文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第4回)

日時:令和4年9月26日(月)

10:00~12:30

場所:オンライン開催

議事

1開会

2議事

  • (1)審議事項に関する関係者からのヒアリング
  • (審議事項)

    • 研究目的に係る権利制限規定の検討について
    • 立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等について
    • 損害賠償額の算定方法の見直しについて
    • 簡素で一元的な権利処理と対価還元の制度化について
  • (2)その他

3閉会

配布資料

資料1
第22期文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第4回)ヒアリング出席者一覧(105KB)
資料2
第22期文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第4回)ヒアリング資料一式(545KB)
参考資料1
第22期文化審議会著作権分科会法制度小委員会委員名簿(109KB)
参考資料2
第22期文化審議会著作権分科会法制度小委員会における審議事項に関するヒアリングについて(454KB)
参考資料3
中間まとめ DX時代に対応した「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元」及び「著作権制度・政策の普及啓発・教育」について【概要】(649KB)

議事内容

【茶園主査】時間になりましたので、ただいまから文化審議会著作権分科会法制度小委員会第4回を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

本日は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して参加いただいております。委員の皆様におかれましては、ビデオをオンにしていただき、御発言されるとき以外はミュートに設定をお願いいたします。ヒアリング関係者の皆様におかれましては、御自身の御発言のとき以外は、ビデオをオフにしていただきますようお願いいたします。

議事に入る前に、本日の議事の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開にするには及ばないと思いますので、既に傍聴者の方にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいておりますところですけれども、この点、特に御異議ございませんか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園主査】ありがとうございます。では、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。配付資料につきましては、議事次第の配付資料一覧にあるとおりでございます。以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。それでは、早速議事に入ります。本日の議事は、議事次第のとおり、(1)から(2)の2点となります。

早速、議事(1)の審議事項に関する関係者からのヒアリングに入りたいと思います。

本日は、議事次第にございます審議事項につきまして、関係者からのヒアリングを行います。まず、事務局より簡単に趣旨の説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。本日は資料1のとおり、10団体の関係者の方に御発表いただきます。時間の都合上、質疑の時間は複数団体ごとにまとめて設けたいと思っております。

御発表者の皆様におかれましては、事前に事務局よりお願いした発表時間、1団体5分程度ということになっておりますが、こちらに御留意いただき、円滑な議事進行に御協力賜れば幸いでございます。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。それでは初めに、日本音楽著作権協会の河邉基晴様、よろしくお願いいたします。

【日本音楽著作権協会(河邉氏)】おはようございます。日本音楽著作権協会の河邉と申します。本日はヒアリングの機会をいただきまして、ありがとうございます。それでは、御提出しました資料を基に、当協会の意見を述べさせていただきます。

まず、設問1についてでございます。当面は既存の制度の枠内で対応するという対応案に賛成いたします。著作権制度の普及啓発の実施に当たりましては、既存のライセンス市場を阻害することのないよう留意いただきたいと存じます。特に32条につきましては、権利者と利用者の見解が相違する例が少なくございませんので、丁寧に進めることが望ましいと考えます。

続きまして、設問2についてでございます。まず、対応案の丸1についてです。対応案で示されました、現行法下での複製行為で許容される範囲と同等の範囲での公衆送信に限定することや、内部資料の解釈を周知徹底すると、こういった点などが確保されるということであれば、対応案に異存はございません。

次に、対応案の丸2についてでございます。立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信の課題とは、この問題は性質が異なると存じますので、同じくくりの中で扱うことには多少違和感を覚えております。この課題につきましては、ネット空間には現実の空間のような物理的な制約がないと、こういった違いを考慮して検討する必要があると考えております。著作権法38条などの権利制限規定をネット空間にも拡張する方向で検討を進めることは、適切ではないのではないかと考えております。

次に、設問3につきましては対応案に賛成いたします。

最後の設問4についてでございます。まず、制度の前提となる考え方に対しまして意見を述べさせていただきます。簡素で一元的な権利処理方策については、権利者本人の許諾権を一定の範囲で喪失あるいは制約すると、こういった点を共通認識とした上で謙抑的に検討を進めていただきたいと存じます。音楽著作物の分野におかれては、集中管理の仕組みによりまして、簡素で一元的な経理処理が既に相当程度機能しております。また、当協会においては、管理委託の促進を図るといった点で様々な取組を進めているところでございます。他方で、集中管理を望まない権利者もおりますので、十分な配慮が必要であります。

こうした点を踏まえますと、既存の制度の活用促進・改善による対応を基本とすべきと考えております。仮に集中管理されていない著作物などについて新たな仕組みを設ける場合には、必要最小限の範囲にとどめるべきと考えます。中間まとめでは3つの案が示されておりますが、そのうちから選ぶといたしましたら、丸3の窓口組織が不明著作物に係る文化庁長官への裁定申請手続を代行する。こういった対応によることが適当であると考えます。

各論点の整理について、意思表示と窓口組織の役割について意見を述べさせていただきます。意思表示の有無については慎重な検討が必要であると考えます。特に、示されている連絡先に連絡を試みても返答がない場合を意思表示なしに含めて暫定的な利用の手続に入るといったことは賛成できません。返答をしないことは拒絶の意思表示をしている例が実態としては多いのではないでしょうか。また、権利者が個人、法人、あるいはグループなのか、所在が国内か外国かによりまして、返答にかかる時間はまちまちでございます。返答がないことを明確に線引きするといったことは、事実上困難であると考えております。

最後に、窓口組織の役割については、費用の負担を含めまして、民間の取組には限界がございます。文化庁による指定や認可などの一定の関与にとどまらず、政府・文化庁の強力なリーダーシップが必要でございます。窓口組織の立上げ・運営、データベースの構築・維持に係る費用につきまして、既存の集中管理団体に直接あるいは間接の負担を強いるといったようなことがあるとすれば、合理性がないと考えております。

私からの御説明は以上でございます。ありがとうございました。

【茶園主査】河邉様、ありがとうございました。

では続きまして、NexToneの荒川祐二様、お願いいたします。

【NexTone(荒川氏)】NexToneの荒川と申します。本日はよろしくお願いいたします。

まず、研究目的に係る権利制限規定の検討についてですが、基本的には対応案に賛成いたします。ただし、権利者の権利を害しないような態様に限定するよう、必要な配慮がなされることを希望しております。

次に、立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等についてですが、こちらについても先ほどと同じように基本的には賛成いたしますが、権利者の権利を不当に害しないような態様に限定するという配慮が望まれるところであります。

続きまして、損害賠償額の算定方法の見直しについてですが、こちらについても対応案に賛成いたします。理由としましては、現在、権利侵害があった場合に、権利者はその調査等に多大なコストを負担せざるを得ないという現状があるにもかかわらず、実際にはそれに見合うような十分な損害賠償を獲得できないという、そんな現状がある、その点を御指摘したいと思っております。

そして、簡素で一元的な権利処理方策と対価還元の制度化イメージについてです。まず、制度化イメージについてですが、コンテンツ創作の好循環を生み出し、その最大化を目指すんだという大きな方向性には賛同いたします。その上で、実際の導入に向けては極めて慎重に進めるべきであろうと考えております。

大きな視点から言えば、新たな権利処理の方策というのは、本来、法律上許諾権として設定された権利を報酬請求権化するということもできると思います。もちろん、報酬請求権化したほうが、権利者、利用者双方にとって合理的である場合があることを全て否定するわけではございませんが、このような半ば迂回的とでも評価できるような権利処理方策を導入して、許諾権としての性質を中抜きにする、そういうことはすべきではなく、一定の利用につき報酬請求権化することについて、それが本当に望ましいのか否かということを正面から提示して、権利者や利用者、様々な角度からの議論の中で決めていくべき事柄なのではないかと考えております。

所在不明等の場合については、まだ許容される余地はあるのかもしれないとも考えておりますが、著作権者等の意思表示がない場合は、本来は拒絶の意思と判断すべきであり、意思表示をしない場合には実質的には報酬請求権化するというのは、許諾権としての性質を大きく損なうものであると言うほかありません。

音楽業界においては、著作権情報、それから著作隣接権情報、商品情報などの集約化については相当程度進んでいると認識をしております。その集約化において、極めて少数の事例のために多大なコスト・労力が投入されているという現実がありますが、全体最適という観点から、それを積極的に推し進めるべきなのかどうか改めて考える必要があるかもしれません。特にコスト面について、既存の集中管理団体等が負担するような方向に議論が進むことについて、疑念を感じざるを得ません。窓口組織の組成及び運営においては、政府・文化庁などに強いリーダーシップを発揮していただきたく思っております。

最後に、各論点についての整理として2点だけ挙げさせていただきます。まず、翻案等を伴う利用も可能とすべきであるという記載がございますが、これは極めて限定された範囲の翻案に限るべきではないだろうかと考えております。また、現在の裁定制度においては、日刊新聞紙への広告または著作権情報センターのウェブサイトへの広告、これが要件になっておりますが、既にこのような広告方法というのは、権利者に伝えるという実態に合っていないのではないかと思われます。今回のこういう議論を通じて、権利者に連絡を取るためのより実効的な手段を再考すべき、そんなタイミングなのではないかとも考えております。

私からは以上です。御清聴ありがとうございました。

【茶園主査】荒川さん、どうもありがとうございました。

では続きまして、日本レコード協会の畑陽一郎様、よろしくお願いいたします。

【日本レコード協会(畑氏)】日本レコード協会の畑でございます。本日は当協会の意見表明の機会をいただき、ありがとうございます。私から当協会の意見を述べさせていただきますけれども、時間が限られておりますので、ペーパーのうち、大きなポイントだけに限らせていただきます。

まず1つ目、「研究目的に係る権利制限規定の検討」につきましては対応案に賛成いたします。ただし、研究目的という射程範囲の適切な設定をお願いしたく思います。

2つ目、「立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等」につきましては、(1)の対応案、内部資料の公衆送信等については、内部資料という範囲を適切に設定した上で、対応案には賛成をさせていただきます。

なお、(2)のDX時代に対応した著作権制度・政策の見直しで、権利制限規定について触れられていますけれども、これについては、著作権法38条等のオフライン環境を前提とした権利制限規定をそのままオンライン空間に適用するのが適切かどうかについて、慎重な検討が必要であろうと考えております。

3点目、「損害賠償額の算定方法の見直し」につきましては、令和元年度改正特許法に倣った法改正を進める対応案には賛成をさせていただきます。ただし、デジタルパイラシーの時代におきまして、利用モデルもストリーミングに変化をしたり、あるいは広告収入型といったモデルに変化したりといったことがあり、そういった環境下におきましては、被害者側で侵害や損害の実態把握をすることが非常に困難になってきております。また、それに関する被害者側での立証負担も増しておりますので、規定の内容については、また今後もさらに検討を進めていただきたいと考えております。

次に、4点目、「簡素で一元的な権利処理方策に関する制度化イメージ」でございますが、まず、最初の「制度化イメージ」、全体的な取組につきまして、我々はレコード会社、商業的な音楽コンテンツの流通やライセンスビジネスを行う事業者の団体でございますので、そういった立場からの意見として述べさせていただきます。当協会の会員レコード会社及び一定範囲のインディレコード会社のレコードにつきましては当協会、それから実演家の権利につきましては芸団協CPRAさんで集中管理をしております。それ以外の集中管理外のコンテンツでも、商業用レコードとして流通の実態がある、ライセンスの実態がある、そういうビジネスの実態があるレコードについては権利者に何らかの形で連絡がつく状況を踏まえれば、おおむね商業的に流通しているレコードについては、この新制度の対象にはならないんだろうと我々は理解をしております。

しかしながら、各論で述べられております意思表示の有無であるとか、権利者から返答が来ないなどの要件の設定如何によっては、この新制度の対象になる場合が出てくるのだろうとも理解をしております。その場合、権利者と連絡がつくまでの間、簡素な手続で暫定的な利用を可能にすることについては一定程度理解できるとしても、恒久的な本利用を何らかの手続で認める仕組みについては、これは商業的なコンテンツ流通を行っている権利者からすれば、俄かには想定できないということで、ここについてはさらなる慎重な検討をお願いしたいと考えております。

次に各論点についてですが、まず、権利者不明、所在不明ということについては、「不明」ということの要件を精緻に定義していただく必要があるのではないかということ。

また、回答(2)としておりますけれども、意思表示の問題につきましては、放送同時配信とか、見逃し配信とか、代表的な利用類型であれば、あらかじめ権利者が意思表示をすることは可能だと思うんですが、例えばユーチューブに何かの動画をアップしたい、そこにレコードを使いたいといったマイクロユーセージ、そういったケースにおいては個別な判断が必要と思われます。そういった案件について事前に想定して意思表示をしておくことは、なかなか難しいと考えております。

また、権利者に連絡がつかないということですが、レコード原盤については権利者が非常に多岐にわたるケースも少なくなく、そういった権利者の意思を全部確認し調整するという作業には相当の時間がかかる場合も現実として多々ございます。そういったときに、回答がない、イコール、何らかの新しい制度の下で暫定的利用ができるといった仕組みにすることは、権利保護の観点から必ずしも適切ではないのではないかと思います。したがって、意思表示、あるいは連絡がつかないということについても、その要件定義については慎重にご検討をいただきたいと考えております。

次に、資料の次のページですけれども、(4)(5)辺りの、暫定的利用の開始後に権利者が現れた場合でございますが、ここにつきましては、権利者が現れた場合には基本個別の利用手続に移行するということで、継続利用の可否というのは権利者の意向次第ではないかなと考えております。したがいまして、ここについても慎重な検討をお願いしたいと考えております。

最後に、4-3、著作物の分野に応じた意思表示の取組でございますが、ここについては、パッケージのレコードであればパッケージの商品上に可能な使用方法あるいは禁止条件といったものを記載し、またデジタル配信であれば、配信サービスの利用規約において同様に表示をするという取組をしております。

また、当協会のホームページにおきまして、個別の手続が必要な利用については、会員レコード会社の許諾の申込み先一覧、連絡先一覧を公表しております。

また、音楽権利者団体の連携でやっておりますMINCのウェブサイト、「音楽権利情報検索ナビ」のウェブサイトにおきましては、各著作権管理事業者がどの支分権を管理しているのかという一覧を掲載しつつ、著作隣接権につきましては、表示されるレコードにつきまして、集中管理への委託があるかどうかということをウェブサイト上で確認できるといった取組をしておるところでございます。

私からの発表は以上でございます。

【茶園主査】畑様、どうもありがとうございました。

では、ここで質疑の時間を取りたいと思います。ただいまの3団体からの御意見に関連いたしまして、御質問等がございましたら御発言をお願いいたします。御質問等ございますか。

福井委員、お願いいたします。

【福井委員】本日も非常にまとまった御発表、ありがとうございました。大変参考になりました。

音楽著作権の分野においては、他のジャンルと異なって集中管理が非常に進んでいることは、御指摘のとおりだと思います。他方でレコードの分野においては、日本レコード協会さんで、一昨年ですか、ウェブキャスティングについて集中管理を始められたことを、大変意義深い取組であろうと思っております。

他方で、スポーツ分野以外のオンデマンド配信などに関しては、まだ集中管理の取組が特に発表されたものはないように思うのですが、これについてはどのような取組がおありでしょうか。御予定あるいは個人的なお考えでも結構ですので、お伺いできればと思いました。

【日本レコード協会(畑氏)】御質問ありがとうございます。日本レコード協会の畑でございます。

福井先生御指摘のとおり、ウェブキャスティング、つまり放送由来でないネットオリジナルのコンテンツにおいてレコードが使われた場合の集中管理、これも権利者であるレコード製作者の理解を得られるところから徐々に始めておるところでございます。

おっしゃるとおり、スポーツ分野に関してはある程度幅広に管理ができておるところですが、それ以外の分野につきましては、レコード会社の意向を確認しながら徐々に進めておるところでございます。一番直近で始めたところにつきましては、ライブストリーミング型のUGCサイトですね。オンデマンド型については、まだなかなか足並みが、レコード会社の許諾が出揃うところまで行ってはいませんが、ライブストリーミング型については、集中管理で許諾していいというものについて今年の4月から取組を始めておるところでございまして、これからも順次権利者の理解を得られるところから管理範囲を広げていきたいと考えておるところでございます。

【福井委員】ありがとうございます。現在、ウェブキャスティングに関しては、大体どのくらいのカバー率というか、会員企業さんの中で(委託の)理解を得られたところの率は何割ぐらいに達しているか、そういう数字は公表されていらっしゃいましたか。

【日本レコード協会(畑氏)】これも利用方法によりけりですが、例えば先ほどのスポーツ分野であれば、ある程度放送同時配信等に近いカバー率になっているかと思いますが、ライブストリーミング型のUGCですと、これはカバー率としてレコード会社の数で表すのか、レコードの数で表すのか、なかなか難しいところではあるんですが、そこについては100%近いとは申し上げられませんが、でもかなり多くのレコード会社様に御理解をいただいて管理を始めているところでございます。

【福井委員】ありがとうございます。

【茶園主査】ほかにございますか。

今村委員、お願いいたします。

【今村主査代理】基本的に商業的に作品を作曲ないし作詞している人たちは収益を求めていますから、非常に合理的な集中管理の仕組みがあれば、いずれにせよ何か集中管理団体に権利の管理を委ねるという方向に向かっていくような気はしますし、自ら権利を管理する積極的なアクションを取ることもあると思うんです。けれども、既存の集中管理制度の仕組みの中で、必ずしもそこまで収益を自ら得ることを求めていないとか、そういう作詞家・作曲家の権利、例えば私が何か作詞をしたり作曲したりして公表したようなケースでは、あまりその後の展開というもの、商業的展開とか、誰に利用されるということは想定していないわけです。そういった典型的な商業的利用者以外の、何かそういうUGCコンテンツをつくるような人たちを集中管理の中に取り込んでいくというか、そこに集約していくようなことは、今の集中管理の仕組みで、あり得るのだろうかと思うんですけれども、そういう方向で進むのかどうか、そういう集中管理の利用の仕方というのはあるのかどうかという点をお伺いしたいと思うんです。

なぜかというと、今申し上げたとおり、集中管理されていない場合で意思表示がないとか連絡がとれないケースに、今回の新しい簡素で一元的な権利処理方策の仕組みの一番の肝の部分があると思いますから、そういった、今、集中管理されていない人たちが、集中管理に進む場合に、恐らく非商業的というか、あまり商業的な利益を求めていない人たちを集中管理に取り込めることができれば、新しい権利処理の仕組みはそんなに大きなものにしなくてもよいと思われるし、そうじゃなければ何か仕組みを考えていかなければいけないと思いましたので、お伺いする次第です。分かりにくい質問で恐縮ですけれども、お答えできる範囲でお答えしていただければと思います。

【茶園主査】では、まずJASRAC様、お願いできますか。

【日本音楽著作権協会(河邉氏)】質問ありがとうございます。私どもは、なるべくそういった音楽クリエーターというんですか、最近では作品管理についても、御自身でつくって御自身で発信するという、そういった世の中ですから、そういったクリエーターの方々にも管理を委託していただくような取組を進めております。

例えばブロックチェーンの技術を活用しまして、存在証明機能を備えた楽曲情報の管理サービスを始めるとか、管理委託をなるべく簡単に分かりやすい形にするとか、そういった形で、今、先生から御指摘ございましたように、なるべく集中管理に入っていただけるような取組を進めていきたいと思ってございます。

以上でございます。

【茶園主査】NexTone様、お願いいたします。

【NexTone(荒川氏)】先ほどの御質問についてですけれども、観点が大きく2つあると思うんです。まず1つは、商業的な利用を想定しないで発表する方々が増えているという認識です。多くの方は自身の対価のためだけにやっているということではないですし、どちらかと言ったら、1人でも多くの人に聞いてもらってラッキー、ハッピーという観点で著作物を創作し、発表されているということを改めて認識すべきだと思います。

その一方で現在のようなSNSの時代ですと、前述のようなつもりで本人が作ったものが、極めて大きな商業的価値を帯びてしまうことが往々にしてある、という観点です。そうなったときに、それまで本人は、「いやいや、対価なんて要らないよ」「そもそも集中管理の仕組みなんて知らないよ」という人が、大きな経済という波に巻き込まれていったときに、その扱いをどうするのか。そのような自体が生まれた時点で意見を表明する、もしくは遡ることについて、考えていかなければいけないということがあると思います。必ずしも集中管理に持っていくことが正しいわけではないですし、そこのところはもう全部個人に委ねるよというのも危険なような気もします。お答えになっていないかもしれませんが、そのような観点が重要じゃないかなと私としては考えているところです。

以上です。

【茶園主査】日本レコード協会様、何かございますか。

【日本レコード協会(畑氏)】今村先生の御質問につきましては、個人クリエーター、ネットクリエーター、DIYアーティストとも最近は言うようですが、そういった方々の権利の集中管理というところかと思います。日本レコード協会としては、当協会自体が直接そういった方々から集中管理の委任を受ける、あるいは集中管理に預けてくださいというプロモーション的なことをやる例は特にないんですが、ネットクリエーターを代表する団体から当協会に権利管理を預けていただいて、ネットクリエーターの団体からそういう個人クリエーターの方々に、管理を預けた方がいろいろなメリットがあるよというお話をしていただく、それにより集中管理の促進をしていただくという取組はやっております。

具体的に申しますと、9月20日の前回のこの小委員会かと思いますけれども、JNCAさん、日本ネットクリエーター協会さんから当協会は権利管理を預かっておりまして、JNCAさんに権利を預ける個人クリエーター、DIYアーティストの方々については集中管理ができておるということでございます。

ただ、JNCAさんのお話を聞いておりますと、団体に群れない、一匹狼でやっていくんだというのが多くの個人クリエーターさんのモチベーションだともお伺いしておりますので、組織率としてどこまで上げることができるかということは俄かには難しいのかもしれないなとは思っておりますけれども、一応仕組みとしてはそういうことになっております。

以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。関係者の方々は、随時御退室いただいて結構です。

続きまして、日本文藝家協会の平井彰司様、よろしくお願いいたします。

【日本文藝家協会(平井氏)】日本文藝家協会の平井でございます。本日はよろしくお願いします。昨年に引き続きまして、このような機会を御提供いただき、感謝申し上げます。

当協会は1926年、会員の親睦共済を図り、併せてその福利増進を目的に設立されました。現在、林真理子理事長の下で、小説家、詩人、歌人、俳人、あるいは批評家、ノンフィクション作家、エッセイスト、翻訳家、文学研究者等の方々を中心に約2,200人の会員とその御遺族である300人近くの準会員によって構成されております。2003年からは、かつての日本文芸著作権保護同盟の業務を引き継ぎ、国内文芸作品を対象とした著作権管理事業を行っております。我々は、これを公益団体として文芸文化振興のための事業と位置づけておりまして、目下、著述家、執筆業、約3,800名の方々から著作権の管理を委託されております。昨年1年間の実績で、1万2,273件の許諾、著作物としては延べで7万9,626作品の許諾を行ったということになっております。

申し上げるまでもなく、文書を書き記すことは人類普遍の行為でありまして、日常に根差した生活の一部であるわけですが、現状、当協会として取り扱えるのは、プロとして創作活動を行っていたり、プロを目指している人たち、あるいはビジネス目的に公表されたり、商業的利用へとつながることを意図して創作された作品が中心です。また、言語による表現形式は、必ずしも閉じられ完結された作品ばかりではなく、例えば書籍の帯に寄せられた推薦文であるとか、広報誌のインタビュー記事、放送番組でのコメントなど、断片的で雑多な小品、発話と様々ございます。こうした作品への第三者の二次利用の申請に関しまして、私どもは、時に著作者、著作権者の皆さん、それぞれと御相談をしながら対応を続けております。

発表から50年以上経過した作品に対するリクエストも決して珍しくはありません。当然ながら、著作者自身による作品への評価や思いも、時間の経過に伴って変化してまいります。我が国の著作権法にはヨーロッパ流の撤回権は存在しておりませんが、幸い、出版権規定におきまして、廃絶条項が用意されております。これを利用しつつ、また、以降の利用に関しては許諾を出さない、あるいは返事をしないことで、結果として、お蔵入りに似た効果が実現されております。人間の思想信条に直結しがちな言語の著作物の扱いを考えるにあたっては、以上のような先人たちの知恵、これまで長い時間をかけてつくられてきた秩序の実態をぜひ大切にしていただきたく、希望を申し上げます。

さて、本日のヒアリングに関してですが、時間がございませんので、1から3に関しては資料を御参照いただければと存じます。

簡素で一元的な権利処理と対価還元の制度化について今回、窓口組織の創設とその期待される役割について、様々なアイデアが示されております。一方で、小委員会資料にもありますとおり、制度化についてはまだまだイメージの域を脱していないのが実態ではないでしょうか。

本議論の前提の一つである、利用者にとって過度な負担になっていると言われる権利者探索にかかる手間やコストについて、その具体的内容についてはオフィシャルな調査がなされたことはなく、著作権利者から返答がないことについても、どのような利用につき、どのような連絡方法で、どのような条件で許諾を得ようとしたのか等について、広く実例を収集しようとしたことはないと承知しております。新たな制度を実効性のあるものにするためには、何よりも現状ボトルネックとなっている部分や、各ジャンルに特有の事情、慣行に由来するものを可視化しつつ、探索作業の軽減につながる方策への技術的な検討を行うことが第一です。個人情報保護法に特別な規定を加えることで解消可能な事例もあるかもしれません。

また、データベース一つととりましても、作品ジャンルによって必要とされる情報の種類は様々であり、実務者による実現可能性の検証が不可欠です。分野を横断した権利情報のデータベースが、諸外国において運用できている実例はあるのか。構築を目指している例が存在するのか。参考にできる事例の収集等、議論推進の前提となるべき作業がまだまだ十分であるとは言えない状況であるように思います。単なるイメージにとどまらない具体的な構築の検討を可能するためには、まずこうした地道な作業を積み重ねることが必要であると考えております。

詳しくは当協会が提出しました資料を御参照いただければと存じます。以上、御清聴ありがとうございました。

【茶園主査】平井様、ありがとうございました。

では続きまして、日本美術家連盟の池谷慎一郎様、日本美術著作権連盟のあんびるやすこ様、よろしくお願いします。

【日本美術家連盟(池谷氏)】よろしくお願いいたします。日本美術家連盟の池谷です。

美術家連盟は、全国に4,500名ほどの会員がいる美術家の職能団体です。本日は発表時間に制限がありますので、ここでは簡素で一元的な権利処理制度化案について、3つほど意見を発表させていただきます。申し上げることは、美著連から出ている書面に含まれております。

最初に、権利者不明著作物の権利処理という難しい課題に真摯な御議論をいただいておりますこと、感謝申し上げます。その上で申し上げなければならないのですが、想定される制度化案が、図書館送信の場合と同様、著作権制限を前提とするものであることは、誠に残念です。しかも、非営利利用だけではなく、一般の利用目的の利用も含む全ての利用について権利制限するものであり、公共目的からのやむを得ない事情を超えた範囲に係るものであることから、権利制限の根拠に甚だ疑問を持たざるを得ません。

2つ目、想定される窓口組織の運営体制が不明瞭と考えます。窓口組織は、事前相談、調査、探索、料金算定、支払い公告と、その業務は多岐にわたり、非常にこの組織の負担は重いように見えます。他方、この負担を支える費用については明確な記述はありません。上記のような業務を実施する場合、知識・経験のある人員が複数必要とされることが想定され、維持費用もかさむものと考えられます。利用料は権利者に支払われるべきものと考えますが、運用コストはどのように捻出するのでしょうか。権利者と利用者の両方を向いた公的な組織とされていることを踏まえると、国の負担による運用を検討すべきと考えます。

3つ、新しい権利処理の仕組みを運用する際の意思表示について、より慎重な検討が必要と考えます。その理由は2つあります。1つ、連絡に対し回答のない場合も意思表示なしとして利用可能とするとありますが、回答しないことをもって拒否の態度を示すことは一般的なことです。許諾する意思のない者に、許諾しない旨の意思表示を強いることはできないのではないでしょうか。もし許諾しないつもりで回答しない者まで意思表示なしとみなすならば、大きな混乱を引き起こす懸念があります。理由の2つ目、意思表示は著作者の意図によって可否が決定するものばかりではありません。メディアとの契約関係や力関係によって氏名や作品名の表示ができないこと、利用のプロセスで氏名・作品名がなくなってしまうこと等があり、これらの取扱いについてはより慎重な検討が必要です。

以上、3つのみ申し上げましたが、この点から考えますと、新しい権利処理の仕組みについては、より一層の丁寧な検討が必要と思われます。

他方、著作権者不明著作物の利用促進を図るため、現行裁定制度のより一層の拡充が望まれます。裁定制度は、課題が指摘される都度、文化庁担当セクションの御尽力により改善を繰り返し、現在ではかなり使いやすくなっていると認識しています。専門職員の増員、業務の外部委託と併せ、権利者不明データベースや使用料算定システムの充実等により裁定処理の対応能力の拡大を図ることで、著作権者不明著作物の利用はさらに進むものと考えられます。

美術分野では、権利者不明著作物を少しでも減らすため、また裁定制度を支えていくために、美術分野における権利者データベースの構築を始めています。このデータベースが分野全体の権利者不明の著作物に対応していくためには、アウトサイダーも含めた広範な著作権者を対象とする必要があると考えます。完成までには経済的・人的負担も大きいものと予想され、構成員の負担だけでは賄い切れない部分が出てくると思われます。データベースの公共性を考慮いただき、さらなる行政の支援をお願いしたいと思います。

私からは以上です。今申し上げたデータベース等を含めて、あんびる理事長からお願いしたいと思います。

【日本美術著作権連合(あんびる氏)】美著連の理事長をしております絵本作家のあんびるやすこと申します。今、池谷理事から美術分野の総意をお伝えしたところでございますが、私からも委員の先生方にどうしてもお伝えしたいことが2つございますので、2分ほどお時間を頂戴いたしますことをお許しください。

まず、集中管理が進んでいない分野の権利者団体の代表の1人として申し上げます。美著連は美術分野最大規模の団体でございますが、設立から50年の間、事務所を持たない会議体として運営をしてまいりました。しかし、SARTRAS補償金を画家に分配するに当たりまして、悩んだ末、一元的管理を目指すという志を立てまして、先ほど池谷理事からのお話もあったとおり、データベース構築なども含め、昨年初めて事務所を借りまして、従業員を雇用いたしました。この経費は全て加盟団体の会員一人一人のポケットから出ております。一元的管理を行うことは理想ではございますが、現状では権利者団体にとって大きな経済的負担になってしまうことを御理解いただきたいと思います。

次に、1人の実作者として申し上げます。私たちがこのように送り出す作品は、どれも私たちの思いが強く宿った唯一無二のもので、その著作権を制限されることを歓迎する実作者はおりません。今、著作物を使いやすくすることは社会的要請ですが、その要請への対応を権利制限やそれに類似した制度によって成し遂げようとすることは、著作者から見ると不公平に感じられます。私たちの作品を尊重してくださるのであれば、特に権利者の許諾のない利用につきましては、たとえ限定されたケース、暫定的であったとしても、慎重に御検討いただきますようお願いをいたします。

お話を聞いていただきまして、ありがとうございました。

【茶園主査】池谷様、あんびる様、どうもありがとうございました。

続きまして、日本漫画家協会の笹平直敬様、よろしくお願いいたします。

【日本漫画家協会(笹平氏)】 日本漫画家協会の笹平です。私どもは、約2,800人の漫画家を正会員としております漫画家の団体でございます。

まず、設問1から申し上げます。基本的には支持はできるんですけれども、調査結果を拝読させていただきました限りで、著作権法の32条、38条はもちろんのこと、はたまた、教育機関制限規定の35条であるとか、試験問題の制限規定の36条であるとか、結構こちらとの混同も散見されているように思いました。ということで、本件に関しましては、業界慣行も鑑みた上でガイドラインのようなものを作成していただき、十分に利用者に著作権法の普及啓発を行った上で、それでも相当の支障が出る場合に、この権利制限規定の検討を行っていただきたいと、そのように思います。

設問2関しまして、立法・行政のデジタルシフトは、これはもう世の中の趨勢で、止められるものではありませんけれども、こちらもまず、公衆送信の検討の前に、複製の段階におきましても、まず内部資料というものの解釈、必要と認められる限度の解釈についても周知されているとは言い難いと、そのように思われます。まずはこちらの検討と併せて、当該解釈の周知についても徹底していただきたいと、そのように思います。

設問3につきまして、御承知のとおり、漫画の海賊版問題はもはや喫緊の課題となっております。漫画村は消滅いたしましたけれども、漫画村の後続の悪質サイトはまさに雨後のタケノコのような状況で出現しておりまして、ABJさん等の調査によりますと、正規版市場の額よりも海賊版被害の額のほうがはるかに大きいと、そのようなゆゆしき状態になっております。そのようなわけで、私ども当協会といたしましては、こちらの損害賠償額の見直しにつきましては強く賛成させていただく次第です。

まず、対応1につきましては、著作物の場合、特許とは違う事情がございまして、代替のきかない著作物ということで、外部要因に左右される販売等の努力・能力が特許の場合は割と参酌されますけれども、それよりもタダ読みによるライセンス機会の損失というところに焦点を当てていただきたいと思います。

対応2につきましても、日本の著作権法制度では懲罰的損害賠償は認められていませんので、損害賠償額が小さくなってしまう傾向があるところ、著作権侵害があったことを前提として交渉した場合に決まるであろう額というところは、公序良俗に反しない限りにおいて、ペナルティ的要素と申しますか、侵害抑止につながるようなレベルでの金額設定を希望するものです。

設問4につきまして、4-1ですけれども、漫画単体としましては、個人またはそれに準ずる規模で創作される著作物ですので、著作権者探索コストは皆様よりはさほどかかっていないと思われますけれども、先ほど美術団体の方も出ていらっしゃいましたけれども、現在、視覚芸術分野(美術・写真・漫画)におきまして、まずは近々に分配されます授業目的公衆送信補償金、こちらの利用報告及び補償金分配の円滑化・簡素化をトリガーとしまして、現在、分野横断権利情報データベースの構築を遂行する予定でおります。

4-2につきまして、論点につきましては、全体的に著作権者の意思表示は確認していただきたいというのはありますけれども、漫画家特有と申しますか、個人漫画家の場合に、特に翻案等改変を伴う利用、こちらにつきましては、著作物は著作者にとって人格の発露というべき存在ですので、巷間行われている二次創作等を鑑みますに、柔軟な翻案行為を認めることは同一性保持権侵害につながるリスクが非常に高いと思われますので、この点については支持し難いと表明させていただきたいと思います。

設問4-3につきましては、私どもの場合は、出版物に著者名であるとか、著作権法第14条の著作者の推定に準じた表記が割と慣行的にされておりますことと、あとは著作権等管理事業者としまして、管理著作物利用に際しましては委託者リスト、使用申請フォーム、使用料規程等の御案内をしている、そして裁定に関しましても、文化庁様の裁定補償金シミュレーションシステムサイトにおいて、漫画分野における不明著作物利用に関する問合せ先として当協会が記載されているといった方策をとっております。

漫画家協会としての発表は以上となります。

【茶園主査】笹平様、どうもありがとうございました。

それでは、ここで質疑の時間をとりたいと思います。ただいまの4団体からの御意見につきまして、御質問等がございましたら御発言をお願いいたします。御質問等ございますか。

早稲田委員、お願いいたします。

【早稲田委員】今までの貴重な御発言、ありがとうございました。音楽の団体は、先ほど来御発表があるように、非常に集中管理が進んでいるところだと思いますが、今御発表いただいた4団体の集中管理というか、カバー率は大体どのぐらいとお考えなのか、お聞かせいただければと思います。

【茶園主査】では、文藝家協会様から順にお答えいただければよろしいですかね。

【日本文藝家協会(平井氏)】 早稲田先生、ありがとうございます。よくカバー率を聞かれるんですが、文芸作品の場合、その対象範囲の広さゆえに、果たして分母をどこに置けばいいのかが難しい。先ほど申し上げましたが、取りあえず文章って誰でも書けるんですよね。日常のビジネスにおいても、あるいは様々な学校におけるコンクールの発表等においても、それがまた何らかの形で公表されていたりすることは多々ございまして、文芸作品においてカバー率を決めるのは本当にいつも困っているわけです。

仮にお答えできることがあるとしたら、どういった利用に関する、どういった機関におけるカバー率ということであれば、例えば初中教育における35条の枠を超えた利用ということであれば、文藝家協会のカバー率は3分の1程度と教育産業の皆さんからお伺いしております。実はそれ以外はほとんど分母を確定することが難しいものですから、はっきりとはお答えできないのが実情です。申し訳ありません。

【茶園主査】ありがとうございます。

美術家連盟様から何かお答えできることはございますか。

【日本美術著作権連合(あんびる氏)】池谷さんの御発言があったんですけれども、日本美術家連盟も日本美術著作権連合の中のメンバーになっておりますので、美著連としましてのカバー率について御説明を申し上げます。

現在、美著連の総会員数は1万人程度でございますが、それでも日本全体の美術家の中の大体12%程度ではないかと予想しております。これは正確な数字ではございません。ただ、私どもの分野の特徴としまして、美術家はどの団体にも属さずにスタンドアローンでいたいと考える方が非常に多くて、私たちも苦慮しているところでございます。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございます。

では、漫画協会様からございますか。

【日本漫画家協会(笹平氏)】実は今の2団体の方々とほぼ同じ事情でありまして、恐らく漫画家が日本に何人いるのかということは、公的なデータは出ていないと思います。ただ、これはまさに先ほど平井さんがおっしゃったとおり、どこまでを漫画家と定義するのかという考え方によって異なってくると思うのですけれども、これは団体名公表は差し控えさせていただきますけれども、ある団体に漫画著作者として登録している方々を母数とした場合には、当協会は約2,800人の会員数がいるのですけれども、約13%程度というのが一つの指標となっております。

ただ、これも、先ほどあんびる理事長もおっしゃいましたとおり、漫画家もスタンドアローンを好む方がいらっしゃるとか、あと御承知のとおり、既に高校生ぐらいでデビューされて、すぐ出版社との間で管理委託等の関係に入られる方もいらっしゃるので、カバー率としてはそのようなレベルを一つの指標と考えていただければと思います。

以上となります。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ほかに御質問ございますか。

福井委員、お願いいたします。

【福井委員】今の早稲田委員のお話に関わってくるんですけれども、ネットクリエーターをはじめ、多様な権利者は確実に激増している状況だろうと思います。また、埋もれた過去の作品のアーカイブ利用などの可能性も増えているところだろうと思います。そうしたときに、昨年の基本政策小委員会のヒアリングでも、大体各団体さん、組織率としてお答えいただいた数字は10%から12%の間のレンジに収まっていたように記憶します。今日のお話も、それに近いものをお答えいただいたかなと思います。

もっともこれは会員組織率でありまして、権利の集中管理とか権利情報データベースのカバー率ということになると、恐らくさらに低いだろうと予想されるわけです。そこで、こうしたカバー率を上げるために、あるいは、カバー率が低い状態においても権利者から許諾を得て利用し対価還元をしやすくするための工夫として、各団体さん、今日伺った以外に、どんな仕組み上の提案がおありであるのか。これはどの団体さんでも結構ですので、仕組み上の御提案が今日伺った以外におありである場合、ぜひお伺いできればと思いました。

【茶園主査】何かお答えいただけることがございますか。

では、あんびる様、お願いいたします。

【日本美術著作権連合(あんびる氏)】先ほど漫画家協会からのお話にもありましたとおり、私どもでは今、美術、漫画、写真の比較芸術としてのデータベースを構築しようということで進めております。その際、会員以外の方もこのデータベースに協力できるような仕組みを盛り込んだデータベースにしようとしております。もしこのデータベースに登録したいという、アウトサイダーという呼び方をしているんですが、どの団体にも属さない視覚芸術家がおりましたら、御本人の意思でもって登録ができるようにしようと思っております。

それによって権利者の捕捉率を上げていこうという計画ではございますが、このデータベースを運用していく費用、それは私たち3団体の会員の会費から賄わなければならないことになっています。つまり、社会として望まれている一元的集中管理、全ての芸術家の一元的集中管理を成し遂げるために、私たちの会員が、会員のために使われるべきである会費の一部を、この全非会員のために、分野に使っていくことが、果たして良いことなのかどうか、非常に葛藤しているところでございます。

これでお返事になっていると良いのですが、以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますか。

では、平井様、お願いいたします。

【日本美術家連盟(平井氏)】 福井先生からの御質問への直接のお答えにはならないと思うんですが、文藝家協会、会員2,200人、委託者が3,800人ということで、文藝家協会会員に限らず、児童文芸、児童文学、あるいは推理作家協会ですとか、ほかの文芸作品の団体所属の皆様に関しても、私どもで管理をお引受けしているということがございます。

基本的には文芸作品というのは出版物として最終的な形になることを目的としています。中には専らネットで発表されている方々もいらっしゃいますが、そうした方々も、いつか紙の本として印刷され、国立国会図書館に納本されることを目指してやっているわけです。そういった点からいくと、いろいろな二次利用の申請が著作者御本人に直接行った場合、多くの場合初めてのことなのでよく分からないとなり、出版社さんに相談するわけです。出版社さんによっては文藝家協会がこういったことについても管理していますよという御案内をしていただいて、それがきっかけとなって、委託が増えているというケースもございます。文芸作品、文字作品の世界であれば、出版社さんといい協力関係を結ぶことが、取りあえず地道でありながら早道なのかなとは考えております。

以上です。

【茶園主査】よろしいでしょうか。

池谷様、お願いいたします。

【日本美術家連盟(池谷氏)】福井先生からは、どんな努力をしているか以外にアイデアがあればという御質問だったかと思うので、空想的なお話ではあるのですが、僕たちが管理事業をやっていて時々思うのは、非常に商業力がある、力のある作家さんは、どちらかというと管理を他人に任せることをしないで、ほとんど自分でマネジメント会社をつくるとか、ないしは弁護士さんにそれこそお任せするとか、そういった形でやっていらっしゃる方が多いんです。

それで、そういった方たちも含めて、現場で時々思うのが、インターネットの中でもいいんですが、私書箱というか、そういったアウトサイダーの方たちが登録できるような私書箱、そういった方たちとの連絡を取り持ってくれるような、そういった中継点があればいいのかなと思うんです。管理事業者がやる場合はいつも、管理して、そこで収益が出てきた手数料を原資にしていろいろな事業を行うわけですけれども、アウトサイダーの方はそこに入ってこない。でも、その方たちの情報は何とかまとめなければいけないんですけれども、昔であれば美術館とか学芸員とかが知っていて、よく教えてくれたりはしたんですが、今は個人情報保護法の絡みがあって、それがなかなかできない。聞いても教えてくれない。そんな状態になっているもので、何とかアウトサイダーの方たちに対して橋渡しできる中継ポイントみたいなものがあってくれると、かなり助かってくるんじゃないかなと常々思っております。

以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。関係者の方々は、随時御退出いただいて結構です。

では続きまして、日本動画協会の宮下令文様、お願いいたします。

【日本動画協会(宮下氏)】日本動画協会の著作権委員会の委員長をしております宮下と申します。今回こういった機会をいただいたことに関しまして、非常に感謝しております。今回、一元的な権利処理の集中管理の制度ということで、これについて意見を述べさせていただきたいと思っています。

私どもの協会は、主に著作権を持っているアニメーションの制作会社の集合体になります。今回いただいた制度に関してですが、著作権の管理事業法は、非一任型と一任型という形で分類されていますけれども、アニメーションに関しましては、単一の著作物とは違いまして、非常に複雑な契約で、原作、脚本、監督、音楽原盤、このような一つ一つの著作物を、利用許諾を取って複雑な契約を交わして、それをもって利用していく形になっておりますので、非常にこういった制度とは遠い存在にあるんじゃないかなと思っております。言うならば、一任型とは非常に遠い存在、非一任型でやっている会社がほとんどだということになります。ですので、絵画や音楽に関しましては多少向いているところは今回の制度についてはあるのではないかなと思っておりますが、アニメーション映像著作物に関しましては非常にこういった制度とはなじまないのではないかなと考えます。こういった観点に立って、今回、意見を述べさせていただきたいと思います。

最初に、権利処理コストが高いため著作物の利用に結びつかないということがここに書かれているんですけれども、アニメーションに関しましては特に契約の取り交わしを十分に行っておりますので、こういった問題はほとんど聞いておりません。それから、海外ビジネスも契約によって順調に行われておりますので、こういった話も上がってこないと。裏には、制作に多額のお金がかかっていて、重要な契約をしていくというスタイルでやっているものですから、なかなかこういう問題とは無縁ではないかなと思っております。

それから、権利者が分からないとかというケースは、ほぼありません。クレジットの表記もしておりますし、権利者に行き着かないケースはほぼないんじゃないかなと思います。

一般の利用の申請がありますけれども、ほとんどが学校の授業でやりたいとか使わせてもらいたいとか、そういうことになりますので、言ってみれば、著作権法の権利制限の規定内でやってくださいということでお話をしている、こういう形になります。

二次創作の申請もありますけれども、ほとんどが許諾できないような内容のものばかりであるという状態であります。

それから、ここに、土地、有限の有体物との比較ということで出ておりますけれども、基本的にライセンス契約は、民法の11の典型契約の中に入っていないんですね。なので、こういう理由から、よく賃貸借契約と似ているということで、そういう扱いを受けるんですけれども、基本的にはライセンス契約と賃貸借契約とは違っていると思っていますし、それから、相続等があって、土地はよく分からなくなるケースがあると思うんですが、そういったことも、アニメーションの場合は会社が主体になっていますので、ほぼないんじゃないかと思っています。ですので、こういったものとは非常に無縁じゃないかなと考えております。

それから、遡及の話もありますけれども、非常に慎重にやっていくべきかと思っています。

あと、基本的に契約も独占契約が最近多くなっています。もともと放送、ビデオ上映に関しましては、ほぼ独占契約でやっておりまして、最近は配信を大きな海外のプラットフォーマーと独占契約していることが多いです。こういった契約をしている関係で、外に権利を許諾できるような状態を持っていくことは避けていただきたいなと思っております。

あと、意思表示に関しましては、先ほどから申し上げていますけれども、基本的には何も返答がなければ許諾が下りていないという形でお願いしたいなと。これが原則だなと考えておりますので、こういったオプトアウトとか意思表示で著作物を利用できる状態に関しましては避けていただければと思っております。

それから、オーファンワークスを基準に制度化しているのが少し見えてきていますので、先ほどまで言っているとおり、著作物の分野を整理してやっていただきたいなと思っております。映像の分野、映画、劇場がないアニメーションに関しましては、こういった制度とはなじまないのではないかと考えております。

あと、翻案等の利用ということで出ておりますが、アニメーションの場合、翻案というのは商品化ということです。これが非常に精度の高い慣習手続の上で行われておりますので、一般の人がこういったことで出てきて許諾を受けることについては非常になじまないのではないかと考えています。

それから、商品化以外にも、パチンコ、その他のゲーム化ということも、同じようなことが言えるのではないかと考えています。

ということで、日本動画協会からは以上になります。よろしくお願いします。

【茶園主査】宮下様、どうもありがとうございました。

では続きまして、日本民間放送連盟の平尾貴様、よろしくお願いいたします。

【日本民間放送連盟(平尾氏)】日本民間放送連盟知財委員会知財専門部会法制部会主査の平尾といいます。本日はこのような機会を設けていただき、ありがとうございます。それでは、民放連からの意見を申し上げます。

まず、設問1、研究目的に関わる権利制限規定の検討についてというところでございます。著作権法第38条をはじめとする権利制限規定で、研究目的に関わる著作物の利用は現状でも可能ではないのかということから、新たに権利制限規定を設ける必要性については、権利者の意見も踏まえて十分に慎重に議論されるべきものと考えております。

続きまして、設問の4、簡素で一元的な権利処理方策と対価還元の制度化イメージについての4-2、各論点の整理についてというところです。まず、論点として、権利者不明・所在不明というところについてですが、放送番組は、皆様御存じだと思いますけれども、番組の最後が多いんですが、“製作著作”等の権利者表示がされておりまして、また、放送した放送局が分からない場合はほとんどないものと考えられます。したがって、新しい権利処理の仕組みの対象となるコンテンツは、権利者不明等のコンテンツが想定されているかと思いますので、放送番組はこの制度の対象にはならないのではないかと考えております。放送番組の権利処理を行う上でも、現在、放送番組の配信等の二次利用を前提に番組制作をしておりますので、権利者が不明であるというケースはほとんど想定されておりません。

意思表示がされていない場合という点についてでございます。この議論ですけれども、これまでの文化審議会基本政策小委員会での議論、特に昨年の中間まとめに指摘されている、“既存のライセンスビジネスや商慣行に悪影響を与えないようにすること”、この視点と、今回文化庁さんからいただいたヒアリングの資料13ページにあります意思表示の有無の判断については、“著作物の利用の可否について明記されておらずとも、著作物またはそれに付随して著作権者等に関わる情報が示されている場合には、まずは当該情報に基づき連絡を試み利用許諾を取ることを基本としつつ”という点は、市場の混乱を避けるためにも非常に重要なポイントであると考えております。

窓口組織の役割のところ、こちらは分野横断権利情報データベースという点がこれから議論されるかと思うんですが、その構築・管理運用には多大なコストが見込まれることから、これまでの基本政策小委員会での議論や昨年の中間まとめにあるような制度や仕組みについて、“管理運営コストを考慮し持続可能な仕組みとすること”という指摘は極めて重要な論点であり、データベース化に伴う作業量や費用については十分に検討されるべきと考えております。

最後に、設問4-3についてでございます。こちら、書かせていただいたとおり、放送局のウェブサイト、こちらに著作権の帰属や無断利用の禁止などについて記載している事例がございます。

日本民間放送連盟からは以上となります。ありがとうございます。

【茶園主査】平尾様、どうもありがとうございました。

では続きまして、日本知的財産協会の今子さゆり様、よろしくお願いいたします。

【日本知的財産協会(今子氏)】日本知的財産協会の今子です。本日はこのような機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。

まず、研究目的に係る権利制限規定の検討についてです。研究目的に係る権利制限規定については、引き続きの検討を期待いたします。検討に当たっては、関連する現行規定の適用範囲を明確にしていただいた上で、特に研究の主体や対象等について、社会全体への効用やイノベーション促進の観点を踏まえた御議論をお願いしたいと考えます。

続きまして、立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等についてです。行政のデジタル化の対応をさらに進めるために、法改正も視野に入れた検討を行うことについて賛同いたします。正しい検討に当たっては、保護と利用のバランスに留意し、著作権者の利益が一方的に劣後することのないように配慮していただくことが必要と考えます。

続きまして、損害賠償額の算定方法の見直しについてです。著作権者等の被害回復の観点から実効的な対応がとれるよう損害賠償額の算定方法を見直すこと自体に、特に異論はございません。丁寧な御検討をお願いしたいと考えます。

続きまして、簡素で一元的な権利処理方策と対価還元制度化イメージについてです。昨年度、基本政策小委のヒアリングにおいて、利用許諾の在り方を考えるに当たって考慮すべき事項として申し述べた点です。次の3点ですけれども、こちらを御考慮いただいた検討内容、対応の方向性になっていると理解しております。本件は、制度のつくり方次第では、著作権の基本的な枠組みにも影響し得ると考えますので、今後も具体的なケースを想定しつつ、権利の保護と利用の促進のバランスに配慮した丁寧な検討が行われることを希望いたします。

また、調査探索においてデータベースが果たす役割が大きいと考えますので、データベースが恒常的にアップデートされ、制度が円滑かつ継続的に機能するように、定期的な検証と見直し、改善策の検討などが継続的に行われていく必要があると考えます。

以上となります。

【茶園主査】今子様、どうもありがとうございました。

では、ただいまの3団体の御意見につきまして、御質問がございましたら御発言をお願いいたします。

池村委員、お願いいたします。

【池村委員】ありがとうございます。民放連様に御質問したいのですが、放送局として、番組を制作、放送するに際して、いろいろと権利処理の御苦労があると思いますので、その辺りのお話を少しお聞かせいただけないかなと思いました。

具体的には、権利者が不明等の事情で放送利用を断念せざるを得ないケースは実務上どの程度あるのか、あるいはないのか、既存の権利制限規定で基本的に事足りていて、実務上あまり困っていないのか。その辺りについて、差し支えない範囲で御教示いただけないでしょうか。

【日本民間放送連盟(平尾氏)】民放連でございます。池村先生、御質問ありがとうございます。

権利処理は、御存じのとおり、放送番組は様々な著作物を利用させていただきます。特に写真や美術作品も含めてですけれども、そうした著作物を部分的に使用させていただくことも多いと。そういう場合、権利処理を日々、365日24時間、毎日やっているわけですけれども、確かに大変ではあるんですが、現状というか、昨今ですかね、テレビ局によっても事情が異なるので、皆様一概にそうなのかどうか分からないですけれども、昨今配信等、放送番組はいろいろ利用されておりますので、現場のノウハウは習熟してきているというのは言えると思います。

放送番組の場合、権利処理も長くゆっくりはやっていけませんので、放送までに仕上げないと駄目という事情から、なかなか複雑な交渉、難解な交渉になっていると、時間的制約からもう諦めるとなります。あと、配信等を考えた権利処理となると、できるだけ事故がないように、確実に許諾が得られるものを使おうとなります。確実に許諾が得られなさそうであれば、もう利用は諦めることに流れがちですので、そうした実務を普段やっているところでございます。現状、基本的にはそういったことでやっていて、特段これといった大きな弊害がすごくあるかというと、ないのかなと。日々こつこつと地道にやっているところかと思います。

すいません、答えになっているかどうか分かりませんが、以上でございます。

【池村委員】ありがとうございました。

【茶園主査】では、福井委員、お願いいたします。

【福井委員】 私も池村委員の御質問にかぶせるようにして、民放連さんにお伺いしたいと思います。

こういう制度の議論は事実に基づいて行うことが重要であると思うんですけれども、本日御発表いただいた、現在番組について権利者不明はほとんど想定されていないという一節に、私、若干驚きを隠せませんでした。というのは、日々の御相談の中で、こうした権利処理についての御苦労にはよく接しているからです。

ここでお尋ねです。過去の映像も含めて恐らく利活用の対象に現在はなっていると思うのですけれども、それについてaRmaでは、不明の出演者に対する呼びかけを行っていらっしゃいますよね。現在(そのHPを)拝見すると、不明の出演者数は、件数ベースで言うと3,549件ございます。これは不明だから呼びかけているんだと思います。その中には昨年の番組もありました。よもや呼びかけた上で文化庁裁定も受けずに黙って使っていることはないでしょうから、これ、裁定に至っていないものは全部、利用を諦めた番組と解釈されると思うのです。出演者だけでこうです。他の権利者についても同様の事情があるとすれば、権利処理ゆえに諦めている番組がほとんど想定されていないというのは、これはどういう御趣旨になりますでしょうか。お伺いする次第です。

【日本民間放送連盟(平尾氏)】御質問ありがとうございます。確かに全ての番組の中で使われる権利者が確実に把握可能かというと、それは確かに日々、権利者を探して特定できないかというのを番組制作スタッフは探しまくりますので、当然ながら、ほとんどが分からないというよりは、もう放送までに分からなかったものは利用を諦めている、カットしているということが実情だとは思います。

もう本当に日夜、毎日、物すごい数の素材、著作物を利用させていただきますので、その全てを分かっているのかと言われたら、もちろんそういうことはないですけれども、比較的番組制作の段階から、できるだけ処理が困るようなものは使わないようにしようというマインドの変更も、ここ最近、行われているとは推測いたします。それはかつてのように放送して終わりという時代ではなくなってきていますので、放送後は配信もするということであれば、最初から配信二次利用を想定した番組ができるような番組づくりをしていこうという意識が現場の中でも変わってきているものと推測をいたします。

以上でございます。

【福井委員】ありがとうございました。

【茶園主査】ほかにございますか。よろしいでしょうか。では、どうもありがとうございました。以上でヒアリングを終了させていただきます。御説明いただいた皆様には御協力いただきまして、誠にありがとうございました。

それでは、ここから自由討議に入りたいと思います。本日のヒアリングでお聞きした内容を踏まえまして、参考資料2について自由討議を行いたいと思います。

それでは、御意見のある方は御発言をお願いいたします。前回と同じように、参考資料2には、審議事項1、2、3、4、それぞれについて趣旨と対応案が記載されておりますけれども、まずはいずれの審議事項でも結構ですので、何か御意見等ございますか。

池村委員、お願いいたします。

【池村委員】ありがとうございます。最後の簡素で一元的な権利処理方策について、一言だけ。

前回、今回とお話伺って、窓口組織の在り方が非常に重要だなということを再認識しております。要は法改正だけしてあとは民間で頑張ってねということはあってはならないという強いメッセージだと思いますので、今後議論を進めるに当たっては、その点をしっかり受け止めていく必要があろうかと思います。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。ほかにございますか。

今、池村委員がおっしゃったように、前回もそうでしたけれども、窓口組織というものがこの制度のかなり肝になると思いますけれども、現実にきちんとした窓口組織をどのようにつくって、いかに運営し、維持するかというのは、実際問題としてはなかなか難しいなと、恐らく多くの方がそのような問題を指摘されてこられたと思います。この点でも結構ですし、ほかの点でも何かございますか。

福井委員、お願いいたします。

【福井委員】ありがとうございます。今の池村委員、そして座長のお言葉に、全く私も同感です。併せて、この窓口組織は、繰り返しになりますけれども、権利情報のデータベースの充実ということと本来表裏であるものだと思うのです。権利情報データベースが充実していなければ、窓口組織のやっていることの説得力はどうしても下がってしまいます。もちろん、この制度ができることによって権利情報データベースが充実していくという、そういう正の循環も期待されていることは重々承知の上でも、シードとしての権利情報データベースの充実は、重要ですね。

そうしたときに、先ほどの各団体、美著連さんや漫画家協会さんの言葉、私は大変重く受け止めました。社会全体のためになるものを僅かな会費収入から自分たちが全部賄うのか、この御指摘は、私は正論であろうと思うのです。この点もぜひ今後の窓口組織の議論とともに議論の俎上に乗せていただければと改めて感じた次第でした。

以上です。

【茶園主査】早稲田委員、お願いいたします。

【早稲田委員】ありがとうございます。権利情報データベースの充実というのはおっしゃるとおりで、先ほど美著連さん、あんびる様ですか、御発言されたように、SARTRASの今、分配の関係で、データベースの構築に非常に頑張っているという、非常に大変であるという御発言がありましたので、ほかの分配等の兼ね合い等で、この権利情報データベースの充実がどこまでできるか、それから諸団体様の、犠牲と言うと言葉が悪いのかもしれませんけれども、そういう負担によってどこまでできるのかというところが、まず一つのポイントなのかなと思いました。

それから、もう一つでございますけれども、今日の関係団体の御発言にあって、商業的な音楽、レコード、その他動画協会さんとか放送の関係とかで、商業的にきちんと流通しているコンテンツは今回の対象にはなかなかなりにくいのかなと。先ほど来御発言がありますように、オーファンワークス等の非商業的ないしはネットで発表される、まだまだプロにならないような方々の利用を中心的に考えて構築していかなきゃいけないのかなというようなことを考えました。

以上、感想めいていて恐縮ですけれども、以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございます。ほかにございますか。

窓口組織というのもそうですし、今回は意思表示に関して、たとえば何も表示しないということが何かを意味すると受け止めるかといったことが指摘されていましたが、改めて難しい問題であると思いました。ともかく、いずれの点でも結構ですけれども、何か御意見等ございますか。特によろしいでしょうか。

では、どうもありがとうございました。その他、全体を通して何かございますか。

他に特段ございませんようでしたら、本日はこれぐらいにしたいと思います。

最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。次回の本小委員会につきましては、9月30日13時から、関係者からのヒアリングを予定しております。今後ともよろしくお願いいたします。以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会法制度小委員会第4回を終了させていただきます。

本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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