文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第9回)

日時:令和4年2月9日(水)

13:00~15:00

場所:オンライン開催

議事

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)ブロックチェーンやNFTの活用について
    • (2)DX時代に対応したコンテンツの権利保護、適切な対価還元方策について
    • (3)その他
  3. 閉会

配布資料

資料1
Japan Contents Blockchain Initiative 御発表資料(1.5MB)
資料2
DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策について(1MB)
参考資料1
第21期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会委員名簿(119KB)
参考資料2
デジタルプラットフォームサービスにおけるクリエイターへの対価還元に関する調査報告書(2.3MB)
参考資料3
DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策について【参考資料】(1.4MB)

議事内容

【末吉主査】  それでは、ただいまから文化審議会著作権分科会基本政策小委員会第9回を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。

本日は新型コロナウィルス感染症の拡大防止のため、委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。皆様におかれましては、ビデオをオンにしていただくとともに、御発言いただく際には、自分でミュートを解除して御発言をいただくか、事務局でミュートを解除いたしますので、ビデオの前で大きく手を挙げてください。

議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照しますと、特段非公開とするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方々にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところですが、特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉主査】  ありがとうございます。では、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方々にはそのまま傍聴をいただくことといたします。

(傍聴用配信開始)

【末吉主査】  それでは、事務局から配付資料の確認をお願いします。

【小倉著作権課長補佐】  事務局でございます。本日の配付資料は、議事次第の下中ほどに記載のとおりでございます。以上です。

【末吉主査】  それでは、議事に入ります。本日の議事は、議事次第のとおり、(1)、(2)の2点となります。

早速、議事(1)の「ブロックチェーンやNFTの活用について」に入りたいと思います。中間まとめにおいて、新しい技術の活用についても触れておりますが、ブロックチェーンやNFTについては、著作物の流通促進などの期待の声があります。そこで本日は、JCBI(ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアチブ)理事の伊藤佑介様より、ブロックチェーンやNFTの活用方法や今後の展望などについて御説明をいただきたいと思います。

伊藤様におかれましては、事前に事務局よりお願いした発表時間に御留意をいただきまして、円滑な議事進行に御協力賜れば幸いであります。それでは、よろしくお願いいたします。

【JCBI(伊藤様)】  それでは、ここから私、JCBI代表理事の伊藤からお話しさせていきたいと思います。本日改めましてこのような場でお話しさせていただく機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

では、資料を進めていきたいと思います。

私、自己紹介ですが、私自身はもともとNTTデータという会社でシステム開発、SEなどをしていた人間です。ちょっと縁ありまして、博報堂という会社でコミュニケーション、コンテンツの領域に関わるようになりまして、主にコミュニケーション領域でのテクノロジー活用の取り組みをやってきました。

技術に対する興味が強くありましたことから、実はブロックチェーンについて2016年から個人的に注目していろいろな活動を始めまして、プライベートの活動として様々なブロックチェーンの取り組みに参画した後、2018年から所属会社の博報堂で多くのブロックチェーンの事業開発をやってきています。

そういった活動の中で、ブロックチェーンに関する興味、あるいはこういったことを社会実装したいという思いが強くなりまして、ブロックチェーンはやはり共創が最も中心にあって、共創のための技術であるという思いに至りまして、実はこの社団法人を、私のほうで僣越ながら発起させていただきまして、2020年2月にみなさんにお声がけさせていただき、コンテンツ企業7社様から始まりまして、今は、28社にまで拡大しているといった、そういった社団法人でございます。

この団体には、2つ大きな特徴ありまして、まず1つは、テーマとしまして、ブロックチェーン等の先端技術を使って、決して個社ではできない、業界横断で取り組まなければできないデジタル化を進めるということを大きな目的として、皆さん集まっています。

また2つ目につきましても、かなり重きを置いていまして、我々は情報発信をする協会でなく、自ら行動を起こす団体を標榜していますので、後ほど御紹介しますが、新しい市場であるNFTの成長に、アクションをもって寄与するという方針で、実際にすでに様々なサービスやシステムの提供、あるいは取組みの推進を行って、行動を起こす団体として皆さんで動いています。

また、加入企業はコンテンツ関連業界のいろいろな幅広い領域の皆さんいらっしゃいますので、現状、法務的なことを検討する著作権流通部会並びに技術部会、メタバース部会など、加入企業が興味を持つ様々なテーマで部会を立ち上げ、活動を進めています。

特にブロックチェーンの関連団体としては、少し他団体と異なる特徴として、仮想通貨取引所さんやブロックチェーンテックベンチャーさんの中心ではなく、特にこのNFTという領域に関わるようなコンテンツ業界の企業の皆様が多くいらっしゃいます。そして、消費者に向き合ってコンテンツビジネスをしている、様々な幅広いコンテンツ領域の、多様性のある加入企業の皆さんで、新市場であるNFTの育成をしていこうと考えて活動しています。また、加入企業は徐々に増えてきおており、現時点で28社もなっています。

では、ここで、私のほうからこのコンテンツを対象としたNFTの説明をします。NFTというと一般的には実はいろいろな情報を表すことができますので、サプライチェーンの荷物の位置情報のNFTとか、あるいは医療の情報を管理するNFTなどもあります。今回はコンテンツを対象としたNFTということについてお話します。まずはNFTの構造の御説明をした上で、その構造に起因する1つの大きな問題について御説明したいと思っています。

その御説明にあたり、皆さんもよくご存知のビットコインなどの暗号資産とNFTの構造の違いで、1つ大きな問題があるということを問題提起させていただきたいと思います。

それはシンプルに1点だけです。仮想通貨のデータというのは、全てのデータがブロックチェーンの中で管理されています。これ非常にいいことでして、ブロックチェーンの中で管理されていますので、改ざん性があって、そしてデータの永続性が長く、かつ誰でも見れる透明性があります。仮想通貨取引所様が投資家に取引サービスを行う上では、サービス自体の信頼性を担保する必要はあるんですが、一方で、ブロックチェーン上の仮想通貨のデータ自体の信頼性を担保する機関は不要です。そのため、御存じのとおりビットコインや、イーサリアム等の仮想通貨には、その仮想通貨のデータの信頼性を担保する機関はありません。ということで、データの信頼性を担保しなくてもいいというのが暗号資産の特徴であって、その点において優れています。

では、これを踏まえて、NFTにどんな大きな問題があるかということを簡単に御紹介したと思います。

NFTは暗号通貨と比べると1点だけですが、非常に大きな構造的な違いがあると思います。NFTというのはデジタルコンテンツの権利や契約関係を表すものですが、そのNFTの最も大切な価値の源泉といってもいいデジタルコンテンツのデータ自体が、ブロックチェーンの中に記録されておらず、対象となるデジタルコンテンツのURLしか記載されていないという構造上の大きな違いがあります。では、そのURLはどこを参照して見に行っているのか。

それの参照先は単なるウェブサーバーです。価値の源泉であるデジタルコンテンツは実はブロックチェーン上でなく、一般のウェブサーバーに入っていて、それゆえに改ざん性も低く、永続性もなく、透明性もない。大切な知的財産であり著作権を持っている、このNFTの価値の源泉であるデジタルコンテンツのデータ自体が実はブロックチェーンの外にあって、その信頼性を担保できないというのが一番の構造的な大きな問題としてあるのです。

ということで、ここで申し上げましたことは、NFTの価値の源泉であるコンテンツデータは実はブロックチェーンの中にないということです。それゆえ、ブロックチェーンの外にある、このウェブサーバーにある著作物のデータは、それが本物であるかという真正性や、あるいは権利処理が適切にされているか、適法なものか、といった信頼性を担保する運営主体が必要になります。

つまり、仮想通貨のほうはデータを改ざん不能であって、そのデータの信頼の担保する主体は不要な一方で、NFTのほうは、価値の源泉であるデジタルコンテンツデータの信頼性を担保する運営主体が必要となります。

実はこの問題を、ブロックチェーンの技術用語では、オラクル問題といいます。オラクル問題とは、ブロックチェーンに刻まれたデータは決して改ざんできないが、ブロックチェーンに刻まれていたデータが正しいかどうかをブロックチェーン技術は証明できない。よって、ブロックチェーンの中に外部のデータが記録される場合、そのデータの信頼性は、外部の単一の情報源を信頼しなければならない。つまり、信頼の担保する主体が必要であるということです。

ということで、オラクル問題として発生する信頼を担保する機関が、仮想通貨では不要ですが、NFTでは必要なるため、我々JCBIはこのオラクル問題に起因する課題に対して、いろんな取組みをやっています。

まず消費者に関する課題が2つあります。1つ目は、消費者が非正規のNFTを購入させられる問題です。それに対して、消費者の方が、正規品のNFTを明確に確認できるようにする取組をJCBIとして行っています。具体的には法人KYCをして、特定の出版社の正規品のNFTであることを認証するサービスです。そして日本のいくつかのNFTマーケットと連携しまして、正規品の漫画を明確に確認できるようにするABJマークのように、我々JCBIが認定した正規品のNFTにはJCBIマークをNFTマーケットのサービス画面上に表示するということをやっています。

2つ目は、NFTに紐づく契約内容を消費者が明確に確認できるようにすることです。NFTを購入した人が、契約に基づいて、何を閲覧できて、どこでどうそのコンテンツを使えることが許諾されているのかということが、消費者にとって大切なのですが、今のほとんどのブロックチェーンのNFTは、契約情報は一切NFT自体に記録されていません。そこで、消費者の方がNFTのデータを見れば、直接NFTに契約が記録されており確認できる「Content-Ethereum」というブロックチェーンの普及の支援もしていまして、消費者の方がいつでも契約内容をNFT上で見て確認できることで、安心してNFTを買うことができるような環境整備を行っています。

次に、権利者の課題も2つあります。一つ目は、違法なNFTが氾濫しており、権利者の許諾を取らないでIPのNFTを勝手に出されていしまっているという課題です。これにつきましては、我々クローリングサービスのようなもの使って違法なNFTを検知して、それに対する警告をするようなシステムの提供の準備をしています。これで権利者の権利を守っていきたいと思っています。

2つ目は、NFTを発行する時にしっかりと契約手続きがされていないという課題です。NFTを発行するときに、ライセンス契約をした上で発行しなければ、実際に違法なものを検知しても、どのような契約で何が許諾されているか分かりません。そこで我々はJCBIとして、NFTを発行するときに、ライセンス契約の締結手続きを支援するシステムをつくっています。今後は、これのシステムを業界のみなさんに無償で提供することで、NFTを発行するときにちゃんとライセンス契約を結んで、安心して権利者の方がNFTを発行できる環境をつくっていきたいと考えています。

次に、このNFTがもたらす本質的なイノベーションとは何か、我々コンテンツ業界団体として考えていることを申し上げます。

まず、今、ちまたで話題になっているデジタルコンテンツの高値販売は、NFTのもたらす本質的なイノベーションではないと思っています。

一方で、何が本質的かといいますと、NFTを使うと、1つのデジタルコンテンツをファンの方が様々な企業のサービスを横断して利用できる、そういった新しいユーザー体験ができるということが本質であるというふうに考えています。これは、ビットコインにおいてもそうです。ビットコインもデータ自体に価値があるのではなく、国をまたいで、企業もまたいで、あらゆるところで決済手段として使えることに価値があるのです。それゆえにユーザーは、こんな便利な支払い決済手段を使わないわけがないということで、ビットコインの実現しうるユーザー体験に価値が見いだされているのです。ブロックチェーンの本質は企業を超えて使えるデータです。なぜ企業が自分たちの会社を横断して、そのデータに対してサービスを提供するかというと、答えはシンプルで、そのデータがブロックチェーン上に記録されていることにより改ざんされることがないため安心できるからです。

同じように、NFTに関しても、1つの会社が発行したNFTに紐づくデジタルコンテンツを様々な企業のサービスで使えるようにするということ、これが起こすべき本質的なイノベーションだと思っています。

つまり、一言で言うと、我々コンテンツ業界がNFTを取り入れる目的は、投機ではなく、ユーザー体験のデジタル・トランスフォーメーション、つまり、ファンの方が今までNFTがなかったときに体験できなかった、そういった新たな体験を提供できるサービスをつくることです。現状のコンテンツサービスでは、1つのサービスでデジタルコンテンツを買ったら、そのサービス内でしか使えませんが、1つのコンテンツを買えば様々なサービスで使えるというふうに体験を変えるのです。今までなかったすばらしい体験をファンに提供できる提供するからこそ、それに対して対価がもらえるのであって、決してデータを投機的に売りつけることが本質ではないのです。コンテンツ業界は、これまでと同じように、新しい技術を使って楽しいコンテンツサービスをファンのために実直に開発して、その新しい体験に対して対価をもらうというのが目指すべき方向性で、これはNFTという技術の活用でも同じだと思っています。

今現在、インターネットを売りますとかインターネットを買いますというユーザーがいないのは、皆さん御存じのとおりです。なぜなら、インターネットは情報の流通を促進する手段であって、それ自体は売り物ではないからです。同様に、NFTも、コンテンツの価値を流通させるツールに過ぎません。ですので、NFTを売るとかNFTを買うというのは実はかなり本末転倒な話で、本来であれば、NFTを使ってどんなサービスをつくるかを考えるべきなのです。そのように考えると、今おこなわれているユーザーがNFTを買うとか、ユーザーにNFTを売るということは、本質的な利用にはつながらないということがわかると思います。

では最後に、NFTのビジネスモデルの在り方というのは、コンテンツ業界としてどうあるべきか、これも仮想通貨との対比でお伝えします。

仮想通貨のステークホルダーは、御存じのとおり、暗号資産を持っている投資家と、暗号資産事業者です。

暗号資産事業者がお金と暗号資産を交換する取引サービスを投資家に提供し、一方で投資家は取引手数料を払うということでビジネスが回っています。そして、この暗号資産のビジネスの最も要諦は何なのか。実は、ビットコインやイーサ等のブロックチェーン上の共通の暗号資産のデータに対して、企業横断で利用サービスを提供するアライアンスを組んでいるというところがビジネスとして価値を創出している源泉になります。つまり、このアライアンスがあるからこそ、世界中どこに行っても、投資家はビットコインという暗号資産のデータとお金を交換してくれるサービスを受けられるのです。そして、そういった暗号資産のデータとお金を交換してけるサービスから享受できる便益こそがビットコインに価値があって、ピットコインのデータそのものが価値ではないのです。暗号資産のデータとお金を交換してくれるサービスが世界中で企業横断で提供されるアライアンスこそが、暗号資産ビジネスの価値の源泉なっているのです。

つまり、暗号資産のビジネスモデルの最も中心にあるものは、共通の暗号資産というデータに対して法定通貨と交換できるサービスを提供するアライアンスであって、それが実現しているからこそ、今日、暗号資産市場というものが成立しているのです。

コンテンツNFTも同じです。ステークホルダーとしては、NFTもっているファンとライセンサーとライセンシーがいます。

まずはライセンサーがNFTマーケット事業者等のライセンシーにライセンス許諾をします。そして次に、ライセンシーとしてのNFTサービス事業者がファンに利用サービスを提供します。それに対して、ファンは利用サービスに対する手数料をライセンシーであるNFTマーケットに払います。最終的にライセンシーであるNFTマーケット事業者がライセンスフィーをライセンサーに払います。

このような流れで動くNFTビジネスにおいても、ブロックチェーン上の共通のNFTというデータに対して、企業横断で利用するサービスを提供するライセンサーとイラセンシーのアライアンスをつくることが、ビジネスの要諦だと思っています。

つまり、ライセンサーにとってのNFTのビジネスの要諦は、自社が発行したNFTに対して、共通して、どれだけ多くのサービスを提供するライセンシーによる大きなアライアンスを組めるかという、この1点のみになると思っています。

結果としてそのような大きなアライアンスが組めると、自社のコンテンツに対してサービスを提供する多くのライセンサーが、たくさんのファンへサービスを提供して、ファンから得た利用料から、ライセンスフィーが入ってくるといったエコシステムがつくれるようになります。実はもう、NFTをただ売るだけというトレンドはNFT市場では終わりつつあります。今後は、NFTを持っているファンにどんなサービスを提供できるか、そしてどんなアライアンスを組んでいくことができるのか、ということがNFT市場において水面下で拡大しており、こここそが押さえるべき一番のビジネスの要諦だと思っています。つまり、そのような収益を生み出すエコシステムをつくることがNFTビジネスの最終的なゴールということです。

最後に、NFTとメタバース、デジタルツインの位置づけについてお話しします。NFT視点で考えますと、メタバース事業者というのは、いわゆるNFTを使ったサービスを提供するライセンシーに位置付けられます。

メタバース事業者は、例えば、メタバース空間上で着られる服をNFTとして売ります。

つまり、メタバース内でデジタルアイテムをNFTとして販売して、ファンから販売手数料を得られるライセンシーというのが、NFT視点におけるメタバース事業者の位置づけです。

次に、デジタルツインというリアルなものとデジタルデータをつなげる存在としてグッズメーカーがいます。例えば、シューズメーカーを想像してください。シューズメーカー各社は最近、リアルなシューズを買うと、NFTのメタバース上ではけるデジタルシューもついてくるというようなデジタルツインの取り組みを始めています。

実は、リアルグッズメーカーはライセンシーとして、リアルな物を販売した顧客にデジタルアイテムのNFTを配って、ライセンシーとしてのメタバース事業者に、メタバース内でそのデジタルアイテムを利用したサービスを提供することをライセンス許諾しようとしています。その結果、ライセンサーとしてのリアルグッズメーカーは、ライセンスフィーをライセンシーのメタバース事業者から得るということです。

つまり、まとめますと、デジタルツインという領域では、このリアルなグッズメーカーがNFTに付加価値与えるということをやります。正直、今の消費者の方はまだ、私も含めてデジタルデータ単体に価値があると直感的に感じるのは難しいです。そのため、実はNFTの取り組みにおいて、リアルなグッズとNFTを一対としてデジタルツインの取り組みが増えてきています。当然のことですが、我々はリアルな物に対して価値を感じることには慣れていますので、やっぱりデータだけだと価値を感じがまだ正直難しいというフェーズであるため、そういったデジタルツインで、NFTとリアルのものをセットにするということが、今、NFTに価値を与えるという意味で非常に広がっています。

では、メタバースはNFTビジネスにとっての何かというと、アウトプットになります。メタバース空間というのは、いわゆるNFTを持っているファンがそれを使う1つのアウトプットとしての利用用途として大きい役割を担うことが期待されます。一方で、デジタルツインがNFTビジネスの何かというおと、インプットです。デジタルツインによってデジタルのNFTにリアルグッツの価値がインプットされることで、NFTの価値をよりファンが感じやすくすること手助けしてくれます。

実は、我々JCBIはここまでお話ししてきたNFTだけの領域に限らず、ブロックチェーンを使ったコンテンツ流通全般の取組もしています。今日はNFTのことを中心に御紹介しましたが、加入企業で共同して、音楽、出版、メディア、様々な分野の著作権情報を横断して管理するコンソーシアムブロックチェーンの運用もしています。ですので、加入企業がコンソーシアムブロックチェーンを活用したライセンス契約システムを開発したり、著作権侵害を守るシステムを開発したりもしています。

1つ新たな取組として今行っているものを御紹介します。

我々は、の新市場であるNFTだけではなく、既存のライセンス契約の流通の促進を図る取り組みも並行して行なっており、その活動の一環として、音楽、メディア、出版社などいろんな領域のライセンス実務者を呼んでヒアリングした結果、1つのPOCをやることを予定しています。

現状として、コンテンツ業界において、特に有名な人気IPを持っている皆さんは、あまり自分のライセンス情報を開示することがなかなか難しいというビジネスコンディションにあります。いわゆる売手市場であるということです。

大きなIPでは、映画や劇場のような非常にビジネスボリュームが大きいものはもちろんIP企業はライセンス対応しますが、人的リソースの制約があって、IPをクリアファイルに使うとか、Tシャツ使うとか、クッキーで使うみたい小口なライセンス案件は、担当者の人的リソースが足りず、対応できていません。

ですが、この今までマネタイズしてこなかった小口なライセンス案件がシステムで、自動的に対応できて、ロングテールの収益が上げることができるとしたら、IP企業として許諾していく可能性があることを見出しました。

そこで、我々JCBIとして箱庭的に、複数の加入企業で一緒に、利用用途を絞った形でIPの利用許諾をするシステムのPOCやろうとしています。また、本POCでは、JCBIに認定されたライセンサーと、これまでライセンス商品ビジネスの実績が多くある信頼のあるライセンシーをシステムでマッチングして、小さいロングテールの収益のビジネスが回るかということを、検証しようとしています。

以上でお話ししてきたとおり、我々JCBIは、コンテンツ企業が中心となり、NFTがもつ課題に対して、信頼を担保する組織として各種取り組みを進めています。そして、トラストアンカーとして新市場であるNFT領域をコンテンツ企業で引っ張っていき、健全に市場を発展させていこうと考えています。

一方、既存のライセンス領域におきましても、こういった多様なコンテンツ企業と一緒に、ブロックチェーン等の先端技術を使って、現実に即した形でライセンサー、ライセンシーが許容できるどんな流通の在り方があるかということを箱庭的にいろんな形で取り組んでいます。今後も、業界全体の発展の一助となるべく、御参考までに我々JCBIの取り組みを情報共有させていただける機会をいただければありがたいと思っています。

以上ご清聴どうもありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。

それでは、ただいまの御発表につきまして、今後の著作物の流通促進や対価還元の可能性などに関して議論を行いたいと思います。伊藤様への御質問や本議題への御意見がありましたならば、御発言をお願いいたします。

奥邨主査代理どうぞ。

【奥邨主査代理】  奥邨です。ありがとうございました。

私、法学が専門ですので、少し冒頭に御説明のあった問題が理解できていなかったらいけないので、ちょっと確認をさせてあげたいんですけども、ですから、あくまで技術的にあんまり正確じゃないかもしれませんけども、理解している範囲で言えば、このNFTとおっしゃっているのは、一種の鑑定書兼所有権証明書で、偽造というか、改ざんが不可能なものであると。

ただ、その証明書、鑑定書と、その鑑定対象のコンテンツとの結びつきは、その証明書の中に、例えばゴッホ「ひまわり」って名前を書いてあるだけで、別にその証明書がコンテンツに埋め込まれていないので、例えば、ゴッホの「ひまわり」というのを差し替えられてしまうと、全く意味がなくなると。今も鑑定書も実は鑑定書と美術品が別々にありますから、実はすり替えられちゃったら分からないという問題があります。それと同じことがあると。

それからもう一つは、その鑑定書自体を本当に正規の人が発行したのかどうかも分からないし、それからあと、そのコンテンツ自体が正しいものかどうかも分からないと。その辺が、ただ、それは分かりませんが、鑑定書さえ出来上がってしまえば、その鑑定書は絶対に改ざんできないというものだと。そういうことなので、そうじゃない鑑定書の改ざんができないところ以外のいろんな問題を、今のお取組の中で信頼性を担保するようにしようとされているというふうに理解をしたんですけれども、それでよろしいのでしょうか。

【JCBI(伊藤様)】  すいません、私の説明が不慣れで、全くおっしゃっていただいたとおりでございます。

【奥邨主査代理】  ありがとうございます。

【福井委員】  福井ですが、よろしいでしょうか。

【末吉主査】  どうぞ。福井委員どうぞ。

【福井委員】  伊藤さん、大変短い時間でぎゅっと詰まった御説明をありがとうございました。NFTの性格、理解については、おおむね今、奥邨先生のおっしゃったとおりのところと思います。

また、御紹介いただいたとおり、伊藤さんも御参加だった昨日の別の会議でも情報が出ましたけれども、オープンシー自身が1月28日のツイートで、自分たちの出品物の80%までが誤用、フェイク、スパムであると述べたとおり、今これが最大の問題になっております。オープンシー自体の売上げ規模は巨大に膨れ上がり続けておりますけれども、この課題には全く対応できていないと感じます。実際ちょっとのぞきに行って、何かキーワードを入れれば、侵害の山であるということは誰でも確認ができる状況ですね。

ただ、1点だけコメントするならば、これは著作物が外部のウェブサーバーにあるからというような置き場所の問題というよりは、たとえそれが中にあっても本質的には同じじゃないかという気がいたします。例えば、海賊版はファイルをどこに保管していようが、海賊版ですよね。つまり、NFT固有の問題というのとはちょっと違うかなという気がする。YouTubeやTikTok上の侵害物と同じではないけれども、問題は同根であって、つまり、信頼性の担保が必要であるということ自体は、コンテンツ流通全体の問題かなという気がするわけです。

そして、こちらは全く同感なんですけれども、おっしゃるとおり、NFT自体はある種の疑似的なオーナーシップとか、ある種の疑似的な保有感を持てるという、その魅力によって急速に膨れ上がりはしましたけれども、コンテンツの流通手段としては、単体ではもう行き詰まっているという気がいたします。これは、おっしゃったとおりライセンスというビジネスやそのマーケットと一体で議論をしていかないといけないだろうなというふうに感ずるところです。

この関連から最後に御質問なんですけれども、トラストアンカーとして一体、権利者団体とはどんな協力体制を現在組まれているかということです。つまり、JCBIとして正規NFTの認定事業を始める。これ非常によろしいと思うんですけれども、それは権利者側との協力体制がないと、なかなかうまく行かない気がするのです。付随して、それがNFT固有の認定サービスである必要がどのぐらいあるのかということもお伺いできればと思いました。私からは以上です。

【JCBI(伊藤様)】  ありがとうございます。御指摘いただいた点、全てそのとおりだと思っております。

最後に御質問いただいた点ですが、おっしゃるとおり、JCBI自体が少し早めにブロックチェーンのことを取り組んでいたということがあって、こういった取組を早くしていますが、実は我々が認定の事業をするに至った経緯は、お付き合いのある大手のIPホルダー様から、個社ではなくて、JCBIに限らず業界団体のような大きな枠組みの中で認定する仕組みがあると、自分たちがNFTビジネスするために非常に環境としてやりやすくていい、といったお声があってのことでした。ですので、どういう存在の業界団体の皆さんがこの認定をやる組織として相応しいかというところはまだ結論は出ていないと思っていまして、私自身も、我々JCBIでなければやれないとは思っておりませんので、たまたまブロックチェーン領域のNFTでは先鞭を切って進めているだけだと認識しています。日本には、いろんなコンテンツ領域で、これまで責任を持ってIPを守る取組をなさっている業界団体さんが多数いらっしゃいますので、そういったところの皆様と御意見交換をしながら、どの業界団体のみなさんがやることが最も業界全体にとっていいかということを議論できれば、というスタンスでおります。

そういう意味ですと、これまでも文化庁様や経産省様、内閣府様にいろいろ御縁いただきまして、関連するそういった業界団体の皆さんを御紹介いただてきていまして、ABJの皆さんとも意見交換などもさせていただいています。もしかすると我々JCBIはNFTのトランスアンカーの議論のきっかけになって、最終的にはしかるべき業界団体のみなさんがやられるということが現実なのかなと個人的には思っていたりします。

【福井委員】  ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。中村委員どうぞ。

【中村委員】  ウェブスリーにどう取り組むかというのは国としても重要なテーマとなるべきところなんですが、伊藤さんが指摘された問題の存在が、NFTそのものの価値を下げて、普及を阻害する最大要因じゃないかと私も考えます。

そこで、伊藤さんのJCBIは民間のアライアンスで信用を形成するアプローチを取ると。だから、シェアリングエコノミー業界が取ったような道にちょっと近いのかなと見受けるんですが、質問は、それで十分なんでしょうか。

国として環境整備あるいは制度整備ですとか、あるいはいろんな団体を国が紹介する以上に支援する、応援するみたいな、何かそういう要望ってありませんか。

【JCBI(伊藤様)】  そうですね。実はそういった様々な声を今お聞きする場にいますので、そういった実際には法的な枠組みのところもかなり気にされているコンテンツ業界の皆さんもいらっしゃいます。特にそこに関しては今、ちょうど議論で金融規制との関係のところも相まって、このコンテンツ領域のルールがどの規制領域で整備するかということを気にしている皆さんがいらっしゃいまして、ちょっと私は全体の結論は申し上げづらいんですけども、やはりそういったことに関するルールのところは金融的なルールメークの規制でなくて、コンテンツビジネスをもともとやってくださって、関わっていらっしゃる官公庁並びにそういった関係者の皆様で決めていきたいというところの話は上がっているというところでして、結論的には、どちらか白黒ついていないんですが、そういった議論の場があるとうれしいという方もいらっしゃります。また、金融ではない領域のみなさんからそういったものを提起していただける方がいらっしゃるといいという声もききます。ただ、金融領域の暗号資産産業が多くなっている経緯もあるで、金融観点にフォーカスが当たっていて、そこじゃない領域の方の議論の場とか、そういうのが今はあまりありませんので、まずはそういう議論がされる場をあるとよく、今日もそういった意味ですごく我々にとっては意義深い場だと思っていますが、そういう議論の場を増やしていって、その部分の議論を進めていく今スタート地点かなというように個人的には思っています。

【中村委員】  分かりました。ありがとうございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。坂井委員どうぞ。

【坂井委員】  坂井です。今日はありがとうございました。

最近、クリエイターの人に聞いていると、NFTって本当に不評で、勝手に発行されちゃったみたいな、そういうような人がやっぱり多い中で、そういった課題を解決していく1つのやり方なのかなというふうに思って、感謝いたします。

私のほうからは、去年、NFTってめちゃくちゃはやって、メタバースとNFTばっかりになっていたんですけれども、一方で報道とかを見ていると、何かデジタル資産の所有権みたいな、何かそんなようなニュアンスで触れられるようなことが多くて、そこら辺に対しての見解というか、そういう誤解も含めてどうやって解決をしていったらいいのか。そこがないと、今の投機的なところからなかなか離れられないような気がしているんですけど、そこら辺について教えていただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。

【JCBI(伊藤様)】  ありがとうございます。本当におっしゃるとおり、昨年からはそういった特にメディア等で金額の部分ばかりにフォーカスされて、それぞれの活動の意義みたいなものがあまりフォーカスされていなかった状態があると思っています。

あと一方で、コンテンツ業界の皆様も、やはり話をお聞きすると、経営者の皆さんの視点ですと、大きな資産が動いているものをちゃんと見定めて、何かするか、しないか決めなければいけないということで、そういったかなりコンテンツ企業の皆さんの幹部の皆様が検討せざるを得ないという形で注目が集まった状態があると思っています。

一番そのお金のところの部分が誤解を招きやすい構造になっていますのが、暗号資産等は板があるので、値段が上がった、下がったというところがリアルタイムで出ていて、今時点の被害の度合いが分かるんですけども、残念ながら、NFT的なものは毎秒毎秒取引されていませんので、結局幾らで売れたと、報道もそうですし、あと情報開示の意味でも、その後、何か月売手がついていないということで被害が明確化しないところがあり、そのような被害が隠れてしまうところにつながっています。これからのことで危惧していることは、少ない預金の中で生活している方がそれをNFTに投資して、実はその後買手がついておらず実質的に損害を被っているというようなことも起こって、今後被害が顕在化してくるのではと心配しています。我々もそうですし、取り上げ側のメディアの方も注意しなければないのは、売れたじゃなくて、その後の状態、板がどういう評価になっているかところが非常に重要で、メディアで取り上げられてかなり有名なNFTの事例で、一千幾らで売れたという作品のその後の売買経緯を、継続的に見ているんですけど、オープンシーで、その後1回も売れていませんし、あと、オファーが見えるんですけど、一千万円以上で売れたものにオファーが500円とかしかきていない状態で、これ実はもう実質的に被害が起きているんですが、そういったところが明確化しないということがあります。このようなことが見えづらいというのが1つ、NFTの大きな構造的な問題で、そういったところをしっかり話していく必要があると思っています。

一方で、NFT市場の市況として、NFTを売るだけではビジネスが厳しいというところまで差し迫っていますので、おそらくNFT事業をやっている皆さんは、今後は、NFTを使ったサービスを提供して、ただNFTを売るだけじゃなくて、エコシステムの中でそれを持っている人に何かサービスを提供するという動きは着実に、進んでくると思いますので、そういったサービスが実現してきて、もう少し一般の方に広がると、投機で売れたものがその後は値がついていないという本質ではないことではなく、利用できる意味にあるサービスを見て、もう少しポジティブで前向きな見通しで感じてもらえるタイミングが来るんじゃなかろうかという期待していますし、また、それを自分自身としても広めていきたいというふうに個人的にも思っています。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。岸委員どうぞ。

【岸委員】  今、先ほどの中村さん含めお二人の質問とも関係するんですけども、例えば今、自民党なんかでもNFTに関する検討が進んでいるんですけども、当然ながらこれ、暗号通貨とコンテンツごっちゃになっていて、結果的に税法上の扱いをどうすべきとか、そんなことばっかりになっちゃっているんですよね。

お話、今の議論を伺っていて、やっぱそれだけじゃ足りないなというのは感じるんですけども、じゃ、そういう金融的な観点以外から、ある程度、それがルールメイキングなのか、そこにもし公的な部分が関与するとしたら、それは取引ルールといった観点が大事になるんでしょうか。または、まさに1点物であって、その権利をどうするかとか、そういう観点からのアプローチがいいのか、要は金融とか税制以外、どういう観点からのアプローチが本来は正しいのかなというので、もし御示唆があれば教えてもらえればと思います。

【JCBI(伊藤様)】  御質問ありがとうございます。率直に言いますと、そこに対して、実は答えを持ち合わせてはございませんが、私もちょっといろんな方と議論をさせていただく中で、今、金融のルールのところに入りそうな形の雰囲気を感じている中で、1つ考えていますのは、NFTと言って十把一絡げにされがちですが、それぞれでかなりその対象となるユーザーが違うということが見えていまして、例えば今、高値で売れているものは、ほとんどがコンテンツファンじゃなくて、暗号資産投資家が購入していたりします。ビットコインが値上がりして、余っているお金で買っているという暗号資産投資家もいらっしゃるので、そういった暗号資産投資家のみなさんを対象とするNFTとそうではなくコンテンツファンを対象とするNFTとの区別というのも例えばあると思います。暗号資産家の方を対象とするNFTは、売り買いが頻繁に発生するので、そういった転売が中心になるNFTは部分は金融的なものに準じるのかもしれません。

一方で、私もささやかながらNFTのファン向けの無名のサービス事業を展開しているんですが、暗号資産家の皆さんとは全然違うマスのコンテンツファンが対象のサービスとなるとまた違う様子が見えてきました。私もそのサービスで2次流通の仕組みをつくったんですけど、2次流通の仕組みの機能をリリースした時に、ツイッターでファンの皆さんから言われたのは、「このサービス何考えているのかな。僕らファンって、推しの人を応援するために推しのコンテンツを持つのに、2次流通なんかに出すわけないじゃないか。」といったこういう声があって、実はコンテンツファンを対象とするNFTの場合、必ずしも2次流通が中心にならない世界も見えてきていまして、最近は、NFTは必ずしも移転が中心じゃないユースケースもありえるという話もでてきています。やっぱり所有されて、それを持っている人に価値を与える使い方もあるので、私としては、もしかしたらNFTの利用対象者と利用用途で区別して、移転中心のものはもしかしたら金融規制にかけざるを得ないかもしれないですが、一方で、移転を中心としない利用中心のものというのは対象とする議論は相応しくないかもしれないと思いながら、まだ日々悩んでいる途中です。

【岸委員】  なるほど。ありがとうございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。

ほかにいかがでございましょう。よろしいですか。ありがとうございました。

それでは、伊藤様におかれましては、御協力いただきまして誠にありがとうございました。伊藤様、これで御退室をいただきます。ありがとうございました。

【JCBI(伊藤様)】  ありがとうございました。皆様の貴重な御示唆、非常に参考なりました。これを基にまた活動を進めていきたいと思います。どうも本日はありがとうございました。失礼いたします。

【末吉主査】  ありがとうございました。

なお、次回のこの本小委員会におきましても、ブロックチェーンやNFTの活用につきまして、別の有識者をお招きして、さらに議論を行いたいと思います。

それでは次に、議事の(2)「DX時代に対応したコンテンツの権利保護、適切な対価還元方策について」に入りたいと思います。

今年度、文化庁委託事業として、デジタルプラットフォームサービスにおけるクリエイターへの対価還元に関する調査が行われています。そこで、その結果の報告と、DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策に関する検討の視点について、事務局より説明をお願いします。

【高見流通推進室長】  事務局でございます。お手元の資料の2、それから参考資料の2、3、こちらが関係するものになりますので、事務局より内容につきまして御説明を申し上げます。

資料2を御覧ください。2ページ目でございます。検討の趣旨について書いてございます。令和3年7月に文部科学大臣より諮問をさせていただいた中で、審議事項の2つ目といたしまして、DX時代に対応したコンテンツの権利保護、適切な対価還元方策についてというものがございました。

こちらのページの下のほうに枠囲みがございまして、諮問文の抜粋をおつけしてございますけれども、その下の下線部のところでございます。デジタルプラットフォームサービスを取り上げて、それについては、サービス事業者とクリエイターの間にバリューギャップがあるとの指摘があるということ。

それから、各クリエイターとコンテンツを流通利用に供する事業者との契約の在り方についての課題も指摘されているというようなことで、課題をとらまえております。

こうしたことを踏まえまして、先ほど主査より御紹介をいただきましたけれども、今年度、文化庁の委託事業といたしまして、デジタルプラットフォームサービスにおけるクリエイターへの対価還元に関する調査というものを行いましたので、その内容につきまして、この後、御説明を申し上げます。

3ページを御覧いただけますでしょうか。こちらの調査における対象分野につきまして、御説明をいたします。本調査ですけれども、昨年の10月から12月という限られた時間の中で調査を行ったという状況もございまして、一定の分野を限定する必要があったということがございます。ですので、本調査におきましては、まず音楽分野を取り上げまして、調査をいたしました。

その理由といたしまして、四角の囲みにございますが、音楽分野においてデジタルプラットフォームの影響が拡大をしているということ。また、音楽分野におきまして、クリエイターへの対価還元が十分になされていないのではないかという問題提起もあったということをきっかけといたしまして、取り上げたところでございます。

デジタルプラットフォームサービスにおける音楽の配信の形態といたしまして、このページの下の段に図解をいたしましたけれども、主にユーザーアップロード型、サブスクリプション型、ダウンロード型、この3つが存在するところでございますけれども、ダウンロード型につきましては、日本における音楽の聴取方法としての利用割合が減少傾向にあるということもありまして、本調査におきましては、ユーザーアップロード型とサブスクリプション型に着目をして調査を行いました。

4ページ目を御覧いただければと思います。こちら、世界における音楽市場の動向というところでございますが、対価還元を考えていく上で、市場の動向というところもしっかりと見ていく必要があろうということでおつけをしておりますけれども、こちら御覧いただきますと、グラフの赤い部分、こちらがCD、レコード等となっておりまして、パッケージの売上げになります。これは世界的に減少傾向にあるという状況でございます。

もう一方で、近年伸びているのがこの青い部分、ストリーミングというところでございまして、この売上げが増加している状況が見てとれるというふうに思います。

次に5ページを御覧いただきますと、こちらは日本における音楽市場等の動向というのをお示ししております。左側のグラフでございますが、音楽ソフトの生産、それから音楽配信の売上げの実績の推移を示しております。

こちら日本の特色といたしまして、青い部分が音楽ソフトを表しております。こちらの生産の実績がまだかなり多いという状況です。

一方で、赤い枠で囲みましたところが音楽の配信でございますが、近年はこの割合も伸びてきているという状況になってございます。売上げですとか生産の実績で見ますと、このような状況でございますが、その右側に音楽の聴取方法に関するデータをお示ししております。

こちら御覧いただきますと、1位がYouTubeとなってございまして、2位がテレビ、3位に定額音楽配信サービスの全体というのが出てきておりまして、音楽CDによる聴取を上回る状況になってきております。

次に6ページを御覧ください。本調査における具体的な調査内容、方法についてお示しをしております。大きく2つの柱で調査をいたしまして、1つ目が、デジタルプラットフォームにおけるクリエイターへの対価還元に関する実態調査というふうに書いておりますが、国内の状況につきまして、主にヒアリングを中心に行った調査になります。本日御説明をいたしますのは、そのうちの調査事項の1と2、ユーザーアップロード型、サブスク型サービスにおける実態というのを御紹介申し上げます。

もう一つの柱といたしまして、国内外における関係法令等の対応調査というものも併せて行っております。こちらにつきましては、主にDSM著作権指令、それに基づいて制定されたEU加盟国の国内法等の状況について、お調べをして、まとめた内容になります。こちらにつきましては、本日ではなく、次回の会の中で御紹介を申し上げたいというふうに考えております。

今回の国内のヒアリングをどのような方に行ったのかというのが、7ページにお示しをしてございます。本小委員会の数名の委員の皆様にも御協力をいただきまして、調査を行いました。ありがとうございました。

8ページには、本日御議論いただきたいことというのをあらかじめお示しをしてございます。この後、御説明申し上げますのが、デジタルプラットフォームにおける著作権、著作隣接権に係る対価還元の構造及び実態、この結果につきまして御報告を申し上げますが、それを御覧いただいた上で、クリエイターへの適切な対価還元について、どのような視座・視点で検討を深めていくべきかということ、どのような点に着目をして、これは国が行っていく著作権制度政策上の対応、あるいは競争法等の他の政策上の対応が必要かといった観点から御議論をいただきたいというふうに考えているところでございます。

9ページ目以降が、著作権に係る対価還元の実態についてまとめた内容になります。

10ページと11ページを御覧いただければと思いますけれども、こちらが著作権に係る対価還元の構造についてお示しをしておりまして、10ページがユーザーアップロード型、11ページがサブスクリプション型ということでお示しをしております。

特徴といたしまして、著作権等管理事業者がクリエイターとそれぞれのサービス事業者との間に立ちまして、包括的利用許諾契約を結び、クリエイターに代わって楽曲の利用許諾を行って、サービス事業者からの利用報告を基にして、使用料の分配を行っているといったような構造になってございます。

非委託者に関しては、その下に書いておりますけれども、管理事業者を通しませんので、それぞれユーザーアップロード型サービス事業者が提供する権利管理のツールが使える場合には、それによって対価を得られる場合もあるということですとか、あるいはサブスク型の場合には、音楽配信代行サービスといったものを通じて対価を得られる場合もあるというような状況になってございます。

12ページには、この包括的利用許諾契約に基づく著作権使用料の還元に関する法的な整理と実態ということをお示ししております。これは管理事業者へのヒアリングを基に整理をしたものでございますけれども、包括的利用許諾契約の締結に当たりましては、個々の音楽コンテンツの利用実態に即した使用料規程上の利用区分を決めていきまして、それぞれの使用料の評価、それから適用関係を定めているという話がございました。

使用料規程に関する法的な整理を下に書いてございますが、著作権等管理事業法上、管理事業者は使用料規程を定めるとき、または変更する際に、利用者またはその団体からあらかじめ意見聴取するように努めなければならないと努力義務が課されておりますが、指定管理事業者に関しましては、利用者団体からの協議の求めがあった場合には応じる義務があるというようなつくりになってございます。

実際のところですけれども、JASRAC、NexToneいずれにつきましても、利用者代表団体であるネットワーク音楽著作権連絡協議会といったところに意見聴取を実施して、協議の上で使用料規程を定めているという実態が確認されました。

また、使用料に関してでございますが、法的な整理を下に書いておりますけれども、こちらも管理事業法上、使用料規程に定める額を超える額を請求してはならないというふうに定められておりますので、実態といたしましても、包括的利用許諾契約において使用料規程に定める使用料の額を上限として、具体の額が設定をされているという実態が確認をされました。

13ページを御覧ください。こちらは各管理事業者やプラットフォーム事業者、それからクリエイターを代表する団体に対するヒアリングを行いました結果をまとめてございます。13ページには管理事業者とプラットフォーム事業者に関することをまとめておりますが、一番上を御覧いただきますと、この包括的利用許諾契約というのが具体にどういう中身になっているのかというところ、これが確認できるかどうかというところだったんですが、秘密保持契約として締結をされているということで、第三者がその内容を直接的に把握するということは不可能でございました。

その上で、管理事業者からヒアリングをできた結果が緑の枠囲みの中です。使用料規程の範囲内で各サービスの特性を考慮して、プラットフォーム事業者との交渉を行って、適切な対価還元が実現できるように努めていますといったこと、その中には、2つ目の丸ですけれども、協議において、使用料規程に定める上限よりも低い額という要望を受けて対応するケースもあるということですが、権利者の利益を毀損することがないようにということを掲げつつ、妥当性を勘案して合意する場合もありますという話もございました。

また、プラットフォーム事業者が提供するサービス、コンテンツの変化が激しいということで、契約に関しては随時見直しをして、使用料に反映をさせていますという話もございました。

最後の丸を御覧いただければと思いますが、プラットフォーム事業者に限定されないステークホルダー、先ほど御紹介したネットワーク音楽著作権連絡協議会というのもそうですし、こういったステークホルダーとも交渉した結果に基づいて、具体の使用料の額が決定されるので、プラットフォーム事業者のみがその額に影響を及ぼしているものでもないという話も伺うことができました。

一方のプラットフォーム事業者でございますが、自分たちとしては、管理事業者が定める使用料の支払いというのを行っていて、自社が権利者よりも優位的な地位にあるとは思っていませんというような結果が得られました。

次に、クリエイターの感じ方を14ページで御紹介しておりますけれども、青枠囲みの中です。先ほどの管理事業者とプラットフォーム事業者との具体的な交渉ですとか契約内容については、これはクリエイターには開示をされていないですというお話がありました。ですので、対価還元の仕組みや計算方法が不透明なんですというお話がございました。

具体にその包括的利用許諾契約における使用料率がどうなっているのかといったことをお尋ねした場合にも、これはクリエイターのほうから管理事業者に公開請求をしても開示されない場合もあるんだという話がございました。クリエイターは権利の管理を委託しているわけですけれども、使用料規程の策定にどれだけ関与しているのかといった点も確認しましたところ、最終段階の総会の場では関与はできるわけだけれども、総じて直接関与する機会というのは非常に乏しいですというお話もございました。

また、プラットフォーム事業者に対する関係がどうかということも聞きましたけれども、作詞家・作曲家の団体であってもデジタルプラットフォーム事業者との関わりがないですというような話がございました。

これに関連いたしまして、有識者のほうからも、まずはプラットフォーム事業者に対して、対価還元に関わる情報の開示を求めるということを検討してもいいんじゃなかろうかというお話もいただいたところです。

次に15ページ、16ページを御覧いただければと思いますが、これにつきましては、具体にクリエイターに還元される著作権使用料の額について1例を御紹介している内容になります。

15ページの青枠囲みの中です。あるサブスクリプション型サービス事業者のとある時期における1楽曲の著作権使用料についてお聞きしましたところ、1再生当たりにこれは換算したもの、つまり、特に1再生当たりの値段が固定で決まっているという仕組みではなく、その時期の使用料というものがあって、それを割り込んだときに、1再生当たりに換算しますと、0.16円というような試算ができるという例がございました。

こちらについては、全てがクリエイターに入る場合もあるでしょうし、音楽出版社を経由していく場合もあるということで、音楽出版社、作詞家、作曲家の3者にそれぞれ分配されるというのがこの例でございましたが、例えば、この例では音楽出版社に0.08円、作詞家・作曲家さんに0.04円ずつというような結果になっているということでございます。

16ページに続きを書いておりますが、仮にクリエイターが受け取る1楽曲1再生当たりの使用料を0.04円、これが変わらないという仮定の下で100万回再生を機械的にかけると、ようやく4万円になるということでございます。一般的な楽曲の再生数が1万回程度ということでございますので、非常に100万回再生を達成することが難しいという状況の中で、この受け取る使用料の額というのが安価なんじゃないかというのが、クリエイターから示された見解になります。

委員の先生方におかれましては、先ほどの管理事業者とプラットフォーム事業者の主張というか、説明というところと、クリエイターから得られたこの見解や使用料の具体の額を照らしたときに、何らか国として著作権制度政策上の対応というのが考えられるかどうかといった視点で御意見を賜ればというふうに考えております。

次に17ページ以降を御覧いただければと思いますけれども、こちらは著作隣接権に係る対価還元の実態についてお示しをしたものになります。

18ページ、19ページは、先ほど御紹介した構造とほとんど同じなんですが、先ほどは著作権等管理事業者が間に立っていたところ、隣接権に関しましては、レコード会社がそれぞれのサービス事業者とライセンス契約を締結しているというところが変わっております。

次、20ページを御覧いただければと思いますけれども、ライセンス契約に基づく著作隣接権使用料の還元についてということで、今回明らかになった実態といたしまして、まず、レコード会社が間に立っていることの意義といたしましては、それによって還元される対価というのを最大化するというような収益最大化の観点で、管理事業者ではなく、レコード会社が個々にライセンス契約を締結しているんだということが確認をされました。

その上で、各レコード会社の規模は大小様々で、交渉力も異なるので、契約条件に差異が生じやすいのではないかということ、比較的規模が小さいインディーズレーベルに関しては、プラットフォーム事業者とライセンス契約を締結すること自体が難しい現状もあるんだということも聞かれております。

それに関しては、インディーズレーベルのための世界的な権利管理団体として、Merlinというのが発足をしていると。そこが代表して、プラットフォーム事業者に対して交渉を行っているというような事例も聞かれております。

こちらも著作権のときと同様でございますが、サブスクの事業者ごとに使用料の支払い額が大きく異なる特徴があるということ。具体的には、大手のサブスク事業者のほうが安価な傾向にありまして、1楽曲1再生当たりにならすと、使用料は0.5から2.5円程度の幅があるという状況も確認されました。

その下に書きましたのは、関連してですけれども、ユーザーアップロード型サービスの捉え方について、レコード会社と実演家の間に見解にかなり差があるということをまとめておりまして、レコード会社においては、ユーザーアップロード型サービスに楽曲を上げていくことで、作品のプロモーション効果は否定しないんですけれども、売上げの低下が懸念されるというほうが主張されておりました。

それに対して実演家のほうからは、売上げ低下を気にするよりも、プロモーションの一環として重要であって、ライブへとつながるものだから、どんどん上げていきたいというふうに捉えている傾向が明らかになりました。

このユーザーアップロード型サービスの位置づけ1つを取ってみても、この両者の違いもあったりして、対価還元の適切性というのを一概に評価することは難しいというような見解も得られたところでございます。

最後の21ページを御覧いただければと思いますが、これはまたプラットフォームサービス事業者から少し離れますが、実演家とレコード会社の間の対価還元にも差があるんだということも聞かれておりまして、上のビュレットに関しましては、実演家のほうからいただいた御意見になりますけれども、ストリーミング配信については、レコード会社に実演家の送信可能化権が譲渡されることが多いということで、メインの実演家には売上げの1~3%しか入らないですというような話がございました。もう少しここが上がらないんだろうかというような御主張でしたけれども、その下はレコード会社の見解でございますが、アーティストのプロモーション費や育成費に一定の費用がかかっている現状も踏まえると、これは売上げの1~3%というのが著しく不当だというふうには言えないんじゃないかという御見解も示されたという状況でございます。

本日御紹介をいたします構造及び実態というのはここまでとさせていただいた上で、8ページにお示しした論点というか、どのような視座・視点というのを持って今後、この対価還元、適切な対価還元方策について検討を深めていけばいいのかというところについて、ぜひ先生方から御意見を頂戴したいと思っております。

資料の参考資料の2が、今、御紹介をいたしました調査研究の報告書の本体になりますので、併せて御参照いただければと思いますのと、参考資料の3といたしましては、こちら適切な対価還元ということを考える上で、それぞれ、今、コンテンツの市場規模がどうなっているのかということ。それの推移も含めてお示しをしているのと、特に今回の音楽産業に着目をしたときに、それぞれの市場規模や売上げの実績ですとか使用料徴収額の推移、配信の実態等々につきまして、関連のデータをおまとめした内容になりますので、これも併せて御参照いただきながら御意見をいただきたいというふうに思っております。

事務局からの説明は以上になります。どうぞよろしくお願いいたします。

【末吉主査】  ありがとうございました。まずは音楽分野を中心に、今回の調査研究で明らかになった実態について御説明をいただきました。

今後議論を進めるに当たりまして、本日はどのような視座、視点で検討を深めていくべきか、今後さらに実態を調べていく必要があるかなど、各委員の皆様の御意見をいただきたいと思います。

それでは、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。仁平委員どうぞ。

【仁平委員】  よろしいでしょうか。日本ネットクリエイター協会の仁平です。お世話になります。

今のお話の中でもありましたが、サブスクの場合、権利者に返る金額というのが結構少ないというところはいろいろと話題になっています。特に、今現状どうやってサブスクの印税を計算しているかというと、そこのSNSというか、その配信会社に入ってくる全体のお金というのを母数にして、再生時間なりでそれぞれの楽曲何再生時間したかというようなその案分の仕方をするんです。

そうなってくると、当然のことながら、超売れっ子楽曲のところにお金が集中するという流れになってしまっています。これをちょっと改善するという意味で、これも私、外部の方から聞いた話なんですけど、海外ではこの計算方法を変えるという動きがあるようです。

それは何かというと、視聴者1人ずつが、この人は300円払って、聴いた楽曲はこれとこれとこれ、だから、その300円の中を原資にして、これとこれとこれに分配するみたいな個別の視聴者単位での分配ということが、今後、今ヨーロッパのほうでは検討されているという報告をちょっといただいたことがあります。

このやり方をすれば、当然のことながら、新人さんであるとか、いわゆる濃いファンはいるけど、全体的に数は行かないよみたいなところにもちゃんとお金が分配されるというようなことになりますので、このあたりはすごく未来が見えてくるんじゃないかなみたいな話がありました。

日本において、まだまだこれからもっともっとサブスクって伸びていくと思うんで、そのあたりの収益の分配の方法というのは企業様が決めることなのかもしれないんですが、そのあたりの実情調査というものが今後必要になってくるかなというのが1点です。

実はもう1点ありまして、これはボカロPさんでも結構そうなんですけど、今、海外での配信というのは結構増えてきています。ボカロ楽曲が海外で聴かれるという場合が多くなってきているんですが、海外で著作権印税をきちんと取るには、簡単に言いますと、ボカロPさん御本人がJASRACメンバーになるということが必要になっています。

基本は今、ほとんどのボカロPさんは音楽出版社を通して、JASRACなりNexToneなりに楽曲を預けて、自分自身はJASRACメンバーにならない方というのは結構多いです。

それも大分最近は我々JNCAの活動によってと言うと、ちょっと口幅ったいですけど、少しずつJASRACメンバーに個人的になっていくという方たちも増えてきましたが、まだまだ少ないです。

これ御存じのとおり、JASRACメンバーにならないと、著作権者への収益分配というところが海外から正式に正確に来ません。なので、今後海外を目指せば目指すほど、JASRACメンバーになっていくということが物すごく大事ですよね。JASRACの浅石理事長なんかは、音楽をやる上でJASRACメンバーになるのはパスポートを得るのと同じだみたいな言い方をしていて、別に私、JASRACさんを宣伝するつもりで言っているわけではないんですが、そのあたりの実は仕組みというのがまだまだ、一般クリエイターさん、もしくはプロフェッショナルと言われているようなインディーズ系の人たちも御存じない方が結構多かったりするので、そのあたりの啓蒙活動を含め、実情どうなっているのかという調査も必要なのかなと。

以上2点が私の意見です。ありがとうございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。福井委員どうぞ。

【福井委員】  事務局、大変充実したお調べと要領のいい御報告をありがとうございました。

3点申し上げたいと思います。まずは、作詞作曲の場合の対価を例に挙げますと、やはり1再生0.04円という推計は衝撃的には違いないと感じます。CDを例に挙げるならば、御存じのとおり6%ぐらいが作詞家・作曲家側、JASRACに払う使用料としては発生しますね。そうすると、2,500円のCDですと、1枚で150円、それが作詞家・作曲家がばらばらだとすると、お一人当たりの配分額は35円ぐらいかなというところです。つまり、900倍ぐらい、恐らく計算でいうと違う。

もちろん、CDは複数再生されるのが普通ですが、900回は聴かないかなと思うのと、これだと、ネットで1万回再生というなかなか悪くない成績を上げたときに、大体CDが11枚売れたときの収入と同じぐらいが作詞家や作曲家に入ることになって、ライブ1回の手売りでもできそうだなというぐらいの感じです。

よって、これは、果たしてプラットフォームの利益がどのぐらいあって、そのうちどのぐらいの割合がクリエイター側に還元されているのか、やっぱりプラットフォームからの情報開示がどうしても必須じゃないかと感じたのが1点目です。

それから2点目ですね。クリエイター側の聞き取り結果として、集中管理団体からの情報開示があまりされず、不透明である、関与の機会が少ないというコメントがあったようです。これはいつでも出てくるお話といえば出てくるお話なので、管理団体さんにはもちろん別途の言い分があろうと思うのですが、我々はこの小委員会で集中管理を進めていきましょうという方向性を打ち出しておりますね。つまり後押ししているわけです。その後押しを集中管理に対してする以上は、今後の集中管理の運営の透明性とか、それから公平性、それもただ単に人的に依存するんじゃなくて、仕組みとしてどうビルドインしていくか。このことは視点としてやっぱりどうしても重要です。もっと議論されていいんじゃないかなと感じました。

最後です。バリューギャップ、今回は音楽の配信の対価ということにほぼ絞った調査になっていて、それは入り口としてはそれでよかったと思うんです。ただ、バリューギャップは本来もっとずっと広い概念で、音楽は組織率も集中管理率もかなり高くて、特殊な分野と言えるわけですね。よって、他ジャンルの実態とか海外の例の把握、これをぜひ進めていただけないか。

特に、例えばニュースメディア関連でいうと、欧米ではプラットフォームへの富の偏在ということがやはり相当問題視されており、19年のEUの著作権指令はもとより、20年オーストラリアでのニュースメディア法の成立など、制度側の関与も大きいですね。それがすべて正しい法律だったかの評価は別論ですけれども、オーストラリアでいうと、こういう法律がきっかけになって、民間での話合いが進んで、結果、グーグルもフェィスブックもメディア側と新たな契約の上で新サービスを開始した例も報告されているところです。この辺、海外の例もさらに報告いただければというふうに感じました。

長くなりました。

【末吉主査】  ありがとうございます。

ほかにいかがでございましょう。奥邨主査代理どうぞ。

【奥邨主査代理】  ありがとうございます。まず事実確認なんですが、もしくはこの事実あんまりまだはっきりしてないということであれば、さらに調べていただきたいというところが1つで、著作権の場合と隣接権の場合の対価還元構造、基本的な仕組みは同じですよという御説明があったと思うんですけれども、カバー率という点では全然違うのかどうかということなんですね。

というのは、著作権のほうは基本的に包括利用許諾を結んでいて、しかもそれでJASRACさんとNexToneさんが結んでいれば、ほぼ全部カバーされているということだと思うんですけれども、隣接権のほうは、例えばレコード会社さんが中心に個別にやっていますということになると、それがそもそも包括なのか、それとも選択的なメニューなのかによって、カバー率結構違ってくるんじゃないのかなと。

そういうのが交渉力とか、いろんなことに影響しているのかどうかというのも、やっぱり規模のレベルが分からないと違ってくるのかなというような気がいたしますので、その辺、今、分かっていればあれですし、分からなければまたさらに詳しく調べていくということが必要な分野かなというに思いました。それが1点です。

あと、2点目は、福井委員がおっしゃったところの1点目、2点目に近いところなんですけど、やはり検討する上では事実関係として、どうしてもやっぱりどういう形でお金が、皆さんがもらっているのが非常に小さいというのはよく分かるんですが、その下には、渡されているものがすごい小さいというのはあるわけなんだけども、それは結局、何でそうなっているのかということは見ていかないといけないわけで、それはプラットフォーム側がすごくしみったれているのか、交渉が弱いのか、それとも、権利者管理団体の中でもいろいろ頑張ってもらわんといけない。その辺がいろいろあると思うんですね。ですから、そこはやっぱり分からないといけない。

そういう意味では、プラットフォーム側から、もちろんいろんな事情あるでしょうけれども、1つの何らかの方向性なり規模感というのは示してもらわないと議論が難しいかなというのもありますし、それから、あと、管理事業者さんの問題もやはりクリエイターさん、すなわち言わばお客さんであり、一番重要なその主人公の人たちが不満を持っているということであれば、そこをやっぱり情報をもっと開示していくような、NDAですからというのは説明にならないと思うんです。そんなNDAを結ぶのが悪いって話ですから、極端に言えば。だから、そこを今度どうするか。

それ例えば、管理事業法は例えばその辺何も決めてないわけですね。契約を結ぶときだけ契約書の内容を説明しなさいって言っているだけで、その後、継続的に密接にやりなさいよとか言っていないんだけれども、そのあたり、どう考えて、やらないといけないということじゃないんですけど、そういうことはやっぱりあるんだろうなというふうに思います。

それから3つ目は、さっき一番最初の話題であったNFTの話だけじゃないんですが、NFTというのはウェブスリーの中の1つなんです。ウェブスリーというのはこういう、はっきり言って、GAFA、今GAFAじゃないわ、GAMAですね、GAMAのようなプラットフォーマーによる集中管理体制を崩していこうというのがウェブスリーなので、技術やなんかが発展していけば、ある程度は改善するところもあると思います。

したがって、今後いろいろと新しいサービス、さっきもありましたが、起こってくることによって競争が起こって、GAMAも今までみたいな勝手なことできないというところもあると思いますので、もう少しこのサービスの幅も広げていくことでいかないと、何らかの私たち法制度とか政策を議論すると、やっぱり時間がかかりますので、時間かかって結論を得た頃にはもう、この世界速いですから、ウェブスリーになっちゃっていて、GAMAって何、そんなところあったのみたいな話になっている可能性もありますから、その辺をよく見定めていく必要があるんだろうなというふうに思いました。

私のほうから以上です。

【末吉主査】  どうぞ。

【高見流通推進室長】  奥邨先生ありがとうございます。事務局でございますが、一番最初、1点目に御質問いただきましたカバー率というところなんですが、おっしゃるとおりでございまして、著作権のほうにつきましては、これはJASRACとNexToneに権利管理を委託するということで、そこが包括的に利用許諾契約というのを結んでいくというのでほぼカバーができるという実態なのに対しまして、隣接権のほうはレコード会社ごとの契約になるということでございますので、その契約の在り方として、ライセンス契約という書き方をしておりますけれども、包括的に許諾契約をする場合、そういう会社もあれば、個別に許諾契約を取る会社もありますし、また、インディーズレーベルになれば契約自体が結べないという状況もありますので、カバー率という意味では著作権と比較すると低いというのが実態というふうに認識をしております。どうもありがとうございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。畑委員どうぞ。

【畑委員】  畑です。今回、事務局にて対価還元、バリューギャップのまず事実に基づいた情報を取りまとめて報告いただきまして、ありがとうございます。

著作隣接権の部分につきましては、我々日本レコード協会、それから芸団協CPRAさんへのヒアリングの内容が報告としてまとめられていると理解をしておりますけども、先ほど奥邨先生から御質問のありましたカバー率のところですけども、事務局、高見室長からのご説明のとおり、レコードについては、実演家の権利を含めレコード会社がプラットフォーマーと契約を結ぶため、その契約内容に応じてレパートリー包括という形もあるし、一部のものについては許諾できないものがあったりとか、そこは様々というところでございます。

資料にありますが、18ページですかね、著作隣接権に係る対価還元の構造ですが、レコード会社とユーザーアップロード型サービス事業者の間がライセンス契約になっています。同様に19ページではレコード会社とサブスクリプション型サービス事業者との間もライセンス契約ということになっています。

サブスクリプション型のほうはこれで間違いありませんが、ユーザーアップロード型については、ライセンス契約という言い方が正しいかどうか少し留意が必要だと思っております。というのは、サブスクリプション型ストリーミング配信サービス事業者については、レコード会社がライセンス提供した音源をサービス事業者が主体的に利用してビジネスを行っていくので、ストリーミング配信サービス事業者が公衆送信、送信可能化の主体ということになります。

一方、ユーザーアップロード型につきましては、これもいろんなサービス形態があり例えばYouTubeではユーザーアップロード型のサービスと、サブスク型に分類されるYouTubeミュージックというのがありますが、今回はあくまでユーザーアップロード型について述べますと、ユーザーアップロード型のプラットフォーマーというのは、コンテンツの自動公衆送信、送信可能化の主体ではなく、あくまでも場の提供をしている事業者ということで、場の提供をするプラットフォーマーがそもそも権利処理をする必要はないというのが基本的な法的枠組みとして認識をされていると思っています。

したがって、権利処理をしないといけない主体というのは、あくまでアップロードするユーザーであって、ただ、非常に多くのユーザーがアップロードするので、便宜的にプラットフォーマーが権利者との間で契約を結ぶことにより、違法状態をクリアしているというのが、18ページにあるレコード会社とプラットフォーマー間の契約の趣旨ということになるかと思います。

したがいまして、言い方としても実際、英語ではコンテンツパートナーシッププログラムという名称になっていますけども、あくまでプラットフォーマーは主体ではないということを前提とした契約になっていると理解しています。

おそらく次回、事務局からヨーロッパのDSM著作権指令の報告とかあるんだろうと思いますけども、DSM著作権指令のまず根幹のところは、一定規模のビジネスを行っているプラットフォーマーというのは、ヨーロッパで言う公衆伝達の主体であることをまず定義をし、その主体であるがゆえに適切な契約を権利者と結ばないといけない。そこを法的に明確化することによって、権利者とユーザーアップロード型プラットフォーマーがサブスク型のサービス事業者と同じ立場に立って、公平な契約環境ができるということが大きな趣旨になっていると理解をしています。

したがいまして、これは競争上の観点ということもあるかもしれませんが、権利者とプラットフォーマー、特にサブスク型とユーザーアップロード型の比較という観点から、まずはユーザーアップロード型サービス事業者も自動公衆送信、送信可能化の主体ではないか、という検討がまず大きな視点になるのではないかと考えております。

私からは以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。

ほかにいかがでございましょう。菅委員どうぞ。

【菅委員】  よろしくお願いいたします。クリエイターでもあり、何も知らない視聴者の1人としてもすごく原始的な発言をさせていただきますので、御勘弁ください。

まず、先ほどから福井委員はじめおっしゃっていました透明性、これは大変大事だと思います。一般視聴者として、また一クリエイターとして申し上げますと、YouTubeの配信で年間何億円も稼いでいるあの人と、どうして0.04円なんだという、この差というのは、普通聞いたときにまず考えることですね。

ただ、それは著作権料としての0.04円と、広告料として全部含めた配信者に入る何億円との差、この差というのは明確に説明をしておかないと、とても不公平感を助長するものだと思います。もちろんYouTubeはじめ、いろいろな配信会社はサーバー費用もかかりますし、1日何千億円かかるという世界的大企業もあるそうですが、先ほど音楽出版で言うところの育成料とか、いろいろ一般ユーザーから見えない費用というのはもちろんある。そこも含めて、そして、こんな費用がかかっていて、広告料が入ったときに私たちはあなたに幾ら入りますと。ここまでは言えないとは存じています。何か法律的に内情を言わなくていいような法律が、景品表示法でしたっけ、何かいろいろあるのは存じているんですけども、やはりこの不公平感を少しでも軽くして、透明性を持っていかないと、一極集中管理であるとか、もっとコンテンツの繁栄だとかというのは、つながっていかない第一歩だと私は思っています。

少し特殊なことを言いますと、そうやって不公平感がある、サブスクであってもなかなかもうからないというイメージがあるので、余計にCD、物品商売にこだわっているというふうに聞いています。これはサブカルチャーのほうで教えていることなんですけども、CDとか、特にアイドル系、アニメ系だけど、特典商売というのがあるんですね。

何が入っているか分からない物を買う。そして、開けてみて、自分の推しだったらいいんですけども、自分の好きなキャラクターでなければ、そのキャラクターを求めて20枚、30枚買うんですよ。そこにまたイベントへの応募券が入っていたりする。それを目指して、やっぱり40枚、50枚買う。それがメルカリとか、ああいうところですごく余っているからといって、たたき売りされている。すごい音楽コンテンツかわいそうですよ。音楽を聴くためじゃなくて、特典のために売られている、すごく悲しい状況になっている。

そこまでしてメーカーなり音楽会社なりがCDを売りたいというのは、やはりデジタルのほうでお金がうまく回っていないから、そこまでのことをする。結局それが、しっぺ返しが一番弱い若年の消費者にかかってくるということではないかと思って、すごく危惧しています。デジタルのほうでしっかり収益を上げられるんだということが分かっていただければ、いい状況をつくるのが今回の話合いではないかなと思っています。

それで、先ほど申し上げましたように、JASRACさんとかNexToneさんとか、そこに所属すれば海外への道が開けるとか、いろいろ勉強させていただきましたけども、個人でアップロード型に出すと、広告料もいろいろ入って丸々もうかるのに、企業のほうに出すと、企業の公式がアップロードしてしまうので、うちのほうにはそれこそ0.04円だというような変な考え方が根づきますと、JASRACさん、NexToneさん、ほかの団体に入ろうとするベネフィットが薄くなるので、それだったら個人でやってしまったほうがいいというような誤解も生まれるような気がします。

ですから、どこまでどう公表できるか分かりませんけど、これだけ入っていて、これだけ経費がかかっていて、あなたに払えるのはこれだけです、大丈夫ですかというような透明性の確保というのはぜひ皆さんにお願いしたいし、そのような方向で隠してもいいという法律と同時に、発表しなければならないというような政策もあればいいなと思いました。

以上です。ありがとうございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。坂井委員どうぞ。

【坂井委員】  ありがとうございます。どのような視点でこの検討を進めていくのかということですので、2点ほどこういう視点がいいんじゃないかなということで御提案したいと思います。

まず1点目が、先ほど福井先生のほうからも、従来のCDは6%ぐらい還元されていたよというお話ありましたけれども、従来から存在する問題と、それから、今回サブスクとかユーザーアップロードとか、そういう新しい形態での新たな問題なのかというところはちょっと切り分けて議論をしたほうがいいかなというふうに思っています。

それから、今回バリューギャップのところにフォーカスが当たっているんですけれども、音楽の、あくまでも適切な対価還元をどう目指すのかという視点であれば、このバリューギャップだけではなくて、もう少し大きな商流全体で、このクリエイターへの対価還元というのを考えたほうがいいんじゃないか。例えば具体的には音楽出版社というようなところもあると思いますので、こういうのも含めた全体の中での議論というのをぜひ進めていくべきかなというふうに思っています。

最後に、プラットフォーマーに対して何らかの情報公開を迫るとか、そういうところはいろいろ大変だと思うんですけども、去年、多分通常国会で成立した特定デジタルプラットフォーマー法、あそこあたりが多分何か1つ参考になるのかなというふうに思っております。以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。

ほかにいかがでございましょう。よろしいですか。前田委員どうぞ。

【前田委員】  ありがとうございます。先ほどからお話が出ております、プラットフォーマーに対して情報公開を求めていく問題、これはなかなか難しいかもしれませんが、それがないとなかなかバリューギャップの問題というのは実態がよく分からないという面があると思います。

ただ、対価が異常に安いかどうか、あるいは透明性の確保が十分できていないのではないかという問題は、どちらかというと競争法上の問題のような気がしますので、競争法の分野のほうで議論を進めていただく必要があるのではないかなと思います。

他方、著作権法制の関係で何ができるだろうかと考えた場合には、先ほど畑委員から御指摘がありましたけれども、ユーザーアップロード型においては、基本的にはプラットフォーマーに権利処理義務がないという前提が取られていると。その前提が妥当なものなのかどうかと、こういった観点から文化審議会著作権分科会のほうでは議論していくという方向性が1つ考えられるのかなと思います。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。

ほかにいかがでございましょう。よろしいですか。ありがとうございました。本日いただきました御意見を踏まえまして、次回からの議論につなげてまいりたいと思います。

そのほか全体を通して何かございますか。よろしいですか。ほかに特段ございませんので、本日はこのくらいにしたいと思います。

最後に事務局から連絡事項がありましたら、お願いします。

【小倉著作権課長補佐】  事務局でございます。次回の本小委員会につきましては、3月2日の13時からを予定しております。よろしくお願いいたします。

【末吉主査】  ありがとうございました。それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会基本政策小委員会第9回を終了とさせていただきます。本日はありがとうございました。

―― 了 ――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには、Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は、こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動