文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第10回)

日時:令和4年3月2日(水)

13:00~15:00

場所:オンライン開催

議事

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)ブロックチェーンやNFTの活用について
    • (2)DX時代に対応したコンテンツの権利保護、適切な対価還元方策について
    • (3)令和3年度基本政策小委員会の審議の経過等について
    • (4)その他
  3. 閉会

配布資料

資料1
増田雅史弁護士 御発表資料(1.4MB)
資料2
DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策について(1.2MB)
資料3
DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策に係る今後の検討に向けた視座・視点(案)(87KB)
資料4
令和3年度基本政策小委員会の審議の経過等について(案)(222KB)
参考資料1
第21期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会委員名簿(115KB)
参考資料2
第21期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第9回)における委員意見の概要(184KB)
参考資料3
DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策について(第9回基本政策小委員会(令和4年2月9日)資料2)(1.4MB)
参考資料4
デジタルプラットフォームサービスにおけるクリエイターへの対価還元に関する調査報告書(2.7MB)
参考資料5
DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策について【参考資料】(第9回基本政策小委員会(令和4年2月9日)参考資料3)(1.6MB)

議事内容

【末吉主査】  ただいまから文化審議会著作権分科会基本政策小委員会第10回を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席をいただきまして誠にありがとうございます。

本日は新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して御参加をいただいております。皆様におかれましては、ビデオをオンにしていただくとともに、御発言いただく際には、御自分でミュートを解除して御発言をいただくか、事務局でミュートを解除いたしますので、ビデオの前で大きく手を挙げてください。

議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開とするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方々にはインターネットを通じた生配信によって傍聴をしていただいているところですが、特に御異議はございませんか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉主査】  ありがとうございます。それでは、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方々にはそのまま傍聴をいただくことといたします。

【末吉主査】それでは、まず事務局から配付資料の確認をお願いします。

【小倉著作権課長補佐】  事務局でございます。本日の配付資料は、議事次第にあるとおりでございます。

以上です。

【末吉主査】  それでは、議事に入ります。本日の議事は議事次第のとおり、(1)(2)(3)の3点となります。

早速、議事1の「ブロックチェーンやNFTの活用について」に入りたいと思います。本日は、前回も御審議をいただきましたブロックチェーンやNFTの活用について、弁護士の増田雅史様より御説明をいただきたいと思います。増田様におかれましては、事前に事務局よりお願いをいたしました発表時間に御留意をいただきまして、円滑な議事進行に御協力を賜れれば幸いでございます。それでは、よろしくお願いいたします。

【弁護士(増田様)】  ありがとうございます。では、画面共有をさせていただきます。見えていらっしゃいますか。どうもありがとうございます。

弁護士の増田と申します。本日は貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。コンテンツ分野で活用されるNFTの法的課題について、皆様の討議の材料として発表させていただきます。前回の小委員会での議論も踏まえる形で、試行錯誤しながら作成したものでございまして、文字の多い資料となっておりますけれども、しばしお付き合いいただければと思います。

まずは、簡単に自己紹介をさせていただきます。2つ目のスライドでございます。私はIT・デジタル領域全般を主要な取扱い分野とする弁護士でございます。少し時系列的に申し上げますと、弁護士1年生のときに、経産省への出向を経験するという貴重な機会をいただくことがございまして、こちらでデジタルコンテンツ政策に従事いたしました。その後もコンテンツ産業にまつわる様々な法的論点、例えばとりわけインターネットにおける取引、サービス提供、知的財産の取扱いといった分野に継続的に関与いたしております。特徴的な業界といたしましては、ゲーム産業の中心が据置き型ゲーム、PCオンライン型ゲームからスマホアプリによる提供に切り替わっていく時期からいろいろとお手伝いをさせていただいておりまして、コンプガチャ騒動の際ですとか、あとはNFTに関して話題が再び出てきておりますけれどもRMT、リアルマネートレードに関する自主規制の検討ですとか、そうした様々なイシューに業界団体の皆様と一緒に取り組ませていただきました。

その後、2015年からは留学ですとか海外駐在などで3年間ほど日本を離れていたんですけれども、2018年に帰国した後は、金融庁でブロックチェーン関連法制の立案の担当者をさせていただきまして、金融商品取引法ですとか、資金決済法の改正に従事をいたしました。これがよいきっかけとなって、コンテンツ分野だけではなくて、ブロックチェーンの規制分野についても弁護士としてのスキルを身につけることができまして、そうしたところNFTという新しい分野が、この両方の知見を要求する分野であったことから、NFTに関しては特に様々な情報発信をさせていただいたり、弁護士として非常に多くの案件に関与させていただいている状況でございます。

では、内容に入らせていただきます。3つ目のスライドでございます。まず、NFTとは何かという点でございますけれども、これが最も難解で、かつ答えがあやふやとなってしまう点でございます。スライドには書かせていただきましたけれども、NFTとはノンファンジブル・トークンの略でして、ブロックチェーン上で発行されるトークンと言われる符号のようなもののうち、それぞれのトークンに独自の個性が付与されていて、ほかのトークンと区別可能なものです。ファンジブルかノンファンジブルかは、要するに代替性があるかないかですけれども、ファンジブル・トークンの代表格とされているのがビットコインですとかイーサといった暗号資産でして、それとの対比で言いますと、数量的に把握して、例えば1ビットコインと1ビットコインを足すと2ビットコインになりますとか、分割すると0.5ビットコインずつになりますとか、そういった形で把握することが可能なものがファンジブルなトークン。そういう把握に全く適さない、一つ一つ個性があるものがノンファンジブル・トークンであると考えられています。

実務的にポイントとなります点、2つ挙げさせていただいたんですが、まず一つは、これはイーサリアム上の共通規格のようなものでございますが、ERC-721という仕様に代表される技術仕様があることによって、様々なNFTが共通のベースをもって発行されていて、イーサリアムブロックチェーン上で取引が可能であると。そういった共通の基盤を利用する形で、OpenSeaに代表されるようなNFTマーケットプレイスと呼ばれる事業者が様々なサービスを提供する、そうしたエコシステムがある種、共通の基盤であるブロックチェーンを利用して出来上がっているところが、ポイントになろうかと思います。

本日は、NFT自体非常に千差万別というところでございますので、何らかの分類を試みることがNFTに関して議論を進める観点から有益であると考えて、ここに狭義のNFT、広義のNFTという見方を書かせていただきました。こちらは私が勝手に分類したものでございますけれども、議論の下敷きとして紹介させていただきますと、まず、この狭義のNFTが文字どおりノンファンジブルなもの、つまり唯一性があるもの、それに対して広義のNFTは、あるコンテンツについてNFTを幾つか発行するパターンでして、厳密に言うとそれってノンファンジブルなのかというところはあるんですけれども、今、実務上はそれもノンファンジブル・トークンの一種として扱われているので、そうしたものを広義のNFTと呼びたいと思っています。

アートに関するNFTとして通常イメージされるのは、この狭義のNFTでございまして、他方でトレーディングカードに関するNFTのような場合に通常イメージされるのは、どちらかというとこの広義のNFTということになります。この違いは相対的なものでございまして、それぞれのトークンに対する個性づけがどの程度実質的な個性であるかどうかによります。なので、あくまで議論の便宜からこの2つに分けているということを御理解いただければと思います。

続いてスライド4でございます。こちらは、NFTの取引関係者についてイメージを持っていただくために用意した図でございます。NFTは最初の発行も二次流通の場面も、相対取引ではなくてNFTのマーケットプレイス、つまり取引サービスを利用して行われるのが一般的です。そこにはいろいろなプレーヤーがいるわけですけれども、まずプラットフォーム事業者が真ん中にいて、他方でそのNFTを売りますという方と買いますという方がいて、そのマッチングをするのが基本的な構造です。

ポイントになりますのは、NFTとイーサのような暗号資産との交換行為自体は、ブロックチェーン上でそれぞれのトークンを送り合うことによって完結していて、そのやり取り自体はマーケットプレイスのサービス内で起きているわけではないのだ、というところでございます。トークンの交換取引を自動化するための取引用のスマートコントラクトを用意する、そういったところまではマーケットプレイス側でやるんですけれども、そのスマートコントラクトも、イーサリアムブロックチェーンの上に乗っかっているものです。そのコントラクトを使って実際にトランザクションが発生するのもブロックチェーン上の話であって、ユーザーはブロックチェーン上のアドレスに対応する、ウォレットアプリなどを自前で用意することになります。

ただ、これはあくまで一例でございまして、特にNFTの発行をやるプラットフォームでは、実際にいつNFTを発行した事実をブロックチェーンに記録するのか、これをMintというんですけれども、いつMintするのかはサービスによって異なることがあります。ブロックチェーン上に記録されるまでは、サービス内で閉じた形で取引がされることになるので、その局面に限定すれば、サービス事業者がウェブサーバーを利用して提供する従来型のECサービスと、それほど大きくは異ならないとも言えます。

続けて、スライド5でございます。こちらの画像は、御覧になられた方も多いのではないかと思いますけれども、昨年の3月に、Beepleさんというデジタルアーティストの方のコラージュ作品が、オークションハウスで約75億円で落札されたというものでございまして、この出来事がその後のNFTブームの大きなきっかけになったと言われています。

ただしこれも、本日御参加の先生方、既に御存じのことかと思いますけれども、ここで取引をされたのはNFTそれ自体でございまして、かつNFTの保有者がこの作品をどう利用できるのかは、一切記述されていないというものでございます。他方でこの作品自体は、実は誰でもダウンロードできる状況となっておりまして、非常にファイルサイズが大きいのですけれども、私もダウンロードして入手いたしました。そうすると、要するに作品自体は誰でも鑑賞可能であって、取引をされているのはトークンそれ自体に過ぎない、ということのようです。

そうすると、一体何に75億円も支払ったと言えるのだろうかと、これは金額の大きさも相まって、いろいろと議論を呼んだところであります。これについては、現に購入がなされたわけですし、また同じように純粋なトークンだけ販売されるという事例がほかにも見られますので、私なりにその購入の動機といいますか、理由を分析してみました。6つ目のスライドになります。

まず、これは本日御参加の先生には釈迦に説法ですけれども、民法上の所有権は有体物のみに生じるものであって、デジタルデータ自体に所有権を観念することはできないので、デジタル所有権の売買がされているのだ、という言い方は若干ミスリードであると思っております。

では、何が取引されているのかですけれども、著作権の譲渡ですとか、ライセンスといったことが一切行われていない以上は、あとは何か言えるとすれば、何らかの抽象的な事実上のオーナーシップですとか、パトロンとしての地位のようなものを事実上主張することができると、そういった面が取引の場で意識されているのではないかと理解しております。似たような例として、絵画の作品を個人が所有しているが、自分で持つのではなく、誰でも出入りできる美術館にそれを貸し出して、一般公衆がそれをいつでも鑑賞することができる、そういった例は現にあると理解していています。その場合、あくまでその絵のオーナー自体は個人で、その個人というのはアーティストないし作品のパトロンであると社会的に認知されていると、そういった実態があると思っています。

そういう状況とデジタルアートに関するNFTの保有者の状況というのは、結構似通っている部分が多いのではないかと思い整理しましたのが、こちらの比較表になります。今のお話が、NFT自体の取引って一体何が取引されているんでしたっけ、という点に関する一試論となります。

ここから少し具体論に入りたいと思います。スライド7を御覧ください。ここからは、前回第9回の小委員会での御討議の中で触れられていた、幾つかの課題を少し深掘りしてみたいと思います。まず、コンテンツデータの所在という課題が議論されました。ブロックチェーン上にはあくまでトークン自体の取引情報が記録されるだけであって、それに対応するイラストなりのコンテンツのデータはブロックチェーンの外、具体的にはNFTサービス、NFTの販売サービスを提供する事業者が用意するウェブサーバーなどに置かれている例が通常であると。そうすると、そのデータ自体は後で消えてしまったり、差し替えられてしまったりする可能性もあったり、あとはサーバー自体が止まったりなくなったりしてしまえば、コンテンツへのアクセス手段が失われるといった問題がございます。

解決の方向としては、これはほかのスライドも同じで、私の一試案ということでございますけれども、永続性が高いと考えられているような保管方法を採用するということが一つの選択肢になると考えます。方法としては、分散型ストレージと言われる仕組みが挙げられることが多くございまして、その代表格の一つがIPFSかと思います。非常に細かい話なので詳論はいたしませんけれども、先ほどのBeepleさんの作品もこのIPFS上で分散的に保管されていて、その分散型データベースネットワークへの参加者が十分な数である限りにおいては、永続性が高い仕組みだと一般に考えられています。

次のスライド8、こちらで述べておりますのは、前回最も議論された点の一つであります、無権限者によるNFT化といったお話でございます。アーティストですとかIPホルダーが知らないうちに勝手にNFTアートとして販売されたと、そういう例は現に多く起きているところでございまして、他方で発行者の本人性みたいな情報は、当然にはブロックチェーン上に記録することができないわけですので、どう対処すべきかが問題となる。

実務上は、取引サービス自身が発行者を審査して、審査をパスした人だけがNFTを販売できる、そういった形にする例ですとか、あとは発行者自身がNFTプロジェクトを発表して、自分のウェブサイト等で情報を発信しつつ、そこからリンクを張る形で外部のNFTマーケットプレイスのURLを示して、その情報と組み合わせる、つまり自ら発信する外部情報をブロックチェーンでいうオラクルとすることによって、その情報の組合せで本人性を確認可能な状況にすると、ユーザーはそれを見て、確かにその会社のサービスとして売られているNFTだということを認識して購入することができると、そういった解決策でございます。

将来的な解決の方向性としましては、本人や実在性の確認機能を含む形でNFT化コンテンツ関連情報の一元管理の仕組みを創設して、かつその利用をデファクトスタンダード化することが考えられます。その一例は、まさに前回既に御議論いただいたかと思いますので、本日は割愛させていただきます。

続きましてスライド9ですけれども、NFTの保有者はそれに対応するコンテンツをどのように使ったりすることができるのか、当然に明らかでなく、不明確性が高いのではないかという課題でございます。こちらも今、どう使えるかが様々なやり方で記録されています。NFTマーケットプレイスのコンテンツディスクリプションのところに、こういう使い方ができますと書いてみたり、先ほど申し上げた、発行者自身で公表するホームページ上で説明をしてみたりとか、そういったやり方が多く見られます。

とはいえ、やり方もばらばらで、かつ情報の在りかもばらばらだということになりますと、消費者、ユーザーにとっては、どういった形で確認できるのかは極めて不明確だという状況に変わりはないということになってしまうので、そこを一元管理しつつ、かつ利用態様や表示方法の標準化を図ることによって、一読了解でどこに見に行けばいいのか分かる、そういったものを目指すという方向性も前回御議論いただいた点かと思います。

ほかに、前回討議いただいていない課題の一つとして挙げさせていただいたのが、このスライド10にございます、二次流通ロイヤリティ収受の限界という問題でございます。NFTの特徴として、二次流通時にも発行者に一定のロイヤリティが入ると説明がされることが多いのですけれども、実際には先ほど申し上げたERC-721とか、そういう標準仕様の中にはロイヤリティに関する項目というのがなくて、実際のロイヤリティ設定や自動的な収受機能は各サービスに依存しているんですね。

他方で、申し上げたとおり、ERC-721トークンとかはイーサリアム上で発行されるもので、特定のサービスに依存することなく取引可能なので、例えばほかのサービス上で取引しようとすると、最初のサービスで設定していたロイヤリティ情報が全く考慮されなくなってしまって、ほかのサービスで取引されても一切ロイヤリティが落ちてこないと、そういった問題が起きます。

目下の対応としては、そういった限界があることをちゃんと説明しましょうとか、あとは前向きなやり方として、サービス間で連携してフォーマットを共通化するとか、そういった試みがされ始めているところではございます。これをさらに超えて、共通仕様を策定して、それをデファクトスタンダード化するという方法も、可能性としては議論されております。ただ、多くの主要なプラットフォームで採用しなければならないので、ハードルはかなり高いと理解しているところでございます。

若干お時間超過して申し訳ないんですけど、あとスライド2点ですので、お付き合いいただければと思います。もう一つ発表のお題としていただいておりましたのが、NFT利活用の方向性でございまして、まずスライド11を御覧ください。こちらはNFTビジネスそれ自体が今後どうなっていくのかという、将来を占うようなお話でございまして、NFT事業者でもない私の手には若干手に余るテーマではございますけれども、これまでの知見を踏まえて、私なりの考えを少し述べさせていただきます。まず、このスライドでは、狭義のNFTの代表格と言えるアート分野に注目しております。その中でもいろいろなタイプがあると思っておりまして、現在知られている数々のプロジェクトを大ざっぱに3つに分類いたしました。

一つは、独立・単体のアートとしてのNFTでございまして、こちらはデジタルアーティストが作品を一点物として販売できる状況になったり、既存のIPコンテンツをアート化して販売できる状況になったというものです。購入者が一点物としての価値を感じ続ける限りにおいては、引き続き一定の需要が存在し続けるのだろうと思っています。

他方で2つ目は、群体としてのアートと名づけたんですけれども、CryptoPunksですとか、あと、BAYCですよね。こういった半自動生成アートという呼ばれ方をするものでございます。これについては、単にこれを売るというだけではなくて、一つ一つが会員権的なものとして取り扱われていくような発展性も見せ始めております。

そして、この真ん中の群体と似たようなものとして、集合としての分割アートというカテゴリも挙げることができると思いました。これは一つの作品をばらばらにして、その一つ一つをNFTに紐づけるという試みでございます。それ自体もファン向けのサービスとしては非常に興味深いものでございますけれども、真ん中にございます群体としてのNFTがいま見せている発展の方向性と同じように、今後は保有者であるファンに対してどのような特典を与えていくのかといった、ユーティリティの面に注目が集まっていくのではないかと予想しています。

この2つに関しては、保有者へのメリットないしベネフィットを提供していくとなると、その利用条件やコンテンツの利用許諾の内容といった、ルール面の整備が必然的に課題となるはずであって、その側面での法律実務の発展が望まれると考えております。

最後となりましたが、スライド12でございます。今度は広義のNFT、厳密にはノンファンジブルではないのだけれども、コンテンツの流通数量を限定する手段としてNFTが用いられるようなケースでございます。このようなNFTというのは、当初からブロックチェーンゲームの文脈では利活用が模索されてきたところでございまして、本日は議論しませんけれども、Play-to-Earnモデルを標榜するAxie Infinityのようなサービスとは少し違って、NFT自体の発行を通じてマネタイズすることに主眼を置いたサービスで、このような数量限定的コンテンツNFTが販売されるという実態が生じております。

この方向性については、昨今話題となっておりますメタバース、仮想空間の提供サービスとの関連性が強く語られるところでございます。仮想空間や、その空間でのサービスを利用することが一般化して、やがて生活や仕事の一部がメタバース上で営まれることになりますと、その空間内でのデジタル資産の保有や取引をどのように行うのかが課題となり、その手段となり得るのがブロックチェーンでありNFTであると考えられています。

ただ、今の説明は、あるメタバースのサービスがそれ単独で提供されているような場合には、あまり通用しないと考えています。通常のスマホゲームのように、サービス内で閉じた形であれば、そのサービス内でデジタルアイテムを提供すること自体は、これまでも行われてきたからでございまして、そこであえてブロックチェーンを使う必然性はないと言えます。必然性が生じるのは、複数のサービスが相互に乗り入れるようなケースでございます。これをマルチ・メタバースと呼んだりしますけれども、そうした複数のサービスがデジタル資産を共有しようとした場合に、その資産の保有ですとか、取引の記録を特定の事業者が管理するのではなくて、共通のデータ基盤を利用するという発想でございまして、そこでブロックチェーンの利用が想定されています。

ただ、課題の1つ目として議論しましたように、これはデジタルコンテンツのデータ自体を当然共有できる仕組みではないので、別途コンテンツのデータをどう共有して利用するかが問題になります。

そこで分散型データベースの仕組みを使うといったアイデアはあるわけですけれども、より問題なのは、ブロックチェーンですとか、コンテンツデータの共有の仕組みをどうやって統一のルール上で扱うかであると考えています。ブロックチェーン自体はある種、ルールを内包する形で設計して利用すること自体は可能ですけれども、他方で、そのルール自体はいかようにもプログラムできるので、比較的自由に設計可能である中、そのブロックチェーンとコンテンツデータとの連携のルールは、現在はっきりとは存在していないためです。この技術仕様や取引ルールをめぐっては、今後、技術と法務の両面でデファクトスタンダード争いが生じると予想しております。

私からは、簡単でございますけれども以上とさせていただきます。時間超過して申し訳ございませんでした。

【末吉主査】  ありがとうございました。それでは、ただいまの御発表につきまして、今後の著作物の流通促進、あるいは対価還元の可能性などに関して議論を行いたいと思います。増田様への御質問や本議題への御意見がございましたらば、御発言をお願いします。

奥邨主査代理どうぞ。

【奥邨主査代理】  ありがとうございました。手短に幾つかお伺いしますけれども、まず1つ目はスライドの6のところで、パトロンという言葉が出てくるんですが、パトロンというのは私の語感なのかもしれないんですが、芸術家、人間をサポートする、作品を買って芸術家をサポートするという話であって、作品そのものを持っている人だけ、芸術家をサポートしないんだけれども、作品だけを持っている人をパトロンというのかというのがあったので、その辺が現実のものと、それからこのアート、NFTとの関係も、先生がパトロンというところで、どういうイメージをお持ちなのかというところを少しお伺いできればというのが1点でございます。

それから2点目は、ERC-721というのが何回か出てまいりますけれども、このERC-721というのは、イーサリウムの独自規格ということなのか、より広い形で、何らかの形でもっと標準化されている、標準化団体があって標準化されている規格なのか、何というんですかね、永続性というか、規格自体の永続性とか安定性というようなこともありますので、その辺はどうなのかというのが2点目でございます。

3点目は、非常に全体との関係になるのですが、このNFTの中に、今の技術では計算量も大きくなるのであり得ないんですけれども、将来的な可能性として、NFTの中にデジタルコンテンツそのものを取り込むということはあり得るんでしょうか。NFTの中にデジタルコンテンツが取り込まれてしまえば、今、先生がいろいろ御指摘いただいたようなものも、もう全部解決してしまう可能性があるのかと思ったものですから、その辺をお伺いいたしました。差し支えない範囲で結構ですので、教えていただければと思います。

以上です。

【弁護士(増田様)】  ありがとうございます。では順番にお答えいたします。

まず、パトロンという言葉遣いに関しては、確かに御指摘のとおりの面はございます。私も、あまり深い意味を込めてパトロンという言葉をここで使っているわけではないのですけれども、少なからず保有している限りにおいては、その作品の支持者であるということが、むしろその取引の履歴というものが対外的によく見える形で示されるものですから、作者それ自体に対する支持を示すようなサインとしてもNFTが機能する、そういった面もあるのと、基本的に存命中のアーティストがこういう新たなプロジェクトを始めるというのが現在の状況であるので、そのプロジェクトに乗っかる形で購入者となること自体が支持を示す手段としても使われる側面もあると思うので、パトロンという言い方をさせていただいております。

ただ、実態として必ずしもパトロンとは言い切れず、作品それ自体のオーナーシップと言ったほうがむしろ実態に近い、買う人の意識に近いというのは、御指摘のとおりかとは思います。

続いて2点目ですけれども、ERC-721というのは、これを使えと決まっているものではそもそもなくて、デファクトスタンダードなのですね。イーサリアムブロックチェーン上でこの規格に沿ったトークンを発行すると、要するにこの規格に沿った周辺サービスがいろいろあるので、便利だからみんな使っていると。

イーサリアムだけなのかというところに関してですけれども、このイーサリアムのエコシステムをある種、間借りする形で、親子ブロックチェーンみたいなものをつくったりすることができる仕組みがございまして、私は必ずしも技術的に詳しいわけではないので詳しくは申し上げられないんですけれども、そうした周辺的なほかのブロックチェーンであっても、そのERC-721トークンを扱う方法というのは存在していると理解しています。その点でも、ERC-721というのは、必ずしもイーサリアムブロックチェーンそれ自体に閉じた話ではなくて、結構広がりを見せていると理解しております。

3点目ですけれども、全てを内包するブロックチェーンの仕組みは、非現実的と思っています。ブロックチェーンのコンセプト自体が、過去の取引履歴を全て記録していくチェーンのつながりとして、現在のありようを全てを足し上げることによって導き出すことができる仕組みになっているので、ここにコンテンツのデータを全て突っ込んでいくと物凄いファイルサイズになって、これを扱うノードが恐らくすぐに目詰まりして、全く取引ができなくなってしまうと。

なので、取引の便宜のためにある種、軽量化しているブロックチェーンという仕組みと、大きなデジタル画像とか動画とか、そういうリッチコンテンツを置くような場所というのは、仕組みとしては分けて考えたほうがよくて、その連携をどうやってとっていくのかという方向にフォーカスして議論をしていくのが、より建設的ではないかと考えております。

【奥邨主査代理】  ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。福井委員どうぞ。

【福井委員】   福井でございます。増田先生、本日も極めて整理された御発表、ありがとうございました。勉強になりました。私からは、まずパトロンというアナロジー自体、私自身はなかなか分かりやすいと最前から拝見しておりました。その上で、お尋ねは2点になります。

1点目は、やや将来予測的な事柄をお尋ねします。現状様々な課題がNFT取引にはあると感ずるわけですけれども、増田先生はこれがどういう形で集約されていくと予想されるかです。一つは、解決策共々何かチャンピオン的なプラットフォームの中に内包される形で、収束されていくのか。あるいは、このNFTというものがより普遍的なツール的にプラットフォームを越境して、フォーマットや振る舞いが多くのユーザーにとって当たり前のものとして流布して解決されていくのか。今日のお話の中にも含まれていたことだと思いますが、どちらと予想されるか、もしお伺いできれば。

というのは、例えばオープンシー、現在は圧倒的に強いとしか言いようがありませんけれども、その現状などを見るにつけ、例えばコレクターが単体として価値を見いだすようなコンテンツの流通プラットフォームに、今のオープンシーがなっていくのは、なかなかイメージしづらいところがあります。つまり、あそこに集まっている人々の振る舞いと関心は、今のところ全く別のところにあるように思えるので、それでどう考えられるかということを一つお伺いしたいと思いました。

もう一つ、最後のスライドにありました、広義のNFTの将来像ですけれども、広義のNFTとそれが複数のサービスをまたがって取引されることが、やや必然的に結びつくようなイメージで語っておられるように感じたのですね。これは私の理解が不十分なのかもしれませんが、それはやや別次元のことではないかという気もしたのです。つまり、例えば狭義のNFTが越境的に流通することも十分あり得るし、広義のNFTが特定のプラットフォーム内で流通することだって、もちろん全然可能だと思うので、この点どんなふうに考えればいいのかということを、もしヒントをいただければ幸いに思いました。

以上です。

【弁護士(増田様)】  ありがとうございます。非常に多方面にわたる御質問をいただいたと理解していて、順番にお答えしたいと思っております。

まず、どうNFTビジネスなるものが集約されていくだろうかというのは、極めて未来予測的な難しい御質問でございます。OpenSeaとか、そういうNFTマーケットプレイスと言われているサービスは、ERC-721トークンとか、そういう特定のフォーマットに従ったものであれば、何でも取り扱うことができる状況になっております。そして、その取引プラットフォーム自体が何らか集約されていくということは考えにくいと思っています。

他方で、NFTって、ユースケースが一般消費者の方によく理解できる形にならないと、なかなか広がりを見せないところがあると思っていて、今は御指摘のとおり、NFT取引自体に魅力を感じている方が比較的多くて、そういった層に浸透がとどまっていると思うんですね。例えば、最後に申し上げたメタバース空間内ですと、そこで過ごすことは現在イメージしづらいですが、やがて一般的になっていけば、そういったところでデジタルコンテンツを入手して利用する、例えば数量が限定された音楽コンテンツを、メタバース空間内で聴きたい人に聴かせたりするみたいな行為が一般的になっていく可能性があって、そうすると取引マーケット主導ではなく、サービス提供者側の主導で、NFTビジネスが再構成されていく可能性は十分にあるだろうと。

そうすると、ユーザーは、マーケットからじゃなくてサービスから入っていって、NFTのやり取りをするようになるので、サービス事業者側の規律が優先的に作用するようになって、サービス自体に対する消費者としての評価と併せて、少しずつ安全に利用可能な仕組みが整っていく、というのが一つのやり方なのかと思っています。

プラットフォームの越境がユーザーにとって当たり前になるかどうかは、非常に難しい問いであって、最後のほうに聞いていただいた話と非常に強く関連すると思うんですけれども、実際おっしゃるとおり一点物のNFTであっても、要するにプラットフォーム横断的なやり方で発行して、複数のサービスで利用できるようにしたほうが魅力が高まるのは間違いなくて、仮にそういうふうにみんなが利用するエコシステムが存在する場合は、みんなそこで発行しようよという流れになっていくのはあり得る話だと思います。

ただ、真っ先に消費者に広がるものは、マスに訴えかけるような、たくさん出ていくものだと思っています。音楽コンテンツの限定配信とか、メタバース空間内で観られる映画コンテンツとか、これまではメディアに乗せて流してきたようなものが、まずビジネス規模としては大きくなる可能性が大きい。一点物は一点物にすぎないので、それ自体が大きな取引ボリュームになってメタバースサービスの利用を喚起するかというと、必ずしもそんなことはない。まずは広義のNFTから一般消費者への浸透が始まる可能性があり、次いで狭義のNFTについても、ユーザーの裾野が広がっていけばいくほど想定できる購入者が増えていく、そういう順序で物事が進む可能性があると思っています。

他方で、おっしゃっていただいたとおり、あと私もちらりと申し上げたとは思うんですけれども、広義のNFTであったとしても、別にサービス内に閉じた形で利用するのは大いに構わないと思っています。ただ、そうすると、ブロックチェーンを使うことの意味はどこまであるんだろうか、とどこかで振り返る場面が出てくると思うんですね。今ってブロックチェーン上で取引できますよとか、そういうのを売り文句にしてサービス提供する例は結構あると思うんですけれども、実際上これって何の役に立つんだっけとか、ユーザーにとってどんな利点があるんだろうみたいな振り返りが起きたときに、ブロックチェーンを使う必然性があまり大きくないサービスは、注目度を失っていくとか、そういった流れが起きてくるのかと思います。お答えになっておりますか。

【福井委員】  ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょう。坂井委員どうぞ。

【坂井委員】  増田先生、ありがとうございます。御無沙汰しております。2つ質問があります。

1つ目が課題2だったと思うんですけど、無権限者によるNFTの発行というところですけれども、この小委員会では結構、UGCについてこれまで多く語ってきています。私の課題意識としては、UGC作品だと使いづらいのかというところがあります。プロであれば先生がおっしゃるように、例えばツイッターでこれは私の作品ですと言えば、うそをついていたときのリスク、他人のものを登用しちゃったときのリスクが大き過ぎるので、それは恐らく正しいんだろうということが我々からしても想定できます。

だけど実際UGCに代表されるようなもの、アマチュアの人は、必ずしもうそをつくことに対するリスクが高いとは言いがたいことが考えられるんですけれども、法的な観点も含めてUGCでもこのNFTを活用するためには、具体的にどういう解決策があるというのを考えていらっしゃるかというのが、1つ目の質問です。

2つ目が、先ほど奥邨先生の3問目で、ブロックチェーンの中にコンテンツを入れることの話があったんですけれども、コンテンツそのものはないにしても、例えばフィンガープリントみたいなものをブロックチェーン上に入れておけば、少なくも勝手に改ざんがされていれば、違うということを確認できるということぐらいはできるかと思うんですけれども、そこら辺の実現性というのはあるんでしょうか。2つです。よろしくお願いいたします。

【弁護士(増田様)】  ありがとうございます。まず、1つ目の課題2のところについてのコメントをいただいた点でございますけれども、おっしゃるとおり、実際これ、うそをつくリスクがどれぐらい高いかによって、そういう振る舞いをしてしまう人がいるかどうかが変わってくると思っています。残念ながら、著作権侵害をすることに対して、それを避けようとする意識が必ずしも高くないという側面はあろうかと思うので、継続的に問題になると思っています。

解決策の一つとしては、NFT化コンテンツ関連情報の一元管理をされているものがデファクトとして使われるようになるのが、一つの出口かと思っています。つまり、そういった安全安心な仕組みを活用して、権利情報がちゃんと登録されているNFTを扱うマーケットが大勢になってくれば、そうじゃないマーケットはよく分からないものが集まっている危ない場所なので使わないようにしようとか、そういうふうにユーザーの行動がある程度変わっていって、やがて需要がなければ悪いことをする人もいなくなると、そういった流れが起きてくる可能性はあると思っています。

それが1点目でございまして、2点目ですけれども、フィンガープリントを入れるという話は大いにあると思っているんですけれども、そのフィンガープリントの真正性を一体どうやって担保するのか。つまり、コンテンツに一致するフィンガープリントかどうかとの証明をする人って、外部にオラクルとして必要になってしまうわけですよね。だから、それはそんなに簡単なことではなくて、フィンガープリントを入れること自体は全然可能ですけれども、真正性の証明をオラクルに頼らなければならないという問題自体は残ってしまうと思います。

ちなみにIPFSの場合は、URLに代わるものとしてハッシュ値を使っています。コンテンツからSHA-256とかでハッシュ値をとって、それをコンテンツIDとして使ってIPFS上で識別するみたいなことをやっているので、それ自体がある種、フィンガープリントをとっているような状況なんですね。

ただ御案内のとおり、例えば大きなイラストだとして、1ピクセルでも色を変えてしまえば全く違うハッシュ値になる。コンテンツが同じように見えても全然ハッシュが違うという状況になるので、それだけでも解決しなくて、そのコンテンツが本物なのかどうかは、誰かそれを証明する手段をオラクルとして用意する必要がどうしても出てくると思っています。お答えになっていますか。

【坂井委員】  ありがとうございました。

【末吉主査】  ほかにいかがでございましょう。よろしゅうございますか。ありがとうございました。増田様におかれましては、御協力をいただきましてありがとうございました。増田様にはここで御退出をいただきます。ありがとうございました。

【弁護士(増田様)】  どうもありがとうございました。失礼いたします。

【末吉主査】  それでは次に議事(2)「DX時代に対応したコンテンツの権利保護、適切な対価還元方策について」に入りたいと思います。前回は文化庁委託事業として行われました「デジタルプラットフォームサービスにおけるクリエイターへの対価還元に関する調査」の中の、著作権・著作隣接権に係る対価還元の構造など、事実関係を中心に事務局より御報告をいただきました。今回はその調査の続き、あるいは前回議論を踏まえた今後の検討に向けた視座、視点の案について、事務局より説明をお願いします。

【吉田著作権課長】  それでは、説明いたします。お手元に資料の2番を御用意いただければと思います。

まず、1ページ目でございます。ただいま御紹介いただきましたように、前回のこの小委員会におきましては、今回文化庁で行いました実態調査のうち、調査事項の1番と2番、ユーザーアップロード型サービス、サブスクリプション型サービスのそれぞれの実態につきまして御説明申し上げました。本日は残りの部分、調査事項の3番、それぞれのサービスの対価の差異、また国内外における関係法令等の対応調査の概要につきまして御報告を申し上げたいと思います。

1ページ飛ばしまして、3ページを御覧ください。まず、実態調査でございます。このページはユーザーアップロード型サービスに対する著作権・著作隣接権共通の見解につきましてまとめたものになっております。積極的に評価をする意見といたしましては、誰もがクリエイターとしてコンテンツをつくる、1億総クリエイター時代に非常に大きな貢献をしていると、そうした観点から使用料のみに着目して、音楽業界への影響を評価することは適切ではないのではないだろうと。2つ目にありますように、デジタル広告市場としては今後の期待値も非常に高いと、サブスクリプション型サービスの比較としては、サブスクリプション型のほうが不安要素が大きいのではないだろうかということでございました。

一方、課題と捉える意見としては、3点ございました。1点目は、ユーザーが自由にアップロード可能なことから、コンテンツのマッチングが不確実となる場合もあり、対価還元が十分ではないのではないか。また、広告費との関係におきまして、どういった基準で広告費が定まっているのか、権利者とは関係のない部分で決定分配されているのではないだろうかという点。また、3点目はサブスクリプション型と比較してということではございますが、映像を中心としましたユーザーアップロード型サービスにおきましては、コンテンツにおける音楽の寄与度が小さいと評価されるようなことから、そうしたことが交渉力に影響しているのではないかという点でございました。

4ページにまいります。このユーザーアップロード型サービスの関係と、セーフハーバー条項との関係についてまとめております。セーフハーバー条項は、アメリカ等におきます著作権法等に定められた規定でございまして、デジタルプラットフォーム上のコンテンツに対しまして、権利者から権利侵害を理由に削除通知を受けた場合に、事業者がコンテンツの削除を行えば金銭的な賠償を負わないという規定でございます。国外における議論では、このセーフハーバー条項があることによって、ユーザーアップロード型サービス事業者の交渉力が、権利者に優越するといったような考え方が成り立つのではないだろうかという主張がございます。それは権利者にとりまして、権利者が自ら侵害コンテンツを探し、自ら削除要請を行うという点が非常に大きな負担となってしまうために、そのことによって権利者側がサービス事業者と包括的な利用許諾契約を締結する必要に迫られて、そちらにインセンティブが偏ってしまう、そのことによって、ユーザーアップロード型サービス事業者と契約を結ぶ際に、権利者の交渉力が弱くなってしまうのではないかというような考え方でございます。

一方で、その下の丸でございますが、著作権等管理事業者からは、こうしたユーザーアップロード型サービス事業者が自主的に権利侵害対策に取り組んでいる現状におきましては、このセーフハーバー条項等の適用によって、交渉力がサービス事業者よりも権利者が弱くなるというようなことはないのではないかという御意見もあったところでございます。

続きまして5ページでございます。サブスクリプション型サービスに対する共通の意見でございます。こちらも積極的に評価する意見といたしましては、権利侵害の問題が生じにくい、また逸失利益が生じにくいという点が評価をする意見としてございました。

一方、課題と捉える意見といたしましては、今後の国内人口の動態、減少していくというような傾向を勘案すると分配資源には限界があり、海外市場への進出を考えていく必要があるのではないか。また、前回の報告にもありましたように、一部のサブスクリプション型サービス事業者が、ほかの事業者と比べて著作権使用料の額が少ないといったような課題があるような御指摘がございました。

6ページにまいります。こちらは参考として御紹介をさせていただきたいと思いますけれども、それでは、各著作権等管理事業者の使用料規定における使用料率がどうなっているのかという点でございます。1つ目の丸にございますように、今回のヒアリング等の調査によりますと、ユーザーアップロード型に比べてサブスクリプション型の使用料率が大きいというようなことが伺えました。具体的には2つ目の丸にございますように、各事業者からのヒアリング、またその推測ということではございますが、分母につきましては情報量や広告料等の収入ということで、なかなかその捉え方も難しい面もございますが、それぞれユーザーアップロード型サービスであれば3%前後、サブスクリプション型でいえば8%から12%ぐらいというようなところの料率が設定をされていることが伺えたということでございます。

これに対しまして、著作権等管理事業者からお聞きしたところによりますと、デジタルプラットフォーム事業者が社会的にイメージされているサービス、つまりこの事業者であればユーザーアップロード型、この事業者であればサブスク型とか、そういったような社会的なイメージというものがあるわけですけれども、そのサービスだけを提供しているということではないので、単純にユーザーアップロード型、サブスクリプション型の類型に当てはめて評価することはできないのではないかという指摘もあったところでございます。

7ページ、実態調査最後のページでございますが、この2つのサービスに共通した意見につきましてまとめたものでございます。1つ目の丸は、クリエイター側の意見といたしまして、このサービスいずれにつきましても共通して対価が少ないといったような意見がございました。ユーザーアップロード型は事業者の収益と比べてと、サブスクリプション型につきましては、事業者の相対的な比較という点ではございますが、いずれにしても対価が少ないと感じる点があるということでございました。

また、2つ目の丸にありますように、デジタルプラットフォームでの配信の重要性、サービス形態という観点では、非常にその重要性ということは認識がされているという観点からの御意見です。1つ目の矢印にございますように、現状はデジタル配信が音楽作品の展開販売の大半を占めていることは間違いないということでございます。つまり、そこに入っていかなければ、なかなか音楽作品を公表展開していくことができなくなっているという意味であるかと思います。

また、2つのサービスにつきましては、提供する側の目的といたしましては、大まかに言えばユーザーアップロード型はプロモーション、サブスクリプション型は音楽の聴取というような、主な目的があるとは言えるのかもしれませんけれども、実際に全てのユーザーへのアプローチ、ユーザー側の観点から考えると、その使い分け自体もはっきりと区別しにくくなっているのではないかというような御意見でございました。

なお、クリエイターの観点から、さらに収入構造とその変化、対価に対する受け止めについて意見がございました。収入構造につきましては、そもそも作詞作曲の段階では収入が入ってこなくて、楽曲が売れるに伴って使用料が入る構造になっていると。日本では過去、CD1枚約3,000円という時代でありましたけれども、現在はヒット曲を生み出しても大きな収益は得られないと。制作をした楽曲を流通させて、多くのユーザーに聞いてもらえるかという点が非常に肝要になってきているというような御意見、また対価に対する受け止めといたしまして、クリエイターの間では対価が不公平という話は出るものの、印税生活を行っている、送っているのではないかというような社会的な受け止め、そういったことも感じることもあるので、なかなかクリエイター自身が金銭に関する話を避けていく傾向にあるのではないか。またクリエイターがそもそも著作権に関する知識を得る機会が少ないため、その対価の必要性や妥当性を社会にPRする動きになかなかつながっていかないのではないかというような、意識面での御意見もいただいたという点でございます。

実態調査につきましては、以上でございます。

2点目の関係法令の対応調査についてが、9ページ目からになっております。今回は、特にEUのDSM著作権指令につきまして、調査の概要を御報告申し上げたいと思います。EUでは、デジタル上での著作物の適切な利用促進を掲げたデジタル単一市場における著作権・著作隣接権指令、DSM著作権指令を発効しているところでございます。今回の調査のテーマが適切な対価還元ということでございましたので、その関連が高いものといたしまして、有識者から12条の拡大集中許諾、17条のフィルタリング、18条から22条の適切な対価還元についてが関連する規定という御指摘をいただき、これにつきまして調査をしたというところでございます。

それぞれの各条項の法益については、点線囲みに書かせていただいておりますように、12条で言えばライセンス対象者の範囲を拡大し、非委託者に対応していくこと、フィルタリングでいえば、プラットフォーム事業者と権利者のライセンス契約締結を促進していくこと、また18条から22条につきましては契約内容を適切、比例的なものとして、適切な対価還元、権利保護を図っていくというような内容であるかという見解が示されたところでございます。

10ページにまいりますと、各条項の規定の概要を記させていただいております。12条につきましては昨年のこの小委員会でも御紹介いたしました、拡大集中許諾の規定でございます。17条は、オンラインコンテンツ共有サービス提供者が、ユーザーによってアップロードされた著作物を公衆にアクセス可能としている場合に、その事業者、提供者が公衆伝達の主体と、位置づけを義務づけているという規定でございます。

また、18条から22条につきましては、適正な報酬を受ける権利を有し、不当に低い報酬の引上げ請求や契約の取消しを行うことなどを保障するというような規定でございまして、18条がその理念的な規定、19条から22条までが、それぞれの手続等に関します規定を置いているということでございます。19条は透明性に関するもの、20条は契約の調整に関するもの、21条が紛争が起きた際の解決手続、22条が取消権となっているところでございます。

11ページにまいります。このうち、17条のフィルタリングの免責要件ということについてでございます。主に権利者から何ら許諾を得られない場合につきまして、このサービス提供者がどういった要件を整えれば免責されるのかということを、事業規模に応じて設定をしているような内容でございます。真ん中にございます中央、図を御覧いただければと思いますが、左側の縦軸はこの提供者の分類を規模別に3つに大きく分類しており、その規模に応じて左が、横軸につきまして左側からやや緩いような規定、右側に行くと要件が非常に厳しくなっていくような規定になっておりまして、規模が大きくなるに応じて要件が厳しくなっていくような形で、義務を負うような形の規定の整備を求めているような内容になっているということでございます。

12ページにまいります。それでは、EU加盟国におきます国内法整備の状況につきましてまとめたものでございます。1つ目の丸にありますように、このDSM著作権指令は昨年の6月7日までに国内法の整備をすることが求められていたわけでございますが、全ての加盟国の国内法整備は完了していないのが11月時点の結果でございました。具体的には米印2番にございますように、EU加盟国27か国のうち、対応しているのが現在6か国というような状況でございました。

この点に関しまして有識者の方から、この整備が遅れている理由といたしまして、次の3点の指摘があったところでございます。1つ目はEU加盟国の既存法制度のばらつきや既存の国内法令との関係でございます。例えば12条の拡大集中許諾制度でいえば、集中管理ということが前提になるわけでございますが、各国の集中管理の状況が異なっている点などが影響しているのではないか。また、20条以下につきましては、契約法的な側面がございますので、各国の民法などとの整合性を保つ必要があるという点でございます。

2点目はアップロードフィルターという言葉に対する懸念でございます。表現の自由との関係での批判が強いという点が懸念として挙げられております。ただし、ここにつきましては、DSM著作権指令の中でも配慮がされている点があるので、限定的ではないかというような御見解もございました。

大きな3点目は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響ということでございます。この著作権指令の法整備に当たりましては、ガイダンスの発行ということが前提になったわけでございますけれども、新型コロナの影響によりましてガイダンスの発行、公表自体が大幅に遅れたといった要因もあったのではないだろうかというような点が、御指摘があった点でございました。いずれにしましても、まだ引き続き、EUの状況につきましては実態を把握していく必要があるのではないかということでございます。

最後13ページでございますけれども、EUから離脱しておりますがイギリスにおける議論の動向を御紹介したいと思います。イギリスにおきましても音楽配信が、音楽業界全体の状況につきましてどう影響を及ぼしているのかという点を、昨年の7月に公表しているところでございます。それによりますと、音楽ストリーミング配信、音楽分野の成長に寄与はしているものの、全てのステークホルダーがその寄与に応じた適切な利益を得てはおらず、ストリーミングサービスの提供事業者や、大手レコード会社に偏在していることなどが報告をされたということでありまして、この点も御紹介をしたいと思っております。

調査の概要といたしましては以上でございます。報告書自体は参考資料の4番に添付しておりますので、また後ほど御参照いただければと思います。

続きまして、資料の3番でございます。この調査の結果を踏まえまして、今後の検討に向けた視座・視点(案)をお示ししております。1つ目の白丸にございますように、DX時代における適切な対価還元策のさらなる検討に向けて、現時点の著作物流通の実態を踏まえつつ、新たな技術の動向などコンテンツ産業の将来的な姿も視野に入れて検討することとしてはどうかと。2つ目の白丸にありますように、これまでの議論を踏まえ、今後の検討に向けた視点としては以下の点が考えられるのではないかということでございます。

黒丸1つ目、音楽分野、今回は調査は音楽分野に限ったわけでございますが、それ以外の分野における実態の把握について、さらなる調査研究を行うことが有益ではないかと。その際、どういった分野観点を調査対象とすることが今後の議論にとって有益かどうかと。

2つ目、今回の調査研究や今後行う調査研究の結果を踏まえて、デジタルプラットフォームを介した著作物の取引に関して、関係当事者間の透明性の確保など、クリエイターへの対価関係を充実するという観点からどのような視点で検討することが有益かと。

3点目といたしまして、DX時代における適正な対価還元方策の検討を深める上で、著作物の利用主体の在り方や、著作物の利用と対価還元の関係について検討することが有益かどうか。大きくはこの3点としております。このほか、今後の検討に向けて考えておくべき視点などについて、御意見をいただければと考えております。

事務局の説明は以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございました。まずは前回に引き続きまして、今回の調査研究で明らかになった実態、あるいは国外の動向につきまして説明をいただきました。資料2でございますね。それから前回議論を踏まえまして、今後の検討に向けた視座視点の案についても説明をいただきました。資料の3でございます。事務局案につきまして、本日説明のあったいろいろな実態なども踏まえまして、各委員の御意見をいただきたいと思います。それでは御意見、御質問等ございましたらお願いをいたします。いかがでございましょう。

福井委員どうぞ。

【福井委員】  まずは大変整理された御報告をありがとうございました。

1つ目はコメントに近いものです。私自身もこうした、例えばプラットフォームからの配分の多寡、あるいはその内容について意見を申し上げたところでもあり、またここにも多くのステークホルダーの意見をまとめていただいています。それらの多くは、現場のまさに偽らざる実感なのだろうとは思うのですね。ただ同時に、それらの実感を裏づける客観データを把握することの必要性を改めて痛感もいたしました。

例えばですけれども、右下の番号でいうと7番ですか。サブスクであれ、あるいはアップロード型であれ、共通してクリエイター側への対価は少ないねという意見が目立ったと書いてある、実感はそうだと思うんです。でもこれは、例えばプラットフォームサービスの利益率に踏み込んでいったり、それからクリエイター側と言われる母集団への還元額の総体や、1人当たりの配分額がどういう推移をたどったかというデータと比べてみないと、なかなかこれ以上議論を進めることは難しいんじゃないかと感ずるのですね。よって今回はこれで良いとしても、今後の政策立案のためにも、文化庁さんにおいて定点的にそうした基礎的なデータを把握し、我々や社会に共有をし続けるという、そうしたことはさらに考えていかれてもいいんじゃないか、これが1番目になります。

それから2番目、もし私の事実誤認があれば、ただしていただければと思うんですが、右下でいうと13ページ、イギリスの音楽ストリーミングにおける配分額が数字とともに出ている。これがなかなか印象が強かったわけですね。配分の偏在ということも記載されているが、それ以前にこれを見ると、どうやらストリーミングで著作権者には総体で15%が配分されており、実演家の権利も含めた原盤権側には総体で55%配分されている。ということは、合計で最大では70%がクリエイター側に配分されていると読めそうに見えます。もっともプラットフォーム側に30から34%と書いてあるので、若干整合しないんですけれども、しかし最大70%と読める。

これですと、私の理解では日本の現状より若干高い気がするのですね。もっとも私の数字が古いのかもしれませんが。もしこれが日本の現状よりも総体において高いのであれば、まずは日本のクリエイター側、原盤権等も含めたクリエイター側はこの水準を目指すべきだろうと感じたので、コメント交じりの質問になります。

以上です。

【末吉主査】  いかがでしょう。

【吉田著作権課長】  ありがとうございます。まず、1点目のデータの収集につきましては、まさに総論といたしましては先生御指摘のとおり、データを定点的にあるいは継続して蓄積をしていくことは、非常に大事な点ではないかと思います。なかなかプラットフォームとの関係におきまして、データを利益率なども含めて、精緻なデータをいただくのが非常に困難な状況でもありますので、とれるところというのは限られるかもしれませんけれども、どうしたところからそういったようなデータが収集できるのかということも含めて、今後も引き続きデータの収集については注意を払っていく必要があるんだろうと考えているところでございます。

また、2点目のイギリスにつきましては、こちら、今回の調査研究の中で把握できた点といたしましては、このパーセンテージ自体もどうも推定という形で出されているというようなことではございますけれども、まだ日本との比較という点につきまして、十分まだそこまで至っているところはございませんので、また今回調査研究の結果を踏まえまして、引き続きその検証なども行っていきたいと考えているところでございます。

【末吉主査】  よろしくお願いいたします。ほかにいかがでございましょうか。どうぞ。

【菅委員】  菅でございます。今のお話を伺っての質問となるのですが、質問というか意見になるんですけれども、クリエイター側としては私はこれだけしかもらっていない、ほかはどこに行ったのというような観点になってくると思います。ですので、プラットフォーム側は、自分たちがいかにもうけているかっていうのが分かりたくないので発表はできないんですけれども、逆にクリエイター側から、私はこれだけもらっています、残りはどこに行ったんでしょうという調査の視点があってもいいかと思いました。ありがとうございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。坂井委員どうぞ。

【坂井委員】  あまり御意見ないようなので。資料2でユーザーアップロード型とサブスク型で利用料率を比較されていると思うんですけれども、ユーザーアップロード型の利用料率の分母というところ、御説明ありましたけれども、どう捉えるのかというところが難しくて、それを利用料率って呼んでいいのかというのもあるので単純に比較はどうなのかというところと、ユーザーアップロード型の場合って、アップロードされたものが全部他人の著作物を使っているわけではないので、そういう意味でも何か比較するのはどうなのかと思いました。

それから今後の進め方の観点ですけれども、こういうクリエイターは芸能分野に近いところもありますし、一般的な会社とは違って職人的な社会というところもあると思います。競争法的な観点で公正な取引が行われているかというようなところも調査の観点として入れていただければいいのかと思っております。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。生貝委員どうぞ。

【生貝委員】  ありがとうございます。前回欠席してしまったんですけれども、前回の資料と併せて大変貴重な調査と御説明をありがとうございました。

本当に我々のコンテンツ消費というのが、もう大半プラットフォームの上で行われるようになってきている中、これまで本当に実態が把握できてこなかったことに関してだんだん状況が分かりつつあるという、大変重要なフェーズであると感じています。それでこの調査結果と、それから海外のことについて一つずつ少しコメントをさせていただきたいんですけれども、一つはまさに福井先生、先ほどおっしゃった1点目、まさにそのとおりでございまして、この継続的な実態把握というのが非常に重要なのであろう。

そして僕も様々プラットフォーム分野に関わる著作権以外のルール形成に関わらせていただく中でも、この実態把握、データの把握が本当に大変な分野であると感じています。そのことをまさに様々な形で進めていく、他方で、この関連分野についてしばしばあるのが実態がなかなか把握できない、少しずつ明らかになってくる。そしてそれが数年かかり、そしてその間に状況が大きく変わり、そして全くまた別の問題が生じてくるということが、まさにこの10年繰り返し起こってきたことなのかと思います。

実態把握はどんなに頑張っても完全な情報というのは当然出てくる限界というものがございますので、そういったようなことを、明らかになってくる直接間接の情報から是正の可能性、オプション、選択肢というものをしっかり並行して検討していく。そしてまた、それと併せて一般的に透明性や情報、実態把握が必要なのであれば、例えばDSM指令の中でもまさに透明性が重視されているように、日本でも取引透明化法に深く関わるところでもありますけれども、そういったまさに情報開示に関するルールの在り方というのも、並行して考えていく必要があるのだろうと思います。

そういった中で、これは言うまでもございませんけれども、こういった政策議論の前提としてのある種の情報把握と、そして当然他方で権利者、著作権者それぞれが自分の著作物がどのように使われていて、そしてどういう対価が支払われているのか、支払われるべきなのか、それに基づいてまさに著作権者自身が、自分の著作物に関する交渉というものを関係権利者団体を含めて行なっていくための情報も重要です。そういったまさに社会、あるいは政策にとって必要な透明性や情報というところと、それからまさに著作権法として権利者のために必要な透明性や情報、この両面からしっかり制度の在り方を含めた検討をしていくことが必要なのかと考えております。

そして2点目に関しまして、私自身も調査でインタビューを受けさせていただきました外国法の調査についても、DSM指令について大変詳しく検討いただいてありがとうございます。このことについては、まさに国内法がこれから整備されていって、実際に例えば透明性要件の中で、どの程度のグラニュアリティで情報が出されていくのか、それによってどうやって、どのように実際市場が変わったのかといったようなところを含めて、継続的に見ていく必要があるところだと感じております。

それで、来年度以降もこの調査を続けていただくとしたらという上での、個人的な提案なのですけれども、ヨーロッパのプラットフォーム法制というものは、ヨーロッパに限らずですけれども、非常に様々な分野の法制というのが同時並行して、そして相互に深く関係しながら動いているところでございます。特にこのDSM指令の関係ですと、2つ重要な法制が今年の恐らく半ばぐらいに成立することになっておりまして、一つはデジタルサービス法という、日本でいうプロバイダの責任制限を含めた、デジタルサービス全般に関わるルールを包括的につくり直そうというものでございまして、ここでは著作権に限らず、違法・有害コンテンツに対するプラットフォームの責任というもののベースルールがつくられることになっています。

そしてDSM著作権指令との関係で言えば、違法コンテンツのうち、著作権侵害に関するプラットフォーム責任の部分のDSM指令は特別法という位置づけになる。そして、その一般法としてのデジタルサービス法との関わりというのが大変重要になってくるわけであります。これは併せてみていただく価値がすごくあるんだろうと思います。

そして、特にこのデジタルサービス法については、バリューギャップからは若干離れるんですけれども、例えば我々がここでいうプラットフォーム以外にもCDNですとか、あるいはDNSといったような、海賊版に関してまさに非常に重要になる主体に関する規律の在り方というのも大きく変わってくるところであります。例えば、ビジネスユーザーに関する身元確認をちゃんとしっかりするべきであるとかは、デジタルサービス法で措置される予定ですので、そういった海賊版ですとか、広く権利侵害に関わるような部分も含めて、デジタルサービス法は詳しく見ていく必要がある。

それから2点目として、デジタルサービス法とセットでまさに提案されて、今度近く成立する予定のデジタル市場法という法律があります。これは何かというと、多くの場面で、プラットフォームに関わる問題は競争政策の問題であるところ、今、プラットフォームに関する競争政策に関しては、既存の独禁法のような事後の規制だけではなくて、事前にこういうことをやってはいけない、こういうことをやらなければならないといったようなルールをしっかり課していこうといったような方向性が、世界的な流れになっており、その中心的なルールというのが、まさにヨーロッパではデジタル市場法になる。そのデジタル市場法の中では、例えば動画共有サービスでございますとか、例えばソーシャルネットワークサービスといったようなものも、超巨大なプラットフォームに関しては競争政策上の様々な事前規制が課される。広告の収益に関する配分の透明性でありますとか、そういうところを含めて、こちらもまさに併せて今回の調査のスコープからは見ていく必要があるのだろう。

まさにこれらの法制については、日本でも各省庁、総務省ですとか経産省、公取委、デジタル市場競争本部等を含めて様々な調査を行いながら、それに合わせた日本の制度の在り方はどうあるべきなのかということも今、まさに現在進行形で進んでいるところでございますので、そういったところとまさに様々な形で協力をしながら、連携をしながらこの分野の検討というのが引き続きやられていくことが望ましいと感じています。

少し長くなりまして申し訳ありません。以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにはいかがでございましょう。資料3への御意見もいかがでございましょうか。視座視点の案が出ているんでございますが。なかなか難しい問題ではございますが、今後のいろいろな調査の方向性とかも、こういう視座視点で決まってくるところがあろうかと思いますので、この場ではという場合であっても、後からでもどうか御意見をお寄せいただけたらと思います。

福井委員どうぞ。

【福井委員】  透明性の確保、これは恐らく先ほど来、話題にも出ておりますプラットフォームからの情報開示なども意識された言葉かと理解いたしました。この点、なかなか情報が出てこないところかとも思います。

しかし情報が出てこないから、分からないから何もしないというのでは、先ほど生貝先生の話にもありましたとおり、ほぼマウスイヤーのペースで変わり続ける業界において、何らかの政府として意味のある政策を行っていこうと思えば、足りないと思うんですね。よって、走りながら考える、間違いがあればそれに対して指摘をもらって改めていくという、そういう姿勢はどうしても必要だろうと思うのです。

その点から言うならば、例えば一方のステークホルダーはこういう現実があると主張をしている。それに対して他方のステークホルダー、例えばそれがプラットフォームだとして、それはどうですかと問いかける。そのときに、何らか合理的な説明があればともかく、特段の合理的な説明もなく情報が出てこないとした場合、それは通常、裁判などの手続においても説明ができない側に不利益な解釈がされても仕方がないと解決をいたしますよね。もちろん一定の限界はありますけれども、そういう考え方も取り入れていかざるを得ないかと感じたところでした。議論のために申し上げます。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにはいかがでございましょうか。河野委員どうぞ。

【河野委員】  御指名ありがとうございます。日本消費者協会の河野です。考えれば考えるほど難しい問題だと思って伺っていました。最初に増田弁護士からNFTのお話を伺ったんですけれども、つい最近、楽天さんがRakuten NFTというマーケットプレイスをローンチしまして、既にそこで様々なアート作品が販売され始めている状況です。私は理解が追いつかないので、そういったところはなかなか手が出せない分野ですけれども、既に世の中というのは、まだCDとかテープを、音楽分野に関していえばですけれども、使っていらっしゃる方もいれば、最新のNFTを使って売買をするところまで、非常に幅が広い状況になっている。だから私のような最終ユーザーというか対価を払う者が、どういう形でクリエイターの方と、結びついていくのかというところが、デジタルプラットフォームだけではなく、もっともっといろいろな複雑な関係性で決済が行われていく、そういう世の中になっていくんだろうと思ってこの問題を考えていると、本当に何をどう受け止めて御意見を申し上げればいいのかというのが分からなくなってしまいました。

これまでほかの委員の方がおっしゃっている論点というのは、一つ一つもっともだと思って伺っておりました。今回は、一番分かりやすいって形で音楽分野の調査をされたわけですけれども、著作物というのはこれに限らず様々なものがございますので、もう少し調査対象を広げていただくのと、それからもう一つ私が気になっているのが、落としどころはどこなのかというところ、調査をするのはいいんですけれども、こういう実態が解明されましたというところだけを結果として積み重ねていくだけでなく、我が国のこの円滑な対価還元の在り方というのはここを目指すんだという方向を明確にして、一定程度の合意のもとに調査等も組んでいかないと効果的な解決につながるのは難しいのではないかと思いました。

一消費者にとってみると難問ですけれども、この間、数年かけてここまでたどり着いたわけですから、技術の進展とかそれから法律の未整備のところに対して、一定程度の予見性を持って切り込んでいっていただきたいと思いました。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。太田委員どうぞ。

【太田委員】  どうもありがとうございます。大変優れた研究が進んでいて法政策の策定にも大いに役に立つと思います。これまで僕として気になっていたというか、分からないのは、適切な対価というものをどう考えるべきかということです。ミクロ経済学的に言えば完全競争市場で決まる均衡価格としての対価ということになるのでしょうけど、現実世界にはそういうものはほとんど存在しないわけです。そうすると状況証拠的な形で考えるしかない。要するに、利害関係者間での交渉力が対等であるのかとか、情報開示が十分なされているのかとか、そういった状況の実態把握です。さらに、行動経済学的に言えばどういう認知バイアスやノイズが対価決定の場面に存在するのかを検討することになるのでしょう。その点でいくと事業者とクリエイターとの間でどういう交渉がなされていて、そこでどれだけ交渉力の格差があるのか、情報の格差があるのか、どれほど情報開示がなされているのか、そういったことの実態を捉えること、および、そこには認知バイアスだとかノイズが作用しているのか、などを調査するべきことになると思います。そういった調査研究で、交渉力の格差であるとか情報格差があれば、あるいは認知バイアスやノイズが有ることが分かれば、それらを是正することが法政策として積極的に打ち出すべきものとなると考えます。それらの点をもうちょっと今後の調査研究で明らかにできるといいのではないかと考える次第です。

コメントですいません。以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。仁平委員どうぞ。

【仁平委員】  せっかくなのでUGC絡みの、あと音楽絡みのお話をさせていただければと思うんですが、実は私が日本ネットクリエイター協会とは別建てで参加しているところで、海外のストリーミング、音楽配信における対価の計算方式というのがどうなっているのかって調査を実はしたことがあります。皆さん御存じのとおり、ストリーミング配信になって、サブスク型のストリーミング配信になって、新人アーティストさんとか、何だろう、コアだけど有名ではない人たちに対する収入が減りましたねという声が出てきているのも、実は事実です。

その計算の方法が実は問題なんじゃないかというムーブメントがあるらしくて、つまり今現状の主な計算方法は、全体のそのサイトでの収益を母数にして、それぞれの楽曲の再生時間みたいなものを分子にして案分するというやり方がメインですと。ただその場合だと、そのやり方だとほとんど有名楽曲のところにお金が流れてしまうという数学的な議論がありますよね。それとは別に、例えばある方は300円払って月額見ているんだけど、1,000円払って見ているんだけど、ほとんど95%の時間を例えばボカロPの千本桜を聞いているというような形であるならば、その1,000円の95%は千本桜に還元されるべき母数になるだろうという考え方があります。

つまり一人一人のユーザーにおいて、視聴案分をして最終的に足し合わせるような、そういうことの必要性が出てきているような、一応そういう調査結果が出たことがあるんですね。セミナーなんかもやりました。この辺り、海外のそういう計算の実績というのが、なかなか日本にいると僕ら、分かりづらいところがあるので、ぜひ文化庁様のお力でその辺りの海外、今、どうなっているよというような調査がされると考えに利用できるかと思いました。

同じように例えば今、海外だとフィンガープリントを使って、どこの放送局もしくはどこのサイトでどう使われているかというマッチングする仕組みというのは相当、実はすごくて、有名なところだとBMATさんなんかはそういうことやられていますが、つまりそういったところは受信機を別途置いて、その受信機で放送や電波を取って、その中でのマッチングしているので、その放送局の中のデータベースに直接アクセスしなくても管理ができるような仕組みが結構あります。そういうようなものの日本国内での可能性というのはあるのかな、ないのかというようなところ、問題点は何なのかみたいなところの調査も、我々独自ではやっているんですけど、なかなか分からないところがあるので、そういう調査もお願いできたらと。

最後に、実は先ほど最初にNFTのお話がありましたが、我々UGCの世界でNFTの使い方が一般的なものとは違うんですね。つまり、そのコンテンツの正当性を表現するのが、証明するのがNFTですけど、だけどコンテンツ自体は改ざんされてしまう可能性がありますねというところがあるんですが、実はUGCの世界では、コンテンツが改ざんされるかどうかってあまり実は気にならなくて、その証明書を持っていることが重要で、その証明書を一種のチケット代わりにして、あるコンテンツの証明書を持っている人たちだけが入れるコミュニティみたいなものをつくって、その中でわいわいがやがや楽しくやっているという、ファンクラブ的なそういう使い方をしているケースが結構多いんです。なので、そのNFTを使った、何だろうな、商取引、コンテンツ取引そのものではなくて、NFTを使ったこういう別の展開の仕方みたいなものも、もちろん我々も調べてはいるんですけど、そういったところも文化庁様のお力で調べていただけると僕らからしてみたらうれしいかと。

以上3点、これはお願いといいますかコメントです。どうもありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょう。倉田委員どうぞ。

【倉田委員】  失礼いたします。まずは事務局におきましては、丁寧におまとめいただきありがとうございました。資料3の今後の検討に向けた視座視点について、一般的な話にはなってしまうかもしれませんが2点述べさせていただきます。

1点目は、コンテンツ産業の将来的な姿も視野に入れて検討するということですけれども、つまりNFT、ブロックチェーンなどの技術を用いた著作権処理を考えていくということは、これからのSociety5.0の時代に合った著作権制度を考えることにもなりますので、これからも引き続き積極的に議論していく必要があるのだろうと感じました。

でも一方ですけれども、NFTやブロックチェーンの技術におきましては、私も含めてですけれども、世間一般の方々が明確に今、理解できているかどうかという点が少々気になるところでして、つまり最新技術を前提とした著作権制度を進めていくと、最新技術についていけない国民との格差といいますか、つまりデジタルデバイドが生じてしまう危険性を少々感じました。

つまり、著作権を国民の方々にとって身近なものにしていこうということがあったと思うんですが、その努力も並行して必要なのだということを感じました。国民全体が著作権を適切に処理できるリテラシーの育成は、その一つかとは思っているんですが、少々感想になってしまうんですけれども、それが1点目です。

2点目は、これ2つ目の丸の、1つ目の黒丸ですかね、音楽分野に限らずそれ以外の分野における実態の把握について、さらなる調査研究を行うことについてですけれども、これについてはもう賛同はいたします。例えば、以前申し上げた記憶があるのですけれども、各図書館等による図書館資料の公衆送信に関する措置が今、検討されていると思うんですけれども、例えばデジタル書籍等の権利処理の詳細について調査していくことも一案としてあるのではないかと改めて感じたところではございます。

以上2点です。私からは以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。太田委員どうぞ。

【太田委員】  補足で2点あります。第一の点は、適切な対価というときに消費者を考えると、ある財貨やサービスに対してどこまでならお金を支払うかという「ウィリングネス・トゥ・ペイ(支払意欲額、支払上限額)」が重要となります。このように考えると、サブスクの場合が問題になります。ある楽曲であれ絵画であれ、消費者がそれに幾らまでなら支払うかというウィリングネス・トゥ・ペイは個人間でもコンテンツ間でも大きく違ってくると思います。これをサブスク化すると、契約条件にもよりますが、多くの場合、消費者は、もう聞き流すためにだけ流す場合もあれば、すごく感動するために見るということもあって、個人間でもコンテンツ間でもクリエイター間でも、また、状況によっても大きく異なってくると思います。それがサブスクでは、いわば均らされた形でサブスク契約の料金になっていると思います。すると、収集した料金をクリエイターの間でどう分配するかというとき、単に視聴回数とかだけで計算していいのか、それが公平なのかが問題となると思います。

そこで今後の調査の方向として可能かどうか、多分不可能かとも思うのですけれども、そういう個々の消費者が個々のアート作品に対して評価するウィリングネス・トゥ・ペイを何とか計測できないか、計量できると多くの可能性が広がるのではないか、というようなことを考えた、というのが一つ目です。

第2点はNFTについてです。僕の理解が間違っているのかもしれませんけど、今日聞いていて何となく公示制度を類推しました。すなわち、日本の登記制度など考えると、そこでは公信の原則ではなくて対抗要件主義になっているわけです。公示制度とのアナロジーで考えると、NFTによってオーセンティシティとかその取引状況履歴とかをブロックチェーン方式の応用で、いわば公示しているものと位置づけうる側面がありそうです。土地や建物など有体物の場合は公的な機関である登記所がやっているわけで、それに対してデジタルの場合はそういう形でやっていないのですが、プライベート・セクターにどこまで任せうるものか、あるいは何らかの公的補助や公的規制、あるいは公的機関化が必要なのか、見極める必要が出てきそうです。プライベート・セクターの中間団体の間の競争によってデファクトスタンダードになるということが期待されている気がしますが、それがどこまで可能なのかという気がします。逆に言うと、どこまで公的な規制のレジームを構築ができるか、いろいろな選択肢を考えてみる必要があるのかもしれないと考える次第です。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。どうぞ。

【菅委員】  再び補足でございます。先ほど私がうまく言えなかったこと、福井先生が言ってくださったので、その説明をしたいと思います。

福井先生が、質問して答えられなければそれは問題だみたいなことをおっしゃいましたが、私が先ほど申し上げたクリエイター視線で下からというのは全く同じことです。下から、何で私はこんなに少ないんだろうというものを、そっちの視点でもって調べていくと、いずれ誰かが答えられなくなる、そこが問題だよというふうな、下からボトムアップみたいに調べていくという視点も必要ではないかという発言をしたかったので、ちゃんと言っていただいてありがとうございます。

要するに上から、ここがこうだ、ああだね、じゃ、聞いてみようというのではなくて、一クリエイター、一消費者の視点から見てどこに問題があるかというような調べ方も考えていただければと思っております。ありがとうございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。生貝委員どうぞ。

【生貝委員】  ありがとうございます。ごく簡単に2点ほど補足ですけれども、まず一つは福井先生、菅様がおっしゃっていただいたこと、全くそのとおりかと思います。まさに様々な主張同士を検証するといったようなことと併せて、プラスアルファで制度の選択肢というのも、これ、恐らく早いうちから考えていく必要があるんだろう。多分2個か3個ぐらいに介入の強度などで選択肢を提示することができて、そしてこういった方法が望ましい、こういった方法はなぜ望ましくない、そういったような議論をしていくことで、まさに最適な制度というのを、関係者の意見を聞きながら考えていくことができるんだろう。ですから、できるだけ、これは非常にペースとしても早くやっていく必要があるところだと認識しているので、制度の選択肢に関しては早いタイミングで考えられるとよいのかと感じています。

2点目といたしまして、また別の分野に関する調査の必要性というのもおっしゃるとおりだと思います。分野といたしましては、動画という分野は、まさしく例えば取り組む必要があるのだろう。そしてほかにも、プラットフォームとしては違ってきますけれども、倉田様のおっしゃっていただいた電子書籍、さらにDSM指令の別の条文になりますけれども、世界的に議論されているニュース記事の問題というのが、日本では全く調査、実態の把握に関する議論もされていないような状況もございます。そういったところを含めて、これもし可能であれば、まさに先ほどお話しに出たとおり、解決すべき問題というのは実際に現場の方々が知っているわけですから、様々な形で御意見を広く権利者の方々からいただく方法というのも考えていいのではないかと感じます。

以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。奥邨主査代理どうぞ。

【奥邨主査代理】  ありがとうございます。今日、NFTのお話もありましたけれども、NFTというのは基本的にはWeb3という大きな枠の中で考えるべきであって、Web3が目指しているものというのは今、私たちはプラットフォーマーとクリエイターとの間のバリューギャップの問題にしていますけれども、実はWeb3というのもプラットフォーマーをネットから追放しましょうと、なくしましょうという、デセントライジングの動きなわけですね。ですから、その技術の世界では、実はもうプラットフォーマーの問題は技術的に実は解決して、個と個が直接つながると、クリエイターとユーザーが直接つながるような形を実現していきましょうというのが、極端に言えばWeb3の理想です。実現するかどうかは知りません。しかし、そういう理想があります。

今、私たちはそれより一周遅れて、もちろん法律ですからそれでいいんですけれども、プラットフォーマーをどうするかって議論しているんですけれども、実は技術のところはもう1個先に行っています。ですから、そのプラットフォーマーはどうするかというのは、もしかしたら技術が進んでいくと、プラットフォーマーは自然と自然淘汰される可能性もあります。技術的にはね。ただ、もちろんそれまで時間がありますから、まさにその時間のギャップを埋めるために法的なサポートをすることは一つ必要だと思います。

それからもう一つ、先ほど何人かからお話が出ていますけど、そういう意味で私たちが見据えていく、まさにDXということで見据えていく世界は、個と個がつながっていく、ユーザーがつながっていくということを見ないといけない。今はどうしてもプラットフォーマーと権利者、クリエイター、権利者団体という視点になっているんで、ここにユーザーがないんですよ。ですから、もっとユーザーということで、先ほど太田先生からもウィリング・トゥ・ペイだというお話があって、ユーザーの視点、それから仁平さんからも、ユーザーがどうやってお金を払っているのかということを算定に入れましょうと、それから菅委員からも、ボトムアップでユーザーを積み上げていきましょうとありましたけれども、まさにこれ、どこを入れるか別としてですけれども、この2者に、プラットフォーマーと権利者だけにすると、あまりに狭い。ユーザーの視点というのをもっと入れていかないといけないし、それこそがDXであるし、Web3であるし、今これから世の中が進んでいく先だということは頭に置いておく。

実は著作権法というのは、このユーザーという視点がほとんどないのが著作権法ですから、この著作権法にユーザーという視点をこれからどうやって入れていくかと、私は逆にいうと著作権法にアクセス保障権というのがあってもいいぐらいだと思っているんですが、それを横に置いといてですけれども、それも含めると、直近は別としてもユーザーという視点を忘れてしまうと、将来に対して足りなかったということになるんじゃないかという気がしております。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございました。大体皆様、御意見は言っていただいたでしょうか。よろしゅうございますか。心配いたしましたが、活発な御議論ありがとうござます。福井委員どうぞ。

【福井委員】  よろしいでしょうか。4度目のコメントになりますが。

【末吉主査】  どうぞ。

【福井委員】  ユーザーのアクセス保障権の議論、ぜひ次期の検討テーマに入れていただければと思いました。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございました。よろしゅうございますね。ありがとうございます。本日いただきましたいろいろな御議論、御意見を踏まえまして、来年度以降の議論につなげてまいりたいと思います。

それでは次に、議事(3)の「令和3年度基本政策小委員会の審議の経過等について」に入りたいと思います。事務局において審議経過報告(案)を作成いただいています。まず、事務局から説明をお願いします。

【小倉著作権課長補佐】  資料4を御覧ください。審議経過の案を、前回までの議論に基づき事務局にて作っているものです。構成として「はじめに」には昨年7月の大臣諮問についてや、これまで10回にわたり各種ヒアリング等を踏まえ、議論を行ってきたことを記しております。

2、課題の審議状況につきましては、(1)(2)に分けております。(1)は昨年末に取りまとめました中間まとめに関しまして、簡素で一元的な権利方策と対価還元、またDX時代の著作権の政策の普及啓発、教育についてまとめております。

また(2)につきましては①と②に分けまして、①が本日の議題の(2)に対応するような、DX時代におけるクリエイターの適切な対価還元方策、②は本日の議題(1)に対応する、ブロックチェーンやNFTの活用による著作物の流通促進や対価還元の可能性についてとしております。

これらにつきましては本日、改めて御意見、御審議いただいたところですので、本日の意見も適宜反映の上含めていきたいと思いますが、特に①番のDX時代におけるクリエイターの適切な対価還元方策の3段落目の「本委員会では調査結果の報告を踏まえ、どのような視座、視点でデジタルプラットフォームサービスを受けるクリエイターへの適切な対価還元に係る検討を深めていくべきか議論を行った。委員からは」とありましたが、この辺り、一部また追加をしたいと考えております。

また②のブロックチェーンにつきましては、最後のパラグラフになります。「コンテンツに係るNFTの取引の中には、著作権侵害コンテンツが含まれていたり、NFTの取引により何が得られているのか不明確なまま投機的な投資が行われていたりする現状もある。これらについては、コンテンツに係るNFTの取引について、消費者に対する普及・啓発も考えられる」といったような一定の方策も示しているところでございますが、こちらにつきましても本日の御意見等を含めて、また事務局等で修正の意見を考えまして、また主査とも御相談をしていきたいと考えております。

以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございました。それでは、説明いただいた審議経過報告(案)につきまして御意見、御質問がございましたらお願いいたします。取りまとめはこんなところでよろしゅうございますか。先ほど指摘された、本日の議論の補充は当然いただくことにいたしまして、それ以外に何か付け加えるべき、見直すべきところ、よろしゅうございますか。

ありがとうございました。今、申したとおり、本日いただきました御意見等を踏まえまして、審議経過を修正させていただきたいと思います。修正につきましては、恐縮ながら私に一任いただくという形でお願いしたいんでございますが、よろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉主査】  ありがとうございます。それでは、そのように取り扱わせていただきまして、その内容を後日、著作権分科会へ報告をさせていただきたいと思います。

その他、全体を通しまして、何か委員の皆様からございますれば、どうぞ。よろしいですか。ありがとうございました。

本日は今期最後の基本政策小委員会でございますので、中原文化庁審議官から一言御挨拶をお願いします。

【中原文化庁審議官】  文化庁審議官の中原でございます。今期の本小委員会を終えるに当たりまして、一言御挨拶を申し上げたいと思います。

本小委員会では昨年7月の大臣諮問を受けまして、8月以降10回にわたりまして、簡素で一元的な権利処理と対価還元やDX時代に対応した著作権制度、政策の普及啓発、教育、DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策について審議をいただいてまいりました。特に、簡素で一元的な権利処理と対価還元につきましては、これまでにない新しく難しい議題となりましたけれども、多くの関係者の皆様からのヒアリングを踏まえ、関係者が同じ方向を向いた方向性を示していただきました。文化庁としましては、この新しい権利処理の仕組みの実現に向けて、中間まとめの方向性を堅持しつつ、法制的な検討と環境整備を進めてまいります。

また、DX時代に対応した著作権制度、政策の普及啓発、教育、DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策についても、それぞれの御専門の立場から非常に重要な御示唆をいただいたものと受け止めてございます。今後も引き続き幅広い政策論を御議論いただきたいと考えてございます。

委員の皆様方におかれましては、今期の本小委員会の充実した審議のために、多大な御尽力を賜りましたことに改めて感謝を申し上げ、私からの挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございます。本日は、皆様ありがとうございました。最後でございますので、私からも一言申し上げたいと思います。今年度も大変お世話になりました。まず令和3年改正の動きも受けまして、簡素で一元的な権利処理の方策の概念図、この概念図を含めまして中間まとめができたこと、これは一つの到達点ではなかったかと思っております。

他方、対価還元方策については、基本的な調査結果が整理されつつはありますけれども、さらに今後も、今日御指摘があったとおりスピード感を持って検討をされるべき課題であると考えております。今後とも御支援よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【中原文化庁審議官】  ありがとうございました。

【末吉主査】  それでは、以上をもちまして、今期の文化審議会著作権分科会基本政策小委員会は終了とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。

―― 了 ――

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