのかどうか分からないんですが、pixivとか、そういうファンサイトですね、そこでは投げ銭をした。それは著者に向かって投げ銭をしたお礼として著作物をもらえるという制度もあって、大変ややこしいことになっております。

これの問題点としては、自分は投げ銭をした。著者にとっての寄附であると思っているのに、その対価として著作物をもらうことによって、著作物がタダとかおまけであるように思われてしまうところが大変危ないところなんですね。

そういう事例もあるということを2点加えさせていただきます。

それで、ちょっと早口で行きますが、15ページになります。15ページ、これ、出版の告知になるんですけども、出版社、いろんな出版社がありまして、一生懸命、一生懸命割引やりますと言って毎回言ってくださるありがたいところと、割引やります、いいですよねと言って、2回目以降通知をしてこないところがあって、ツイッターで見て、おお、私のが今半額なのかとびっくりすることもたまにあります。

一応出版界で言われているのは、半額は申し出を受けたほうがいい、著者としては。なぜかというと、半額にすると、こちらの実入りは、例えば25もらっているときでも、その半分になってしまうわけですけども、全体の総量が半額になりますので、同じ25でも半額になるんですが、3倍売れるよと言われます。一応今の状況、作家の中でのコンセンサスとしては、半額にすると3倍売れるというのが売り文句として言われています。私の場合見ても大体そうなのかなとは思いますね。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(萩原様)】  有益な情報いただきまして、ありがとうございます。すいません、1つ目のデータを直接お売りするというのは、いわゆる電子書店を使っていないところを入れてしまうと無限にあるなと思います。

【菅委員】  ああ、なるほど。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(萩原様)】  報告書の中では、今御紹介いただいたような事例であるpixiv FANBOXや「小説家になろう」を入れるか入れないかなど。

【菅委員】  「なろう」はお金かからないのでね。無料なのでね。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(萩原様)】  それもありますし、pixiv FANBOXみたいな有償のサービスも、調査の射程に入れるのかすごく悩みました。しかし、一応今回は1回外して電子書店が含まれるものを中心に整理しています。報告書の中では触れていきたいと考えています。ありがとうございます。

【菅委員】  特にnoteなどは複雑になっていて、単体売りとマガジン売りとできるようになっていますので、そこら辺もちょっと書くだけ書いていただければと思いました。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(萩原様)】  そうですよね。ありがとうございます。

【菅委員】  あと、18ページになります。18ページのほうですけども、電子書籍のデメリットのほうに2つありまして、例えばこれ、Kindleのアンリミテッドでお金を毎月払っていて読んでいた。ところが、アンリミテッドをやめた場合、普通のKindleしか読めなくなって、アンリミテッド分が全て消えるというふうに事例を受けています。だから、これは消えないと言い切れない。アンリミテッドをやめると読めなくなる。もう手元にないわけですから、読めなくなるという事例があります。

それと、もう一つ、デメリットなんですけども、電子書籍は検索性がとても低いです。例えば新人賞の選考なんかをやっていると、書いてあることを、あれこれ前に書いてあったっけってばーっとめくるということができないですね。紙の手触りというところに入るかもしれませんけど、検索性が今思いのほか低いというのが私の実感ですので、何か御参考になればと思います。

それで、どんどん行きます。ごめんなさい。19ページです。これ、電子図書館。私は電子図書館は利用したことがありません。けども、作家側としての危惧といいましょうかね、それなんですけども、電子書籍が閲覧権である以上、買っても手元にないことですよね。先ほどのように、サービス、サ終してしまうとか、アンリミテッドやめたら手に入らなくなるというのは、本当は手元にないわけですよ。電子書籍も閲覧権としては同じことなのです。片方は、例えばKindleを買って、お金を出して、閲覧権で読む。電子図書館の場合は無料で読むということになってしまって、これ、同じ閲覧権ということになると、差異がなくなるなと思っています。今までだと、本を買って、手元にある本、そして無料で図書館で借りる本というふうに物質的なマテリアルとしての本というのがあったんですけども、同じ閲覧権で同じ土俵に来ていいものかどうかというのは私はちょっと危惧はしております。

それと20ページです。20ページ、先ほどEPUBの修正の話がありました。EPUBからKindleの場合はMOBIというものに変換をするんですか、EPUBを例えば、誤植があった、EPUB直した、変換出した、バージョン2にしました。これ、アマゾンは告知してくれません。自分で追跡もできませんので、ちょっとアマゾン困ったなあとは思っています。

だから、せっかく新しい情報だよという電子書籍の売りなのに、プラットフォームが告知をしてくれないという状況はいかがなものかと思っています。

それと、最後に、まだアマゾンが来ない黎明期、まだhontoさんとかもなかった頃、パピレスさんがあったぐらいの頃なんですけども、私たちのグループで15人ぐらいでe-NOVELSというのを立ち上げていました。井上夢人さんとか我孫子武丸さんがやっていらした。それはあまりにも電子というのに、25%ひどいんじゃないかということで、自分でそれこそPDF出版をして、それを直接プラットフォームを自分たちで持って、買っていただいて、50%取るという夢のようなところでした。でも、もちろんプラットフォームとして力が弱いので、あっという間になくなってしまったわけですけども、そういうことをやってもやはり宣伝力として個人は負けてしまいます。50%本当は取りたいねというのが作家の夢ではあるんですが、サーバーの維持費、宣伝費とかあって、今、半分取ってしまうのは仕方がないかなと思っています。

今、お名前は出されなかったのかどうか分かりませんけど、今までずっと口にしていた超超超超大手のところは、取次を介さないで自分たちで売って、自分たちで直接出版社と交渉をするということをしていて、そこが今一番力を持っているので、取次さんも大変だなというのが私の考えです。

長々ありがとうございました。何かありましたらまた、また御質問くださいませ。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(萩原様)】  ありがとうございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

坂井委員、どうぞ。

【坂井委員】  ユーザー観点のところも含めて、御報告ありがとうございました。

私のほうから2点ほど質問があって、まず1点目が、プロの物書きをやっている方から聞いたケースなんですけれども、多分具体的には、先ほどの5類型でいうと1番か2番のケースだと思うんですけれども、いわゆる昔の出版契約って、電子出版の契約をしていないんだけど、出版社が勝手に電子書店に出しちゃったという話を聞きました。それ自体は完全に公衆送信、違反なので、それはそれで問題だとは思うし、この件についてはお金で解決したとは聞いているんですけれども、その方いわく、実際に電子書店に対してこれ僕の本なので取り下げてくれということをお願いしたんですけれども、全く取り合ってくれなかったと。電子書店としては、出版社と契約を結んでいるので出版社のほうから言ってくれないとどうしようもないんだということを言われたと聞いています。

そういったような事例というのは今回の調査の中で聞かれているのかどうかというところと、あと、ひな形とかで、出版社とか取次が間に入っちゃっている場合、クリエイターから電子書店に対してアプローチするというのは現実的に不可能なのか、難しいのかというようなところをちょっと教えてほしいのが1点です。

それから、今、菅委員のほうからあった、連絡なく勝手にプロモーションというところなんですけれども、そういうのって例えば間に取次とか出版社がいるときに、そこまで情報いっているのか、それとも、本当に電子書店のほうで独断でやってしまうのかという、もし何かそこら辺分かれば教えていただきたいなと思いました。お願いいたします。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(萩原様)】  ありがとうございます。3つに分けて回答したいと思います。1つ目の勝手に公衆送信をされてしまったという事例については、権利者団体の方々に、どちらかというと著者とか個人クリエイターに近い方々にお話聞いていても、その事例は出されていなかったかなと思います。

最近は、書協の出版契約書のひな形も中小出版社でも利用されているということもありますし、大手は大手でしっかりした出版契約書をつくっていますし、そういう関係性があるのかなと思っています。

電子出版オンリーの漫画の分野においては新規参入の方々が近年増えており、まだ慣れていないか、ノウハウが蓄積されてないという観点から、契約書が曖昧だったりとか、そういう問題があるという話は今回調査で聞かれたところでございます。

2つ目のクリエイターが直接お売りするというところについては、先ほど菅委員から御紹介いただいたような「小説家になろう」も、pixiv FANBOXとかもどこまで入れるのかという問題もあります。いろんな多様なツールがある中で、Kindleデジタルパブリッシングみたいなところが一番ツールとしては大きいみたいな、そういった仕組みが比較的多いところなのかなと伺っています。

3つ目のプロモーションは、書店側としては読んでいただくという観点から、例えば一定巻数、例えば10巻以上増えた場合は、1巻分無料にしませんかみたいな営業を書店側からするケースもあります。他方で、出版社側から、この作者売り出していきたいので、割引や無料で一定巻数読めるようにしてくれないかというところは相互にあるということです。では、どっちが多いのかというと、出版社のほうが提案が多いのではないかと言われているケースもありました。ただし、これはヒアリング先の意見に依存しているところがあり、一概にどっちが多いとは言い切れません。ただ、出版社と書店の間では一定程度情報共有はしっかりされているのかなと思います。

著者の方々に対しても、原則お伝えいただいているのかなと思ってはいますが、この辺りは、出版社と著者の方々との関係性であったり、出版社の慣習にもよると思いますので、ちょっとここら辺はかなり一般化するのが難しいなと思いながらお伺いしていたところでございます。

【坂井委員】  ありがとうございます。今まとめていただいた2つ目のところなんですけれども、クリエイターが直接電子書店に対してアプローチできないのかという、①とか②のケースって、取次とか出版社が入っているケースで、クリエイターからしたら著作権者じゃなわけじゃないですか。ところが、その権利を正当に行使しようとしても行使ができないというのは、それについては、ひな形で手当てされているのか、分からないですけど、例えば電子書店がやっているような管理画面にログインできると。例えばですよ。例えばそこでできるとか、何かそんなようにひな型上は、著作権者が出版社に対して意思表示できないようにされていて、泣き寝入りするか、裁判するしかないような感じになっちゃっているのかという、ちょっとそこだけお伺いします。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(萩原様)】  失礼いたしました。なるほど、最初の質問のご趣旨を理解しました。

ちょっとひな形は、確認して、報告書のほうでも反映してまいりたいと思っています。

ただ、通常の場合、Amazon Kindleみたいなところとか電子書店にデータを登録するというのは、著者が直接やるというのは本調査ではあまり聞いたことがないです。登録するのは出版社や電子書籍制作者と言われている方々が多いと伺っております。

このため、電子書店を売っているログイン画面のところに著者の方がアプローチするケースはちょっと今のところ聞いたことはないかなと思っています。

【坂井委員】  ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございます。菅委員からもう1回ですか。どうぞ。

【菅委員】  今の点、補足いたします。Kindleの場合は、この本はあなたの本ですかという問いかけのページがあります。出版社が例えばアンソロジーとかで、たくさんの人が書いた出版物があって、それに自分が出している。けれども、自分の著作の一覧には出てこない場合には、この本はあなたの本ですかというようなページでわざわざ聞いてくれて、登録することが著者はできます。ただし、それは、例えば菅浩江の間に菅1文字出版社が空白を入れたとか、そういう検索性の悪いときにも出てきますので、あまり信用はなりません。

反対に取下げはできないです。取下げするときには、本当に取次に言ってください、出版社に言ってくださいになってしまうので、取下げはできませんが、登録はできます。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょう。

よろしいですか。

皆様、御発言いろいろありがとうございました。事務局におかれましては、ただいまいただきました御意見等を踏まえまして、本調査の今後の対応について、今後御検討いただければと思います。よろしくお願いします。

萩原様、どうもありがとうございました。

それでは、次に参ります。次に議事2、分野横断権利情報データベースに関する研究会報告書についてに入りたいと思います。前回報告のあったとおり、昨年12月の中間まとめ、「DX時代に対応した『簡素で一元的な権利処理方策と対価還元』及び『著作権制度・政策の普及啓発・教育』について」で提言がなされた分野横断権利情報データベースについて、文化庁において研究会を設置、検討が進められてきました。この度その結果が取りまとめられましたので、事務局より報告をお願いいたします。

【渡邉著作物流通推進室長】  著作権課の渡邉でございます。主査から先ほどお話しいただいたとおり、前回の小委員会でこうした研究会を開催していることについて御報告させていただきましたけれども、今回報告書が取りまとまりましたので、その内容について御説明をさせていただければと思います。

本日、資料といたしましては、2種類、報告書の概要と報告書の本体、御用意しておりますけれども、以降、報告書の本体に沿いまして順次御説明させていただければと思っております。資料の2でございます。

まず1ページ目でありますけれども、「はじめに」ということで、昨年12月の本小委員会の議論をベースにして著作権分科会において取りまとめられました中間まとめにおきまして、分野横断権利情報データベース等の活用といった方向性が提言されたところでございます。

この研究会では、その構築に向けまして、過去、現在の関連する取組を踏まえつつ、技術的な点も含めまして、今後の在り方について検討を行ってきたというものでございます。

2ページ目をお願いいたします。権利情報の集約化に向けた検討の経緯と今回の契機ということでございまして、過去の取組も振り返っておりますけれども、まず最初の段にありますように、権利情報の集約化に向けた一番先行的な取組としては、1993年の著作権審議会マルチメディア小委員会の提言を受けまして、J-CIS構想と、その研究まで遡るということでございます。

このJ-CIS構想につきましては、一定の成果は見られたところでございますけれども、当時、データベースを持たない管理事業者なども多く、この構想自体の実現には至らなかったということでございます。

この辺りの経緯につきましては、この報告書の17ページ以降、参考資料としてまとめてございますので、御参考いただければと思います。

3段落目ですが、一方で、音楽分野につきましては、J-CIS構想を受けまして、「Music Forest」といったようなサイトを1999年に開設をしたりですとか、最近、2021年には一般社団法人音楽情報プラットフォーム協議会(MINC)が「音楽権利情報検索ナビ」として公開をしているというような状況がございます。

また次に、出版分野でも、2014年に出版情報登録センター(JPRO)というものが整備をされて、徐々に情報の集約が進んでいるというような状況でございます。

そのほかといたしまして、管理事業者が独自にデータベースを保有していたりでありますとか、あと最近では、授業目的公衆送信補償金の分配業務での活用といったことも視野に入れてデータベースを構築しようとする動きが見られるというような状況かと思いますけれども、分野によってはいまだ書類で情報が管理されているなど、現状、様々あるということでございます。

こうした中ということで、最後の段落でありますけれども、今回の契機といたしましては、やはり来年の通常国会において法改正を目指しております簡素で一元的な権利処理方策の実現に向けて、権利情報を迅速に見つけることができるようにするデータベースということについて、これまでにない意義が付加されて求められることになっていようかと思います。

3ページ目、お願いいたします。また、今回のような分野横断の取組を進めることがきっかけとなって、それぞれの分野での権利情報の集約に関する機運が高まるということも期待しているというように契機を整理しております。

次に、2番目、分野横断権利情報データベースに期待されることということで、目的に当たるようなものを整理しておりますけれども、中間まとめにおきましても、一定今回の構想の目的、書いていただいておりますけれども、改めてそれを整理するならば、2段落目にありますように、まず第1としては、利用者が権利者に関する情報を探す作業を効率化するということ。

そして2点目でありますけれども、現在検討されている簡素で一元的な権利処理方策の新制度につきまして、このデータベースによって、その新制度でありますとか、ないしは現行の裁定制度のプロセスの短縮ができるのではないかということで目的を整理しております。

次に3番目でありますけれども、分野横断権利情報データベースの在り方ということで、分野ごとのデータベースと今回実現しようとするものとの関係性をここで整理を試みております。まず(1)として、分野ごとのデータベースの役割でありますけれども、それぞれの分野の特性とかニーズに応じて各管理事業者等の努力によって発展をしてきているという現状でございます。

4ページ目ですけれども、一方で、そういった正確に権利情報を収集したり整理したりするには、情報の更新などに相応のコストがかかっているということでございます。そしてまた、分野ごとのデータベースのメリットの部分でありますけれども、個人情報等を有することも比較的容易であったりとか、実際の権利処理、対価還元までつなげることができるというのがメリットとして書かせていただいております。

(2)として、分野横断権利情報データベースの在り方というのが、以上の分野ごとのデータベースとの比較においてどうかということでありますけれども、まず一般の利用者にとりましては、社会全体に分野ごとのデータベースのようなものがどういったものが存在しているのかということを把握するというのは非常に難しいということでありますとか、1つのコンテンツに複数の権利が入っているようなものがございますけれども、それぞれのデータベースで探すということは、これも難しい面があるということでございます。

以上のようなことを踏まえますと、分野横断権利情報データベースの在り方としては、分野ごとのデータベースを前提として、それらと連携することにより情報検索が可能となるようなもの、すなわち、メタ検索を行うような分野横断権利情報検索システムのようなものを志向するのが適当ではないかということで、基本的な考え方をここで示しております。

また、このような方式にしますと、構築費用を抑えたりでありますとか、拡張性が高いといったようなメリットもあるということを記載してございます。

次に、4番でありますけれども、検索システムと連携が考えられるデータベースということで、では、どういったところとつながっていくべきものなのかということで、以下4つの分類を示しております。

まず1つが、分野ごとで集約されたデータベースということで、最初のほうに言及いたしました音楽権利情報検索ナビとか出版情報登録センターのデータベースにつきましては、既に相当程度に情報集約がされておって、こうしたものが基盤となる連携先となるのではないかということでございます。

5ページですけれども、2つ目の類型としまして、管理事業者のデータベースということで、そこにある情報というのは非常に権利という観点では信頼性が高いものとなっておりますので、有力な連携先となるのではないかということであります。

次に、3番目が、コンテンツ配信プラットフォーム等のデータベースということで、ネットクリエイターなどに関する情報が相当にこういったプラットフォームに蓄積されておりますけれども、それぞれの事業者のお考えというものもかなり多様であるとは想定されますけれども、こうしたところとの積極的な連携が求められるのではないかということで書かせていただいております。

4番目が、窓口組織・国のデータベースということで、一種自前で情報整理することが必要なものの類型として挙げておりますけれども、このうち3つ挙げております。

1つ目が、現在検討中の簡素で一元的な権利処理方策において、いわゆるオプトアウトの仕組みについて検討されておりますけれども、これについて情報を整理したものとの連携が必要ではないかというのが1つ目で、2つ目が、個人クリエイターに関する権利情報を集約するために、令和3年法改正の対応として、音楽分野につきましては権利情報登録システムというものを文化庁において構築しておりますけれども、これにつきましては、音楽以外の分野の登録についても検討した上で連携をすることが適当であろうということであります。

3つ目が、現行の裁定制度でありますとか、新しい制度の実績についてデータベースで整理をした上で連携することが適当ではないかということでございます。

次のページに、今申し上げました基本的な分野横断権利情報検索システムというものをイメージとしてお示ししているというものになっております。

5番目ですけれども、窓口組織の利用者と探索情報のイメージということで、それぞれどういった方々がいらっしゃるのかというようなことについて、イメージ、具体化をここで図ろうとしているものでございます。

まず(1)窓口組織の利用者のイメージということでありますけれども、2パターンに整理をしております。

まず1つ目としては、継続して反復的に権利処理を行っているような、いわゆるプロフェッショナルな事業者ということでありますけれども、こうした方々はそもそも新制度などによる権利処理を希望して窓口組織に来るということが想定されるということでございます。

2パターン目が、権利処理の経験が少ない個人・事業者というものでありますけれども、こうした方々も権利情報が分からないというような場合であれば、結果としては新制度等の活用が考えられるだろうということでございます。

次のページでありますけれども、さらにこういうあまり慣れてない個人事業者の方におかれましては、そもそもとして、新制度による権利処理の手続でありますとか、その際に、権利処理が必要な法定利用行為が分からないといったような、そんなような場合もあろうかと思います。

その下に注釈をつけておりますけれども、窓口組織における具体的な役割ということにつきましては、別途法制度小委員会の方で議論されております制度化の状況も踏まえつつ、さらに検討する必要があるのではないかということで書かせていただいております。

(2)番で探索する情報のイメージということで3つ挙げておりますけれども、第1には、利用したい著作物が集中管理されているかどうかといったようなことがあろうかと思います。

2点目で、集中管理されていない場合であれば、権利者自身が利用許諾に対する窓口を設けているかどうかであるとか、3点目が、その他、権利者に関する連絡先や著作物の利用の条件が公にされているかと、そういったようなことを探索する情報として挙げております。

その下に具体的に研究会において検討いたしましたユースケースの例を参考として掲載をしております。

次に8ページをお願いいたします。窓口組織の活用フローということで1から6までのフローで整理しておりますけれども、まず1番目として、利用者が問合せ前に、まず権利処理が必要な著作物や法定利用行為を整理するということであるとか、利用したい著作物の作品名、著作物名などをしっかりと把握するというようなことから始まって、2番目でありますけれども、利用者が窓口組織に問合せをすると。3番目に、窓口組織が検索システムを用いて権利情報を検索するということで、このシステムにおいてはその権利情報が表示されるということでございます。

4番目ですけれども、システムの外でも、窓口組織は、一般的な検索の方法などを用いて検索するということもこのプロセスとしては入れております。

5番目ですけれども、窓口組織が検索などで明らかになった権利の情報というものを利用者に対して伝達をするということと、そして必要な権利情報が得られなかった場合などには利用者に新制度などを案内するというようなプロセスでございます。

次の9ページですけれども、そういった情報を窓口から受け取った利用者において権利処理をするということで、権利情報が明らかであれば、著作権等管理事業者等に利用の手続を行うということであり、権利情報が分からなければ窓口組織に対して新制度の利用申請を行うというようなことで書かせていただいております。

下に、以上申し上げました活用のフローというものをイメージとしてお示しをしております。

10ページですけれども、以上申し上げましたような窓口組織とか検索システムの活用について、どれくらい現時点でニーズがあるのかというのを正確に推しはかるというのは非常に難しいところがありますけれども、近似的に参考になるものとして、音楽権利情報検索ナビと現行の裁定制度の実績に係る情報を掲載させていただいているというものでございます。

11ページをお願いいたします。検索システムによる検索に係るデータの項目例として、検索に用いられるような著作物の情報、そして検索により表示をされる権利者に関する情報の現段階では例としてそれぞれ具体的に挙げているというものでございます。詳細は割愛いたしますけれども、(3)番として、このうちコード・IDについての考え方を整理しております。

次のページに、具体的にはなりますけれども、まずシステムにおいて、コード・IDということについては、各分野で通用しているような既存のコード・IDを積極的に活用するというのが基本としてあろうということと、相当するようなものがないところにつきましては、文化庁としてもその充実に向けた取組を促進する必要があるであろうということ。

3点目が、窓口組織・国が独自に整備する情報につきましては、適切なコード・IDを検討する必要があるということ。

4点目は、その他具体的な連携の在り方などにつきましては、引き続き検討を要するというようにしております。

次に8番目で、権利情報検索システムの公開範囲ということでありますけれども、先ほどのフローの説明のところでもありましたように、基本的には検索システムを窓口組織の担当者が探索に活用するということが1つの使い方として想定されますけれども、利用者による直接検索ということにつきましても、この場合、個人情報等の観点から全てを表示するというのが難しい場面というのが考えられるわけでありますけれども、一部そういった情報を限定した上で公開することになるであろうということにつきまして書かせていただいております。

次に、9番目ですけれども、持続的な権利情報検索システムの運用と今後の進め方ということで課題に当たるようなものを整理させていただいておりますけれども、まず(1)権利情報検索システムの運用主体と運営基盤の確立ということで、具体的には13ページ以降になりますけれども、システムを持続的に運用するためには、やはり運用主体と安定的な運営基盤の確立が不可欠であるということで、そのための仕組みを構築する必要があるということで書かせていただいております。

(2)番が分野ごとのデータベースの充実でありますけれども、最初の方で申し上げましたとおり、この仕組み自体、分野ごとのデータベースの充実というものが前提となってまいります。検索システムの具体化を図る中で、各分野の取組を牽引していくことが必要であるということでございます。

(3)番ですけれども、連携するデータベースを保有する団体などとの協力ということで、この取組を進めるに当たってそれぞれのデータベースを保有する団体その他の関係者の理解と協力が不可欠であるということで、関係者が積極的に参画できるように、そういった方々のインセンティブがより大きくなるような仕組みについて検討を行う必要があるということを書いております。

(4)が今後の進め方ということですけれども、14ページ以降になりますけれども、以上のように、様々検討課題あるところでございますけれども、今後分野ごとのデータベースを保有する団体でありますとか、今後整備を考えているような団体と連携をしながら検討を進める必要があるということでございます。

また、3つ目の段落に書いてありますけれども、この取組を速やかに実用化できるように、当面の取組としてまずはできるところから進めていくことが適当ではないかということでありますとか、最後の段落でありますけれども、運用後につきましても、継続的にレビューをできるような仕組みを構築する必要があるということを書いてございます。

15ページは、こういった取組に関する今後の工程表としてまとめさせていただいておりますけれども、今回の検討によって様々検討すべき課題も出てきておりますけれども、来年度の取組といたしましては、これも前回の小委員会において御報告をさせていただきましたけれども、本件に関する調査研究の予算も要求しておるところでございますので、そうした予算も活用しながら、今回の課題の整理も踏まえて取組を進めてまいりたいと考えてございます。

私からは以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。

それでは、皆様から御意見、御質問等をいただきたいと思いますが、いかがでございましょう。

坂井委員、どうぞ。

【坂井委員】  もし皆さんからないようであればちょっと一言だけ。最後にやったのは、優先順位を決めていき、できるところから進めていくというのは非常に大事だと思います。本当にこれ、すごく野心的な取組で、全部最初からやろうと思ったら大変だと思うんですが、ただ、一番難しいとこは多分UGCのところだと思っていて、要件定義、再来年かな、にやると言っている前に、ひとつそこら辺の仕組みだけは考えた上で、データの充実というところはなかなか難しいと思いますが、そういった意味で要件定義の前にはそういうところも考えてほしいなと思いました。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

河野委員、どうぞ。

【河野委員】  ありがとうございます。実は私はこの報告を取りまとめた研究会にも参加させていただいておりまして、議論の経過は自分としては十分分かっていると理解した上で発言させていただきたいと思います。

今回の検討は、多種多様なコンテンツの増加とデジタル化の進展とそれに伴うビジネス構造の複雑化などによって混沌としてしまっている権利処理と対価還元の問題に対して、早く見つけて利活用につなげるためのエコシステムとして、この検索システムの提案に至ったと受け止めております。

細部の制度設計においては今後の検討に委ねるところが多々あるとは思いますけれども、できるところから着手するという記述のとおり、デジタル社会のスピードに乗り遅れないことに配慮して早期に社会実装されることを願っています。

また、これが成功するかどうかは、それぞれのデータベースを保有されている既存の著作権管理事業者の皆さんがどれだけ協力してくださるかにかかっているのではないかと思いますので、関係者の皆様の積極的な関与に期待するとともに、システム構築において生じる技術的な課題などのリスクや費用負担については早めの判断ができるように対応していただきたいと思います。

著作権についてはいまだ国民に十分理解されているとは言えない状況だと思いますけれども、現状と今後のありたい姿をしっかり示して、我が国の知的財産である各種コンテンツが最大限に活用される道筋の一歩として、この検索システムの導入が、いわゆる著作権のコンシェルジュとしての機能を担うことで私たち国民の利便の向上につながってくれればと期待しております。

私からは以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。

ほかにはいかがでございましょう。

仁平委員、どうぞ。

【仁平委員】  すいません、日本ネットクリエイター協会、仁平でございます。今のお話でもありましたとおり、できるところからということを考えたときに、どうしても僕らの場合、使用者というのは誰なのかというところをテレビやラジオというところに限ってしまうとちょっと我々から少し遠い世界なんですが、例えばSNSでのユーザー同士が使用し合うという2次創作の世界というところに絞って考えると、先ほどから出ている例えばpixivさん、ピアトロさん、それとニコニコ・コモンズ、結構いろいろなところで既にデータベースがあって、そのデーターベースを使ってUGCコンテンツを使ってさらに新しいものをつくって、それを例えばニコニコなりユーチューブなり上げて収益化するというモデルが実際今できていたりするところもあります。もちろん不十分なところはたくさんありますが。

なので、そういった意味では、UGCの中である程度出来上がっているというところをさらにもうちょっとブラッシュアップするなりというところからスタートというのも一つ切り口としては面白いのではないかと。私の立場で言っているだけなんですが、御検討をいただければと思います。

私からは以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。

ほかにはいかがですか。

御発言ありませんか。よろしいですか。

どうぞ。

【井上委員】  すいません、井上でございます。1点ちょっとお伺いしたいんですが、15ページの工程表のところを見ますと、最後の中長期を見据えた将来的な方策として、情報そのものを価値化できるような仕組みということが書いてございます。アジャイルにできることから進めていくというのは非常に重要であることは間違いありませんけれども、長期的に見た場合にどんな形でサステナブルな仕組みをつくっていくかということをイメージしながら取り組んでいくということも必要なのかなと思っています。

情報をデータベースという形で集約をするということをしますと、それだけ価値が生まれてきて、何らかの形でうまくサステナブルな仕組みにつなげるような仕組みができるんじゃないかと思うんですが、何か具体的な構想ですとか、具体的とは言いませんけれども、何かそういうことについて伺えれば、お聞かせいただきたいと思います。

【末吉主査】  事務局いかがでしょう。

【渡邉著作物流通推進室長】  ありがとうございます。工程表で中長期というところで情報そのものの価値化というのを挙げておりますけれども、議論の過程でこういったものが挙がってきた経緯で申し上げると、やはりデータベースというものはそもそもコストがかかる、ただ、そういうきれいに情報を大量に蓄積したときに、それ自体を収益化するモデルというのは世の中にはたくさんあって、コストということばかり考えていては本来いけないのだといったような議論があったところから挙げさせていただいておるのですが、ただ、とすぐにはこういうところに行くのは難しかろうということで、具体的なというところで申し上げると、まだ具体的な姿というのは描けていなかったりとか、あまり研究会の中で具体的な収益化のモデルとかを詳しく検討したということではないのですが、そもそもの情報というものの在り方としてこういったものを将来的にはきちんと志向していくべきだということで書かせていただいているというものでございます。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。私の私的なアイデアなんですけど、ヘビーユーザーには何かパッケージをつくって、データを売るわけじゃないんですが、そのパッケージを使うと、非常にさらにスピーディーに権利処理に資するみたいな、そういうものが開発できて、その付加価値が対価に換わって、対価というか、お値段取れると、基盤整備に資するところがあるんじゃないかと個人的には思っております。いかがでございましょう。ありがとうございます。

ほかにいかがでございましょう。

よろしいですか。

御意見いろいろありがとうございました。本日の御意見を踏まえまして、文化庁においては、分野横断権利情報検索システムの具体化に向けた検討を今後適宜進めていただきたいと思います。

そのほか、全体を通じて何か御発言ございますか。

ほかに特段ございませんでしたらば、本日はこのくらいにいたしたいと思います。

最後に事務局から連絡事項がありましたらお願いいたします。

【木南流通推進室長補佐】  本日は活発な御議論ありがとうございました。

次回の本小委員会につきましては、日程調整の上、改めて事務局より御連絡いたします。今後ともよろしくお願いいたします。

【末吉主査】  ありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会基本政策小委員会第2回を終了させていただきます。

本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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