文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第3回)

日時:令和4年9月20日(火)

10:00~12:30

場所:オンライン開催

議事

1開会

2議事

  • (1)審議事項に関する関係者からのヒアリング
  • (審議事項)

    • 研究目的に係る権利制限規定の検討について
    • 立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等について
    • 損害賠償額の算定方法の見直しについて
    • 簡素で一元的な権利処理と対価還元の制度化について
  • (2)その他

3閉会

配布資料

資料1
第22期文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第3回)ヒアリング出席者一覧(107KB)
資料2
第22期文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第3回)ヒアリング資料一式(629KB)
参考資料1
第22期文化審議会著作権分科会法制度小委員会委員名簿(109KB)
参考資料2
第22期文化審議会著作権分科会法制度小委員会における審議事項に関するヒアリングについて(454KB)
参考資料3
中間まとめ DX時代に対応した「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元」及び「著作権制度・政策の普及啓発・教育」について【概要】(622KB)

議事内容

【茶園主査】ただいまから文化審議会著作権分科会法制度小委員会第3回を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。

本日は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。皆様におかれましては、ビデオをオンにしていただき、御発言されるとき以外はミュートに設定をお願いいたします。

議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと特段非公開とするには及ばないと思いますので、既に傍聴者の方にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところですけれども、この点、特に御異議ございませんでしょうか。

(「異議なしの声あり」)

【茶園主査】ありがとうございます。では、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】本日の配付資料は議事次第にあるとおりになっております。

以上です。

【茶園主査】それでは早速、議事に入ります。本日の議事は、議事次第のとおり(1)から(2)の2点となります。

早速、議事(1)の「審議事項に関する関係者からのヒアリング」に入りたいと思います。本日は、議事次第にございます審議事項につきまして関係者からヒアリングを行います。まず、事務局より簡単に趣旨の説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局です。

関係者からのヒアリングについて御説明いたします。

前回、委員の皆様に御議論いただいた4つの審議事項について、御意見を踏まえて更新したものを関係者の方に事前に配付しており、その資料は本日の参考資料2として配付させていただいております。

本日は、資料1のとおり、7団体の関係者の方に御発表いただきます。発表は1団体当たり約5分程度ということでお願いしております。時間の都合上、質疑の時間は複数団体ごとにまとめて設けます。御発表者様におかれては、事前に事務局よりお願いした発表時間に御留意いただき、円滑な議事進行に御協力賜れれば幸いです。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございます。

それでは、初めに日本新聞協会の福井明様、お願いいたします。

【日本新聞協会(福井氏)】日本新聞協会の福井といいます。今回、発言の機会を頂き、ありがとうございます。意見を述べさせていただきます。

1、研究目的に係る権利制限規定については、かねて指摘されているとおり、著作物の利用行為としての研究がそもそも曖昧で、何をもって研究とするのか、その範囲の線引きが困難です。法改正を検討するのであれば、研究や研究の主体とは何かについて法律や政令で定義を明確にし、解釈を誤らないようにすべきだと思います。今のままでは、研究の名の下に、実態として著作物がほぼ自由利用されてしまう懸念が強くあります。極めて慎重な検討が必要と考えます。このため、簡素で一元的な権利処理方策への対応などを優先させることは現実的であり、妥当と考えます。

2つ目です。法改正の前提として、内部資料の正しい理解・解釈が必要と考えます。ある官庁での無断クリッピング、これは570人、6万記事余りという規模でした。これが2020年に発覚しました。91媒体に謝罪し、使用料を支払う事態になりました。原因は自ら認めているように著作権に対する認識不足でありました。このような認識の下で公衆送信が解禁されれば、クリッピング契約を行わずに、内部資料の限度を超えて利用されてしまうことが容易に推測されます。

内部資料の解釈については、各種の解説書に正しく、詳しく記載されています。例えば加戸守行氏の「著作権法逐条講義」の新版によれば、「単に官公職員の執務参考資料として複製することは認められず、その著作物を複製しなければ立法又は行政の目的を十全に達成できないような場合であることを要します」と、適用範囲を限定しています。法改正するならば、法律や政令で解釈を誤らないような記述を加えるべきと考えます。「ライセンス市場等の既存ビジネスを阻害しないようにすることに留意」という著作権課からの論点提起は当然のことと考えます。

参考データとして、新聞記事クリッピングの現状を御報告します。その日の朝の新聞記事を切り抜いて、コピー配付あるいはデジタル送信・閲覧などの方法で、継続的・反復的に組織内共有する行為をクリッピングといいます。頻度としては、「一媒体の記事を、同一組織または同一部署の中で、概ね月5記事以上利用する場合は、クリッピングに相当する」を基準としています。新聞を必要部数購入するのが本来の姿であります。ですが、スピーディーに組織内共有したいというニーズも理解できて、許諾による複製・共有であるクリッピングも適法に利用いただいております。

全国紙など6紙を例に取ってみると、ほとんどの中央省庁と多くの自治体はクリッピング契約を結んでいます。利用記事数と共有人数により、各社独自の料金表で対価を決めています。ある新聞社の例では、月間100記事を100人でデジタル共有する場合、月額数万円レベルの料金となります。多記事、多人数になるほど割安な料金設定となる例が多くあります。具体的な作業は、組織内の広報担当者が行う例や、外部の業者から納品を受ける例が見受けられます。クリッピング契約により、組織内の公衆送信ニーズはほぼ満たされているのではないかと思われます。

なお、中央省庁の中には、新聞社に無断で、外部業者から記事を公衆送信させたり、複製物を納品させたりしていた事例がありました。改めて利用許諾契約を締結したり、過去分の無断使用料を支払ってもらったりして解決に至っております。

3番です。今回の方針について賛成いたします。(ii)については、これまでの著作権侵害事案で通常のライセンス料相当額を用いて交渉してきたのと比較して、より高額・妥当な解決金額が望めるのではと考えます。また、その旨を事前に広く告知するなどの対応を取ることによって、侵害を抑止する効果も期待できると考えます。

4-1です。簡素で一元的な権利処理を進めるのは、新たな利用を創出し、クリエーターへの対価還元機会を拡大することが目的の一つであります。制度設計の議論が迅速な権利処理に過度に偏り、権利者への適切な対価還元方策がないがしろにされないよう求めます。窓口組織の設計、権利者が判明している場合の意思表示機会の提供といった課題を、今後の議論の過程で丁寧に具体化し、解決していくことが求められると思います。

分野横断権利情報データベースについては、権利者の各分野が持つ権利者データベースの検索画面を結合または連係させるようなイメージを持っており、権利者探索のために有効であると思われますが、検索結果によるタイトル表示が有償サービスとなっている既存のデータベースの例があります。このことから、現行サービスの実情を踏まえ、既存ビジネスを阻害することのない仕組みを構築していただきたいと考えます。新聞社の横断的権利情報データベースとしては、既に日経テレコンやジー・サーチなどのサービスが存在しています。

4-2です。対象となる利用行為としては、過去の放送番組や舞台公演などのデジタルアーカイブなどが想定されます。新しい権利処理に移行する要件の一つ、著作権者の意思表示がない場合の判断基準をどう定めるか、窓口組織が使用料相当額を受け取ったとしても、利用開始後に所在不明だった権利者が現れ、利用は認められないと意思表示をした場合、これを退けるのかなど、制度化で多くの問題を克服しなければならないと考えます。

権利者が名のり出なかった場合、受け取った使用料相当額を著作権者や利用者に資する著作権の関連事業に活用する案については、授業目的公衆送信補償金制度の共通目的事業の例もあり、妥当なものと考えます。

使用料相当額の決め方として、個別具体の案件に応じた詳細な算定ではなく、外形的、簡易な算定とすると提示されていますが、現行の利用料金額設定は複製・書籍・ウェブなどの利用形態によって細かく分かれている場合が多く、簡易な算定にも限度があろうと考えます。

最後です。4-3、新聞各社のニュースサイトでは、「無断で複製、公衆送信、翻案、配布等の利用をすることはできません」などと記載して、無断複製の防止に努めているほか、記事・写真の二次利用を希望する場合の連絡先を記載しております。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

では続きまして、学術著作権協会の石島寿道様、よろしくお願いいたします。

【学術著作権協会(石島氏)】本日はこのような時間を頂きまして誠にありがとうございます。早速ではございますが、当協会からの意見について御説明させていただきたいと思います。

まず1つ目の、研究目的に係る権利制限規定の検討についてでございますが、基本的な方針については賛成するものですけれども、まず前提として、研究目的の著作物利用については、現行の著作権法においても30条ですとか31条、32条、38条と、そういった権利制限規定の援用が可能な利用もかなり多いと考えられます。そのため、FAQですとかガイドラインを充実させるとか、そういった形での啓発活動によって研究者自身の著作権知識の底上げを図って、研究者自身が判断できる環境づくりをすることがまず必要なのではないかと考えます。

文化庁の委託事業「研究目的に係る著作物の利用に関する調査研究報告書」にも報告されていますが、研究者のニーズをしっかりと分析して、どのような利用が現在の権利制限規定の枠外にあって優先順位が高いのかと。そしてそれが権利者の権利を不当に侵害しないのかということを慎重に精査し見極めた上で、現行、改正されてきていますけれども、図書館関係の権利制限規定の見直しによる絶版等資料ですとか図書館資料等の公衆送信、あとは現在検討を進めていらっしゃる簡素で一元的な権利処理方策と対価還元に係る新しい権利処理方策によっても、これでも対応し切れない利用態様等にどういったものがあるのかというものを見いだした上で、検討を行うという段取りがよいのではないかなと考えております。

2つ目の立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等についてですけれども、こちらにつきましては、対応案について、市場への影響をしっかりと精査した上で慎重な検討を行う必要があるのではないかと考えております。立法・行政に係る内部資料の公衆送信に関しては、現在、例えば日本複製権センターさんなどですと、一部をライセンスによってカバーしている部分もあると思いますので、既存のライセンスですとか、あるいは当協会に関連するところですと電子ジャーナル等の販売といったところの市場への影響のみならず、ライセンス市場に関して言えば、将来的なライセンスの広がりというところ、市場への影響というところも想定されますので、こういった影響を精査した上で、ビジネスを阻害しない方策そして条文の解釈について検討を進める必要があると考えます。

3つ目の損害賠償額の算定方法の見直しについてですが、こちらは対応案に賛成いたします。漫画村ですとかファスト映画等の海賊版による侵害は、従来考えられる侵害額をはるかに上回っておりますし、深刻化の一途をたどっていると思います。侵害者は著作権者の販売等の能力を優に超える利益を得ることが往々にしてありますので、ライセンス料相当額の損害賠償請求を可能とする対応に賛同し、いわゆる侵害による逃げ得を抑止することも有益に機能することを期待しております。

4つ目の簡素で一元的な権利処理方策と対価還元の制度化イメージについてですが、まず1つ目の制度化イメージについては賛成するところでございます。分野横断権利情報データベースの構築というところではデータベースという言葉が出ていますけれども、どちらかというと、分野ごとに権利者が管理する情報が異なっていて、ユーザーが求める情報や要件は異なることを踏まえますと、データベースというよりは横断的な検索サービスを構築するほうが、実現可能性が高いのかなと考えます。中間まとめにはジャパンサーチとの連携の可能性にも言及されていまして、さらに広範なデータベースの構築を期待するところでございます。

UGCなどデータベース化がなされていない著作物や、集中管理されていないような著作物を利用するケースにおいて、一元的な窓口による探索においても権利者が不明であり、著作権者の所在や意思を把握することが困難な場合には、一元的窓口を活用した新しい権利処理の仕組みを活用して、コンテンツ利用希望者が負荷を感ずることのない環境の実現が望ましいと考えております。

拡大集中許諾制度という言葉も出てきておりますけれども、こちらについては集中管理の進んでいない我が国における導入は現実的に困難ではないかなと思われるところですが、具体的にどういったところの利用についてニーズがあるかといった点の調査や、諸外国における調査も継続して検証する必要があるだろうと考えております。

4-2の各論点の整理についてということですが、各論点の整理について特段の異論はないところでございますけれども、権利制限や裁定制度とは異なる新たな仕組みであって、具体的にどういったところの利用についてニーズがあるかといった点を十分に調査した上で、権利者の利益を不当に害することのないよう、慎重な検討が望まれます。一方、この制度の実現によって、今まで権利処理に関するコストがネックとなって利用されなかった多くのコンテンツが利用に供され、コンテンツ創作の好循環へとつながるであろうことが予想されます。

こうしたためには、制度の普及啓発活動も欠かせない観点の一つではないかと考えておりまして、例えば2020年4月に施行された授業目的公衆送信補償金制度は、教育関係者への理解は進んだものの、個々の権利者への理解が進んだとは言い難い状況もあります。コンテンツの利用者のみならず、権利者への新しい仕組みについての浸透が図られることによって、権利者自身の意思表示を簡便に管理する方策の一つでもある集中管理が進むことも期待しております。

4-3の著作物の分野に応じた意思表示等の取組についてですが、当協会ではセミナーですとか、やはり最近ですと授業目的公衆送信補償金制度のこともありますので、大学とかそういったところから御依頼いただきまして、ファカルティーディベロップメントの一環でそういった情報提供をさせていただくといった機会が増えてきております。

あとは、当協会と管理委託契約のない権利者に対して海外の管理事業者から送金されてきた使用料等、これを預かざるを得なかった場合、対象となる権利者名をホームページで公示するとともに探索ですとかコンタクト業務を実施して、できる限り分配することを継続的に行っております。

以上になります。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

では続きまして、日本書籍出版協会の村瀬拓男様、日本雑誌協会の長谷部不止志様、よろしくお願いいたします。

【日本書籍出版協会(村瀬氏)】意見発表のお時間を与えていただきありがとうございます。日本書籍出版協会、村瀬と申します。まず、私から書協及び雑協を共通しての意見を述べさせていただきます。

まず第1項ですが、研究目的に係る権利制限規定の検討についてですけれども、近時の改正も含め十分に対応できていると思われますので、これ以上の権利制限規定の検討は不要であると考えます。研究という言葉は教育、図書館といった言葉と同じく、パブリックなニュアンスを持ちますが、パブリックな領域にあることがそのまま権利制限の理由とはなりません。これらの領域で商業活動を行っている出版事業者に悪影響を与え、ひいては研究環境自体の劣化につながりかねないと考えます。

立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信について、趣旨は理解できますが、内部資料である以上、利用範囲も限定されるべきであり、立法・行政機関の外部に対する公衆送信が容易に許容される立法であるならば賛成できないと考えます。

損害賠償額の算定方法の見直しについてですが、まず改正の方向性については賛成いたします。ただ、課題として挙げられていました海賊版対策との関係では必ずしも有効ではないと考えられる面がありますので、デジタル海賊版の実態を念頭に置いた継続的な検討が望まれると考えます。

4番目、簡素で一元的な権利処理方策と対価還元の制度化イメージについてです。出版社には利用者としての立場もございますが、一方、著作権者もしくは出版権その他の法的または経済的な利害関係者としての立場があります。これから述べることは主に後者の立場に立つ意見となります。

まず窓口組織については、それが民間組織であるならば、経済的な持続可能性について大いに疑問があるところです。現在、著作権者団体と出版社団体は共同で特定図書館等からの公衆送信制度の実施に取り組んでいますが、権利者の探索コストと補償金分配コストを持続的に捻出することが極めて難しいという課題に直面しています。これらのコストはスケールメリットがほとんど利かないためです。今回の制度も、一般に著作物の利用対価は少額なことが多く、探索コストと対価還元コストを賄うことについて、私たちが現在直面している課題と同様の問題に直面することになるのではないかと危惧するところです。

出版界として保持し、整備しているデータベースは基本的に出版物流通のものであり、権利者情報を主としているものではありません。今回の制度は権利者データベースの整備を強く要請するものであるならば、支払われた利用料の一部というレベルではなく、抜本的な助成や整備へのインセンティブがある制度とする必要があると考えます。そのようなものがなければ、出版社負担で進めることは到底できないでしょう。

各論点の整理という部分については、事前提出の意見書のとおりです。特に意思表示がされていないことをどう認定していくのか。流通している出版物に掲載されている著作物はそもそも利用許諾を試みることが可能であり、暫定利用の対象とはならないとすべきであると考えます。また、返答がないケースも様々な理由があり、安易に意思表示がないという扱いをすることも妥当ではありません。無体物である著作物の非競合性といった性質といった指摘もありましたが、出版物として利用されている著作物について安易に非競合性を認めることは、出版社の法的または経済的な立場を毀損する危険があります。

あと、翻案を伴う利用や同一性保持権に抵触する利用については、公表された著作物をそのまま利用するのとは異なり、権利者の意思をより尊重する取扱いが必要であると考えます。本制度による暫定利用が翻案や改編を許可する、許容するものとするのは、必ずしも妥当な取扱いではないのではないかと考えます。

それでは長谷部さん、お願いします。

【日本雑誌協会(長谷部氏)】ありがとうございます。私からは審議事項3についてです。

まずは、お示しいただいております案それから方向性につきましては賛成の立場でございます。その上で補足の意見として申し上げたいと思います。

近年の海賊版サイトの多くがストリーミングサイトや、あとは広告料収入による運営という特徴から、被害者側での侵害や損害の把握が現実的に難しく、被害者側の立証責任の負担が非常に大きくなっているのが現状と考えております。

今回の御審議におきまして、被害のさらなる実効的救済方法という観点から、現状の案に加えまして、海賊版サイトへの対応を前提として積極的な御議論をお願いしたく存じます。例えば、挙証責任の一部転換、負担軽減のために、侵害数の推定やストリーミングサイトを前提とした被害額の推定を御検討いただきたいと思っております。加えて、さらに悪質な海賊版サイトの対策というアプローチから、法定損害賠償や懲罰損害賠償についても御検討をお願いしたいと申し上げます。

それから、海賊版サイトに関しては広告料収入による運営が現実的でございまして、その点の実際の把握が難しく、この把握・特定のための方策や推定規定を一部御検討いただくと、ありがたく存じます。

以上になります。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ここで質疑の時間を取りたいと思います。ただいまの日本新聞協会、学術著作権協会、日本書籍出版協会、日本雑誌協会からの御意見に関連いたしまして御質問がございましたら、発言のほど、よろしくお願いいたします。何か御質問はございますでしょうか。

福井委員、お願いいたします。

【福井委員】福井でございます。

皆さん、非常に時間が限られる中で、大変示唆に富む、またまとまった御意見をありがとうございました。伺うだけでも勉強になる点が多々ありました。私からは書協さん・雑協さんに1つのコメントと1つの御質問をさせていただければと思います。いや、コメントは質問を伴いますので2つの質問になりますね。

1つ目は海賊版対策、3の項目についてです。おっしゃること、現在の制度では損害額の立証において権利者側の負担が重く、また不十分であること、全くもっともであろうと思います。例えば114条の2項に関して、私、ひょっとすると前回の審議会でちょっと先走った議論をしてしまったかもしれないですが、114条2項では侵害者側が得た利益を権利者側の損害と推定する規定があります。しかし、現場では現在の運用では不足であるという声も恐らく少なからずあるところではないかと思うのですが、この点に限らず、現在の規定のここが具体的にこう変わるといいなというようなもし御示唆があれば伺えればと思いました。これが1点目です。

それから2点目です。これは4番の、簡素で一元的な利用に関する御意見への質問ですが。ちょっと気になりましたのが、冒頭で出版社には利用者と権利者の両方の立場があると。全くおっしゃるとおりだと思うのですが、そのうち主に権利者の立場から意見を申し上げると伺ったように思います。これは文化庁側から主に権利者の立場で意見を言ってくれという依頼があったのでしょうか。もしなかったとしたら、なぜ一方の立場からの意見のみを述べるというふうに考えられたのでしょうか。今回の意見については、会員の意見はどこまで尋ねられたでしょうか。

なぜこういうことをお伺いするかというと、例えば過去の出版物の復刻、あるいはDXでの展開などで過去の出版物についての権利処理が非常に悩ましい、権利者が多くいて、また古くなればなるほど権利者との連絡あるいは個別の了承を取るのがほとんど不可能に近いという課題は大きいと理解しており、実際、実務においてもそういう御相談が多いんですね。それに対して、今回の仕組みに対してはネガティブな御意見も伺ったように思うのですけれども、御懸念の点は重々分かるのですが、そうすると多くの権利者が関わる出版物の利活用についてどういう実効的な解決策を考えていらっしゃるのか。

特にアウト・オブ・コマースと言われる市場で流通していない作品について、奥付に出版社などの名前があれば連絡先だという御意見があり、それはそのとおりだとも思いますけれども、アウト・オブ・コマースの作品について、それだけで権利処理が現実的に可能だとお考えでしょうかということを、現場の実際の課題に関わることだと思うのでお尋ねした次第です。

やや多くなりましたが、答えられるところでお答えいただければと思います。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。書籍出版協会の方、よろしいでしょうか。

【日本書籍出版協会(村瀬氏)】ありがとうござそれでは最初の質問については雑協から出ておられる長谷部様から補足していただいたほうがよろしいかと思います。長谷部様、よろしいでしょうか。います。書籍出版協会の方、よろしいでしょうか。

【日本雑誌協会(長谷部氏)】では私から。

御指摘の点ですけれども、具体的に現状の条項をこう変えたいというのは、今すぐはちょっと出てこないのですけれども。今、直近でやはり苦労しているのが侵害数の推定という部分でございまして、いわゆる一定、シミラーウェブというものが広く使われていると思うのですけれども、やはりそれが実際の提訴となった場合に、その信用性が非常に低いということが聞こえておりますので、その点からまず何か具体的な御対応を頂けないかというようなところを今思い立った程度でございます。

すいません、以上になります。

【日本書籍出版協会(村瀬氏)】それでは2つ目の御質問については私からお答えいたします。

なぜ片方の意見だけ述べたのかというところでありますが、それは取りあえず利用者としての立場から見たときに、今回の制度は基本的には歓迎される側面はあると考えておりますし、福井先生の御指摘のとおり、過去の出版物の復刻であるとか、そういったところにおいても権利者になかなか行き着けないといったところが実務上の阻害になっている状況は、私自身も十分に感じているところです。

ただ、今回は書協及び雑協として1枠5分の意見表明の時間が与えられる限りというところで、そこまで含めて言及すると到底時間が足りないという非常に現実的な問題があるというところ。それともう一つ、冒頭でも述べましたとおり、出版社に著作権者の立場だけではなくて、契約上の経済的な利害関係者の立場、2号出版権者とか1号出版権者であれば法的な立場ということもできますけれども、それのみで評価されない、法的な側面だけでは評価されない立場もあり、そういったところでの意見を述べることをやはり優先すべきではないかという、全体の事前の団体内での議論の流れにのっとって申し上げたところです。

ですので、福井先生が御指摘された、利用者としての様々な今回の制度のプラス面を我々は全然否定する意図は全くないですけれども、我々としてこの限られた時間で発言を許される範囲内では、我々でしか発言できない部分を集中的に発言させていただいたと、そのように御理解いただければと思います。

【福井委員】大変ありがとうございました。雑協さん、長谷部さん、もし114条の、実際にこう変えてほしいというようなことが後々具体的に上がってまいりましたら、何か補足のようなものでも後日、これは座長のお考え次第ですけれども、私個人は伺ってみたく思いました。村瀬先生もありがとうございました。失礼いたします。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ほかに御質問等ございますでしょうか。

よろしいでしょうか。ではどうもありがとうございました。関係者の方々は随時御退出いただいて結構です。

では続きまして、日本脚本家協会の金谷祐子様、よろしくお願いいたします。

【日本脚本家連盟(金谷氏)】おはようございます。日本脚本家連盟の金谷祐子でございます。よろしくお願いいたします。

では早速、設問1についてですが、研究目的の定義や権利制限について引き続き議論検討を進めることに賛成いたします。ただ、資料3ページ、2の対応案につきましては、回答書のとおり、簡素で一元的な権利処理方策と対価還元に係る新しい権利処理方策、いずれもまだ検討段階でございますので、「これによる対応を行い」ではなく、「できる可能性があり」としたほうがより適切でないかと、あえて付言いたしました。

続いて、設問2についてです。資料4ページ、2の対応案にある①の内容に異論はございません。中でも、黒ポツ2つ目の、現行法下での複製行為と同等の範囲に限定することや、ライセンス市場等の既存ビジネスを阻害しないようにすることなどは、権利者としてぜひとも留意をお願いするところです。②のその他、DX時代に対応した著作権制度・政策の見直しについては、回答書に記載のとおり、この設問2の項目とは別建てにすべき重要な課題かと思います。また、このように著作権制度、政策の見直しと言われますと、正直、またも権利制限の拡大かと身構えてしまうところがございます。特に著作権のうち、人格権の検討にまで踏み込んでいることには著作者として大変危惧を覚えます。

次の設問3については対応に賛成いたします。中でも資料7ページ、上段にあります、ライセンス機会の創出による逸失利益も含め、損失を塡補するという考えには大いに賛同するところです。

次に設問4に移ります。まず4-1の制度化イメージについて。こちらは例えば資料10ページの図にあるような、暫定的な利用から暫定的ではない本利用に移行する際の要件とは具体的にどういうものかといったことなど、現時点ではまだ判然としない点もあるため、意見は差し控えます。

それよりも気がかりなのは、この制度化の要となるであろう窓口組織なるものの在り方です。回答書のとおり、どういう規模・形態であれ、新たに窓口組織をつくるとなれば、当然ながら人・物・金が不可欠でしょうし、さらには組織を維持・運営するコストについても誰がどのように負担していくのか。何事も始めるのは大変だけれど、続けるのはもっと大変とも申します。そうした肝腎な部分がいまだ曖昧、不明瞭に感じます。

しかもこの組織は、資料を読む限りでは、主に著作権者が不明な作品を対象に権利処理などを進めていくことを主眼としているようで、そうした探索には当然ながら、例えば当連盟のような既存の著作権管理事業者のデータベースや人材などリソースの活用が前提になるだろうと想像いたします。ですが、データベース一つをとりましても、これまで私ども連盟員がそれぞれ相当の費用などを負担して蓄積しているものですし、それに類する新しいデータベースづくりなど、一体どこのどなたが負担されるのかといったことなど、この窓口組織をつくるに当たっては考慮すべき課題であろうと感じます。

続いて4-2、各論の整理についてです。この中でとりわけ気になったのは、資料13ページの、意思表示がされていない場合という項目です。回答書に②として記載のとおり、著作物の利用については、そのたびごとに権利者に条件的合意を含む許諾を得て利用するのが原則です。つまり、当初は返答が得られなくても、条件さえ異なれば利用可の意思表示がなされる場合もあり得るということで、連絡を試みても返答がないからという理由で権利者の意思表示がされていないとみなしてよいものかどうか。それには明確な法的根拠が必要になるのだろうと思います。

が、一方で、そうした権利者の意思表示を超越可能にするような立法措置には、残念ながら同意いたしかねます。

そして最後に4-3、著作物の分野に応じた意思表示等の取組についてですが、例えば脚本集として出版されたものは別として、いわゆる印刷台本には、回答書に記しましたような内容を表紙あるいは裏表紙に明示しているほか、台本に通し番号を振りまして、もし外部に出たような場合には、その番号から出どころが分かるようにしている現場もございます。

以上、駆け足ではありますが、回答書に書き切れなかったことなど含め、述べさせていただきました。ありがとうございました。

【茶園主査】日本脚本家連盟様、どうもありがとうございました。

では続きまして、日本シナリオ作家協会のハセベバクシンオー様、よろしくお願いいたします。

【日本シナリオ作家協会(ハセベ氏)】おはようございます。日本シナリオ作家協会のハセベです。発言の機会を頂きありがとうございます。よろしくお願いします。早速ですけれども、意見書について申し上げます。

1番目ですが、対応案にはおおむね賛成いたしますが、2番目のアンダーライン、簡素で一元的な権利処理方策と対価還元に係る新しい権利処理方策による対応という部分については、これからの4番目の項目に関わりますので、後ほど申し上げます。

2番目ですが、対応案の1には賛成いたします。2については利用場面を具体的に想定するということですが、拡大解釈されてしまうことで著作者の権利を不当に害するおそれがあることを懸念いたしますので、慎重な検討が必要かと考えます。

3番目については対応案に賛成いたします。

4番目、制度化のイメージについては理解しております。ただ、この窓口組織が実質的に拡大集中許諾制度における集中管理団体のように第三者が自由に他人の著作物の利用許諾を行えることになることであるならば、法的正当性が確保できるかということに疑問があります。

また、簡素で一元的な権利処理の目的はいわゆるUGCや権利者・所在不明作品の権利処理の問題解決にあると理解しているところでして、だとするのであれば、著作権者不明問題については新たな制度化を図る前に、あくまでも現行の裁定制度の改善に取り組むことを検討していただきたいと考えております。

論点整理についての意見については意見書のとおりであります。ニーズや公益性に応える利用や、コンテンツ創作の好循環化といった狙いについては大いに賛同するところですが、権利制限が伴うことと、所有者不明土地の問題と並べている点などで、我々の著作物の利用、たとえ作者不明の作品であってもそういう性質の土地と同じなのかなと、私個人も作家でありますので、そういった立場からも若干違和感を覚えますので、そういう意味ではより丁寧な検討をしていただきたいと存じます。

1点、意見書の中で所有者不明土地の部分に書いた文言で「所有者不明土地には人格権はない」という一文は削除していただければと思いますので、よろしくお願いします。

あと、意見書の書式の都合で明記することができませんでしたけれども、昨年より引き続き、権利制限を伴う一元的な権利処理については反対するということを申し上げます。

最後の意思表示の取組についてですが、シナリオ・脚本分野においては、権利侵害を受けるのは我々の著作物を利用した映画やドラマ、アニメという形になってからが多いので、これは脚本段階という意味においてということですね。先ほどの日脚連さんの印刷台本への注意書きも同様です。

また、最後に書いてあるのは、また意思表示自体をなくさせる無断利用まで許諾させるようなことではありませんけれども、同一性保持などについては制限してしまおうという目的で、著作者人格権を制限しようという風潮があるので、それを憂慮しているという意味で書きました。

以上です。ありがとうございました。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

では続きまして、日本写真著作権協会の壹貫田剛史様、よろしくお願いいたします。

【日本写真著作権協会(壹貫田氏)】本日は、このような貴重な機会を頂きありがとうございます。限られた時間ですので、早速内容に入りたいと思います。

まず、1の研究目的に係る権利制限規定ですけれども、本論点につきましては、対応案に賛成いたします。何をもって研究目的と解されるのか、その範囲は必ずしも明確ではありませんし、安易に権利制限の範囲を広げることには慎重であるべきだと思っております。

また、事前に頂いた資料には、権利処理の一元的なスキームの構築という点についても言及されているところであり、そういったスキームとも当然関係してくると思われますので、安易に権利制限を行うのではなく、包括的に議論するべきと考えております。

次に2つ目の論点である、立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信についてですが、こちらについてもさらに検討を深めていただく必要があるのではないかなと思っております。頂いた資料の中に「ライセンス市場等の既存ビジネスを阻害しないよう留意する」と書かれています。こうした着眼点は当然必要ですし、こうした配慮がなければそもそも我々としても議論のテーブルにつけないわけですけれども、既存のライセンスビジネスには、これまでの御発表にもあったように新聞のクリッピングサービスほか電子ジャーナルなど様々な形態のものがあります。そういった既存のビジネスに対して与える将来的な影響というものもしっかりと視野に入れていただきたいと思っております。また、そもそも内部資料とは何なんのか、その範囲の明確化という点についても、しっかりと詰めていく必要があるのではないかなと思っております。

それから3つ目の論点である損害賠償の算定方法についてですが、こちらに関しましては賛成の意見表明をさせていただきます。これまでの御発表にもありましたけれども、漫画村やファスト映画といった深刻な被害が現実問題としてあるわけですので、そういった現実を受け止めるに当たって、他の知的財産権との整合性等を踏まえ、ぜひとも必要な法改正を行っていただければ良いのではないかと考えております。

最後に4つ目の論点、おそらく一番注目されている論点ではないかと思いますが、簡素で一元的な権利処理方策と対価還元制度イメージ化についてであります。この論点に関しましては、現段階ではあくまでもイメージとして示されてございますので、本論点に係る個々の細かな課題についてはこれから御議論が行われるのではないかと思っております。ただ、資料にもありますように、著作権ビジネスに対する影響に対しては、意識的に丁寧に御議論いただく必要があると思っております。

例えば、イメージの段階とはいえ、音楽や映画など著作物の分野も様々な中、それぞれの分野ごとに長年の慣行が培われ、いろんなビジネス形態が発展しているわけですけれども、どの程度の分野を包含した制度構築を目指しておられるのかというところが、不明瞭です。それから、これまでも皆さん御指摘されていますけれども、そもそも窓口組織とは一体どのような組織なのか。その体制、その法的性格、財政の在り方、管理運営の在り方といった実務上の課題というものについて、決して軽んじることなく、正面から御議論いただく必要があると強く感じております。

もとより、法制度小委は制度論を議論する場であることは私も承知してはおりますけれども、そもそも制度論と実務は切っても切り離すことができないわけであって、現に我々、図書館公衆送信補償金制度に係る指定管理団体の立ち上げの実務において、非常に苦労しているところであります。そういったことも考えますと、実務上、新しい組織の運営が支障なくできるのかどうかということも、是非視野に入れておいていただきたいと思っております。

それから4-2についてですが、簡単にポイントだけ申し上げます。まず、本資料中「他人の財産について第三者が許諾を行うことができるとする法的正当性についての説明が難しい」という御指摘が紹介されていますけれども、先ほど申し上げたように、窓口組織の在り方がしっかりと説明できないと、換言すると、この窓口組織なるものと既存の権利者団体との関係性がしっかり説明できないと、法的正当性について説明することは当然ながら困難になると思います。

それから権利者不明・所在不明のものに関して、これまでも裁定の見直しが累次行われてきたわけですけれども、こうした見直しに対する評価も併せて行っていただけるといいのではないかなと思います。

次に、意思表示の在り方と関連して、本資料ではいわゆる権利者情報が示されていることをもって「意思表示」とするということで、取りあえずの仮定を置かれているようですけれども、少なくとも視覚芸術分野に関して言うと、同仮定を前提にすると、ほとんどの場合において「意思表示」ができていません。これは残念なことではありますけれども、できていないという現実がある以上、このままの仮定で本制度が運用されれば、非常に広範多岐な著作物が制度の対象となってしまうことになります。このことは、既存のビジネスに対する影響が非常に大きくなってしまうことに他ならず、我々としては慎重にならざるを得ません。

もちろん、私自身は「意思表示」というものは権利者探索の観点からも非常に重要だと思っておりまして、現時点では「意思表示」ができていない状況にあると申し上げましたけれども、単に慣行として「意思表示」が定着するのみならず、やはり仕組みとしても担保されないと、本制度を実際に運用するところまでにはなかなか到達できないのではないかと思っております。

使用料相当額に関しても大変重要なポイントでございまして、この使用料相当額の決定に当たって、額の正当性や決定プロセスの公正性をどのように担保するのかは大きな課題です。また資料では「著作権等管理事業者等の協力を得て」とありますけれども、一言で協力といっても、実務上は協力にかかるコストが当然発生するわけであって、実際には口で言うほど簡単ではありません。

窓口組織の役割は先ほど申し上げたとおりでございます。図書公衆送信補償金制度に係る管理団体の立ち上げの実務についても、実態上我々は大変な労力を日々割いておりますし、またSARTRASができてからというもの、ほぼ毎週のように、週に2回、3回と会議に出席しなければならない状況にあります。これに加えて図書館関連の会議にも週に何度も出席する場合もあり、率直に言って会議だらけです。これ以上団体ができてしまうと一体どうなってしまうのか、率直に申し上げて回らないではないかと感じているところでございます。

その他、遡及効、オプトアウトについてはここに書いてあるとおりでございます。

それから土地所有者不明土地に係る規律との関係ということで、資料中、条文の引用として「文化的所産の公正な利用」が目的規定に規定されているとありますけれども、これはあくまでも、公正利用に留意しながら権利者の保護を図ると規定しているわけであって、こういう目的規定の引用の仕方一つとっても、合目的的に利用促進のほうに軸足を置いていることが感じ取られ、正直申し上げて不安に思っているところでございます。

最後になりますけれども、この制度が運用されれば、海外法人や外国人個人の方も利用することができるわけであって、権利者側において海外団体と積極的に契約を結んで、広くビジネスを展開させようという動きがある中において、こうした動きへの影響も気にしております。

早口で恐縮でしたけれども、私からは以上でございます。ありがとうございました。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

では、ただいま日本脚本家連盟、日本シナリオ作家協会、日本写真著作権協会、この3団体に御説明いただきましたけれども、これら3団体の質疑の前に、審議事項のうちの、簡素で一元的な権利処理方策のオプトアウトにつきまして、一部うまく伝わっていない点があると思われますので、事務局より補足いただきたいと思います。事務局、よろしくお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。

これまでヒアリングで御説明いただきました各団体様の提出資料、先ほどの御発表ではお時間の関係上、飛ばされていたかとは思いますが、一部、資料のオプトアウトについて、著作権者単位とすることは反対であるといったような御意見の記載が見られました。すみません。こちらについて、参考資料2の16ページの事務局で示した記載が確かに分かりづらかったと思いますが、これまでの議論と受け止め方が真逆となっているので、ちょっとこの点、補足させていただきます。

参考資料2の16ページのオプトアウトのところで、こちらに「著作権者の利便性や意思の尊重に鑑み、著作権者単位による簡易で包括的なオプトアウトの仕組みを検討する」と書いてございますが、これは昨年度からの議論の時に、意思表示の在り方について、やはり通常は著作物に示されていることが多いということで、基本的にはその著作物単位の意思表示があるだろうということが前提の議論です。

ただ、これを前提としてしまうと、全ての著作物に個々に意思表示のようなものを載せなくてはいけないのかといったような御意見が昨年度ヒアリングの場でもありましたことから、個々の著作物だけの意思表示ではなくて、著作権者ごとの意思表示みたいな包括的な意思表示、こういったものも検討すべきであるということで、著作物ごとの意思表示、著作権者ごとの意思表示といったもの双方があり得るのかなという前提での議論でございました。こちらの記載が少々誤解を与える内容となっておりましたので、補足的に説明させていただきます。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございます。

それでは質疑の時間を取りたいと思います。ただいまの3団体からの御意見につきまして御質問がございましたら、御発言をお願いいたします。何か御質問等はございますでしょうか。

福井委員、お願いいたします。

【福井委員】それでは、一々うなずける御意見も多かったわけですけれども、各団体さんに1つずつお尋ねをさせていただければと思います。全部4の項目についてのお尋ねになると思います。

まず日脚連さんです。ごく一部の関係者との連絡が困難であるために、映像作品、ドラマなどがお蔵入りする事態を私自身は御相談等で多く経験するわけですけれども、これに関してどんなふうに日脚連さんとしては問題として捉えていらっしゃるでしょうか。ほとんどの権利者は、作品が死蔵されるより、適正な対価を得て活用されることを望むと私は思いますが、例えばここで提案されていること以外にどういう解決策があり得るでしょうか。

それからシナリオ作協さんに対して、不明作品への対策は管理団体のカバー率を上げることであると。全くおっしゃるとおりであり、またそれについてシナリオ作協としては努力を惜しまないというお言葉もありました。昨年8月、私も委員を務めました基本政策小委員会のヒアリングに、やっぱりハセベバクシンオーさんに出ていただきまして、そこで組織率は15.3%であるという御報告を頂きました。この組織率を上げるために現在シナリオ作協さんではどういう努力をなさっていらっしゃるでしょうか。また、もしお分かりであれば、過去10年間などでどう組織率が上がったのか教えていただけますでしょうか。

最後に写真著作権協会さんです。これまた非常に示唆に富む内容ばかりでした。ただ、特に海外の権利者について日本で利用許諾の仕組みが進んでいると最後のほうの御紹介を受け取ったのですけれども。実はこの点については、私は全く進んでいるという印象がなかったものですから、一体どの分野で具体的に何が進んでいるのか、お教えいただけることがあればありがたく思いました。

私からは以上です。

【茶園主査】ではまず日本脚本家連盟様、よろしくお願いします。

【日本脚本家連盟(金谷氏)】福井委員のおっしゃることは本当に私どもも悩ましいところでございます。ですが、中には著作権者だけではなく、役者さんの中で、もう既に引退して一般人になっているので今さら出してほしくない、あるいはその内容そのものに御本人にとって非常にマイナスになるような部分もありますので、これはやはりその御意思を尊重するしかないのかなということがございます。

【福井委員】すみません。誤解を与えてしまったかもしれませんが、私がお尋ねしたのは、連絡がつかない場合。つまり御意思が分からない場合の話です。

【日本脚本家連盟(金谷氏)】連絡がつかない。失礼しました。連絡がつかないという人をどうやって探すか。特に今は個人情報の問題もありまして、かつてでしたら親しいプロデューサーにお尋ねしたら教えていただけることもあったのですけれども、今はそれすら非常に難しくなっております。

それともう一つ、これはあくまでも私見でございますけれども、土地のような有体物、限りあるものと違いまして、著作物というのはある意味無限でございますので、どうしてもそれを公開しなければならないという切羽詰まった事情がどれほどあるのか、というところも、個人的には疑問に思っております。

以上でございます。お答えになっているかどうか。もし必要でありましたら事務局から付け加えますが、いかがでしょうか。

【福井委員】私は今のお答えで十分です。

【日本脚本家連盟(金谷氏)】ありがとうございます。

【茶園主査】ではシナリオ作家協会様、よろしくお願いします。

【日本シナリオ作家協会(ハセベ氏)】御質問ありがとうございます。

シナリオ作協の取組としては、やっぱりカバー率というか、会員数を増やすという観点ですね、そこに留意して組織強化ということで取り組んでいるのは新人作家のシナリオ教室、どこもやっていますけれども、シナリオ教室などをやっているので、そこからプロになる方をサポートして、プロになったらうちの会員になってもらうだとか、コンクールもしかりですし、そういうことで会員数を増やしていくとか。

あとはアウトサイダーの方も、正直なところそんなに不都合はないのかもしれないですけれども、やっぱり協同組合としての側面もありますので、団体に属することでいろんな現実的な部分でも、精神的な部分でもいろいろメリットがあることを発信していくべきだなということで、そういう意味では最近ユーチューブを始めまして、皆様にチャンネル登録していただきたいなと思っているところですけれども。そういうところでシナリオ作協という団体の活動なんかや作家の作家性以外の個性の部分とかをアピールしたりして、団体の魅力、作家の魅力なんかを発信していくことで仲間を増やしていけたらいいなということでやっております。これもちょっとお答えになっているかどうか分からないですけれども、以上のところですけれども。

あと、カバー率の推移については僕のほうでは把握していなくて、事務局のほうでも今すぐ分かるのかどうかちょっと分からないですけれども、一応聞いてみてもよろしいでしょうか。後日の御回答ということになるかもしれませんが。

【日本シナリオ作家協会(関氏)】シナリオ作家協会事務局の関です。

カバー率はやはり15%程度になります。福井先生から御質問いただいた過去10年の取組に関してですが、一番顕著なのは承継組合員という制度を設けました。著作権者不明者を増やさないために、協会に所属していた協会員の御遺族に協会に所属していただくことで、準会員みたいな形ですが、それで当時350人だった組合員が120名ほど一気に増やすことができました。約七、八年前のことだったと思います。以上です。

【日本シナリオ作家協会(ハセベ氏)】ありがとうございます。作協からは以上になります。

【茶園主査】ありがとうございます。では日本写真著作権協会様、お願いいたします。

【日本写真著作権協会(壹貫田氏)】早口であったため、誤解を招いてしまったかもしれません。正確に申し上げますと、特にテキストの分野、具体的にはJRRC関連の分野におきましては、これは福井先生がご指摘された通り、現状では海外団体との契約がほとんど進んでいない状況にあります。

私ごとで恐縮ですが、昨年10月に前の仕事を辞めて、管理事業者であるJRRCの理事としてもお仕事をさせて頂いている中において、転職してまだ1年たってないのですが、このように海外との契約が全く進んでいない状況ではダメだとの思いで、現在、海外RRO、特に主要国のRROとの双務協定の締結に向けて取り組んでいるところです。従って、福井先生の御指摘は正しいですけれども、一方で何もしていないわけではなくて、少なくとも私が就任して以降はかなり積極的に海外RROとコミュニケーションを取って、双務協定の締結に向けて精力的に取り組んでいるとことです。

ちなみに補足させていただくと、海外、ヨーロッパやアメリカの人と意見交換をすると、最近ではウクライナの戦争があって非常に多くの人達が報道に接するようになっているところ、厳しい安全保障環境の中にある経済大国日本の報道はますます注目されると仰っていました。こうした中、私としては海外RROと協定をしっかりと結んでいって、双方に貴重な情報に迅速にアクセスでき、利用者にとっても著作物が利用しやすい環境を民間が主体的に構築していくことが、非常に重要だと考えております。

したがって、今はJPCAとしてではなくてJRRCの理事としての発言ですけれども、海外RRO含めていろんなビジネスの可能性を模索しているところでありまして、簡素で一元的な権利処理の仕組みというものが、先ほど申し上げたような海外展開をはじめとした我々のビジネスにどのような影響を与えるのか、私の立場からすると、心配せざるを得ないというのが正直なところでございます。

【茶園主査】ほかに御質問等ございませんか。池村委員、お願いいたします。

【池村委員】写真著作権協会様に対して御質問させてください。この前の書協・雑協様も、そして写真著作権協会様も、図書館の公衆送信サービスに関しての御苦労をお話しされていたのが大変印象的だったのですけれども、あの時の法改正の際にもっとこういうことが議論・検討されていれば今のこんな苦労はなかったという風にお感じになられていますでしょうか。今後、窓口組織の議論を進めるに当たって参考になると思いますので、支障のない範囲で結構ですので、可能であればもう少し具体的に御教示いただければと思いました。

また、現在、関係の皆様は日々大変な御苦労をされているということですけれども、それに対して、国、具体的には文化庁ということになるのだと思いますけれども、実際どういったサポートがされているのかということも教えていただけないでしょうか。

【日本写真著作権協会(壹貫田氏)】ありがとうございます。

まず前提として、日本で図書館公衆送信に関する法改正の議論がされていた頃、私は海外におりましたもので、議論の過程をつまびらかに存じ上げているわけではありませんので、この点につきご了承頂ければと存じます。

その上で、現時点で私が感じていることを申し上げますと、大きく二つの点について、事前に議論して、詰めていたのかどうか疑問に思っている次第です。一つには、マーケットと申しましょうか、しっかりと収支の見通し、得られる補償金の規模感というものについて検討していたのかという点です。団体を設立するのであれば、財政的な見通し、収支がちゃんと保てるのかどうかという点が非常に重要となってきます。団体を立ち上げるということは、初期コスト、運営コスト、人件費、様々なコストがかかるわけであって、そこが村瀬さんの御発表にもありましたけれども、それらのコストを回収できるだけの収入が見込めるのかどうかという点について、ほとんど御議論されていなかったのではないかというのが、私の率直な受け止めです。

それからもう一つは体制の問題、設立までに関係者にかかってくるコストの問題であります。頂いた資料にある窓口組織なるものがどういうものになるのか、現時点では分かりませんけれども、我々権利者団体、出版社、図書館もそうですけれども、非常に多くの時間を費やしながら、ここまで図書館公衆送信補償金制度に係る団体設立に向けて、議論、検討を行ってきております。先ほど申し上げた週に2、3回の会議というのは誇張ではなく、事実です。加えて今、SARTRASがありますので、そちらの会議も入ってきます。その他各団体もそれぞれ自立的に運営されていますので、既に数多くの会議が飽和状態にあるのが現実でありまして、新たな制度を設けて追加的に団体を立ち上げると言っても、関係する団体等の職員の数が増えるわけではありませんので、果たして現実問題として回るのかどうか、無理ではないかというのが、率直な受け止めです。

また、行政側のサポートがあるのかという御質問ですけれども、これはもちろん折に触れて文化庁の皆さんにも一緒に議論に参画していただいたり、アドバイスを頂いたりしておりますけれども、行政の側が実務をするわけではありませんので、そこはどうしても限界があります。

私は以前行政官だったので、その経験を踏まえて申し上げますと、行政の職員の皆さんは、将来の日本の在り方について、広い視野と問題意識、長期的な視点を持ってお仕事をされているとは思うのですが、しかし定期的に異動があるわけであって、逃げようと思っても逃げられない実務者とは本質的に異なります。

またビジネスという観点からすると、もちろん行政の皆さんも勉強し、我々と一生懸命コミュニケーションを取って、どれくらいビジネスに影響を与えるのかご検討されていると思うのですが、やはり実務的に発生するコストなどに対して思いが至らない面があるかと思います。机上の議論だけでは、イメージだけでは、うまく実務が回らないところも多々ありまして、そういった点についても、より丁寧に、意識しながら御議論いただけると幸いです。

すみません。あまりお答えになっていないかもしれませんけれども、以上でございます。

【池村委員】すみません。あまりお答えになっていないかもしれませんけれども、以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

よろしいでしょうか。では、どうもありがとうございました。関係者の方々は随時御退出いただいて結構です。

では最後に、日本ネットクリエイター協会の仁平淳宏様、よろしくお願いいたします。

【日本ネットクリエイター協会(仁平氏)】おはようございます。日本ネットクリエイター協会の仁平と申します。時間がないので内容に入らせていただきたいと思います。

私のほうは、UGCコンテンツを作っている方、及びUGCコンテンツを使って自分の作品を二次創作している方という立場からお話をさせていただきたいと思います。

1番、2番に関しては省略させてください。3番目の損害賠償の算出方法というところから回答させていただきたいと思います。

ここにも書いてあるとおりですが、算定方法の見直しそのものについては異論ありません。当該算定を行っていくための、つまり検討しなければいけない論点の洗い出しであるとか、それに基づいての議論をより慎重に、ここに書きましたが、要は使用者動向の変化とか、違法サイトそのものの変化とか、コンテンツの内容の変化は著しいので、そういったものもちゃんと加味しながら継続的に実施していただきたいということと、それらをちゃんと検証して、つまりその時代の流れに応じて本当にこれが適切なのかということも検証していただくと同時に、最後の部分が一番大事だと思っているのですが、告知をきちんとやっぱりやっていく必要があるのではないかなと感じております。

まず、最初の文章のほうはどちらかというと使用者の目線で書きました。使用者の目線で書いたときに、例えば今回のよく俗に言われている、無料だから閲覧しただけであって、有料コンテンツしかなかったら初めから購入しなかったよというような意見もあることはあるわけですね。そういったことを踏まえた上で考えてみると、今現状の世の中で言われている賠償金の算出方法にちょっとむちゃがあるのではないかなと思ったりもしている人はたくさんいると思います。

今回、僕のほうでこういう機会を頂いたので、いろいろ調べさせていただいて、ここにも書きましたが、実際にはこれらの僕が今言っているような疑問はちゃんと加味された上で、裁判などでは被害賠償額の総額が算出されていることを、今回僕も何となく勉強させていただいたんですが。それでもやっぱり、その中心にある論点の洗い出しであるとかそれに対する議論、それを継続的に行うことの必要性はやっぱり大事で、なおかつそういったことをちゃんとそのクリエーター及びそのUGCコンテンツの利用者に分かりやすく説明することが大事なんじゃないかなと思います。

次に、今度はUGCコンテンツの創作者の目線で言わせていただくと、ここにも書きましたが、被害根拠の提示が実際物すごく難しいです。実際にUGCコンテンツを使っている方たちが勝手に海外サイトで使われている、もちろん国内でも使われているのもあるんですけれども、いろいろあります。

その中で、UGC特殊の考え方なのかもしれないですが、二次創作を誘発させることが結果的にもともとのコンテンツ、UGCコンテンツの発展といいますか、展開につながる場合があるので、どこまでを被害として考えるのか、どこまでは容認すると考えるのか、個人によってかなり違うこともありますし、これは被害だなと思ったときでも、どうやってその被害を訴えたらいいのかが分からない方たちはかなりたくさんいらっしゃいます。もちろんそういったことをサポートするのが我々、日本ネットクリエイター協会の業務でもあるのですけれども、なかなかその辺りは結構難しいなというところがあります。

結果的には、それで告知という言い方をしましたら、最後にも書きましたが、やっぱり著作権に対する教育の充実、これも単なるいわゆる教科書的な教育ということだけではなくて、今現在のユーチューブ、ニコニコ動画、ピアプロ、ピクシブ、そういったいろんなSNSでいろんなコンテンツが使われています。そういったことをちゃんと踏まえた上での教育というのですかね、そういったものが必要なんじゃないかなと思います。

続きまして4番の簡素で一元的な権利処理方策の件ですけれども、こちらのほうは基本、賛成です。下のほうに幾つか書かせていただいて、資料にも記載されていましたが、事前相談窓口から調査・検索、そして支払い等という流れがあったと思うのですけれど、この辺りを要はウェブ上で一括でできるような、つまり文字どおりの対面とか電話ではなくて、ウェブ上での記載であるとか、チャットなどでの相談だとか、そういった部分は当然やっていただければなと思います。

2番目、ここから結構重要だと思うのですけれども、著作物のDB、これは今いろんなところで議論されていますが、著作者自らが自らの意思で登録できる仕組みということがやっぱりすごく大事ですが、これをつくるにおいて、ゼロからではなく、やっぱり既存のDBをきちんと横串を通してつなぎ込むことが大事なんじゃないかなと思います。例えば今、本当に御存じの方は御存じだし、御存じでない方は全く御存じではないかもしれないですけれど、例えばニコニ・コモンズ、例えばピアプロ、例えばピクシブ、いろんなところに実はUGCコンテンツのデータベースは既にあります。で、UGCコンテンツの使用者はそういったところを見て、実際にこれはこういう使い方をしていいのだなとか、これは使っちゃいけないというのが分かりながら使っているのですが、まだまだ、例えばですけれども、テレビ局・ラジオ局の方たちはその辺りのサイトの存在自体を御存じない方がたくさんいらっしゃると思いますので、そういったところが一元的に横串でぱっと見られるような仕組みが必要ではないかと思います。

3のところで書きましたが、そういったところで例えば使用料が発生したときの対価の還元の仕組みも、実は今、いろいろな今言ったニコニコ動画にしてもユーチューブもそうですし、ピアプロ、ピクシブにしてもお金を権利者に返す仕組みは実は既にあります。なので、そういったところをうまく利用することも大事なんじゃないかなと思います。

先ほど、ラジオ局やテレビ局の方たちはなかなかまだそういったことを御存じではないんじゃないかというお話をしましたけれども、その辺りをよく知っていただく意味でも、プロフェッショナルな方たちに対する教育も大事かなと思います。ここにも書きましたが、大変残念なことに、世の中にはUGC、いわゆるユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツは違法なものがほとんどである、みんなパクリだというぐらいのことを言われるプロフェッショナルな方たちが結構まだいると僕は感じています。実はそういったことを発言されているのをネットのいろいろな番組で見たこともあったりして、大変残念です。

なので、そういったところの認識をちょっと改めていただく意味での、プロフェッショナルな方たちに対する教育も大事かなと思いますし、実際にこの楽曲を使いたい、この動画を使いたいと思ったときに、どこで手に入れたらいいのかというところがまだまだ皆さんに浸透していないので、その辺を、これも教育という言い方をするとちょっと失礼ですけれど、ちゃんと分かりやすく説明すると同時に、実際にここできちんとした音源がダウンロードできますよというような仕組みもあってもいいだろうと。実はこれはもうあるんですけれどもね。実はこういうふうに使用のダウンロードする仕組みはもうあるんですけれど、これをプロフェッショナルの人たちがより使いやすいような形で構築といいますか、整備していく。まあ、整備ですね。していく必要があるんじゃないかなと思っています。

今お話しさせていただいたのが私の今回のほぼ同じ趣旨ですけれど、最後のほうにいろいろと書かせていただきました。特に重要なのは、UGCにおいては二次創作というところを聞くことが大事で、つまり使ってもらうことがイコール販売促進になるという、この仕組みですね。なので、この辺りの仕組みを広く分かっていただくと同時に、UGC権利者に対して言えば、使ってもらうためにはこういうことをしなければいけないという知識というのですかね、その辺りのことも必要ではないかなと思います。

最後に、著作物の分野に応じた意思表示等の取組ということで幾つか例を書かせていただきました。もちろんこれ以外にもいっぱいあるので、ここには企業名がほとんど書いてあるので今読みませんけれども、こういったものが世の中にはたくさんあるよということを御理解いただければなと思います。

UGCという切り口で、ほかの委員の先生方とはちょっと切り口を変えてみましたが、こういった形で私の発言とさせていただきたいと思います。以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ではただいまの日本ネットクリエイター協会様からの御発表につきまして御質問等がございましたらお願いいたします。

何かございますでしょうか。早稲田委員、お願いいたします。

【早稲田委員】ありがとうございます。大変貴重な御意見を拝聴させていただきました。

今回、窓口組織とか窓口データベースを実現していくということで、UGCの作家の方ないしは二次使用で使っていらっしゃる方が、恐らく作品の情報が今以上にどんどん登録されていく方向性になるだろうとお考えであるということでよろしいでしょうか。それが一点でございます。

もう一点ですが、登録していったり、ネット上のサーバー等で情報がアップされているのだったらあまり問題にならないのかもしれませんが、先ほど、意思表示の問題がございまして、登録したところに連絡したが返答がなかった場合に使っていいのかどうかというような話が出ていのですけれども、それについてはどうお考えになっているか。この2点をお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【日本ネットクリエイター協会(仁平氏)】まずは登録をするということで言うと、ほぼと言ったらあれですけれども、有名なというか面白いコンテンツはどこかに登録はされているのが現状です。もちろんそこに対してはクリエーター個人の考えのレベルが違うので、きちんとした意思表示が入った上で登録されているのか、その意思表示がぬるいのか、もちろん差があります。なので、その部分に関してはきちんとした教育が必要だと考えていて、それに関しては微力ながら我々、日本ネットクリエイター協会もネットでの生放送とかを通じて、こういったことをするためにはこういうような権利の書き方をしたほうがいいよというのを伝えたりしています。

あとは、これは2番目の質問とも関係してくると思うのですけれども、やっぱり、必要性に関する最終的には意識を高めてもらうというところだと思います。そういったことを嫌がるクリエーターもいなくはなくて、やっぱり偏見があるんですね。その偏見をじっくり聞いてみると、本当に偏見だっていうことが分かります。これも繰り返しになってしまいますが、コミュニケーションが大事だなということだと思います。

あとは、コミュニケーションはクリエーターさんに対するコミュニケーション、あと、その二次創作をやるUGC二次創作クリエーターに対するコミュニケーションだけではなくて、やっぱりプロフェッショナルの人たちに対するコミュニケーションも大事で、プロフェッショナルの人たちに今言ったようなデータベースの存在を理解してもらう。で、UGCの文化を理解してもらうという、両方からの歩み寄りが必要なんじゃないかなと思います。これで回答になっていますでしょうか。

【早稲田委員】ありがとうございます。2番目の質問の御回答で、意思表示がない場合に使用を規制するか、こちらのご回答もお願いいたします。

【日本ネットクリエイター協会(仁平氏)】これはすごく難しくて、意思表示がない場合は、基本的には連絡を取り合う文化はあるにはあります。例えば意思表示が何も書いていないコンテンツだけど、僕はあなたの歌がとっても好きだから、あなたの歌を歌ってネットに投稿したいですという場合、結構そういう場合、その人って大体ツイッターを持っているので、ツイッターにその旨連絡すると何となく返ってくるのですが、確かに全部が全部返ってくるわけではないです。

その場合にやっぱり、ちょっと今現状は使わないほうがいいとは思います。ただ、これもやっぱり教育だと思うのですね。本人が本当に使ってもらいたくないのって聞くと、いや、そんなことないよって言う場合も意外と多いんのですよ。ちょっとメールが気づかなかったとか、ツイッターに気づかなかったとか。だからやっぱりここはデータベースの整備、結構今、先ほど言いましたようないろんな企業さんのデータベースにどういう使い方をしていいかというのは割と宣言しやすくなっています。なので、そういったものをもっと活用しようよと。だから、連絡が取れないから使えなくなっちゃうのはあなたにとってもよくないことだよねという、やっぱりそこの部分の教育が必要かなと思って。今現状は使ってほしくないという意思表示も使っていいという意思表示もない場合、ちょっと難しくて、そのサイトの利用規約に準ずるみたいな感じになっちゃうのだと思います。

【早稲田委員】ありがとうございました。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

ではありがとうございました。以上でヒアリングを終了したいと思います。御説明いただきました皆様には、御協力どうもありがとうございました。

ここからは自由討議に入りたいと思います。本日のヒアリングでお聞きした内容を踏まえまして、参考資料2につきまして自由討議を行いたいと思います。御意見等がございましたらよろしくお願いいたします。何か御意見等ございますでしょうか。

参考資料2では、このヒアリングに関係しましてそれぞれの審議事項1が研究目的に係る権利制限規定の検討について、審議事項2が立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等について、審議事項3が損害賠償額の算定方法の見直しについて、審議事項4が簡素で一元的な権利処理方策と対価還元の制度化のイメージについて、これらについて参考資料2として、経緯から始まって、それぞれの最後に対応案が書かれています。これらにつきまして、まずはどこからでも結構ですけれども、御意見等がございましたらお願いいたします。

今村委員、お願いいたします。

【今村主査代理】では、私のほうからまず1つ。

最初の日本新聞協会様からは、立法・行政デジタル化に対応した内部資料の公衆送信等について、現状行っている新聞記事クリッピングサービス、そういったもののビジネスを阻害することに対する懸念などが示されているわけでありました。実際、著作権法の35条を改正したときも、やはり教育機関向けの様々なライセンスビジネスがあって、それと権利制限との関係で著作権者の利益を不当に害する範囲がどこまでかということが、なかなか議論として収束がつかないというか、なかなかきちっと線引きができない部分が最後まで残る部分だと思うのですね。

ですから、クリッピングサービスの重要性もビジネスに関して新聞社は大きな利害を持っていると思いますし、そういった特定の著作物の分野に関しては既に立法・行政に対して様々なビジネスを展開している業務分野があると思いますから、その辺、どういうふうに配慮しながら、新聞協会様の話だと法律とか政令で解釈を誤らないように記述を加えるとかありましたけれども、それが可能なのか。あるいはそのほかは、より緩やかなソフトローといったような形で何か内部資料の基準であるとか、それが利用できる範囲をそういった行政庁などの内部のルールとしてきっちり決めていくのかいろいろな方法はあると思うのですが、その辺はやはり丁寧な議論が、議論というか、配慮しながら、どういう利害があるのかということをよくよく注視しつつ、見ていかなければいけないのではないかなとは改めて思いました。

感想めいていますけれども、以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

福井委員、お願いいたします。

【福井委員】福井でございます。

特に参考資料で言うと4番、簡素で一元的な権利処理に関連して、複数の団体から、権利情報のデータベースや集中管理の促進が重要であるという点と、助成やインセンティブをそこに頂きたいという率直な意見が多かったと思います。また、そこが見えないことが制度への不安感にもつながっているという感覚を受けました。

これは私自身も言い続けてきましたけれども、この部分、権利情報データベースや集中管理の促進をどう抜本的に政府が支援できるかという部分は新たな制度の根幹だと思います。この議論を避けていては、恐らく意味のある制度には決してならないだろうと思います。この点、DX、あるいは変わり続ける情報社会への対応は、恐らく私の理解が正しければ、日本の現在の国家戦略の中心ですよね。少子高齢化の我が国が抱える数少ないチャンスである、コンテンツ産業の促進ということを考えても、この部分は政府の政策の中心であるべきと思います。

こうしたデジタル化やDXに関わる政府の予算は、いろんな省庁にちりばめられていますから、私には到底総額は把握できませんけれども、例えば8月の概算要求の中でデジタル田園都市構想だけでも1,200億円という数字が目を引いたのは記憶に新しいところです。

その根幹には、大量の情報の利活用をどう推進するかという課題が横たわっているわけであって、それに対応するための簡素で一元的な権利処理ですね。欧米中心に14か国以上ともされる国で、で既にECLが何らかの形で導入されているのも恐らく同じ問題意識に基づくわけであり、こうした制度とそれを支える権利情報データベースはまさに社会インフラだと思います。それにふさわしい思い切った政府の支援を本当にビジョンとして示していかないといけない段階に来ているんじゃないか。壹貫田さんの御指摘にもあったとおり、新しい利用窓口をつくるその体制はどう支えていきますかということを考えたら、収支は当初において取れるわけがないんです。権利情報データベースだって、そもそも収支が自動的に取れるものだったらもうできているんです。今できていないのは、赤字になるからできていないんです。だからそれを支えると言わなかったら、進むわけがない。

この思い切った支援ということをぜひ、著作権課さんだけでは荷の重い話だというのは重々承知していますが、現実論として、十分考えなければいけないんのではないかということを改めて申し上げます。また、その議論と一緒であれば、いろいろな団体さんももっと前向きにコミット可能になるのではないかと思います。

あと、仁平さんの御意見にあった現場のリアルに即した著作権教育、プロフェッショナル教育の充実という視点、私も全く賛成です。

私からは以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

島並委員、お願いいたします。

【島並委員】ありがとうございます。神戸大学の島並でございます。

途中からお伺いしたので、もしかしたらちょっと的外れになるかもしれませんが、その点も含めて私から質問をさせてください。今日お伺いした限りでは、4つ目の取組ですか、簡素で一元的な権利処理方策についての質問となります。

新たな窓口組織をつくるということですから、一定のコストがかかるのは重々承知しておりまして、その点、公的な費用を、福井先生が御指摘のとおり、きちんと賄わなければいけないというのはそのとおりだと思うんです。他方で、今日いろんな御意見が出た中でちょっと気になったのは、権利者団体様の応接のコストですね。これは組織そのものの設営コストとはちょっと種類が違うのかなと思いました。

そこで今日の資料ですとPDFの54分の39ページ、制度化のイメージを文化庁さんが書かれています。この丸1から丸10までの流れがPDFの39ページ、打たれているページ数ですと当該資料の11ページに書かれているのですけれども、この中に権利者あるいはその団体が応接、コミットするタイミングはどこをイメージされておりますでしょうか。というのは、基本的にはここに書かれているのが全て、その新しい窓口組織が何々を行うという対応が列挙されているように理解しておりまして、私もその限りでの利用申請があった時の対応なのかなとちょっと早合点をしていたのですが。そこから先、さらにその窓口組織から権利者団体に何かを問い合わせて、団体側が応接するコストがかかるという仕組みを文化庁さんでは想定されているのかどうかを教えてください。

【小倉著作権課長補佐】事務局からですが、お答えしてもよろしいでしょうか。

【茶園主査】お願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】ただいまの島並委員からの御質問のところで、参考資料2の11ページの制度化のイメージを御覧いただきながら、想定しているところを御説明したいと思います。制度がどのようなところになっていくのかという、まだ検討途上なので、確たることというよりは、各集中管理事業者等に恐らく御協力等を頂くところが出てくるのだろうなというところを申し上げます。

まず1点目が著作権者の探索についてです。例えば現行の文化庁長官による裁定利用の場合は、利用者が各管理事業者であるとか団体に聴取をして探してもらうというような、実際の実務が発生していると承知しております。なお、この実務についてはこれも大変恐縮するところであるのですが、各権利者団体の皆様は権利者がそれは見つかることが最も望ましいということで、各団体にその該当する方がいないかとか、あるいはそういった各団体等でお持ちの情報と照らし合わせて回答いただいているといった無償の協力がされていると承知しております。

例えば今後こういった探索をどこまでやるかですが、「データベースを活用した」とありますので、当然既存データベースとの連携協力といったところの新しい協力の方法も考えられるところでありまして、この辺りをまずはどのような説明、どのようなメリット、こういったことを踏まえて御協力いただけるかなといったところが一点です。

あともう一点が、使用料相当額の丸4番です。窓口組織が利用料を定めるというところに当たって、なるべく簡素な形のという、今まで審議会での御意見が出ているところであります。この利用料については、やはり各著作物の種類であるとかその利用形態によって様々でございます。これも例えば現行制度でいいますと、文化庁長官の裁定利用の場合の補償金額は文化庁長官が定めることとしております。この文化庁長官が裁定の利用料を定めるに当たってどういう行為をしているかといったところは、実際に利用する申請者に、各著作権等管理事業者が持つ使用料規定の当てはめであるとか、それにぴったり当てはまらない場合は、こういった利用についてどのような一般的には費用になるのかといった意見を聴取しまして、これもまた各団体の無償の善意の協力の下、通常であればこれぐらいになりますよといった回答を得まして、利用料が決まっていく流れとなっております。

この辺りも、これまでの御議論を踏まえ、どれほど簡素化できるかといったところがまさに権利者にとっても利用者にとっても双方のメリットにつながる部分ですので、引き続き検討をしっかりしていかなくてはいけないところだとは考えておりますが、こういったところで窓口組織が出てくると思います。

なお、いわゆる探索とか分配業務、今日は特に議論で上がっていた図書館の補償金であるとかSARTRASの補償金につきましては、指定管理団体が著作権者に代わり補償金を請求し、著作権者を探索して、それを最後分配するといった業務があります。今般のこの仕組みは、権利者不明等であるとか意思表示がないことを前提にしているので、この窓口組織において探索して配分するというよりは、窓口組織は公告、ウェブ上での公告等になりますでしょうか、これをしっかり行うと。これによって著作権者が手を挙げてきた場合にそういった支払い業務が発生するという意味では、補償金等の分配のための探索や分配、こういった業務は基本的には発生しないのかなと思っております。なお、この整理につきましては現行の文化庁長官による裁定の利用に当たった、その供託金の支払い関係の運用と同じようなものとなっております。

以上でございます。

【島並委員】ありがとうございます。権利者団体が持っているデータベースを活用させていただくということですと、この窓口組織はやはりそのデータベース限りでの探索で十分だという立てつけにしないと、そこを超えてさらにデータベースに載っていない人の探索が必要だということであれば、もともと権利者団体に問い合わせるのと変わりがなくなってくるので、これは簡素化を、窓口団体をわざわざつくってすることは、すなわち私はデータベース限りで済むと理解をしておりました。そこにさらに協力義務を団体に課すことや、あるいは探索義務を申請者に課すのは、やや屋上屋なのかなという気がしておりますので、そういうことも含めて、ぜひ、最後おっしゃいましたけれども、簡素化の在り方は十分に、あるいは踏み込んで御検討いただければいいのかなと思いました。感想で申し訳ありません。

私からは以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

村井先生、お願いいたします。

【村井委員】ヒアリングをお聞きして、権利者の方々のいろいろな御懸念があると思いました。意に沿わない利用がなされてしまうのではないかという部分については、資料にもまとめてくださっているように、簡易で包括的なオプトアウトを可能としてオプトアウトをなるべく行いやすくしたり、データベースに対する権利者の方からの意思表示を登録しやすくしたりすることが大事なように思いました。

それから、前回申し上げたことと関連して一点補足させていただきたいのですが、15ページの最初のほうで著作権者等が現れない場合の利用料の使い道などについて記載していただいている部分に関してです。著作権者等が現れなかった場合の利用料の使い道について、ほかの権利者等への利用料の支払いに充てることを可能にする選択肢を考えていただけると、利用の際に利用者が支払う金額を抑えつつ、現れない権利者への支払い分の料金を他の各権利者に補充して支払うことができるのではないかと思います。先ほども利用料の支払いの話でなるべく簡素にというようなお話もありましたが、現れなかった場合の利用料を権利者への支払いにも充てられるという制度設計にすると、利用料についてかなり柔軟な制度設計が可能になるように思われますので、よかったら御検討いただければと思いました。

以上です。

【早稲田委員】ありがとうございます。

私も、やはり特に暫定的な利用については権利者の団体の方の危惧がかなりあるなというのはあらかじめ思っておりましたが、やはりそうだなと思いました。これについては、先ほど村井委員がおっしゃったように、こういう使い方をしてほしくないという方々にはオプトアウトをどんどん使っていただいて、それ以外の、オプトアウトを使わないような方々に対して暫定的な利用がどういう形でできるのかどうかを検討していかなければいけないのではないかなと思いました。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。上野委員、お願いいたします。

【上野委員】上野でございます。

先ほど村井委員から御指摘があった使用料の支払いに関してですけれども、従来の裁定制度におきましては、供託された担保金が実際に権利者に支払われることがほとんどなかったのは事実のようですので、そうであれば、仮に1%ぐらいしか還付される実態がないといたしますと、担保金は最初から1%分だけ供託させればいいじゃないか、というご意見が従来からあって、村井委員のご意見もこれにならったものと思います。

確かに、従来の裁定制度において供託された担保金というのは、権利者に還付されない限りは一般の国庫に入ってしまうものと考えられますから、どうせ供託金を取りに来る人が少なく、結果として一般の国庫に入ってしまうくらいであれば、最初から還付率に応じた供託をさせればいいのではないかという考えはごもっともと思います。

ただ、今回の「新しい権利処理の仕組み」におきましては、権利者が現れず、結局分配されなかった利用料は一般の国庫に入るというわけではなく、データベースの拡充その他著作権関連事業などに充てられることが想定されていますので、そうであれば、この点は従来の裁定制度とは異なることになります。また、他人のコンテンツを利用する人は基本的に使用料を支払うはずであるにもかかわらず、権利者不明等だからといって本来であれば払うべき使用料をほぼ払わずにすむというのは妥当なのかという問題もあり得るように思います。

したがって、従来の裁定制度のように、未分配供託金が一般の国庫に入ってしまうような制度であれば、最初から還付率に応じた供託をさせるのが妥当だとしても、今回の「新しい権利処理の仕組み」において、この点で従来の裁定制度と異なる立てつけになるのであれば、そのような考えが直ちに妥当するとは限らず、通常の使用料相当額を支払わせるべきという考えもあり得るのではないかと思いますので、この点は引き続き議論が必要な課題ではないかと考えております。

以上です。

【茶園主査】よろしいでしょうか。

ほかに何かございますでしょうか。福井委員、お願いいたします。

【福井委員】今、皆さんから出た意見、島並委員から出たデータベース限りの探索で済むのが理想ではないかという御指摘と、それから村井委員や早稲田委員から出たオプトアウトを行いやすいような仕組み、あるいはデータベースにおける意思表示の促進が鍵になるのではないかという視点。いずれも私は全く賛成であります。

ただ、そのための課題として指摘したいのは、先ほども申し上げましたが、先行する基本政策小委員会で各権利者団体における組織率、言わばデータベースへの搭載率がヒアリングで報告されているのですが、極めて低いんですね。大体10%から20%の間ぐらいの数字しか各団体から上がってこなかった現実があります。つまり、今のような皆さんがおっしゃった理想に私は全く賛成だけれども、それに向かっていくためにも、権利情報データベース自体を充実させて、搭載率、組織率を上げていかないと、どうしても絵に描いた餅になってしまう。そのために先ほどこの権利情報データベースの充実が不可欠であると申し上げましたし、恐らく各団体の御指摘にもそういう根本の問題意識があるのではないかなと感じたところでした。

これは今の方向性を否定するという意味ではなくて、むしろ逆でありまして、それを進めるためにもぜひ並行してこの点の議論を続けるべきではないかなという視点からのコメントとなります。

【茶園主査】ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

今村委員、お願いいたします。

【今村主査代理】4番の点の話ですけれども、最後のほうのヒアリングでネットクリエイター協会様から、権利者に対する問合せというか、それに対する応答に関連した話が出てきて、たくさん連絡が届くから対応し切れなかったとか、利用許諾をしないつもりではなかったのだけれどもというような、ほかにもいろいろな意思表示というか、意思を持っている権利者がいるのだと思うんですね。

それで、それらの問合せについて、権利が集中管理されていない場合には、個人で問合せに応じることになってきて、その応答の負担と、それから実際には権利者が持っている意思の多様性のようなものがあると思います。ただ、その点に関しては、集中管理に対する啓蒙とか、データベースの充実化とか、そういったことの啓蒙の必要性みたいなことも含めて進めていかなければならない部分なのかなと思います。すなわち、応答が面倒だからとか、大変だからとか、そういったことを権利の暫定的な利用も認めないということの何か根拠に考えていくと、この新たなスキームの話は全然先に進まなくなってしまうので。

やはりこういった新たな制度、権利処理のイメージができる全体の中で、クリエーターの方々の、こういう制度の下では自己の権利についてこういう心積もりをしておかなければいけないといったような、そういう何か啓蒙の必要性というか、制度に対する理解の必要性もおのずと必要になってくると思います。それがたくさんいるクリエーターの方にとって本当に可能なのかどうか。これまでの伝統的な著作権の理解からも大きく変わってくる部分もあると思います。また、実際にクリエーションする人たちの本来の意思というのも、どんどん使ってもらいたいけれども応答が面倒くさいという場合もあるのか、それともやっぱりあまり使ってほしくないということなのか、その辺まだまだよく分からない部分があります。

ただ、作品を公表している以上、何か使ってもらうことは意図しているのだと思います。今回の資料の中で情報の非競合性とか、そういう結構大きな話が出てきて、それを突き詰めていくと、やはり著作権者の意思とかそういったものは弱まる、弱める方向に議論していく方向になってしまうような気もします。その辺はなかなかこういった資料では、新しくできた用語だと思いますので、それをあまり強調し過ぎると、権利者の方々の従来の伝統的な著作権に対して持っているイメージと食い違っている部分が出てきてしまうかもしれません。

その辺、ちょっと意見はまとまらないのですけれども、やはりこれまでの著作権制度の在り方とうまく整合するような形での制度設計を基礎としつつも、大胆な改革も必要となるかなと思いまして、この点は難しいかじ取りが求められていると思います。基本的な方向性としては、簡素で一元的な権利処理方策と対価還元は求められていると思いますので、その方向で適切な制度設計を行うことが望まれるとは思います。

甚だまとまりがない意見ですけれども、以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

それではどうもありがとうございました。

ではその他、全体を通して何かございますでしょうか。

よろしいでしょうか。では、他に特段ございませんでしたら、本日はこれくらいにしたいと思います。

最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。事務局、よろしいでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】本日はありがとうございました。

次回の本小委員会につきましては、9月26日10時から、関係者からのヒアリングを予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

それでは以上をもちまして、文化審議会著作権分科会法制度小委員会第3回を終了とさせていただきます。本日は活発な御議論をどうもありがとうございました。では、これで終了といたします。

―― 了 ――

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