文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第8回)

日時:令和4年12月26日(月)

10:00~12:00

場所:オンライン開催

議事

1開会

2議事

  • (1)文化審議会著作権分科会法制度小委員会 報告書(案)について
  • (2)その他

3閉会

配布資料

資料1
文化審議会著作権分科会法制度小委員会 報告書(案)【概要】(1.1MB)
資料2
文化審議会著作権分科会法制度小委員会 報告書(案)(1MB)
参考資料1
第22期文化審議会著作権分科会法制度小委員会委員名簿(109KB)

議事内容

【茶園主査】それでは、ただいまから文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第8回)を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

本日は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。皆様におかれましては、ビデオをオンにしていただき、御発言されるとき以外はミュートに設定をお願いいたします。

議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと特段非公開とするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところですけれども、この点、特に御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園主査】ありがとうございます。では、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。本日の配付資料ですが、議事次第の配付資料一覧にあるとおりでございます。

以上です。

【茶園主査】それでは、議事に入ります。本日の議事は、議事次第のとおり、(1)、(2)の2点となります。

早速、議事(1)の「文化審議会著作権分科会法制度小委員会 報告書(案)について」に入りたいと思います。

本件につきましては、前回の報告書(素案)についての御審議を踏まえまして、事務局にて修正、追記を行いました報告書(案)を基に議論することにいたします。

資料2の報告書(案)本文について、項目ごとに事務局より説明していただき、その後に意見交換を行いたいと思います。

早速、事務局より2ページからの「1.はじめに」及び「2.簡素で一元的な権利処理と対価還元の制度化について」、これらについて御説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。本日は、今、主査からもありましたように、資料2、報告書(案)の資料を用いまして、御説明していきたいと思います。主に前回からの変更点を中心に、強調しながら説明させていただきます。

まず、資料2の下にページ番号が振ってあります。資料2の2ページを御覧ください。「はじめに」のところでございます。こちらにつきましては、文化審議会において昨年7月から文部科学大臣の諮問を受け、審議を開始したこと、また、近年のコンテンツをめぐる背景、また、政府におけるその後の検討状況、このような経緯についてまとめております。

資料の3ページ目を御覧ください。2.簡素で一元的な権利処理方策と対価還元についてです。1ポツの経緯はこちらの簡素で一元的な権利処理方策の議論につきまして、1つ目の白丸にありますように、これまで昨年は8回にわたって基本政策小委員会において審議を行ってきたこと、また、その後、2ポツに進みますが、簡素で一元的な権利処理と対価還元の方向性ということで、令和3年12月の著作権分科会における中間まとめにおいて示された方向性を示しております。こちらが3ページ目と4ページにまたがっております。

4ページ目を御覧ください。こちらの4ページ目の図1のところでございますが、先ほどの中間まとめを踏まえまして、今年度の知財計画等に記された、権利処理・データベースイメージという図を一部修正して、法制度小委員会(第1回)の際にお配りした資料となります。今般は、その下の白丸のところで補足しておりますが、今年度の法制度小委員会においては、この方向性に基づき、留意点を踏まえながら、法制的課題について検討を行ってきた。また検討に当たっては、第3回から第5回までに関係者・団体等からのヒアリングを実施し、その意見や内容を踏まえた議論を行ったという旨、記載しております。

次の5ページ目を御覧ください。5ページ目、3.簡素で一元的な権利処理方策と対価還元の制度化イメージでございます。(1)の制度化の骨子でございます。1つ目の丸のところは大きく前回からも変更ございませんが、著作物等の利用の可否や条件に関する著作権者等の「意思」が確認できない、「意思の表示」がされていない著作物等について、一定の手続を経て使用料相当額を支払うことにより、著作権者等からの申出があるまでの間の当該著作物等の時限的な利用を認める新しい制度、新制度を創設するというものです。

※にこの時限的な利用の補足説明を行っておりますが、こちらは前回の御議論も踏まえまして、1行目から2行目にわたるところからでございますが、利用期間の上限を設けるとともに、著作権者等からの申出後、直ちに利用を停止するのではなく、申出から利用停止までの一定の期間を確保すると。ただし権利者の利益を不当に害することとなる場合等については、速やかに利用停止することとするということ。

また、次の2つ目の白丸のところでございます。こちらも前回からの御議論を受けて、さらに変更を加えた箇所でございますが、新制度の手続においては、利用者にとっての窓口の一元化及び手続の迅速化・簡素化及び適正な手続を実現するため、文化庁長官による指定等の関与を受けた窓口組織が受付や要件の確認、利用料の算出等の手続を担うこととし、併せて、その違法利用や内容的な利用等の抑止の観点から、手続の簡便・迅速さには留意した上で、時限的な利用の最終的な決定やその取消しは文化庁長官の行政処分によることとするとしております。

前回の議論におきましては、法的正当性であるとか、適正手続という観点で、文化庁長官が出てくるといったところにつきまして積極的な御意見がある一方で、文化庁長官の手続の関与を絡ませることで、この手続の簡便さとか迅速さ、こういったものが失われては、そもそもの議論の発端に反するという御意見も出ておりました。事務局にてそういった御意見も勘案しまして、こちらの一連の要件確認等の実質、極めてこの制度の運用に向けて、重要でかつ時間のかかる部分、こういったところを窓口組織といったところを活用して、手続の簡素化を図るというような整理を一案として示しております。

また、次の白丸のところです。「新制度による利用については、その利用される著作物と利用方法等を広く公表することで」としております。こちら、前回まで公告という言葉を使っていましたが、少々表現が専門的なのと、あまり大きく意味が変わらないので、分かりやすい公表という表現を用いております。

また、4つ目の白丸のところです。時限的ではない利用を可能とする仕組みについては、新制度とは別に、著作権者不明等の場合の裁定制度を活用した方策とすると。併せて、裁定制度についても窓口組織を活用した手続の迅速化・簡素化を図るとしております。また、新制度につきましては、裁定制度同様に、著作隣接権についても準用する旨、付記しております。

(2)具体的な新制度の制度設計のイメージを御覧ください。こちらは前回までと少し表現の適切化を図ったところがありますが、大きな内容は一切変更ございません。次の(1)、(2)を要件とするということで、(1)が以下の要件を全て満たすことということで、公表された著作物としていること。

資料6ページ目に入りますが、(ⅱ)以下の判断プロセスによって著作権者等の著作物の利用可否や条件等に係る「意思」が確認できないことというところでございます。1、集中管理されている著作物であれば制度の対象外、集中管理されていない場合は次の2、利用の可否や条件等が明示されている著作物(オプトアウトが示されている著作物を含む)としております。こちらであれば新制度の対象外、こういったものが明示されていなければ、3-1、2と進みます。3-1は、著作権者等に係る情報がないとか、連絡が不能であれば新制度の対象とする。情報がある場合は連絡を試みて、利用の可否や条件を確認しましょうといったものでございます。その連絡後が4-1か2に分かれまして、何かしらの返答があれば新制度の対象外、一定期間返答がないということで新制度の対象、このような流れを記載しております。

その下の※の1から4について、※の2につきましては、前回同様の記載となっております。

また、(ⅲ)のところです。前回は著作権者の権利を不当に害したりという表現をしておりましたが、こちらですと、いわゆる市場にバッティングするといった経済的利益の趣旨にしか捉えられないのではないかといった御意見もありましたので、報告書のところを少し修文しまして、「著作権者等の利益を不当に害したり、著作権者の意向に反するといったことが明らかであると認められるときに該当しないこと」という記載をしております。また、これも明らかにするように※で、「翻案利用も対象とするが、人格的利益についても一定の配慮がなされるようにする」ということも付記しております。

また、大きな要件の2つ目は、使用料相当額に当たる利用料を支払うこととなります。

(イ)の新制度における法的な効果のところでございます。1つ目の丸は先ほどのとおり、利用期間の上限内、かつ著作権者等からの申出があるまでの間の時限的な利用を可能とするということ。また、2つ目は、著作権者等からの申出の機会を確保するために、時限的な利用を決定したときは広く公表するとしております。

資料の7ページを御覧ください。新制度の流れということで、7ページの下のイメージ図、こちらは少し言葉でも補って御説明したものが新制度の流れのところでございます。1つ目の白丸ですが、利用者がその利用したい著作物について、要件に該当するか確認を行いまして、その要件に該当することを疎明する資料を窓口組織に提出し、窓口組織において確認や助言を行う。窓口組織において、要件の確認、利用料の算出、文化庁長官に資料送付の上、文化庁長官による時限的な利用の設定が行われるという流れになります。この決定に基づく著作物の利用について広く公表を行うと。3つ目の白丸、利用者は決定通知と併せて示された利用料支払うことで、時限的な利用を開始できる。4つ目、著作権者の申出に基づき、窓口組織が本人確認等を行い、利用料の一部が著作権に支払われます。その著作権者はその後、利用者とのライセンス交渉等を経て利用承諾を行うことができる。5つ目、時限的ではない利用を望む利用者は、裁定制度に初めから申請する、あるいはこの時限的な利用中に申請する、こういったところで裁定制度による利用に切替えができるというような仕組みにしております。

図の新制度のイメージは、これまでの説明を踏まえて、前回より少し一部修正を加えております。この真ん中の黄色の確認・決定のところでございますが、申請要件の確認であるとか利用料算出につきましては窓口組織に、時限的利用の決定というところを文化庁長官としております。また、吹き出しの注意書きのところですが、手続の簡便・迅速さには留意するということも記載しております。

また、前回まで、公表につきまして公告としておりましたが、時限的な利用中に公表するといったような書き方で、時限的な利用をしている間のみしか公表をしないような形にも見えてしまっておりましたので、このグラフ中も少し表現を適正化して、この決定の後は公表する。また、この時限的な利用が仮に終わった後も、この利用料を求める権利者のために公表するといったような図の変更も行っております。

次の資料の8ページ目を御覧ください。窓口組織による新制度の事務の実施のところでございます。1つ目の白丸は前回とあまり大きく修正はありません。利用者・権利者双方の負担軽減の観点から、窓口組織の活用を図るということ。

また、2つ目の白丸、窓口組織の担う事務のイメージ、こちらについても大きくは変更しておりませんが、3つ目の黒ポツのところ、文化庁長官の行政処分との関係から、一部追記しております。

また、大きな白丸の3つ目を御覧ください。「窓口組織の運営や必要な体制整備等について」はというところで、前回の御議論を踏まえ、著作権に関して知見があり、公益性のある団体などを念頭に体制整備を行うといった旨、追記しております。

続きまして、8ページの一番下、(3)新制度の主な意義というところでございます。こちらにつきましては、前回同様の意義を並べておりますので、詳細の説明は割愛します。

続きまして、10ページ目を御覧ください。4.個別の論点についてということで、概要資料のほうは少々細かくなるので記載を割愛させていただいておりますが、報告書本体におきましては、これまでの法制度小委員会の各論点に係る審議の状況、結果、こういったものをまとめております。

(1)の法制上の整理等についてといったところにつきましては、1つ目の白丸にありますように、一定の要件、一定の対価の支払いを前提に利用可能とする仕組みを検討するといったこれまでのもの。また、2つ目は、コンテンツ創作の好循環の最大化、こういったものを目指していくのだということ。また、3つ目につきましては、いわゆる拡大集中許諾制度の制度化、こういったところの議論も行ってきましたので、まとめております。

また、(2)新政度の要件、効果等についてのところです。こちらにつきましては、先ほど来の御説明と重なる点がありますが、(ア)「意思」の確認(「意思の表示」について)といったところです。

こちらについて、先ほどの御説明に入れてなく、また、今回追記したところとして、資料11ページ目の上から4つ目の白丸を御覧ください。「なお」といったところでございます。前回の委員からの御指摘、御発言を受けまして、「なお、利用される二次的著作物である場合については」というところを少し追記しております。前回説明させていただきましたとおり、その利用形態、利用場面のみで判断するのではなく、その著作物自体や原著作物の利用に係る「意思」を可能な限り確認することが必要である、と、その後から追記しております。この確認により、二次的著作物の原著作物の著作権者がいることが判明した場合には、原著作物の著作権者に許諾を取るか、また、その原著作物の著作権者の「意思」が不明なときは、今般の新制度を活用することが考えられるとしております。

一方で、可能な限り確認しても原著作物があることが判明しない場合につきましては、今般の利用される著作物の利用、利用者が当初から利用を希望している著作物について、新政度による申請を行うことで、当該著作物の適法な利用が可能になると。このとき、事後に原著作物の発見者が現れた場合には、当該元著作物の利用については、新制度による時限的利用の対象となっていないため、当該原著作物の著作者から許諾を得る必要がある、このような整理を記述しております。

次の白丸以降は、意思表示の表示内容の例を、これまでの審議を踏まえて記載したものでございます。大きく変更はございません。

次の12ページを御覧ください。12ページ目の上の白丸のところ、表示の方法や場所、こちらもこれまでの審議、また前回の記述と、特に変更はございません。

また、(イ)につきましては、オプトアウトについても記述をしております。こちらも大きく変更はございません。

13ページ目の(ウ)翻案等を伴う利用について。こちらはヒアリング等を受けて懸念が示されたということもありまして、ここの白丸の3つ目のところです。著作者人格権との関係も配慮し、新制度の悪用等を抑止するためにも、新制度の手続については、文化庁長官の一定の関与を設けることとするといったような記載を加えております。

また、(エ)文化庁長官の関与等につきましては、先ほどの御説明のとおり、こちらの記述を更新しまして、文化庁長官の行政処分によることとするといったようなことを記載しております。

続きまして、14ページを御覧ください。14ページの(オ)使用料相当額に当たる利用料についてでございます。白丸の1つ目と2つ目、大きく変更ございませんが、3つ目でございます。冒頭2行、新制度の運用を持続可能なものとする必要があることや応益負担の観点から、利用者には使用料相当額の利用料とは別途一定の手数料負担を求めることとするということですが、こちらも前回の委員意見を踏まえまして、著作権者からの申出がなく著作権者に還元できない利用料について、窓口組織の運営費等に充てること等により、利用料や手数料を低く抑えられるような柔軟な運用が望ましいといった意見があったことも追記しております。

また、(カ)の遡及効、(キ)周知・普及・啓発につきましては、大きな変更はございません。

15ページ、(3)著作権者不明等の場合の裁定制度の改善についても、こちらに記載を行っております。大きな変更はございません。

(4)の分野横断権利情報データベースにつきましては、文化庁において検討を行ってきた研究会、こちらにつきましては、昨日の基本政策小委員会において報告と議論が行われておりますので、その旨、情報を更新した修正を行っております。

以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ただいまの御説明を踏まえまして、項目1と2につきまして、御意見等がございましたらお願いいたします。今村委員、お願いいたします。

【今村主査代理】今村でございます。丁寧に説明していただきまして、どうもありがとうございました。

5ページ目で2つ目の丸のところでございますけれども、ほかの部分とも関連してくるんですが、今回、資料のほうでは、時限的な利用の最終的な決定や取消しは文化庁長官の行政処分によることにするといったような形で、ほかの部分もそういうふうに書かれているわけなんですけども、手続としては、従来の裁定制度と同じように、行政上の手続のような色彩を帯びてきて、例えば、この制度を利用する場合に、利用者本人が利用申請して手続をしていくというモデルが1つあると思うんですけども、自分ではやらないという場合も多いと思います。普通行政の手続だと、行政書士さんとか、そういう資格を持っている人にお願いして手続を進めていくということもあると思うんですよね。もちろん自分のビジネスの範囲内とかで、その内部関係者がやるということであれば、本人の申請ということになっていくと思うんですけれども、代理したりするにはやっぱりある程度、何か制限が出てくるのかなとか、そういったことを少し考えてみたんですけども、その点、今後検討というか、何か今、分かっている範囲で教えていただければと思います。いかがでしょうか。

【茶園主査】事務局、よろしいでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】 事務局でございます。今の今村委員からの御指摘の件につきましては、この新しい制度をより活用しやすくするという観点から、例えば、利用者以外の者による申請、こういったものも可能にしていくべきではないかといったような御意見かなと受け止めました。そのような柔軟な運用が可能になるような、少なくとも制度上排除されないようなものにする必要があるのかなと思っております。

なお、今の時点のこの報告書の素案に書いてある制度イメージは、そういった利用も決して排除されるものではないと理解しております。

【今村主査代理】分かりました。ありがとうございます。

【茶園主査】池村委員、お願いいたします。

【池村委員】ありがとうございます。1点質問なんです。けれども、6ページの(ⅲ)の部分で、「著作者の意向に反する」という記述があるのんですけれども、先ほどの御説明では「著作権者の意向」というふうにおっしゃったように聞こえて、また、13ページの一番下の丸では「著作権者」というふうに記載されなっているんですけども、「著作者」と「著作権者」、どちらが正しいんでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】事務局ですが、よろしいでしょうか。13ページのところ、確かに誤記がございますね。こちら、「著作者の意向」のほうが適切ですので、13ページの下から3行目のところは、「著作者の意向に」というところに修正をしたいと思います。大変失礼しました。池村委員、ありがとうございます。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。福井委員、お願いいたします。

【福井委員】3ポツについての意見も、ここで申し上げてよろしいんでしょうか。5ページ以下についてもよろしいわけでしょうか。

【茶園主査】はい、結構です。

【福井委員】まずはここまでの事務局の御努力、本当にありがとうございました。

この7月ですかね、拡大集中許諾制度に関する諸外国調査、これは文化庁さんが行われ、国際小委員会でも結果を公表されていたと思います。広い意味で、拡大的効力のある集中処理については、導入された国々では関係者からおおむね好評であるという報告がそこには記載されていました。ただ、制度を生むときには、本当に調整の御苦労、産みの苦しみがあるなというふうにこの間も拝察しております。

コメントを具体的に申し上げていきます。

5ページ、期間の上限を定めるという。私、前回お休みをしていたので今の意見になるんですけれども、これを仮に導入するとしても、十分な期間を取れるようにして、決して利用者において無駄な形式的作業が増えてしまって、利用を躊躇するようなことにはならない、これが重要でないかなというふうに思います。

それから、5ページの下のほうから始まる(2)の(ア)の手続で、実際の記載箇所は6ページに入っていると思いますが、権利者の意思表示があると一旦なると、もうその先は連絡先不明などでも、この新制度には載せられないという設計に、今、我々は入ろうとしているわけです。この点は非常に重要だと思うんです。意思表示があると判断されちゃうと、連絡先が分からなくても、後は裁定制度の改善に期待するしかなくなってしまう。

その点で、注にもお書きいただいておりますアウト・オブ・コマース、つまり絶版などの入手困難な資料について、これは数十年前など、古い商品で禁無断転載といった定型的な表示があっても、それのみをもって意思の明示ありとすべきではないと思います。それでは連絡先不明の場合などに打つ手がなくなってしまいますね。時限利用の制度を設ける意味が何分の1にも減ってしまいかねません。実態としても、商業流通している間は、転載などに厳格にならざるを得ない事情はよく分かる。しかし、絶版などになれば、事情は全く異なるわけです。そのことも踏まえて考えるべきかなと。

この点、大きなヒントになっている2019年のEUの、いわゆるDSM指令に基づいて、昨年の11月29日にEUは職員作業文書を発表しているわけですが、特にアウト・オブ・コマース、入手困難な資料については、デジタル利用に伴う取引コストの重い負担に鑑みて、フランス、ドイツなど5か国で、利用を可能とする制度が導入されていると報告されています。こうしたことも参考に、我々は検討すべきじゃないかと。

一方で、逆に十分慎重に対応しなければいけない場面というのもあると思うんです。例えば、ネットクリエーターなどは、通常は特段の意思表示ということは行わないわけです。その意思表示がないということのみで、現在も流通されているネットクリエーターの作品などが利用され得る場合には、十分連絡も丁寧に行い、業界団体とも協力して運用基準などをつくっていく必要があるのではないかなと思いました。

あと2点だけ申し上げさせてください。7ページの新制度の流れのところです。ここに、申請要件の確認は利用者が行うとあります。8ページで、窓口組織が相談に乗ると書いてあるので大丈夫だとは思うんですけれども、この要件確認、利用者だけに投げてしまうようでは、多分ほとんどできなくなっちゃうと思いますので、ここは十分窓口組織が、サポートを行うべきじゃないかなと思います。

最後に8ページです。その窓口組織についてです。権利者、利用者いずれかに偏らない公平な運用が重要であろう。また、使用料。これはこの先の運用設計で、簡易に算出できることがとても大事だろうというのが裁定制度からの教訓だと思います。

最後に、ここに窓口組織をはじめ公的支援が明記されたこと、高く評価したいと思います。公的インフラと言える制度ですので、十分社会が支えていく必要があるのではないかなと感じたところでした。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。村井委員、お願いいたします。

【村井委員】ありがとうございます。今、福井先生から御指摘いただいた点のうち、アウト・オブ・コマースに関する部分については、前々回も福井先生から御指摘があったところかと思います。そして前回、私のほうからも、福井先生の御意見に賛成である旨を申し上げたのですが、その際、事務局のほうから、アウト・オブ・コマースの意味などについて御指摘がありましたので、少しそれも含めて補足させていただきたいと思います。

福井先生のおっしゃるように、この新制度において、例えば、奥付などに一定の利用を禁止する記載があった場合に、新制度の対象外となってしまうという問題は、この制度の実効性を一定程度左右するような重要な問題であるように思います。アウト・オブ・コマースが何なのかということなのですが、お名前を挙げさせていただいて恐縮なのですけれども、ちょうど鈴木康平さんという筑波大学の方が博士論文でアウト・オブ・コマースをテーマとされていて、お話を伺う機会がありました(鈴木康平「アウト・オブ・コマース著作物の制度と理論:図書館資料のデジタル化とオンラインアクセス」)。その論文によりますと、アウト・オブ・コマースというのは、歴史的には絶版というものから置き換わってきた概念で、日本の著作権法でいうと、31条の絶版等資料におおよそ該当する概念であるということでした。通常の商業流通経路での利用可能性というのが、メルクマールとなるようです。

ですので、前回、御指摘があった新制度の対象とならない場合で問題となり得るものとしては、先ほどのお話にありましたように、絶版等資料でありながら、例えば、奥付等に一定の利用を禁ずる旨の記載があるような出版物などが主に想定されるかと思います。

やはり、先ほどのお話のように絶版等資料というのは、古い出版物などが多くて、権利者不明等の理由で許諾が得られないという可能性が高いということも考えられますので、奥付等の定型文のみで新制度の対象外としてしまうと、せっかく新制度を設ける意義が減殺されてしまうというおそれがあるように思います。

この問題をどう解決するのかは非常に難しいところかと思うのですけれども、考えられる可能性としましては、例えば、一定期間より前の著作物、あるいは絶版等資料については、奥付等の記載に関わらず新制度の対象とするというような可能性が考えられるかと思います。鈴木さんの御論文によれば、ドイツ法やフランス法にはカット・オフ・デートという制度があって、ある一定期間より前の著作物については、アウト・オブ・コマースであると推定したり、あるいは、一定期間より前に公開されたアウト・オブ・コマースに限って、権利制限の対象となるものとする、つまり、権利制限の対象となるものを、一定期間より前に公開されたアウト・オブ・コマースに限定するなどの要件が定められている場合があるそうです。

そのような可能性が1つと、また別の可能性としては、奥付の記載なのですが、これは著作者の意思表示というわけでなく、出版者の意思表示であると捉えられるものがあり得るかと思います。そうすると、それは必ずしも権利者による意思表示とは限らないと理解することができるように思います。例えば、あとがきなどで明らかに著者が明示的に一定の利用禁止をするといったような場合は、権利者自身による意思表示と捉えることができる一方で、単に奥付に定型文句が記載されているだけというような場合は、あくまで出版者による注意書きであって、権利者による意思表示ではないと捉えることができる可能性があるように思います。個別に記載内容を見て判断していくというのは難しい面もあるとは思うのですけれども、やはり新制度を実効性のあるものにしていくためには重要な点かと思いました。

以上になります。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

今、福井先生、村井先生から、意思表示のことについて御意見がありました。私もこれはなかなか難しい問題であると思いますけれども、この点に関して、ほかに御意見等ございますでしょうか。早稲田委員、お願いいたします。

【早稲田委員】ありがとうございました。今の福井委員及び村井委員の御発言は大変示唆に富んだものだと思います。ただ、なかなか今回新しい制度をするに当たって、アウト・オブ・コマースをどういうふうに判断するかというのは非常に難しいと思っておりまして、今、村井委員がおっしゃったように、一定期間より前というような、そういうふうな形で、かつ現在流通していないという、かなり形式的に切れるものであれば、簡素な新制度でも導入できる可能性はあるかなと思って伺っていたんですけれども、そうでないとなかなか今回、簡素でやろうというところの趣旨に若干反してしまうんじゃないかなと。すなわち、アウト・オブ・コマースを判断しなきゃいけないというところで、1つ手続が増えるというところをどう考えるか、こういうことでございます。なので私としては、今回まとめられたように、これを取りあえずやってみて、その後、実態等も踏まえて、今後さらに検討していきましょうということで、今回はよろしいのかと思いました。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございます。

では、意思表示の点でも構いませんし、その他の点でも結構ですので、御意見等ございましたらお願いいたします。早稲田委員、お願いいたします。

【早稲田委員】すみません、その他の点でございまして、やはりこの制度、簡素で一元的というところがポイントなので、今のアウト・オブ・コマースにしろ、ここからこぼれてしまうというのはどうしても出てくると思いますので、7ページの図にもありますように、裁定制度をより使いやすくすると。新しい制度を使っていても、裁定制度の条件を、裁定の要件を満たす場合にはそれに移行するというのをうまくできるようにすべきではないかと思います。

1つには、今回、検索エンジンとかデータベースで探すということがかなり簡単になっていくということであれば、裁定制度の利用も、より簡単に充実したものができるのではないかと思っております。

以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございます。

ほかに御意見等ございますでしょうか。澤田委員、お願いいたします。

【澤田委員】先ほどの意思表示の有無の点なんですけど、村井委員御指摘のとおり、禁転載というのは出版社が書いているんじゃないかというのは、確かに。そのとおりです。もっとも、禁転載と書いてあるプラットフォームに投稿するといった例を考えた場合に、全て著作権者が直接意思表示を著作物に書き込まなければ意思表示がないということになると、それはそれでなかなか著作権者側の負担も大きいのと思います。そのため、出版物に書いてある禁転載とか、プラットフォームに書いてある禁転載といった記載も含めて、そのような記載のある媒体に載せることを著作権者が選んだということで、著作権者の意思表示があるという見方をする方が、判断はしやすくなるのではないかと思ったところです。このあたりはまた運用のところで詰めていくところかなとは思います。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

福井委員、お願いいたします。

【福井委員】ありがとうございます。皆さん、私の投げかけ含めて、非常に真摯に考えていただくことに感謝いたします。

今、澤田委員から挙げていただいた例は考える上で非常にいい例だなと思ったんですけれども、例えば、あるプラットフォームに作品が載るときに、そのプラットフォームに禁無断利用という表示があるとか、あるいは一定の利用ルールの記載があるときに、プラットフォームに載っている限りにおいては、その利用条件の表示は、確かにアップロードした創作者が選んだ表示という見方もできると思うんです。でも、そのプラットフォームに載らなくなった後で、プラットフォームに当時されていた利用条件の記載が、なお創作者の意思表示と言えるかというと、私はやっぱりちょっと無理があるんじゃないかなと思うんですね。プラットフォームにもう載らなくなっているのに、創作者がプラットフォームのかつての利用条件の表示を選んでいるというのは、これは無理があるんじゃないかなと。

つまり、もう流通しなくなってしまっている場合には、ロジカルに意思表示ありと、少なくとも一律に考えるのはちょっと難しいんじゃないかなと。そこで、かつての表示のみによって、意思表示あり、明記ありとは考えないという提案を先ほど差し上げたんですけれども、ここは各委員の御指摘のとおり、簡素で一元的な手続ということとどうバランスさせていくか。今後の制度設計に委ねられるところであろうけれども、ここに大きな課題がある。過去の多くの作品が制度からこぼれてしまって、権利者不明のときに打つ手が限られてしまうかどうかの大きな課題があることは間違いないんじゃないかなと感じるところでした。

私からは以上です。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。

麻生委員、お願いします。

【麻生委員】御説明ありがとうございます。私からは形式的な、些末な点ですけれども、いただいた資料の概要のスライドの6ページに、先ほど池村委員からも主体の御指摘がありましたが、このアスタリスクの最後の行のところで、「ただし、著作者や権利者の利益を不当に害することとなる場合」と書いてあって、本日御説明いただいた報告書の5ページの一番上の制度化の骨子のアスタリスクのところは、「ただし権利者の利益」とあり「著作者」という表現はなく、6ページの(ⅲ)のところは「著作権者等の利益を不当に害したり著作者の意向に反する」となっていて、権利者と著作権者が同じ意味で使われているのかもよく分からないところや、著作者の記載がない場合など、主体が明確になっていないところがあるのかもしれないと感じたところです。この報告書は、著作権者等と権利者という言葉が非常に多用されていて、それが同じなのか違うのかということも分かりづらくならないように、やはり主体の記載を明確にしておいたほうがいいのではないかという気がしました。

また、表現が少し気になったところですが、いただいた報告書の9ページの上から2つ目の黒ポツのところで、「著作権者等が申出を行えば利用を終了させることができる時限的な利用とすることで、著作権者等の権利を直ちに失わせることのない、柔軟なスキームとすること」との記載がありますが、これだけを読んでしまうと、著作権者等の権利が失われることがあるという印象を受けるかもしれません。そうではないということは、ここでの議論を参照していれば分かりますが、このような書き方をすると、権利が失われることがあるという印象を与えてしまうような気がしますので、そこは明確にしたほうがいいのではないかという気がしました。

私からは以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございます。報告書には不明瞭な点があるということですので、事務局におかれましては、その点をもう一度御注意いただければと思います。事務局から何かございますでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】各委員の皆様、ありがとうございます。概要資料のほう、著作者、著作権者、少しまとめてふわっと実施上の関係もあって書かせていただいたところがありましたが、少なくとも報告書の本体のほうは、今いただいた著作者、著作権者、少し紛れがあったり誤字がある部分ありますので、そのあたりは修正をする必要があるのかなと考えております。

また、先ほど一部、福井先生のほうからありました、利用者が要件確認する、あれも非常に分かりづらい表現でした。大変失礼しました。こういったところも修正をする必要があるかなと思っております。ありがとうございます。

【茶園主査】では、池村委員、お願いいたします。

【池村委員】ありがとうございます。先ほどの麻生委員の御発言にも関係するところですけれども、例えば、著作者が著作権を譲渡したいとか、あるいは相続が発生したりして、著作者イコール著作権者じゃない場合でも、この新制度では著作者の意思を尊重すると、こういう思想なのかなというふうに思って報告書を読んでおりましたけれども、そういう認識でよいか、事務局に確認させていただければと思います。

【小倉著作権課長補佐】池村先生、ありがとうございます。今までの各関係者からのヒアリングにおきましては、非常に人格権的な部分を尊重した御意見だったのかなと思います。そういった趣旨からすると、まさに譲渡とか移転とかが想定されてない部分を念頭には置いております。

【茶園主査】池村委員、よろしいでしょうか。

【池村委員】ありがとうございました。

【茶園主査】それでは、島並委員、お願いいたします。

【島並委員】ありがとうございます。先ほど来、議論になっております権利者の利用に係る意思の点につきましては、著作物公表時の禁無断転載といった記載や、プラットフォームに載せた際の表示のみで固定的に判断するのではなくて、その後の時の経過を踏まえた現在の利用の態様とか、利用の必要性等とも相関的に判断するのがよいのではないかと考えます。そのため、現時点であまり細かい一つひとつの例について、この表示でどうかということを吟味するのではなくて、事後的かつより総合的な判断に委ねるというのも1つの手ではないかと思いす。

いずれにしましても、時限利用期間の上限設定でありますとか、文化庁長官による関与の承認など、今回の事務局による修正提案によって、より一層権利者の利益確保に十分な配慮をした枠組みになってきたという印象を持ちました。

DX時代における著作物利用という新しい酒に対応した新しい著作権制度の革袋が、ようやく形が出来つつあるように思いますので、あとは先ほど来議論になっているような点、あるいは、今日はまだ具体的な話題に出ておりませんけれども、使用料相当額の利用料の算定方法を中心に、より具体的な制度の落とし込みにおいて、権利者と利用者のバランスの取れた実効的な制度の構築を、今後、みんなで知恵を出し合っていくべきであると考えます。

私からは以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。それでは、特段ございませんようでしたら、もし何かございましたら後ほどお願いするといたしまして、先に進みたいと思います。

それでは、続きまして、17ページ、18ページの3.立法・行政・司法のデジタル化に対応した著作物の公衆送信等について、これにつきまして、事務局に説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。資料の16ページを御覧ください。

立法・行政・司法のデジタル化に対応した著作物の公衆送信等について、こちらにつきましては、前回会議でも大きな意見等々はあまり多くなかったので、あまり修正は加えてないところですが、1.検討の経緯につきましては、表現の適正化を図ったところ、また、ヒアリングの実施等についても言及したといった修正のみになっております。

また、17ページの2.対応の方向性のところを御覧ください。こちらは以上の経緯を踏まえ、立法・行政のデジタル化への対応を著作権法の観点からも支えていくために、立法または行政目的のために内部資料として著作物の公衆送信や公の伝達を可能とすることが必要であると。「その際」のところを、少し修正を行っておりまして、その際、現行法下での複製行為において許容される範囲と同等の範囲での公衆送信に限定することや、この次ですね、ライセンス使用等の既存ビジネスを阻害しないようにすることに留意するなど、現行規定にある「内部資料」や「ただし書」等の解釈・内容について周知を徹底することが求められるということで、前回の御意見も踏まえまして、「ただし書」についても言及をしております。

また、その次のパラグラフ、「あわせて」といったところ、またその他の課題、こちらにつきましては、特段の修正は行っておりません。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明を踏まえまして、項目3について御意見等がございましたらお願いいたします

よろしいでしょうか。では、もし何かございましたら、後ほどお願いするといたしまして、先に進みたいと思います。

それでは、次に、19ページから26ページの4.損害賠償額の算定方法の見直しについて、この点につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。資料の18ページ目、損害賠償の算定方法の見直しについて御覧ください。

こちらにつきましては、1.経緯のところにつきましては前回と同様で、修正は特段行っておりません。

また、(2)の課題のところでございます。こちらの(2)の課題のところは、白丸で3つ目の丸の「また」のパラグラフでございます。こちらは課題としまして、各関係者・団体等からのヒアリングにおいて示されたものも幾つかございましたので、こちらに追記を行っております。

続きまして、20ページ目のところです。(3)の特許法の部分は、変更はございません。

また、2.対応の方向については、先ほどのヒアリングも踏まえて行っている旨、追記を行っております。

また、22ページ目を御覧ください。22ページ目の上から3つ目の丸のところ、以上を踏まえると、特許法の令和元年改正による見直しは、著作権法においても当てはまるものであり、その見直しの意義・効果もあると考えられることから、著作権法においても、以下のとおり、同様の見直しを行うこととするというところにつきまして、この枠囲みのところ、前回までの資料が、「侵害者が得た利益のうち、著作権者等の販売等の能力を超えるとして」といった記載のみになっておりましたが、こちらは少し表現として不適切でしたので、「超える、又は著作権者等が販売することができないとする事情があるとして」といった言葉を補っております。意味内容はこれまでの議論のとおりで、変更はございません。

その他、3.のその他の検討課題のところ以降は大きな修正等を行っておりません。

以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ただいまの御説明を踏まえまして、項目4について御意見等がございましたらお願いいたします。福井委員、お願いいたします。

【福井委員】福井でございます。こちらについても、いわゆる侵害し得問題に対して相当に分厚い、また前向きな意見になっていることを評価したいと思います。

その上で、この委員会でも意見として出ていたと思うのですけれども、あるいは一般にもよく指摘される弁護士費用について、最後に申し上げたいと思います。現在、弁護士費用の賠償が、おおむね損害額として認定された額の1割程度に抑えられているという裁判実務があることはよく知られているところです。そしてこれは、特に一般の個人クリエーターなどが裁判を起こそうとすると、確実に弁護士費用倒れを起こしてしまう水準なのです。これでは実際の保護には、どうしても不十分になってしまいます。そこで、その他のところの今後への課題ということで結構なんですけれども、現在、裁判実務上、認定額が相当に限定されている弁護士費用、この賠償についても検討を続けるべきだという意見があったことを、もしよろしければ付記いただければというふうに思いますが、いかがでしょうか。

【茶園主査】事務局、何かお答えできるところはございますでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】今の点につきましては、もしほかの委員の皆様からも補足とか、こういう表現がいいとかあれば、ぜひ教えていただけると助かります。そういった追記の趣旨等々は承っております。どのような記載がいいかとか、せっかくの機会ですので、ぜひまた御教示いただければと思います。もしほかに委員の皆様の関連意見があればでございますか、いかがでしょうか。

【茶園主査】今の点について、御意見等ございますでしょうか。

早稲田委員、お願いいたします。

【早稲田委員】ありがとうございます。弁護士費用は損害賠償の中の不法行為の相当因果関係の中に入るというような、多分今までの解釈だと思っておりますので、福井委員がおっしゃったように、裁判上権利を行使するときに、相当因果関係の範囲がいつも損害賠償額の10%というところではなくて、そこについては柔軟に御判断をいただく。これは、裁判所の御判断になるのかもしれませんけれども、柔軟に御判断いただく、ないしは弁護士、代理人のほうも、抑制することではなくて、10%以上の例えば差止め請求についても評価するとか、損害賠償を基準としたところではなくて、もう少し大きく広げられるかどうかという努力も必要になってくるのかなと思いました。

いずれにしろ、書いていただくということについては、私も賛成でございます。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。今の弁護士費用の点でも結構ですし、それ以外の点につきましても、御意見等がございましたらお願いいたします。

早稲田委員、お願いします。

【早稲田委員】ありがとうございます。損害賠償についての記載については、私は少なくとも本年度の報告書については、この御記載でよろしいんじゃないかと思っております。ただ、ここの報告書にも記載があるように、やはり著作権法の損害賠償というのは立証が非常に難しいということ。それから、さっきの弁護士費用にも係るのかもしれませんが、侵害し得ではないかというような議論が随分ございまして、それからストリーミング型の著作権侵害の対応のさらなる立証負担の軽減についてというような御記載もあるように、やはり今後も、今回の法改正を踏まえて検討していく必要があるのではないかと。

特に特許法の場合には、今かなり高い損害賠償の金額も出ているというようなところもありますけれども、著作権法の場合、特許法とまた違うような対応もあるので、そこをどういうふうに判断していくかという問題がありますけれども、引き続きぜひこの点については検討していただきたいと思っております。

以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。特段ないようでしたら、先に進めたいと思います。

それでは、最後になりますけれども、26ページ、27ページの5.研究目的に係る権利制限規定の検討について、この点について事務局より説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。こちら、資料の26ページ目、研究目的に係る権利制限規定の検討について。こちらは前回の審議会では、概要のほうで説明していたものでして、御説明できておりませんでしたので、少し資料を紹介します。

1.経緯のところでございますが、この法制度小委員会の議論においても御紹介をしてきたとおり、1ポツ目には、令和元年度における検討と、その後の調査研究事業の実施について紹介しております。

2つ目につきまして、この調査研究につきましては、ニーズであるとか関係者の意向、懸念、論点が一定程度明らかになったというところですが、さらに多くの分野・人数にわたる研究者のニーズを適切にくみ上げる必要があるということで、令和2年度につきましては、調査研究を継続して実施しているといったところでございました。

また、この白丸3ポツ目の下から3行目にありますように、令和3年度には図書館関係の権利制限規定の見直しを内容とする著作権法の一部改正が成立・公布されたということで、4ポツ目の、こちらの調査研究は、図書館関係の権利制限規定の見直しによっても対応できない場面として、主に研究成果発表における著作物利用のニーズ等について、より広範な調査研究を行ってきました。

次の5ポツ目のところは、この調査研究につきましては、ページがまたがっていて恐縮でございますが、著作権法に基づく許諾や引用とは別に、慣行としての引用や、学会・研究会等での発表における許諾を取る実態、また、著作権法第38条等の権利制限規定の認知・理解が進んでいない実態等が明らかになったということ。

また、次の白丸でございますが、許諾の取得については、許諾を誰に求めるのか分からない、返答はない、手続が煩雑といった課題が挙げられ、調査研究における検討についても、今の文化審議会の議論と重なる点が多いというところについて御議論がありました。

また、次の白丸のところでございます。今年度の法制度小委員会の第3回から第5回までに実施した関係者・団体等からのヒアリングにおいても、特に高度学術専門研究において利用される学術専門文献や専門書は、当該学術専門分野の研究者を対象とした発行が行われるという市場実態があることとか、研究者等の著作権の知識向上が必要であるといった意見。また、民間主体での一元的な権利処理スキームの構築に向けた検討が必要、このような様々な意見が示されたところを紹介しております。

この上で、2.対応の方向というところでございますが、これまでの議論を踏まえまして、まずは令和3年度改正の運用状況をフォローするとともに、現在検討を進めている簡素で一元的な権利処理方策と対価還元に係る対応を行いつつ、これによる課題解消の可能性や、それらによっても解決されない支障、新たなニーズがある場合に、必要に応じて検討を行うこととするといった記述をまとめさせていただいております。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明を踏まえまして、項目5について御意見等がございましたらお願いいたします。この研究目的に係る権利制限に関しまして、何か御意見等ございますでしょうか。

それでは、この項目5に限らず、今までの項目1、2、3、4でも結構ですけども、何か御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では、どうもありがとうございました。

それでは、本日いただきました御意見を踏まえまして、修正を行った上で、事務局においてパブリックコメントを行っていただく予定としております。修正につきましては、主査である私に御一任いただければ大変ありがたいのですけれども、それでよろしいでしょうか。どうもありがとうございます。

それでは、その他全体を通じまして、何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では、次回は、本日の御意見及びパブリックコメントを踏まえまして、本小委員会の報告書の取りまとめを行いたいと思います。

他に特段ございませんようでしたら、少々早いですけれども、本日はこれまでといたしたいと思います。

最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】 事務局でございます。

次回以降の法制度小委員会は年明けになりますが、改めて事務局より日程をお知らせいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

以上でございます。

【茶園主査】それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第8回)を終了とさせていただきます。本日は、活発な御意見をいただきまして、どうもありがとうございました。これで終了とさせていただきます。

―― 了 ――

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