2023年6月13日 事務所関連情報

大規模言語モデルを活用した次世代型リーガルリサーチAIに関する取組みについて – 協業先であるLegalscape社との取組み

1. 取組みの背景・概要

当事務所は、2019年10月以来、リーガルリサーチのサービスを提供する株式会社Legalscape(以下「Legalscape社」といいます。)との間で、協業的取組みを行っております。

Legalscape社は、法務領域における技術的なリーディングカンパニーとして、「すべての法情報を見渡す景色を描き出す」というパーパスのもと事業展開を行っており、東京大学大学院 情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻で自然言語処理を研究してきた最高技術責任者を中心とする高い技術力を有する研究開発チームを擁しております。

当事務所は、Legalscape社との協業的取組みの一環として、Legalscape社との間で、大規模言語モデルを活用した次世代型リーガルリサーチAIの企画・開発のための意見交換・協議を行って参りました。これらの意見交換や協議を踏まえ、この度、Legalscape社は、同社の6月12日付プレスリリース「Legalscape、大規模言語モデルを活用した次世代型リーガルリサーチAIを開発—森・濱田松本法律事務所との協働により高い精度を達成し、今後の実用化を目指す」に記載のとおり、大規模言語モデルの法務領域への応用を通じ、リーガルリサーチ特化の対話AIを開発しました。

このリーガルリサーチAIは、まだ試験利用段階ではありますが、現段階でも、2012年~2014年の司法試験及び2012年~2016年の司法試験予備試験の短答式試験の会社法に関連する計70問で、約71.4%の正答率を記録しており、ChatGPTの約42.9%や例年の合格ラインである約60%を大きく上回っております。

また、このリーガルリサーチAIでは、回答の正確性が求められる法務領域における大規模言語モデルの実務応用上の大きな課題である、大規模言語モデルがそれらしい嘘をついてしまう問題(通称 “hallucination” 問題)を解決するため、法律文献に依拠して回答させることで、ユーザーが安心して利用できるよう工夫されています。

かかる取組みは、日本経済新聞14面「司法試験の一部科目 生成AI、『合格水準』 東大発新興、『GPT-4』ベースに開発」と題した記事に掲載されました。
 

2. 今後の展望

今般、Legalscape社が開発したシステムは、会社法分野に特化するものになりますが、現在、他の法分野への拡充を目指し、さらなる取組みを開始しております。

また、引き続き、当事務所における試験利用の拡大、法律実務において利用する観点からのフィードバック等の協働を行い、これらを通じてシステムに更なる改良を加えることで、早期の実用化を目指して参ります。

当事務所は、Legalscape社との取組みを通じて、迅速かつ網羅性の高いリーガルリサーチを実現し、クライアントの皆さまに対し、より一層質の高い法務サービスを提供することができるよう目指して参ります。